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第54回「奇蹟の輝き」

エネミーポスター 監督…ヴィンセント・ウォード 、 脚本…ロン・バス
撮影…エドゥアルド・セラ 、 音楽…マイケル・ケイメン
キャスト…ロビン・ウィリアムズ、アナベラ・シオラ
マックス・フォン・シドー、キューバ・グッティング・ジュニア

1998年ポリグラム/上映時間1時間54分
CASTジャック&ベティ
ジャックの評価 /ベティの評価

…金かえせ!! / …いまひとつ
…まあまあ/ …オススメ
…大満足!!観なきゃソンソン


J/ 本年度アカデミー賞特殊視覚効果賞を受賞したのが、本作品『奇蹟の輝き』ということで、この映画の一番 の興味は、天国と地獄をどう映像化したかということにあったのだけれど、どうだった。

B/ 今までの天国の映像って、例えば『天国からきたチャンピオン』みたいに雲の上の世界にスーツを着た天使が いてとか、あんまり視覚的に面白いものはなかったのね。この映画はまさにコンピュータ・グラフィックス の恩恵もあって、はじめて魅力あふれる映像を作りあげることができたのじゃないかしら。

J/ 特に天国の世界が美しかったね。

B/ 美しいけれど、西洋絵画の世界で描かれつづけてきた天国の世界とは違うのね。天国の門があって、天使が 迎えてくれる。緑の園には清い川が流れ、幸せに満ち溢れた世界ってやつ。

J/ 死んだ人が自分の姿を見つめたり、自分のお葬式を目撃したりするあたりは、「臨死体験」などに出てくる 通りだけれど、迎えてくれるのは美しい姿の天使でもなく、ましてやニコラス・ケージのような天使でもな い。(笑)自分の知り合い。しかもすでに亡くなった人なんだね。大学時代の恩師か何か。

B/ 赤や黄色や紫の花が咲き乱れる、スイスの山。湖は真っ青な水を満面にたたえ、そのむこうには夫婦で夢み た小さな家が建っている。光が溢れ、美しい色に満ちたこの世界。天国とはいっても、これは彼が生前夢に 見ていた世界そのものなのね。

J/ 草をつかもうとすると、手が絵の具でべっとりとする。これ実は奥さんが描いた絵の世界なんだね。

B/ 天国と地獄は人の精神世界の中にあるということなのかしら。自分が見たいものが、見れる。鳥が飛んでい るところが見たいと願えば、すぐに空には白い鳥が現れる。これが天国だと。

J/ 伝統的なキリスト教的な価値観にとらわれていないところが、自分にもわかりやすくって良かったな。

B/ だから地獄も、生前の精神世界を反映してるのね。漆黒の暗闇の世界。稲妻が轟き、苦しみ嘆く死者たちが、 湖でもがく。しかし、これがよく観ると、先ほどの世界と同じ世界。道をたどれば、二人の夢の家も建って いる。見るも無残に朽ち果ててはいるけれど。

J/ 永劫に燃えつづける地獄の炎。悪魔に飲み込まれる人。罪人にはその罪に応じて、それぞれの残酷な運命に 顔を歪める。こういう西洋絵画の地獄絵図を期待して見にいくと、見事に裏切られるけれど(笑)映画は、あ くまでも地獄もまた、個人の精神世界の反映ととらえているんだね。だからそういう描写になったんだ。

B/ 主人公が先に亡くなった子供たちを探すのだけれども、どうしても見つからない。どうしてみつからないの かというと、生前の見かけとは違っているからなのね。あの世は魂だけだから、己の先入観を捨てて、素直 にその魂だけを見つめなければ、わからないというのね。

J/ 物事の本質が見極められるかどうか。かたくなに自分の殻に閉じこもることなく、人が差し伸べる暖かい手 を身近に感じ取ることができるかどうかってことだね。

B/ その逆もあるわね。自分を押し付けることなく、人に優しく接してあげることができるかどうか。

J/ この映画あの世の話になっているけれど、これはどちらかというと、今生きているこの世界での生き方につ いて描いた作品なんじゃないかって気がするんだよ。

B/ 自分の殻に閉じこもるんじゃなくて、人を素直に受け容れることができる人は、精神的な幸せを享受できる。 できない人は、ひとり冷たい暗い部屋で嘆き悲しみ、一生を終わるみたいなね。

J/ 天国と地獄は案外身近なところにあるのかもしれないね。その辺よくできてるよね。

B/ けれどこの映画、私は前向きな結末はすごくいいと思うのだけれど、ロビン・ウィリアムスは、なぜまた医者なの かしら。この間観た『パッチ・アダムス』も医者だったし、去年やった『グッド・ウィル・ハンティング』 も、『レナードの朝』もみんな医者なのよー。どれを観てもおんなじ人に見えちゃって、あの泣き笑い…私 はもういいわって感じがしてしまう。それがマイナス。

J/ きっと「精神異常者はクリストファー・ウォーケン、医者の役ならロビン・ウィリアムス」ってハリウッド の掟があるんだよ。(笑)

B/ じゃ、ヤク中の悪役は、ゲーリー・オールドマンね。

J/ まあ、そんなところかもしれないね。

B/ この映画は現世の部分があっという間に終わっちゃって、その後の大半は天国と地獄の世界が描かれるのだ けれど、現世に対する主人公の思い入れの部分がわかりにくいこともマイナスだったわ。

J/ 生前の出来事は、あちらの世界に行ってから回想するという形になっているんだけれど、主人公の心の動き がわかりにくい部分もあるね。案外感情移入できないんだよね。

B/ 回想形式ということであれば、私には、ロマン・ポランスキーが天国の門の番人を演じた『記憶の扉』のほ うが、形としては面白かったな。

J/ ドラマ的に難しいところがあったろうね。でも回想形式にしないということは、『ジョー・ブラックをよろ しく』みたいな長い映画になることを意味するからね。僕は結末の前向きさと、映像の美しさでこの映画は 良しとするよ。

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