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カエル 英国映画祭通信bT『フェアリー・テイル』


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@チャールズ・スターリッジ監督ティーチ・イン

AJack&Bettyの「だから映画祭通いはやめられない!」


『フェアリー・テイル』の監督チャールズ・スターリッジが来日、 ティーチ・インが行われました。
この監督は今から丁度10年前、『ハンドフル・オブ・ダスト』という映 画が日本では公開されています。主演は、当時人気絶頂だったジェームズ・ウィルビー、ルパート・グレイ ブス、それにのちにオスカーを取る事になるクリスティン・スコット・トーマスで、脇にもアンジェリカ・ ヒューストン、『戦場にかける橋』のサー・アレック・ギネス、デイムの称号を持つ『Queen Victoria 至上 の恋』のジュディ・デンチと誠に豪華な顔ぶれでした。英国の大作家イヴリン・ウォーの原作で、大変地味 な作品ではありましたが、一世を風靡した『モーリス』のふたりが主演しているということで、人気を呼び ました。ストーリーは、平和で幸せな貴族が、ふとした過ちがもとで人生が狂い始め、どん底まで転落して いくといった暗い話なのですが、そこは英国、ブラック・ユーモアいっぱいの演出で、最後まであっけにと られながら、観たものでした。

その後は、舞台の演出や、映画、ドラマにも積極的に取り組んだりしていたようですが、日本では中々公開 される機会がなく、今回が久しぶりの(『アリア』87年以来)公開作品となりました。
私たちはサインをしてもらうべく、『ハンドフル・オブ・ダスト』のプログラムを鞄の中にひそませ、会場 にかけつけました。

「お知らせします。本日ティーチ・インが予定されています監督のチャールズ・スタリッジさんは、飛行 機の到着が遅れて、まだ会場には到着しておりません…。ただいま飛行機が到着、成田よりこちらに向かっ ているとの連絡が入りました。」
果たして、彼は映画が終了するまでに会場に着けるのでありましょうか…。

@チャールズ・スターリッジ監督ティーチ・イン
(以下「」はチャールズ・スターリッジ)

「まだ、日本に到着してから3時間しかたっていません。日本に来て見たのは、まだ高速道路と文化村だけ です。でも大勢のお客さんに来ていただいて感激しております。」

---はじめに、この映画を撮ろうと思われた動機はなんですか。

「妖精はいわば、子供のための作り話です。でもこの映画のタイトルは『フェアリー・テイル トゥルー・ ストーリー』ですよね。この逆説のタイトルにまず、大変にひかれました。」

---この映画には、ハーベイ・カイテル、ピーター・オトゥール、○○○(意外な俳優が特別出演してます。 今知りたい方は、このページの一番下をご覧下さい)と世界的な名優が出演されてますが、俳優はどうして 選ばれましたか。

「この映画は○○○の持っている映画製作会社が一部出資してるんです。彼が大変このプロジェクトに興味 を持ってくれていました。それで、何か役に立つことがあったら声を掛けてくださいねって言ってくれた んです。それで○○のシーンで彼に出てもらおうと思いつきました。意外性があってより感動的になると思 ったのです。」

「この映画では、普通の姉妹が普通の家に住み普通の家族に囲まれて暮らしています。彼女たちが、偶然で あった不思議な体験は両親にしか話せなかったのですが、偶然二人の著名人がこの話に引き込まれます。 一人は、ロジックの人、アーサー・コナン・ドイル。もう一人はマジックを操るフーディーニ。コナン・ド イルは、ロジックの人であるのに、この話を心から信じます。一方マジックの人フーディーニは、この話を 疑ってかかります。いわば、これは逆説の関係になってるんですね。この二人の関係の面白さ。これには性 格の強い人が必要です。それにふさわしい人としてピーター・オトゥールとハーベイ・カイテルが欲しかっ たのです。」

---二人の姉妹はどのようにして選ばれましたか。

「子役を選ぶのは、大人とは違うプロセスです。大人の俳優は、プロダクションに所属している中から選び ます。だから候補者の数が限られてきます。子役の場合は、必ずしもプロフェッショナルでなくてもいいで すから、候補はそれこそ無限にあります。私は今回色々な学校に行って調査をしました。それはとても楽し い体験でした。できることならいつまでもやっていたかったくらいです。ところが、映画会社から、いつに なったら撮影に入るのかという厳しいことを言われまして、それであきらめて決めることにしたんです。(笑)」

