J/
『オーシャンズ11』は、今流行り?のリメイク映画なんで、『オーシャンと11人の仲間』と比較しながら今日は話をしていきたいと思
う。っていうのは、昔の映画と今の映画を比較する上でも丁度いいサンプルになりそうなんでね。どちらもスター映画だし。
B/
まずはっきり言えるのはテンポが違うということかしらね。『オーシャンと11人の仲間』ははっきり言うとテンポは非常に悪い。特に前
半はモタモタしているから、今の観客には退屈になっちゃうのじゃないかしら。
J/
今の映画はテンポだけはいいから、やっぱりその辺で古臭さというのはあるね。なんか緩い。その点でリメイクの余地ありと判断されたの
だろうね。
B/
タイトルなんかは、旧作のほうが洒落てて面白いのね。スロットが出てきて、リーチがかかり、最後のドラムにスタッフの名前が出てきて
大ハズレになるみたいなのがあって、とっても楽しい。遊び心がある。
J/
昔の映画っていうのは、タイトルが凝っていたからね。今はタイトルにこだわる映画って少なくなったような気がするね。『モンスターズ・
インク』はちょっと楽しかったけれど。
B/
『オーシャンと11人の仲間』っていうのは、元空挺部隊の仲間たちが、久しぶりに集まって何かドデカイことをやろうっていうことで、
ラスベガスに乗り込むのね。それで仲間意識っていうのがとっても出ている。会った瞬間から「いやー、久しぶり」っていう感じなので、
一体感がある。元々がラスベガスのショウに出ていたシナトラとその友人たちが、せっかくだからなんかやろうって楽しみ半分で作った
映画なんだけれど、そうした感じがとても良く出ていて、映画の設定にうまくはまっているのね。
J/
それに較べると『オーシャンズ11』はドライだね。まあさすがに湾岸戦争の同じ部隊とかいう設定は無理だから、いっそのことプロの
集団にしようってことになったのだろうけれどね。ブラピとジョージ・クルーニー、爆弾のプロのドン・チードル、変装の達人にして
詐欺師のカール・ライナー、カード・ディーラーのバーニー・マックこの辺は旧知の仲みたいなのだけれど、あとはスカウトしていく。
『七人の侍』みたいに。
B/
そうやっていくと、やっぱり11人は多すぎるよね。どうしても暇そうにしている人が出てくる(笑)普通七人でも目立たない人が一人は
出てくるくらいだから無理もないわね。
J/
旧作でも中心となる人は、シナトラ、ディーン・マーティン、サミー・デイビス・ジュニア、ピーター・ローフォード、ジョーイ・ビショッ
プ、ヘンリー・シルバとか一部の人たちなんだけれど、あの映画では5つのホテルを同時に襲うという計画上、どうしても11人必要だっ
たというので、納得がいくんだね。決して暇そうにしている人はいない(笑)
B/
それと、プロの集団にはとても見えない。『スコア』のロバート・デ・ニーロや、『エネミー・オブ・アメリカ』のジーン・ハックマンみ
たいな職人的なプロがいないというのが、非常に私には物足りなかったわ。強いて言えばカール・ライナーは良かったけれど…
J/
プロの美学みたいなのが、見えてこないんだよね。その点で所詮スター映画かなって思ってしまう。旧作はもう最初からスター映画って割り
切って、アマチュアの集団としたところが、実はうまいところだった。
B/
まあ、そうは言っても元軍隊の同僚とできない以上、プロという設定にするしかないしねー。11人という人数にしても、非常に無理して
いるのが見えてきてしまうのね。これではなんでリメイクにしたのかわからなくなってきてしまう。別のタイトルの違った映画にしたら、
そうした制約がなくなって作りやすかったのではと思ってしまうのね。
J/
いっそのこと『ミッション・インポッシブル』の泥棒版っていう風に新しい映画として作ってればね。
B/
『オーシャンと11人の仲間』に囚われずに、新しい泥棒映画としてということね。
J/
それにしても、『オーシャンズ11』っていうのは、いい意味でも悪い意味でも今風の映画だよね。遊び心というのがまったくない。なん
せラスベガスが舞台なんだから、こちらとしてはスロットマシーンをもっとよく見せてほしいし、カードの手さばきというのも見てみたい
し、ショウのさわりくらい見てみたい!
