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おススメ名作劇場
〜第6回「旅情」〜

Summer time 監督…デヴィッド・リーン
脚本…H・E・ベイツ、デヴィッド・リーン
撮影…ジャック・ヒルデヤード
音楽…アレッサンドロ・チコニーニ
キャスト… キャサリン・ヘップバーン、ロッサノ・ブラッツィ
イザ・ミランダ、ダーレン・マクギャヴィン
1989年英国/ユナイテッド・アーティスト=松竹/上映時間1時間40分
(DVD=東北新社)



J/ この映画を観ていると本当に自分自身が旅行をしている気分になってくるよね。

B/ この映画の主人公、キャサリン・ヘップバーンは、オハイオ州で秘書の仕事をしていたのね。バリバリのキャリア・ウーマンだったのだろ うなというのが、彼女のテキパキとした身のこなしでよくわかるわね。仕事一筋できた彼女が、年齢を重ねふと寂しさを感じてしまう。 気づいたら、自分の友達たちはみんな結婚して子供もいる。私は果たして自分の人生を楽しんできたのだろうか…といった漠然とした不安。

J/ それで思いついたのがこの旅行なのだろうね。生まれて初めての海外旅行。ベニスに入る前にすでにロンドン、パリに行って、そこから オリエント急行に乗って、ベニスに入ってくるんだね。その旅程はタイトル・バックに描かれている絵でわかるんだね。

B/ 最初はオリエント急行の車中、向かいの席の中年のおじさんが、「ベニスなんて騒音の街だよ」なんて冷めているのに対して、彼女ときた ら、8ミリのカメラを回して興奮のしっぱなしなのね。「もうフィルム6巻使っちゃったのよ」なんてね。初めての海外旅行。そのワクワ ク感がとっても出てるのね。

J/ ベニスにオリエント急行で入ってくるというのがいいね。本来であれば、ベニスは元々が貿易の街だったので、海から入ってくるのが映画 的にはいい。街が海に向かって開かれいるんだね。だからヴィスコンティ監督の『ベニスに死す』なんて一番絵になるところから、入って くる。

B/ デヴィッド・リーン監督の映画っていうのは、往々にしてそんなところがあるのよね。『アラビアのロレンス』は砂漠から始まらないし、 『インドへの道』も決してインドからは始まらない。初めてその場所にやってきたときの感動みたいなのをとっても大切にしているような 気がするわ。だからこの映画でも、汽車に揺られてきて視界に突然海が広がる、そんな感動を大切にしているのね。

J/ 駅を降りてわけのわからぬままに、ホテルまでの水上バスに乗りこんでからの風景。キャサリン・ヘップバーンが8ミリを回すのに合わせ て、色々な風景が挿入されるのだけれど、それがまたとても魅力的。それがまたいかにも旅行者の視点という感じがする。

B/ 古い建物の上に、小さな小屋が建っていたり、上から荘厳な彫刻が見下ろしていたり。水上なのに信号機があったり。圧巻なのは赤い消防 車の船がサイレンを流しながら、猛スピードで通り過ぎていくところ。

J/ そうそう。あれがすごい。陸上の道路と同じように他の船が運河の端に寄ってね。彼女の乗る水上バスにも波が寄せてきて、大きく揺れるんだよね。水の 上にいるってことが、とても実感できる。また、あの赤い色が本当に目に鮮やかに映ってくるね。計算された演出っていうのでは、こうい う感じは出てこない。偶然って感じがする。

B/ さあ、ワクワクして船を降りて、ポーターの後についていく。ちょっとした広場を通り過ぎると、今度はどんどん狭い路地に入っていくの ね。それで段々不安になってくる。もうずいぶん長い時間船に乗ってきていたのね。それでなんだかとんでもないところに連れていかれる んじゃないかという気がしてくる。さっきまでの興奮はどこへ行ったやら。

J/ また狭い路地がとっても圧迫感があるんだよね。それで実に色々な音がしてくるんだ。旅行気分がすっかり吹っ飛んでしまいそうな、生活 の音。子供をしかる女性の声、お稽古中といった感じのピアノの音、犬の鳴き声、誰かが吹いている決してロマンチックとは言えない口笛 の音。がっかりしているのがとってもわかる。

