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"西部劇"という名称が聞かれなくなってから久しい。
ビデオやDVDの棚でも、『赤い河』や『ワイルド・バンチ』などは、 アクションの棚に入っており、
映画界でもコスチューム劇やアメリカの 歴史物と言われているらしい。
そんな名称も消えてしまった様なジャンルの作品が、
2004年は何と!4本も公開されたのだ!!
これはひとつ老保安官デュークとしては、ロッキングチェアから立ち上がり、
杖をペンに持ち替えて一筆書かねばなるまいて……。



1.『コールド・マウンテン』(2003年)…作品と監督の相性に"???"
監督: アンソニー・ミンゲラ
出演: ジュード・ロウ、ニコール・キッドマン、レニー・ゼルウィガー
ドナルド・サザーランド、ナタリー・ポートマン、フィリップ・シーモア・ホフマン他

この作品は、西部劇の中でも南北戦争に類するジャンルの物で、 運命の相手と戦争によって引き裂かれた二人が、苦労を重ねて再開する、 というラブストーリー。
主演にニコール・キッドマン、ジュード・ロウの美男美女を配し、 21世紀の『風と共に去りぬ』を再現しようとした作品であったが、 残念ながら、目指した作品には遠く及ばぬ出来になってしまった。
原因の一つは。監督のアンソニー・ミンゲラの起用。 彼の淡々とした作品の描き方は、もっとドラマチックに展開される物語に そぐわなかったのではないだろうか?ジュード君も最後の決闘以外は あまり見せ場もなく、キッドマンはただ綺麗なだけで、レニー・ゼルウィガー だけが水を得た魚の様に生き生きと役を演じ切っていた。 (アカデミー助演女優賞は当然といえる)


2.『ミッシング』(2003年)…思いがけない上物ウエスタン!!
監督: ロン・ハワード
出演: トミー・リー・ジョーンズ、ケイト・ブランシェット、エヴァン・レイチェル・ウッド、 ジェナ・ボイド、ヴァル・キルマー他

シャンテ・シネで、一週間の上映という不遇の扱いを受けた作品。 (その後、スカラ座2に劇場が変わって、二週間上映)
これが思わぬ拾い物の上質ウエスタン!!
お話は、不良ネイティブ(インディアン)たちに娘をさらわれた ケイト・ブランシェットが、ダメな親父と父子の交流を深め、 和解しながら他のグループ(種族)の若きリーダー(酋長)と共に 悪党どもを追跡し、無事娘を取り戻すというシンプルな筋立て。 これをロン・ハワード監督が、骨太の演出で、しっかりと西部劇の世界を 描いている。(そういえば、前作『遥かなる大地』も、なかなか出来も良かった)
トミー・リー・ジョーンズのダメ親父ぶれもサマになっており、 見応えのある作品に、久々に満足感を味わった。


3.『ワイルド・レンジ/最後の銃撃』(2003年)…久々のトレイル物の期待も空しく…
製作・監督: ケヴィン・コスナー
出演: ロバート・デュヴァル、ケヴィン・コスナー、アネット・ベニング、マイケル・ガンボン他

この作品も、久々にトレイル(牛追い)物を題材にしていると聞き、 期待をして観に行ったのだが……。
お話は、牛を放牧しながら旅を続けるカウボーイたちが、 ある町に立ち寄ったために悪徳牧場主とその手下たちに嫌がらせを受け、 仲間を殺されたのをきっかけとして、命を賭けて悪党どもに立ち向かっていく、 というオーソドックスな筋立てになっている。
ケヴィン・コスナーは、監督も出演もしているが、珍しく、主演はロバート・デュボルに譲り、 自身は脇で抑えた演技を試みている。
開巻、草原の彼方かせチャック・ワゴンとカウボーイが現れるシーンから、 「これはなかなか良い作品が出来上がったのかな?」と思っていたのだが…。 お話が進むうちにケヴィン君の演技も抑えきれなくなり、「やっぱり……」、と 変に納得してしまう展開に。(苦笑)
作品は決して悪くはないのに、とにかく長い!(2時間20分)
よく言えば丁寧だが、悪く言うと不要なカットが多い。特に最後の銃撃戦は20分も 必要なく、10分程度で充分だと思う。またこの作品の展開では、ケヴィン・コスナーの役は、 最後に死んだ方が物語的には締まると思うのは私だけだろうか?