B/
一応ないわけではないのだけれどもね。ブラッド・ピットの登場シーンで『フラッシュ・ダンス』風の踊子たちがチラリと写るのね。それ
と彼が素人さんに、ポーカーを教えているのね。でも旧作ではなんてったって、ディーン・マーティンのショウが見れるというオマケが
ついているのだから、到底及ばないわね。
J/
アラン・ドロンのカードさばき、カーク・ダグラスのカードさばきくらいの技も見たかったな。僕は『OK牧場の決闘』のカーク・ダグラ
スのカードさばきがカッコ良くて、翌日トランプを買いに走ったことがある。でもこの映画のブラピを見ても全然そんな気は起きないよ。
B/
確かに旧作は芸達者な人が揃っているから、色々なことができたのね。なにもシナトラがまったく歌わなくったって、サミー・デイビス・
ジュニアもいる!
J/
まあ、映画の趣旨が違うから最初からそんなのは期待していなかったのだけれど。
B/
今の映画っていうのは、クライマックスに向かってただ突っ走るのみなのね。盗みのシーンの迫力は旧作と今度のを較べると、そりゃ今の
ほうが断然迫力があるとは思うのよ。そういうのはとても進歩している。でもそれだけじゃ何かが物足りないのね。
J/
『オーシャンと11人の仲間』は確かにかったるいし、決して出来のいい映画とは思わない。今度のほうがまとまりとしては上だとは思う。
けれども、ちょっとした寄り道に実はたくさんの楽しみがつまっているんだよね。
B/
シャーリー・マクレーンがほんのワン・シーン出てきてビックリしたのだけれど、それがまたものすごく可笑しいのね。
J/
それと、本当にいいところで、ジョージ・ラフトが出てきたり、レッド・スケルトンが出てきて場面をさらっていったりする。ほんのワン
・シーンのゲスト出演。けれどもタイトルのところで彼らが出てくるというのは知らされているから、観客としては一体どこで出てくるの
だろうってワクワクしちゃうんだよね。
B/
少々寄り道してでも観客を楽しませられればいいじゃないかみたいな、エンータテインメントの精神みたいなのが徹底しているのよね。
今の映画とはエンターテインメントなりが違う。洒落っ気が違うのね。今は逆に言えば余裕がないのかもしれないけれど…
J/
コメディなんかだと、どうでもいいことにこだわって見せたりとかすることがあるから、やろうと思えばできると思うんだよね。なぜか
アクション映画ということになると、そういう部分が欠落してひたすら突っ走らなきゃならないみたいな形ができてしまっているような。
B/
でもさぁ、ソダーバーグ監督って『イギリスから来た男』では、ピーター・フォンダやテレンス・スタンプの若い頃のイメージと映画の登
場人物たちの境遇をだぶらせたりと、遊び心がいっぱいだったじゃない。なのにねぇ。
J/
これは意識して、今風の映画にしているでしょう。確信犯だよ、絶対。『オーシャンズ11』って実はソダーバーグ監督のおごりなんじゃ
ないかなって、僕には思えるんだ。「私はこんな映画だって作れるし、ヒット作だってワケなく作れる。芸術的な映画だけじゃないんだよ」
っていう。
B/
そう考えちゃうと、なんかとってもイヤラシイ感じがするわね。彼の映画には時々タカビーな部分を感じることは確かにあったけれど。
J/
コーエン兄弟のように映画が好きでしようがないんだーっていって色々なジャンルの映画を作っているといったのとは違うような気がする
んだ。バリー・レビンソンみたいな職人ともちょっと違うような気がする。「私は頭がいいんだ」みたいなのがどこかにあるような気が
して。
B/
ソダーバーグ監督らしからぬこの映画で逆に彼の本性見たりってとこかしらね。
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