J/
ついに観てきました。待ちに待った『スター・ウォーズ』の最新作を!
B/
どうだった?『エピソード1』。あなた、とっても楽しみにしてたじゃない?
今日はJackにいろいろ教えてもらいたいと思っているのよ。
J/
う〜ん、それがねぇ。ワクワクしたのは、最初のタイトルだけだったんだ。
B/
ええ!?どうして?私は、特別愛着があるわけじゃないから、まぁ
話は簡単に済んじゃうけど、Jackは前作3本とも一通りそらんじられるくらいの
ファンじゃなかったかしら。
J/
そうなんだけど…なんだか、全体的に無機質な感じがしちゃってね。
キャラクターにしても、兵士にしてもCGを使うのはいいんだけど、
完璧すぎて、親しみをまったく感じなかった。
B/
確かに前シリーズの魅力的なアウトローたち。たとえば、ハン・ソロ、胡散臭い賞金稼ぎたち、
西部劇の脇役を思わせる、荒くれ者の雰囲気、人間味が彼らにはあったわね。あと普段は心優しいけど、
チェスに負けそうになると暴れだし、凶暴性を発揮するウーキーのキャラクターのように
愛着をもてる存在がない。
J/
ウーキーってチューバッカのことでしょ。
そうそう、そうなんだよ。それに前シリーズでは間抜けな兵士が必ずいたんだよ。
フォースの力に押され、目の前にいるルークたち一行を見逃してしまったり、
ルークたちの計略にまんまとはまってしまったり。そんなところにどことなくユーモアがあった。
でも、今度の敵兵はすべてロボットだから、主人公たちはそんな知恵を使う暇はないわけ。
目の前の敵をバッタバッタと切り倒すしか手立てがない。
それがなんだかアクション物のテレビ・ゲームのように一本調子に僕には感じられちゃった。
B/
あとさ、今回新しく作られたキャラクターにも魅力がないと思わない?
たとえば。グンガン人のジャー・ジャーってのがいたわよね。
彼のキャラクターっていうのは、ふた昔前に描かれた黒人の典型的な
キャラクターっぽいの。ドジで臆病で怠け者で…。
J/
あとグンガン人が「"ユー"、"ミー"たちのことバカにしない。信用する」ってセリフが
あったけど、あれもインディアン差別問題が表面化する以前の西部劇によく出てくる
インディアンの酋長が言うセリフなんだよね。
前作だったら、「ルーカスは西部劇が好きなんだな」ってそれもおもしろかったんだけど、
キャラクターに厚みがないために、それにスッと入っていけない。
こういう枝葉末節が気になってしまうってことは、やっぱりこの映画の世界を
楽しめなかったんだなって思うよ。
B/
あんまりクサしてもしょうがないから、この映画でいいところはなかったの?
J/
もちろん、前シリーズの熱烈なファンにとっては、充分に楽しめるところもあったさ。
例えば、C-3POがどういう経緯で作られたロボットだったか、とか、
R2-D2がどうして共和国軍と運命を共にすることとなったっていうことがわかるからね。
もちろんオビワン・ケノービも活躍するし、ジェダイの騎士団の面々の姿も拝める。
もっとも、彼らは何もしないけれどね。(苦笑)
B/
話は横道それちゃうけど、オビワン役のユアン・マクレガーは頑張ってたわね。
アレック・ギネスのしゃべり方を意識して、セリフを言ってたのが伝わってきたわ。
独特じゃない?アレック・ギネスのオビワンのセリフ回しってさ。
ところで、初めて『スター・ウォーズ』を観る人たちにとっては、どうなのかしら?
J/
そうだなぁ…知らない人にとっては、そんな謎解きは全く意味がないと思うな。
かといって、新キャラクターの貧弱さが物語を平板にしてしまっていると思うから、
僕らが初めて『スター・ウォーズ』にであった時のインパクトはないと思うよ。
最初の『スター・ウォーズ』。タイトルのあとに巨大な戦艦の姿が長々と映し出される。追われる小さな
宇宙船の中でヨロヨロと歩く2体のロボット。相棒に文句ばかりまくしたてるヘンなロボットC-3PO。突然
の敵の来襲に、決死の戦いを挑む戦闘員たちは、無残にも床に倒れていく。硝煙の中から姿を現す不気
味なマスク、黒ずくめの衣装に身を固めたダース・ベイダーの登場…。
B/
わかった、わかったわ。『スターウォーズ』は何度も観せられたから、もういいわ私は。(笑)
J/
あと悪役のダース・モールが弱すぎたなぁ。存在感がまるでない…。
B/
ああ、あの赤と黒でくまどりした人ねぇ。あの人チャンバラやっておしまいだったわね。(笑)
せめて、悪知恵働かせて、ギリギリまでジェダイの騎士を追いつめてほしかったわ。
ワクワク、ドキドキのラスト30分〜〜♪みたいなね。
ハリウッドっていうのは、こういうのが得意じゃなかったからしらねぇ。
J/
前三作にはそれがあったんだよ。1分2分を争うような危機一髪的な状況が。今回の作品にはその危機感が
ない。Bettyの言うように悪知恵を使ったトラップもないから、意外に戦略どおりにトントンと話が進んでい
っちゃうんだ。その知恵のない最たるやつがダース・モールなんだ。彼は肉体しか使っていない(笑)
B/
ふんふん。これじゃ見掛け倒しってわけね。
J/
そう、彼がただ単に皇帝がのちにダース・ベイダーを必要とする理由づけ、
きっかけとしての存在にしかなっていない。
B/
やっぱり、未来を先に作ってしまって、あとから過去を描いていくっていうのは、
無理があるのかしら?
