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第68回「リトル・ヴォイス」

リトル・ヴォイス 監督…マーク・ハーマン 、 脚本…マーク・ハーマン、ジム・カートライト
撮影…アンディ・コリンズ 、 音楽…ジョン・アルトマン
キャスト…ジェーン・ホロックス 、ユアン・マクレガー
ブレンダ・ブレッシン、マイケル・ケイン

1998年ミラマックス(英国)/上映時間1時間39分
CASTジャック&ベティ
ジャックの評価 /ベティの評価

…金かえせ!! / …いまひとつ
…まあまあ/ …オススメ
…大満足!!観なきゃソンソン


J/ 『リトル・ヴォイス』の魅力は、ひとことで言うと主役の女性の歌の魅力につきるね。

B/ 似ているだけじゃなくて、本当にうまいのよね。ビリー・ホリデーからジュディ・ガーランド、マリリン・ モンローまで。音域が広いのにも驚かされてしまうわね。

J/ 生で聞きたくなっちゃったね。目をつむったら本当にそこにジュディ・ガーランドがいるような気がすると 思うよ。日本でコンサートやってくれないかな。

B/ でもステージのシーンは結構迫力あったわよ。観客を座らせて本当のコンサートみたいにして撮影したとい うことよ。だからすっかり引き込まれてしまったわ。

J/ その辺は、さすが『ブラス!』の監督だね。こういうシーンはとにかく巧い。ライブ・ビデオの迫力がある もんね。

B/ まさにこの映画は彼女の特技がまず初めにあって、それじゃこれを活かして何かを作ろうってところから出 てきいるということで、そのシーンがこの映画の命よね。

J/ 元々は舞台劇っていうことだけれどもね。

B/ 映画にするにあたって、様々な工夫もされているわね。例えば、ジュディ・ガーランドやビリー・ホリデー を知らなくても楽しめるように、テレビでジュディのショウを流したり、レコードを聴かせたりしてたりし てね。

J/ あれは、晩年のテレビショウだったね。60年代前半の頃の。もう彼女自分の歌の歌詞を手に書いて、それを 見ながら歌っているような状態で…。

B/ 『オズの魔法使い』で大スタアになって、実力人気ともにトップにあったにも関わらず、ノイローゼになった り、アルコールに溺れたり、ボロボロになっちゃったのよね。

J/ 晩年、歌唱力とか急成長してきた娘のライザ・ミネリとの葛藤もあったんだね。そんなことないのに、自分は 落ちぶれてきたって恐怖心を持っていたんだ。薄幸の人っていうイメージがあるな。僕は大好きなんだけれど ね。

B/ 映画では、彼女の歌を物語に丁度合わせて挿入させていて、その辺がうまいのね。元の舞台劇がミュージカル だったからなのかしらね。

J/ その名残りなんだろうね。例えば「The man got away」って曲。これは元々『スタア誕生』で使われた曲な んだけれど、実にうまい使い方をしているんだね。

B/ ちょっと待ってね。ここにCDの歌詞カードがあるから。「夜は凍りつき 星は輝きを失い 風は肌を刺し わたしは年を取る それは あの人が 去ってしまったから あの人の声を聞くこともなく 壁の落書きは 思い出となり 心に描き続けた甘い夢は すべて色あせて…いまわたしは気づく 恋なんてクレイジーなもの」 確かに、これは失恋の歌なのね。でも最初のところだけ見ると、亡くなった彼女の父親への歌と置き換える ことができるわね。

J/ 階下で、母親が男を連れ込んで、この場から逃げたくなった時に歌う曲は『オズの魔法使い』の「オーバー ・ザ・レインボー」というようにね。幸せを運ぶ青い鳥は、夢の国があるという虹のむこうに飛んでいける というのに、なぜ私にはできないのってね。こういう風に歌に彼女の心情が込められているんだね。

B/ その辺が、とってもミュージカルっぽいのね。

J/ 彼女の頭が混乱した時に出てくるのは、『オズの魔法使い』のマンチキンの国の人たちの歌「黄色いレンガの 道を行こう」やセリフ。まるであちらの世界へ行ってしまったようで。この辺もうまいなぁと。

