香里らしさ


後は、ホームルームだけで終わる。
恒例行事の朝のマラソンと退屈な授業で気力を使い果たした俺は、自分の机に 突っ伏してひと時のまどろみの中にいた。

ふと、噂話に興じる数人の会話が耳に入った。

「うっそーーー!!!」
「まじだって!!!」

「そういえばさー、この前、○○がさー、相沢君と美坂さんが抱き合ってるの 見たっていってたけどどう思う?」

・・・・ぶっ・・・・。
まさか・・・。
あんな時間に、あんなところに俺たちの他にいた分けないだろ・・・。

「えーーー?!」
「それこそ、うそだろ?!」

「じゃー、本人に直接聞いてみようよ?」

マジ?

「ねーー、美坂さん。相沢君と抱き合ってたってほんと?」

ぐはっ・・・・。こいつ・・・、なんてことを・・・。
・・・香里・・・、ここはいつものようにスパッとクールに否定してくれ!!!。

「え・・・・・、うそ、だって、あんな時間にあんな場所に他に人なんて・・・」

あ・・あれ・・・・?。俺の期待もむなしく、動揺しまくる香里・・・。
しかも、自爆してるし・・・(T T;
どうした?。いつものおまえらしくないぞ!!!。

「もしかして、ほんとなの?」

「・・・・うそよ、・・・うそ!、うそに決まってるわ!!」

いまさら否定しても、もう遅いって・・・・(T T;

どうしたもんかと、のっそりと顔を挙げた俺と、元凶の目が合った。

・・・・・まず・・・・・い・・・。

「あ?、起きた!」
「もう一人の本人にも聞いてみよう。ねえねえ、相沢君?。」

おう!。おうおう!!。きてみやがれ!!。ズバッと否定してやる!!!。

「美坂さんと抱き合ってたってほんと?」

「おう!!。」

あれ・・・・・・?。

「やっぱほんとだったんだ・・・・。へーーー、美坂さんが相沢君とねーーーー。」
「そういえば、相沢君には名前で呼ばれてるし〜〜♪」
「ちょ・・・ちょっと・・・・・相沢君!!」

「・あーー・・もう・・・・」

注目を浴びてしまいいずらくなった香里は、席を立って教室を出ようとした。

が、そのとき担任が教室に入ってきた。

「ん?。どうかしたのか、美坂?。ホームルームはじめるぞ?」
「あ・・・、いえ・・・何でもありま・せん・・・」

歯切れの悪い返事を返しながら席につく香里。
座るとき、一度こっちを振り返った。
本人は、にらんだつもりだったのだろうが、顔を朱に染め、涙目の香里を、 俺は、可愛いと思った。

可愛い・・・・?。香里が?
美人だとは思うが・・・。
・・・まあ・・・いいか・・・。

ボーーとしている間にホームルームが終わりそうだ・・・。





礼が終わった数秒後、俺は、香里に拉致された。

「相沢君、チョッといいかしら?!」

返事をする前にすでに引きずられていた。
おこっているのか・・・・?

「祐一、どこにいくの〜〜?」

俺に聞かれても困るぞ?、名雪・・・・。




「ここは、屋上だ」

「誰に説明してるのかしら?」

・・・いいや・・・なんとなく・・・。
やっぱおこってる?

「どうしてあんなこといったのよ!!!」

「そっちが先に、自爆したんだろう・・・?」

「・・・・、だって・・・いきなりあんな・・・」

今度は、しゅんとしてしまった。
今日の香里は、表情がころころとよく変わる。
とても新鮮だし、なんか・・・

「可愛い・・・」
つい、ぽろっと・・・。

「な・・何が?」

「ん?。香里がだ」

「な・・な・・な・・・・・・」

顔が真っ赤だぞ、香里。

「・・・し・・栞に言いつけるわよ・・・?」

「何で、そこで栞がでてくるのさ?」

「だって・・・、栞とついきあって・・・」

「ないぞ」

「え?」

「べつに、栞と俺は、付き合ってないぞ」

「・・・・・、そう・・・・・て、そういう話をしてるんじゃないわ!」

口調の割にちょっとホッとしたように見えたが・・・?
「・・・、それも、振ったの香里・・・」
「どうしたんだ?、今日は?、香里らしくないぞ?」

「私らしく・・・・ね・・・・」

自嘲気味な香里・・・。
それは、あのころの香里に戻ったようで、胸が痛んだ。



ふと、何かを決意したかのように香里が、顔をこちらに向ける。

「こうなったら、デートよ!」

「は?・・・、誰と?、誰が?・・・」

「相沢君と私」

香里と俺?

「何かご不満?」

「いや、不満はないぞ、とても満足だ」
正直言って、香里からそう言うことを言われるとは思いもよらなかった。
しかし、口にした言葉に嘘はなかった。
とてもうれしく思えた。
俺は、香里のことを・・・・・。

「そう、良かった」

「私らしさというものを教えてあげるわ」

微笑みながらそう言う香里の頬は、また朱に染まっていた。


ずいぶん前に書きなぐっておいたものを引っ張り出してくる。
Kanonで一番気に入っているのが香里さん。
どんなゲーム機でもいいので、香里さんのエンディングのある移植版を出してください。
ゲーム機が手元になくとも、ゲーム機ごと購入します(ほぼ間違いなく)。
BACK