エレン
銃弾が彼女を貫く。
「高宮!!!」
それでも彼女は、よろよろと奴に向かい銃を突きつける。
銃など似合わない細くしなやかな指が、引き金を引く。
「ここに居たのね。」
みんなは奥平さんのヨットでクルージングに出かけている。
バイタリティーのない僕は一人で砂浜に転がっている。
声のするほうを、手をかざしながらまぶしそうに振り返ると・・・。
白い飾り気のないワンピース姿のエレンが同じく白い日傘を傾けて立っていた。
長く艶やかな髪が海風に揺れる。
今日は、後ろ髪を上げていないようだ。
「水着、着ないんだね?」
ここへ来てから、エレンの水着姿を見ていない。
もっとも、水着姿を見たのは、例のプールでの一件だけだが・・・。
あの時は、その姿に見とれてしまって、エマ達に指示することもままならなかった。
彼女達には絶対に言えない話だ。
「わざと言っているの?。いやな人ね?」
不満そうにエレンが言う。
そういいながら、撃たれたあたり、銃痕のあたりをさするようなしぐさをする。
彼女の表情がかげる。
「ここはプライベートビーチだから気にする必要もないし・・・・。あ・・、いやそういうことではなく・・・。」
しどろもどろ・・・。でも言わなければならない。
「今でも、高宮はすごくきれいだし・・・。僕はぜんぜん気にならないし・・・。」
エレンは黙って、僕が話しを続けるのを促す。
「気にならないってのは・・・嘘だね。もっと自分が強くならなければならないと思うし、高宮のことを守りたいと思う。」
「ああっと、ビキニじゃなくて、ワンピースなら目立たないだろうし・・・。」
やめとけばいいのに最後に余計なことを言ってしまう。
エレンは僕の目をじっと見ていたが、ふっと表情からかげりが消える。
「水着のことは考えておくわ。」
そう言うと、ワンピースのすそに若干の注意を払いながら、僕の隣に腰をおろす。
「でもその前に、助けた責任はとってもらわないといけないわね。」
そういうと、彼女が僕に寄りかかる。甘い香りが鼻をくすぐる。
「まずは呼び方を何とかしてくれないと・・・。」
「分かったよ。たか・・、エレン。」
僕が照れていることを確認すると、ふふっと満足そうに彼女は微笑む。
白詰草話の女性陣で一番お気に入りだったのがエレンさん。
救済のつもり。
二人ともこんなキャラじゃないな〜。
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