---この映画では妖精がSFXによって、華麗に登場しますが、それと子供たちの演技を合わせることは難しく なかったですか。

「子供は大人とは現実の感覚が違います。不思議なことも自然に受け入れられます。大人は物事を自然に受 け入れずに、説明をしたがるものです。私は、この映画で子供の話した妖精に出きるだけ近いものを見せた かったのです。この物語の少女たちは、74才まで生きましたが、最後まで妖精を見たことを信じていたそう です。これは私にとって大変魅力的なことでした。子供は、大人より意外な現象が起こることに慣れていま す。きっと、人生経験が少ないからでしょう。私の娘も庭から戻ってきて『妖精を見た』って言ってきた事 がありました。でも特別な興奮みたいなものはなかったのです。その後にすぐ言った言葉は『夕飯は何?』 だったんですよ。(笑)このように子供は自然に不思議なものを受け入れられるものなんですね。」

---それでは最後に監督の今後の予定をお聞きしたいのですが。

「次はベスト・セラー小説(タイトル聞き取れず)の映画化を考えています。お話は200年前の話になりま す。一人の優秀な人が革命的なアイデアを思いつき、それが一般の人の人生にどういう影響を与えたかとい う話です。最初に時計を作った人の話です。それは船の上でも正確に動くものでした。それは、人と海の関 係を、人の動きを変える発明だったのです。これから具体的に煮詰めて行こうと思っているところです。」

ティーチ・イン終了後監督を追いかけるようにしてロビーに出た私たち。その時にはすでに数人の映画ファ ンがサインをもらうべく、映画祭のプログラムやチケットの半券を手に抱え、監督を囲んでいました。やっ と私たちの番…『ハンドフル・オブ・ダスト』のプログラムとペンを監督の前におずおずと差し出しました。 するとサインを機械的にしようした瞬間、監督がオヤッといった表情を。それから顔がニコニコっとくずれ、(本当 に良い表情でした。)「オー、サンキュー、サンキュー」嬉しそうにサインをしてくれたのでした。私たちは 本当に満足。「他の人と差がついたね。」「いやー、10年も前の映画のプログラムをこの場に持ってくる 人がいるなんて意外だったと思うよ。そんなファンが日本にいるのかと思えば、監督だってきっと悪い気が してないよ。」私たちは、すっかり自己満足の世界に浸って家路に着いたのでありました。

AJack&Bettyの「だから映画祭通いはやめられない!」

CASTジャック&ベティ


J/ 素敵な映画だったね。見終わって心が癒される。そんな感じの映画だった。これはでも原題に「トゥルー・ ストーリー」ってあるように実話なんだね。英国中を騒がせた1920年の「妖精写真事件」が元になって いる。コナン・ドイルはこれで随分評判を落としたとか。けれど、これこそ本当のファンタジーだと僕は思 うよ。

B/ 英国のファンタジーよね。英国と妖精の話は切っても切れないしね。妖精神話はもともとは、ケルトの文化から来てるらしいのだけ れどね。アイルランドの田舎の方に行くと、道路に「注意、この道は妖精がよこぎります。」なんて標識が 立ってたりするのよ。

J/ そういえば、『フルモンティ』にもノームの置物が出てきたものね。地中の宝物を守っている妖精。冴えな い中間管理職の男が大事に大事にしてるんだね。

B/ 映画は、英国の偉大なマジシャン、フーディーニのマジック・ショウから始まるの。引田天功の大脱出みた いなやつで、体を縛られてビルの上から宙吊りにされてるの。時間内に脱出しないと、まっさかさまってや つね。下で大勢の大人たちが見物してるのね。で、面白いのはそのすぐ近くで、子供たちをいっぱい集めて 『ピーター・パン』をやっている。

J/ 今まさにティンカー・ベルの命が尽きようとしているところ。子供たちが大きな声をあげて声援を送ってる んだね。「妖精を信じてる子は大きな声でイエースって言ってね。」「イエース」「もっと大きな声で」 「イエーース」なんてやってる。いいね。この始まり方。