B/ 彼女にとっては、自分の部屋こそが「夢の場所」ね。そこにいれば父親に守られているような気持ちがする のね。そこには、父親の愛したレコードがあり、父親の写真がありいつも彼女を優しくみつめているから。

J/ まあ、逆に言えばそこから抜け出さない限り、彼女には前進がないということなんだね。

B/ でも母親は彼女のことを本当に愛してないのね。なぜなら自分が嫌っていた夫に娘があまりにも似ているか ら。自分の不運を全部娘のせいにしてしまっているのね。自分の娘をL.Vなんて呼び方はしないわね。と っても嫌な女性なんだけれど、考えてみればこれほど哀れなことはない。

J/ L.Vリトル・ボイスを優しい声と捉える、ユアン・マクレガーの出現は、彼女にとっては大きかったね。 捉え方で物事は、そんな風に変わってくる。とっても優しい言葉だったな。

B/ もっとも、そういう彼自身も、鳩にしか興味のないような男で、どっか歪んでいるんだけれど、そんな彼だ からこそ彼女に興味が持てたんでしょうね。

J/ 彼女に小鳥のようなイメージを抱いたんだろうね。籠に閉じ込められて震えている小さな小鳥みたいなね。

B/ 舞台版では、彼の役は舞台の照明役ってことだったそうなのだけれど、「鳩に興味のある男」っていう風に 変えたのは、かえって彼女の小鳥的なイメージが強められていて成功しているわね。

J/ 彼の大切にしている迷子の伝書鳩と、彼女のイメージが完全にだぶってくるものね。伝書鳩のイメージは舞 台ではやりにくいと思うけれど、映画では青い空と鳩の姿をそのまま見せられるから、イメージに広がりが でてくるよね。映画ならではの設定だと思う。

B/ ただ惜しむらくは、この映画、ストーリーが暗すぎるわね。元々がミュージカル用に作られていたストーリ ーをシリアスドラマにしてしまったからしょうがないのかもしれないけれど。

J/ 確かにミュージカルだと、重いストーリーもサラッと見れるとこあるね。『シカゴ』にしたって刑務所の とってもヘヴィな話なんだけれど、そんなに重く感じなかったしね。ショウの部分が大きいからなのかな。

B/ 私はバランスの問題だと思うのね。話自体は、決して納得のいかないものではないのよ。ただ歌のシーンが あんまり楽しいから、それと較べてお話の重さが余計際立ってしまうのね。だからもうちょっと軽いタッチ にしても良かったのじゃないかしら。

J/ ただ、逆にマイケル・ケインの運のないマネージャーの話は、とっても膨らみがあって良かったな。これだ けでひとつの映画が出来てしまいそうな感じだったね。

B/ マイケル・ケインがとにかく巧いのね。L.Vを舞台に出演させようと説得するシーンのいやらしさ。冷た い目で彼女が心を動かされるであろうことを、いかにも温かそうに、親しげに話しかけるその演技の巧さ。

J/ 運のない男の虚勢や、悲しみもとってもよく出ていたよね。横糸の話なのにとても心を動かされてしまった。

B/ あのマイケル・ケインが歌まで披露する熱演ぶりで。あのやけくそ感がとっても良かったわ。私はそれだけ でこの映画のサントラが欲しくなってしまった。どなたか、日本版のサントラが出ていないか知っている人 いないかしら。

J/ うーん、暗すぎるとか言ってたけれど、やっぱり話してて思うに僕は基本的にはこの映画やっぱり好きだな ぁ。マイケル・ケインの話もいいし、それにとっても優しい気持ちのある映画だし。ラストもいい。なにか が心に残る映画なんだよね。

B/ ラストもいいし、映画が終わった後に、「ショウほど素敵な商売はない」の音楽が流れるのね。それを聴く と、もうそれで映画を観に来て良かったなぁって気持ちになっちゃうの。だから私も好きな映画なのよ。 やっぱり☆4つは挙げたくなっちゃうわよね。

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