J/
恋愛映画っていうのは、必ず先に何らかの出会いがあって、そこから話が進んでいくものなのだけれど、こ
の映画は、出会いが最後にくるっていうところが大変ユニークで面白かったよ。
B/
そうなのね。現実の世界では、会った瞬間に一目ぼれ。恋がそこから始まってなんて映画みたいなことは、
ほとんどなくって、ああ、いい男がいない。どうして私にはいい男が現れないのかしらっていう繰り返しの
ほうがむしろ多いから、この映画はそんな現実にとても近いところにあるのかもしれないわ。
J/
出会わないことで、イライラさせられないのは、その描き方にあるのかもしれないね。
B/
出会うまでのプロセスに徹底したところが良かったのね。
J/
とても共感して映画を観ていたようだね。この映画の主人公の女性は、知的で美人で、男からするとちょっ
と近寄りがたいところもあるんだよ。なんか近づいてもやり込められちゃいそうでね。
B/
あら、それはあなたが、あんまりお利口さんじゃないからよ。私にはとても魅力的なヒロインだったわよ。
J/
この映画って女性には男性選びのポイントみたいなところがあると思うし、逆に男にとっては、「これをや
っては嫌われる」みたいなヒントがあるような気がする。題して「全日本お見合い協会推薦映画」(笑)
B/
男どもが集まって、お見合い広告に応募して、誰が射止めるかひとつ賭けをしようっていうわけで、ひとり
ひとり彼女と会って話をするのだけれど、これがどの男もどうしょもなくって。
J/
みんながみんな同じ決り文句を言うのが面白いね。作家の本の一節なんだけれど、意味がよくわかっていな
いのに、カッコつけで言うもんだから、すぐに浅はかさが露呈してしまってね。
B/
これは友達が言った文句がカッコ良かったから、ちょっと拝借したものなのだけれど、そうでなくて、仮に
自分が読んだ本の知識だったとしても、それがこなれていなかったら、同じ結果になってしまうと思うのね。
頭デッカチで中身のない男っていうのは、もっと困りものなのよ。彼らはまだ可愛いもん。でもあんなのす
ぐ見ぬかれちゃうものなのに。女はそんなのに引っかかるとでも思っているのかしら。
J/
きびしいお言葉。まあ、言っている意味はわかるけど。まさに主人公の元恋人の男なんかそのタイプだよな。
知識はあるし、政治的な運動を起こしているのだけれど、世間というものを何にもわかっていない。
B/
このタイトル素敵よね。『ワンダーランド駅で』「不思議の国駅で」こんな素敵な名前の駅って実際にある
のかしらね。映画の内容にもとっても合っているし。
J/
町に大きな水族館があったりして、多分空港の側に出来た新興の町なんじゃないかな。埋立地かなんかの。
「ネクスト・ストップ・ワンダーランド」朝の満員電車は、ちっとも「ワンダーランド」じゃないん
だけれどもね。(笑)
B/
あの満員電車の感じ、とっても良く雰囲気が出ていたわね。お互いが目を合わせないようにして。みんな面
白くない顔をして、隣にも無関心を装ってただ立っている。あの感じよ。
J/
特別ドラマティックな演出はないのだけれど、この自然体こそが、この映画のいいところなのかもしれない
ね。
B/
喫茶店やバーにひとりでいると、「彼女はロンリーさんで、男を捜しているのに違いない」っていう偏見も
さりげなく入っていてね。
J/
女性も大変なのだなぁ。
B/
成績も優秀で、医者にもなれたはずなのに、敢えて大学を中退して看護学校に入り、看護婦になった彼女の
キャラクターにも説得力があるのね。前の頭でっかちの彼氏なんて、いかにもそんな彼女が選んでしまいそ
うなタイプだし。
J/
彼氏を探す話になっているけれど、自分に合っている人はっていうことで、それが同時に自分探しにもなっ
ているところが、いいんだね。
B/
恋愛っていうのは、本来そういうところがあるのよね。だからいつも男で失敗する女っていうのは、往々に
して、自分自身もわかっていないケースがあるのよね。これ本当よ。
J/
この映画の主人公は、恋は運命じゃないって言いきるね。
B/
自分の生き方がポイントになる。でも結局そうは言っても、どこかに運命的な力も働いているところを見せ
るのが、この映画のいいところなの。運命に身を任せるというのではないの。ただ自分が努力してれば、
どこかで、天使の力が働くって部分もあるって言ってるのね。私はそこに共感できるのね。
J/
『スライディング・ドア』のヒロインとそこが違うところなんだよな。
B/
こういう恋愛映画って、今までありそうでなくって、よくぞ作ったって思う。監督が女性だとばかり思って
たら、男性だったので意外だった。とても女性の気持ちがわかっている人と思うわよ。
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