B/ こういう体験って私たちにもあるわよね。どんどん街から遠ざかっていく時の不安。「えー、どこまで奥に連れていかれるんだろう」みた いな。やっぱり高いホテルにしておけば良かったとか、段々後悔の念まで出てきて。それでも彼女は小さな水路にベニスを見て、なんとか 納得しようとするのだけれど、まさにその瞬間すごいタイミングでもって、建物の窓から運河にゴミが放り出されるのね。

J/ もうその瞬間本当に泣きたいような表情をしているものね。(笑)でもそんな気持ちが、海外旅行で時に失敗をしている自分としては、わか り過ぎるほどわかる。

B/ 今素敵な風景を船から見てきたというのに、よりによってなんでこんなホテルってね。

J/ ところが、女主人に案内されて部屋に入ってきて窓を開けると、信じられないような風景が広がる。目の前は大パノラマ。大運河が広がっ て、そこを大きな船が入ってくる。陸地のほうを見れば、近くにサンマルコ広場のひときわ目立つ塔も見える。げんきんなもので、一辺に ここが気に入ってしまう。

B/ どんどん奥へ来てしまったように見えるのだけれど、本当はどんどんベニスの中心に向かっていたのね。鉄道の駅は実は裏玄関。海に面し たほうが表玄関だから当然といえば当然なのだけれど、やっぱりびっくりしてしまうのね。こんなところにも汽車で入ってきたことの意味 があるのかもしれないわね。

J/ もう彼女は一辺でベニスのことが好きになっちゃったね。興奮して初対面の女主人に、実はこれが自分の失った時間を取り戻す旅であるこ と。実は寂しくて、ロマンスを期待してこの街に入ってきたことなどを思わずしゃべっちゃうのがなんとも可愛らしいね。

B/ あの風景の広がりを見れば、誰でも心が開放的になるわよね。この感じはちょっと『眺めのいい部屋』にも通じるところがあるわね。

J/ まだ本題に入っていないってこの会話を読んでいて呆れている人ももしかしたらいるかと思うんで弁解しておくと、この冒頭の10分くら いのシーンがあまりにも素晴らしいからなんだね。観客をベニスとい街に引きこませるだけでなくて、彼女の心境を風景の中だけですべて 説明しちゃっている。だからついつい話したいことがいっぱいになっちゃうんだね。お許しください。

B/ この映画のひとつの魅力として、スケッチ風に入るベニスの街の風景が挙げられると思うのね。シエスタの様子がポンポンと挿入されたり する。ネコまでシエスタしているのが映されて(笑)とってもユーモラスなのね。監督自身がベニスにずいぶん魅せられたんだと思うわね。

J/ サン・マルコ広場の前にあるカフェテラスにキャサリン・ヘップバーンが座って、広場を眺めているシーンの素晴らしいこと。似顔絵書き が観光客相手に絵を描き、写真を撮ってお金を貰う伝統的なサギまがいの商売をしている人もいる。その合間をぬってカフェのボーイさん がきびきびと動いている。

B/ 素敵な装いの女性が通り過ぎるのをキャサリン・ヘップバーンが8ミリを回していると、フレームに男たちが入ってきてナンパすべく彼女 たちの後についていくのが見えるのね。それでヘンなものを撮っちゃったって慌ててカメラを止めるのが可笑しい。でも周りをふと見回す と、どこもカップルばかりでなんだか寂しくなってきてしまうのね。

J/ これが、ロッサノ・ブラッツィとの最初の出会いになる。うしろのテーブルで新聞を読んでいた彼が、そんなキャサリン・ヘップバーンに 興味をひかれるんだね。ふと目を足に落としてみると、ちょっと綺麗だなぁなんて。気づいた彼女は、ハッとするのだけれど、もう暗くな りかけているというのに、黒いサングラスをかけて、逃げるようにしてその場を去っていく。その様子がなんだかとってもうぶに見えるん だね。