4.『アラモ』(2003年)…アラモ砦で戦った連中は犬死か???
監督:ジョン・リー・ハンコック
出演:デニス・クエイド、ビリー・ボブ・ソーントン、ジェイソン・パトリック、 パトリック・ウィルソン、エミリオ・エチェバリア、ジョルディ・モリャ他

本来ならこの作品こそ"歴史劇"で、西部劇のジャンルに入らないのだが、 あのジョン・ウェイン監督・主演の『アラモ』も西部劇のジャンルに入っているので、 今回は評に加えることにする。
主演はデニス・クエイド(サム・ヒューストン)、ビリー・ボブ・ソーントン(デイヴィ・クロケット)、 ジェイソン・パトリック(ジム・ボウイ)という 名優を配して、ジョン・ウェインの『アラモ』から44年の歳月を経て製作された 作品に、否が応でも期待した作品だったのだが……。 見事に期待を裏切られてしまった〜〜。

前作と同じ題材であれば、比較されるのは世の常。そこで前作と比較しながら作品の評を 行っていくことにする。
前作では、デイヴィ・クロケット始め、西部の伝説の英雄たちが、アラモの砦に集結して、 若き指揮官トラビス大佐の下で、対立しながらもテキサス独立の礎になる為、メキシコ軍と 戦い、玉砕していったのに対し、今作品では、その話にサム・ヒューストン将軍も絡み、 アラモの砦玉砕後、ヒューストン将軍が、メキシコ軍司令官サンタアナ将軍を捕らえるまでを 描いている。
こういったお話の切り口の違いだけではなく、今作では、アラモの砦に集結した"伝説の英雄たち"が、 リアルに人間臭く描かれていたのが印象に残った。

そこで、この作品の評になる訳だが、結論から言うと、残念ながら ジョン・ウェイン版の『アラモ』の出来の良さを再認識する事となってしまった、ということ。
(*註)ニューシネマタッチで 描いていたようだが、肝心要の"アラモの砦を死守せざるを得ない理由"が、 明確に描かれていなし、サンタアナ将軍率いるメキシコの軍隊も、メキシコ領に入植した アメリカ人の中の不穏分子を、ただ排除しに来ただけなのである。
さてこれには困った!(これでは砦で戦った人々は犬死にではないか!!)
さらに、勢いに乗ったサンタアナ軍が、ヒューストン将軍を追い詰めていく。 必死に追跡をかわしながら反撃の作戦を考えるヒューストン将軍が、偶然見つけた草原で、 草原を利用した反撃作戦を思いつき、見事敵将サンタアナを捉えて、アメリカの勝利!というお粗末な幕切れ。
はてさて、この作品の製作意図は、伝説英雄否定なのか?何だったのか、観ている私には 理解できない作品になってしまった。

*管理人註…60年代後半から70年代前半にかけて作られた映画のスタイル。 アンチ・ヒーロー、リアリズム、独特な音楽効果が特徴。代表作品は、『イージー・ライダー』『卒業』『俺たちに明日はない』などなど。


上記の四作品に共通することは…。
『ミッシング』でも書いたが、皆2時間以上の長尺作品であると言う事。
今の流行かもしれないが、長ければ長いほど良いということでもあるまいに!


おまけ.『荒野の七人』〜ニューリマスター版〜(1960年)
この作品も、昔散々観たはずなのに、実に新鮮!!
エルマー・バーンスタインのテーマ曲もムードを盛り上げ、開巻クリスとヴィンが 葬儀馬車でネイティブ(インディアン)の死体をブーツヒルまで登って行く時の緊張感は、 さすがジョン・スタージェス!
ユル・ブリンナー、マックィーンを筆頭に、皆若く生き生きとしている。 途中テンポがだれる所もあるが。皆良く走り、よく動く。これぞ西部劇の醍醐味を 充分に味わって2004年は暮れた。


<おわりに>
上記の作品の他に西部劇的要素の作品として、 2003年暮れに公開された『MUSA』や2004年の中国映画『ヘブン・アンド・アース』がある。
両作品とも剣の戦いであるが。映画の内容からして、昔観たハリウッドの西部劇を自分の手で再現したい、 という監督の思惑が感じられる。
さぁ〜てと、何とか文章を書き終えたわい。
爺は、オールドフォレスター(バーボン)でも呷って、また昼寝でもするかの…。
では皆さん、"アディオ〜ス、アミーゴス"
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