2+1人


「はい、宗一」


ここは、街角の小さな喫茶店、「ラディッシュ」。
その「子供部屋」で俺とエディは次のヤマの打ち合わせをしていた。

そこに金の髪を靡かせながら、トレイに3つのカップを乗せて現れたリサ。
端末を弄るエディのためにデスクにカップを置く。
それから、俺に手渡してくれる。
湯気とともにコーヒーの香りが広がる。
湯気の向こうの深海より深い青の瞳が俺を捕らえる。

どれくらいそうしていただろうか。

「あ〜〜」
エディの真の抜けた声に、俺とリサは慌ててお互いの視線を外した。

「今日はここまでにするかネエ?」

「べっべつに・・・、まだあるんだろ?」
何か剥きになってしまった。ほんと、ガキだね俺も・・・。
「あるにはあるんだけんど、裏とれてないヨ」
なんとなく意地悪いニュアンスを含む返答。

「そうか・・・。じゃ仕方ないか。」
そんな手には乗らない・・・、と冷静を装ってみる。

「ダナ」

そこで間が空き、3人はそれぞれのカップを手にとった。

「それにしても、だんな方、・・・・・焼けるネ?。一つ屋根の下に住んでいながら たまにしか会えない切ない恋人同士みたいだネ。」

「ぶっ・・。」「ケホ・・。」

俺とリサが同時に咽る。

「汚いヨ!、ソーイチ!」
被害を受けたエディが抗議の声をあげる。

「変なことを言うからだ!」
自業自得だとばかりに、しかめっ面をエディに向ける。

「ハイハイ、馬に蹴られてなんとやらネ。邪魔者は消えますかネエ・・・。って、 違うヨ。」

「ん?。何が?」
何を1人でのり突っ込みしてるんだ?。エディのやつ?

「消えるのは君たちネ。おらっちはまだ調べ物があるんだ。ほら、帰った帰った。」

「あ?・・・ああ」
エディの目が笑っている。
分かった。分かった。分かりました。
残りを一気に呷り、席を立つ。

「帰るぞ、リサ」

「え?。あ?。宗一。」
リサが慌てて付いて来る。


カウベルが続けて鳴る。





リサは今、俺の家にいる。アメリカ合衆国大統領の「娘」なのだから、戻る所がな いというわけではない。
リサはそうしなかった・・・。
俺がそうさせなかった・・・。


「・・・宗一」
隣を歩くリサが躊躇いがちに口を開く。

「もっと私にも宗一の手伝いをさせて・・・。」

傷が完治していないリサには、エディのサポートをしてもらっている。

そして、毎朝の置き抜けのモーニングコーヒー。
これはエディには内緒だ。

俺が口を開くのを待つリサの方にゆっくりと向き直り、傷に触らないようにやさ しく抱きしめた。

「あっ・・・。宗一。」
リサが身を預けてくれる。

「焦ることはないよ。」
彼女の性格からして、じっとしていろというのは無理なのはわかっている。
だからこそ、怪我が完治するまでは、今は、そばでじっとしていて欲しい・・・。
プレジデントから文字通り厳しく言われたからではない。

危ない橋など渡らずに居て欲しい。
でも、俺の背を任せられるのはリサしか居ない。
俺は「自由」以外に何を彼女に与えられるだろうか・・・。

「ゆっくり考えよう。」
飾らない言葉が口をつく。
それは、自分にも向けられた言葉。

「二人でゆっくり考えて行こう。俺たちは、ずっとわき目も振らず走ってきたんだか ら。」

腕を緩めて顔を寄せると、リサが深い蒼の瞳を閉じる。
柔らかな感触が伝わる。


「エディは仲間はずれ?」
腕のなかでリサがそんなことを言う。

「ん?。ん〜〜〜。かわいそうだから仕事の時だけ入れてやるか。」

「・・・。エディかわいそう・・・。」
そう言いながらも笑顔なリサ。

「でも。置き抜けのコーヒーは俺だけだよ?」

「ふふ・・・ええ。」
リサの笑顔がいっそう輝く。


Routesで一番お気に入りなのがリサ。
ゲームをクリアした勢いで発作的に書いたが、何を書きたかったのか分からない。
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