B/ このシーンは、翌日も繰り返されるわね。同じ宿の宿泊人たちをお酒に誘ってみたけれど、次々と断られて仕方なく、ひとり昨日のカフェ にやってきた。昨日の彼が来ないかなぁとちょっと期待しながらね。そしたら、なんとさっき自分を断った人たちがカップルでやってきた。 彼女はここを見られては…と見栄を張って、椅子をテーブルに寄せて寝かしてしまう。

J/ 椅子を寝かす意味は、「連れの人が後から来ます」ってことだよね。

B/ そうなの。そのすぐ後にロッサノ・ブラッツイがやってくるのだけれど、椅子は倒れたままになっているから、挨拶を軽くしてそのまま去 っていってしまう。彼女元に戻すのを忘れていたのね。ハッと気づく時の彼女の悲しそうなこと。私っていつもこうなのよね…そんな声が 聞こえてくるようで、とってもせつない。

J/ この時のキャメラがまたいいんだね。遠くからロッサノの姿が近づいてくるのを彼女の人待ち顔の表情といっしょに見せる。そのまま彼女 のところに来るかと思うと、イスが目に入ったんだね。挨拶をして去っていく。その時椅子と彼女の顔がアップになって、そこからカメラ がグーと退き溶暗していく。この退いていくところが本当に切ないんだね。寂しいって感じがとってもよく出ている。

B/ その時この映画のテーマ曲「サマー・タイム・イン・ベニス」が鳴っていて、それがまたせつないわね。

J/ それでちょっと気づいたのだけれど、この曲って映画の全編にわたって繰り返し流されているのだけれど、同じ曲なのに映画の前半と後半で は、心への響き方が全然違うよね。前半ではこのシーンの他に、やっぱりひとり取り残されて寂しくなってきたところでやっぱり流れていて それが切なく聞こえてくる。後半では、彼女が恋をして幸せな気持ちでいっぱいのところに流れてきて、幸福感に溢れた曲に変わるんだね。 俄然ロマンチックになってくる。

B/ 確かに曲調が変わったわけでもないのに、気持ちが全然違うわね。よく同じ場所なのに恋をしていると、そこが今までとは違って見えるっ て言うじゃない。まさにそれなのね。同じ曲を流しつづけたことで、そんな気持ちがかえってよく出てきたのね。

J/ この映画って、即興的なシーンがとても魅力的ということをさっき言ったけれど、そうしたなにげないスケッチがちゃんと後に生きていくと いうところが非凡だよね。石畳の広場の水呑場のシーン。これなども偶然いい雰囲気のところを見つけて撮影したらしい。ここで連れの少 年に顔を洗うと気持ちいいよって言われて彼女が顔を洗う。なんだかとっても微笑ましくていい。そんな何気ないシーンなのだけれど…

B/ それはどういう風に後に繋がってくるの?

J/ 今度は運河のシーンに繋がってくる。ロサッノ・ブラッツィのお店を例によって撮影するところ。少年に荷物を持たせて、構図に集中して どんどん後ずさりしていって、運河にドボンッて落っこちてしまう。

B/ あの落ち方がいいわよね。とっても大胆で。孤を描くようになんかゆっくりと落ちていくのね。とっさに少年がカメラだけを彼女の手から 取り上げて救うのね。犬が吼えて、人々がサーッとどこからか集まってきて、野次馬のひとだかりができるてね。彼女がその場から逃げて いった後には、群集の前で今の場面を再現しているおじさんがいて、熱がこもり過ぎて本当に落ちてしまう(笑)

J/ 顔を洗った次は水に落ちた。全身びしょ濡れになっちゃった。徐々に徐々に彼女の固い殻が水に流されていくような印象がするんだね。 事実、この後彼女は2度とカメラを持ち歩かなくなるんだ。カメラっていうのは、間接的に物を見ること。どうしても、そこに居ながらも 実際は、どこか他人事のような第三者的な立場になってしまううんだね。だからカメラを持たなくなったことで、いよいよ彼女が自分の人 生を生き始めた、そんな感じが出て来るんだよ。