J/
そう、いろんな意味で足枷になっていることも確かだとう思うよ。
ストーリー自体が、あまりにもルークとアナキンとの対比ということに捕らわれ過ぎて、
オリジナリティに欠けている。
B/
たとえば、どんなところが?
J/
例えば、ドロイドを操作する指令船を攻撃するシーンとデス・スターを攻撃するシーンは、
『ニュー・ホープ』とそのまま重なるし、ジェダイの騎士との出会い、
肉親との別れについても対比的に描かれてるでしょ。
前シリーズを踏まえてストーリー作りをしているから、いちいち理屈づけをしなくてはならないことが、
大きな足枷になってしまっているよね。
B/
その逸話がみんな中途半端な感じだわよね、なんだか。
J/
この作品の存在は、前シリーズとの橋渡し、これからのストーリーを展開させるための
予告編という感じがする。
B/
冗談じゃないわよ、予告編だなんて!私怒っちゃうわよ、ホントに。
貴重な時間とお金を使って、映画館に並んだのにぃ〜。
J/
まあまあ、そう怒らないで。(だからいっしょに観に行きたくなかったんだこの映画…^^;)
ちょっと話題は変わるけど、特撮技術は格段に進歩していたね。
B/
そうねぇ、まるでディズニーのアニメーション観ているみたいだったわ。
アニメと実写の違いはあるけれど、気持ち悪いくらい精巧だったわね。
J/
都市のスケールの大きさは目を見張るものがあるし、群集の多さには圧倒される。
議会のスケールの大きさもすごい。小さい無数のテーブルに座る人々が動いている感じがする。
都市にある巨大な像には圧倒される。
B/
あのレースのシーンもスゴい迫力だったわね。『ベン・ハー』の馬車競争のシーンみたいだった。
J/
でもその精巧さが、スクリーンをとっても無機質なかんじにしてなかった?
ジャバ・ザ・ハットの宮殿のような猥雑さがこの映画にはないよね。
狭苦しい空間での暑苦しいモサたちの臭ってきそうな空気が、
空間の広がりと引き換えに失われてしまったような気がして僕はさびしかった。
B/
コンピュータの進歩で、映画作家は確かに自分のイメージを最大限表現できるようになったし、
人間が演じる代りにコンピュータが迫力ある戦闘を演じてくれるしね。
J/
極端な話、俳優たちがいなくても、映画は完成させることもできる。気に入らなければ、撮りなおす労力をせずにキー・ボードをはたけば、思い通りに登
場人物の位置を変えることもできる。この映画は、それが現実のものとなったことを認識させてくれた
一本だね。
B/
そうそう、昔みたいに制作費を気にしながら、晴れの日を待ったり、台風を待ったりしなくて
もいいんだからね。でもさ、『ハムナプトラ』っておチャメな映画があったけど、
CGが作り出すやっぱり砂漠の蜃気楼や、朝日が昇る瞬間の美しい砂漠の風景は、
『アラビアのロレンス』の足元にも及ばなかったわ。まっ、比べる方がまちがっているけど。(笑)
J/
やっぱり映画を作るのは、CGじゃないんだよ。
ジョージ・ルーカスのこの分野での功績は大きいけれど、それに溺れては良い映画はできない
ことを皮肉にもこの映画でよーくわかった。
映画には技術だけではなく、愛着の湧くキャラクター、そんなキャラクター同士の
機知に富んだ駆け引き、もっと言えば人の体温が最も大切であることを再認識させ
てくれたよ、残念なことにね。
B/
人間がCGを引きたてる道具ではいけない…そういうことね。
自分が作りたいモノを自由に作れるようになったルーカス監督、
それがこの程度か…とちょっとガッカリしたわ、私。
やってる演出は20年前といっしょだしねぇ。
ただの"CGおタク"なんだもの、これじゃ。
J/
そこまで言わなくっても…。でも、傲慢さは感じられたね。
ルーカスの唯我独尊映画って言ってた人がいたけど、それは否定できない事実だよ。
B/
まあ、『スター・ウォーズ』ファンのJackがここまで言うのもツラいことだわね。
J/
………。
B/
でもさ、しっかりあの世界を楽しめた人たちもたくさんいるところを見ると、
私たちも年をとってしまったのかしら。なんかついて行けなかったわ、あのノリに。
J/
そうは思わないしも思いたくないな、僕は。
『スター・ウォーズ』は年齢に関係なく楽しめるロマンがある映画だと思っているからね。
次回作に期待しよう、次回作に!!
B/
はいはい、わかりました。でもホントに好きなのねぇ、あなたも。(苦笑)
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