2.ビデオの普及と共に消えた名画座たち
「三鷹オスカー」。ここはJR中央線三鷹駅南口徒歩1分のところ。映画館の入り口には、なぜかいつも自転車が置いてあった。
買い物帰りの主婦でも立ち寄っているのだろうか。というのも、3本立ての映画を好きな時間に1本だけ選んで見れるようにと、日替わりで
上映時間をずらすというサービス「スライド上映システム」というのがあったからである。
ここの映画館で特に印象に残っているプログラムは、サタジット・ライ特集「大樹のうた」「大地のうた」「大河のうた」の3本立て。
ウディ・アレン特集。「カメレオンマン」「カイロの紫のバラ」「サマーナイト」の3本立て。特にウディ・アレンの映画を観るにはピッタリくる
映画館だった。
破れてスプリングが出ているイス。黄ばんでしまったスクリーンのカーテン。スクリーン左手前から漂うアンモニアの臭い。(そこにあるトビラを開けると、
すぐトイレがあったのだ。その辺の席は満員の時以外は空席だった。勿論私もそこに座った事はない。)なんかそんな映画館だからこそ、目の前のスクリーンに
広がる世界に没頭できる。逆にそんなこともあった。この映画館はプログラムが充実していた事もあって、赤字ではなかったそうだが、やはり駅前の再開発によって
閉館してしまった。
大学時代、暇つぶしに行った「テアトル吉祥寺」。ここで「セント・エルモス・ファイヤー」を観て感動したっけ。自分が通っていた大学に
近かった事もあって立ち寄った「飯田橋佳作座」。「第三の男」「タクシー・ドライバー」「突然炎のごとく」「哀しみのトリスターナ」こんな名作を
ビデオではなくて、映画館でしかも安い料金で観れたのはラッキーだったな。「後楽園シネマ」。名前からもわかる通り、今はなき後楽園球場の近くにあった映画館。
「愛と青春の旅立ち」「ソフィーの選択」。これらの映画で私は、デブラ・ウィンガー、メリル・ストリープのファンになったものだ。「新宿東映ホール」。
「野性の証明」「セーラー服と機関銃」。薬師丸ひろ子の大ファンだった私にとっては忘れられない。
いずれの映画館もビデオ・レンル店が普及し、ビデオ全盛時代を向かえ閉館していって、今はもうない。今振り返えると、あの頃が名画座最期の時代だったのだ。
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