B/ 水に流されるって言えば、さらにもうひとつ印象的なシーンが後に出てくるわね。これもそこから繋がってきているのね。ロッサノ・ブラ ッツイとの初デートで白い花を花売りのおばさんから買ってもらう。そのせっかくの花を運河に落っことして流してしまうところ。

J/ まさにそれもそうだよね。花売りおばさんの籠の中には色々な花があるんで、その中から一輪の花を選ぶんだよね。で、その中で彼女が 選んだのが白いくちなしの花だった。なんだかとっても彼女らしい選択なんだよね。彼女の一本気で誠実な人柄がそんなところに出ている ような気がする。

B/ そうなのね。ちなみにくちなしの花の花言葉は「洗練、清潔、沈黙、とてもうれしい」なのよ。清潔なんてまさに彼女そのものだし、うれ しい気持ちいっぱいの彼女の感情にもぴったり合っているわね。

J/ なるほどね。それにこの花は彼女にとって思い出の花だったんだよね。若い頃、ダンス・パーティーにつけていったけれど、結局彼女の思 いは叶わなかったていう、淡い初恋の思い出。彼女はこの花を願いも込めて選んだのだろうね。この恋はうまく行きますようにって。

B/ そう考えると、あの花が流されてしまうっていうのは、せつな過ぎるわね。ふたりで一所懸命つかもうとするのだけれど、あと少しのところ で手は届かず、流れていってしまう。まるでこの物語を暗示しているようなのね。

J/ 実際、ある出来事がきっかけで、もしかしたらうまくいかないのでは…と悲しい気持ちになってしまうってことは日常的にもあることだけ れど、このシーンはそんな感じがとてもよく出ていたな。たかが一輪の花、けれどもふたりにとってそれの持つ意味は、それ以上の何かが あった。「思い出」「幸せ」「願い」それをつかみ損ねてしまったようなね。

B/ 白い花と言えば、もうひとつ重要な色は赤なのね。あの最初の目にも鮮やかな赤い消防車に驚きワクワクするのから始まって、彼女の ときめきの気持ちとしての赤がここというところに出てくるのね。

J/ ああ、なるほど。ロッサノ・ブラッツィと再開したのも、赤いベネチアングラスのゴブレットをショウ・ウイドウ越しに見たお陰だものね。 ショウ・ウインドウのガラス越しに映えるその赤に惹かれ、吸い寄せられるようにお店に入ってくる彼女のときめいた顔。そしたらそここ そ彼の経営するお店で、それで再会する。

B/ その赤がまぶし過ぎるというわけではなないのだけれども、わざわざ黒いサングラスをかけてお店に入ってくるのね。もちろん単に格好つ けなのよ。でもなんだか、それはまるで彼女の中の隠された情熱を自分自身見つけ、それがまぶし過ぎたかのようでもある。

J/ サングラスをつけて商品を眺めていて、「それでは見にくいでしょ。はずしたらどうですか」とロッサノ・ブラッツィに言われてハッと気 づく。これは彼によってキャサリン・ヘップバーンが、徐々に心の殻を取り外されていくというこの物語の行方を暗示しているようでも あるね。

B/ 突然の再会にドキマギしてしまって、お店を出て階段のところでつまづいてしまうのがなんとも可愛らしい。その姿もしっかりと彼に見ら れてしまってね。

J/ ホテルに帰ったあと、その偶然の再会が嬉しくって嬉しくって、アメリカの友人に、ロマンス・グレーの恋人ができたみたいな手紙を書い て嬉々としている。でもその後で、自分らしくないことに気づいてまた寂しくなっちゃうんだけれどもね。

B/ そのときに着ているドレスも確か赤いドレスだったんじゃない。

J/ そうだね。確か赤いドレスはこの時だけだよね。それでそのままの格好で、彼がまた来ないかなとサン・マルコ広場のカフェに行くんだね。 まさにときめきの赤だよね。

B/ ときめきと失望の間を右に左に大きく振幅する彼女の気持ち。積極的な彼と、嬉しいのにそんな自分の気持ちに素直になれなくて、強がっ たことはがり言っていた彼女。彼女の孤独を見ぬき、あくまでも優しく説得する彼に身をまかせる。その後偶然彼に妻がいることがわかり 、大きく失望する彼女。