B/ マジック・ショウには、「ホームズ」のアーサー・コナン・ドイルが見物に来ているわけ。「ホームズ」は 英国人なのだけれど、彼自身は実はアイリッシュなわけ。父母共にアイルランドの家系なのよ。だからファン タジーには格別の興味がある人なのね。これはアイリッシュの血なのよ。映画の中にちらっと話が出てくる 彼の伯父さんは、イラストレーターで彼の描いた妖精の絵がヴィクトリア&アルバート美術館に収められてた りする。そんな家系の人なの。それで魔術の類にも大変な興味を示してたのね。

J/ 監督が、ティーチ・インの中でマジックとロジックって言い方をしていたね。神秘と論理。「ホームズ」の ような論理的な推理小説を書く人が、妖精の存在を信じ、それについてのまじめな研究論文みたいなものを 出してしまった。そこが逆説的で面白いと。

B/ 実際、元来ミステリーとファンタジーっていうのは、水と油のように相性が悪い。そういう風に言われてるわ け。ところが、日本人と英国人に限っては、どうもそれが当てはまらないみたい。アガサ・クリスティさえも 謎解きとはおよそ関係のない、心霊や降霊術のような神秘的な題材の作品を書いているんだものね。

J/ エジンバラ大学では、心霊を真面目に研究している学者がいたりする。街には幽霊屋敷っていうのが必ずあっ て、そういうところを回るツアーが人気を呼んでいたりする。幽霊が出ることを売り物にしているパプもある くらいで。英国人自体がそういうの好きだよね。

B/ 「マジックの種をみんな知りたがるけれど、いざ話をしようとすると、逆に誰も聞きたがらないんだ。」っ てフーディーニが言ってたけれど、この映画もそんな感じ。そういうのいいじゃないですか。人間いくつに なってもファンタジーの心は持ってたほうがいいですよ。希望をもって生きるっていいじゃないって。

J/ この映画は妖精が実在するとも、そんなものはただのおとぎ話じゃないかとも言ってないんだね。大切なの はいるかいないかじゃないんですよって。それにしても妖精が出るって言われているあの森は、いかにも出 てきそうなところで、素晴らしかった。そう思わない。

B/ 出そうな条件が揃ってるのよね。流れの穏やかな小さな、銀色の水をたたえた小川。妖精たちが隠れるのに 丁度いい高さの草木。森の外れにある小さな原っぱ。家になりそうな木の小さなほこら。『ファンタジア』 のきのこのダンスに出てきた、妖精たちがダンスをするって言われているきのこも自生している。最初に カエルが小川に飛び込むとこが出てくるのだけれど、もうもしかして妖精がカエルの衣をまとってるんじゃ ないか、そんな風に思えちゃうくらいきれいなところなのね。

J/ あれはどう見てもセットじゃないやね。今でも英国にはあんな景色が残ってるのかね。あの森にはこの物語を 信じ込ませる力があるね。

B/ この映画に出てくる人たちは、それぞれが、心に傷を持っているの。コナン・ドイルも、大人たちも、子供 も。第一次世界大戦の色が、端々に出てきていたわね。戦地から故郷に帰る息子や、恋人を駅で待ちつづけ る人たち。心と体が傷ついて故郷に戻ってきた兵隊たち。

J/ 彼らが救われるのは、心にファンタジーを持っているからなんだね。「希望」という名のファンタジーを。 この映画を観て癒されるって感じがするのは、そういうことなんだね。

B/ ハリウッド製のファンタジーに較べればもちろん派手さはないのだけれど、こういう誰の心にでもスーッと 入ってくるような、ちょっと懐かしいような感覚のファンタジーもとてもいいわね。とっても気持ちが優し くてね。私はこの映画すっかり気に入ってしまったわ。



メイルちょうだいケロッ

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「○○○の秘密」

「この映画はメル・ギブスンの持っている映画製作会社が一部出資してるんです。彼が大変このプロジェクトに興味 を持ってくれていました。それで、何か役に立つことがあったら声を掛けてくださいねって言ってくれた んです。それでラストのシーンで彼に出てもらおうと思いつきました。意外性があってより感動的になると思 ったのです。」