J/ 「モラル」から逃れられないんだね、彼女は。それを「もったいぶり」と彼が切り捨てる。「現実を受け容れ素直になれ」心がぐらつきなが らも、そんな彼から逃げようと、建物の回廊を進み壁にぶち当たる。そして彼に身を任せる。そしてときめきの瞬間に必ず登場するこの赤 い色。その最高の瞬間こそが、あの花火に色映えるあの赤い靴だったんだ。

B/ 初めてのデートでキスをしたその翌日買った耳のついた鮮やかな赤い靴。この次のデートはと美容院に行き、新しいドレスを買い、その 靴を買うのね。その顔のときめき。

J/ 花火が打ち上げられるベニスの街それをホテルからふたり並んで見上げる。やがてベランダからふたりは部屋に入り初めて一夜を共に過ご す。この時ベランダで脱げた赤い靴がアップになるね。まるで彼女の心の壁がすっきりと消え、情熱に身を任せたかのような感じがする んだ。消防車から始まって最後の赤がこの靴のアッブ。花火の光りに照らし出されて、それはいっそう輝いて見える。すると真っ白なカー テンが静かにでも官能的に揺れるんだ。もうゾクゾクしちゃうよ。

B/ この映画って結局不倫なのだけれども、なんていうの、そういう映画にありがちな陰湿な感じがないのね。花火の一夜の翌朝、ゴンドラの 船頭さん以外は誰もいないベニスの街を歩いて帰るヘップバーン。空気が澄んでいてとっても爽やかな感じがするのね。

J/ あのシーンの爽やかさったらないね。それまで心が揺れ動きつづけていたのが一気にすっきりしてしまった。彼女の心の中はもう今までと は何かが変わったんだね。いつも電車から降りるタイミングを失っていたという彼女。迷いはなくなったんだね。

B/ その後の彼女は思い出をひとつひとつ頭の中に刻み込むように過ごして行く。一番幸せなときに…幸せに浸りながらも、その引き際をもう 思い描いていたのね。思い出のサン・マルコ広場の塔を愛しげに見つめると、鳩がいっせいに羽ばたく。その音。人々のざわめき。思い出 のあの曲。五感を働かして、すべてを吸い込もうとしているのね。

J/ 幸せが大きければ大きいほど、その幸せの中にあってもその終わりを考えてしまう。彼がすぐ横にいる。その温かさを感じながら、この時 を身体すべてに刻み込もうと彼女はしているのだろうね。なんかとってもよくわかるんだなぁ。心の動きが。『ブリジット・ジョーンズの 日記』を観たときには、自分は男だからこの映画には入りこめない部分があると感じたけれど、この映画ではなぜか彼女と一体になってし まうんだよ。

B/ 優れた映画っていうのは、「男の世界」とか「女の世界」とかの垣根がないのね。それ以上に人間としての感情に共感できてしまう。そう いうものなのだと思うわよ。

J/ この映画って元々は舞台劇なんだってね。ところがベニスという街が大変魅力的だし、この街だからこそ出来たドラマという感じがする。 風景が登場人物の感情と一体になっているんだ。そういう意味でもとっても映画的なんで、とても舞台劇だったとは想像できないね。

B/ もう、この映画の話しをしていると、いくらでも話しができてしまうわね。キャサリン・ヘップバーンがどんなに素敵でどんなに演技が 上手かとか、ラスト・シーンのことだって言いたいけれど、そこまで言うとこれから観る方に悪いし、今日はこのくらいにしておきまし ょうよ。

J/ 確かに観るたびに色々な発見がある映画だから、観た人それぞれが色々なことを感じ発見してもらいたいとも思うね。

B/ デヴィツド・リーン監督の映画というと『アラビアのロレンス』とか『ドクトル・ジバゴ』『ライアンの娘』、大作映画というイメージが あるけれど、この人の本質は『逢いびき』でありこの『旅情』であるのね。大作を作ってもこの細やかさがそのままだから、他の大作映画 とは、一線を画している。私はそんな気がしているの。この『旅情』は私の映画の鑑賞歴の中でもベストの一本なのよ。

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