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カエル 英国映画祭通信bR『Queen Victoria 至上の恋』


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@主演俳優ビリー・コノリー舞台挨拶

AJack&Bettyの「だから映画祭通いはやめられない!」


@主演俳優ビリー・コノリー舞台挨拶

ビクトリア女王の恋人役のビリー・コノリーが来日。映画上映前に 舞台挨拶が行われました。
大きな体格で赤ら顔、ひげをたっぷりと蓄えたその顔 は、いかにもスコットランド人風。白いシャツを外に出し、その上に黒いブレ ザー、スコットランドの伝統的な赤いタータンチェックのパンツ姿がとても素 敵な紳士の登場に、SACHINEKOさんは思わず「わあ、すてきー」と声をあげてしま いました。
上映前に映画の話をするのは、とてもやりにくそうで、たどたどしく映画の説 明をする姿に場内は度々笑いに包まれ、とても楽しい雰囲気で舞台挨拶は進み ます。
(以下「」はビリー・コノリー)

「この映画は、ビクトリア女王の話です。日本の皇室と同じで彼女は、密やかな ベールの中で暮らしをしています。彼女はとっても孤独なんです。そんな彼女 の密やかな恋の物語です。話は、これで終わっちゃうよ。」(これだけ言って、 もう話をやめたので場内爆笑)

「この話は、公式の記録というようなものは残っていません。ただ、私は少年 時代をスコットランドで過ごしたのですが、言い伝えの言い伝えで、この話は よく知っていました。少年時代の私にとってこの主人公はヒーローだったんで すよ。だって彼は階級の壁をよじ登って、女王と恋をしたのですから。とても できることじゃありませんものね。」

「この映画を作るにあたって、色々な調査が行われました。ただ、女王とふたり が結ばれたという証拠は、結局出てきませんでした。ただそんなことより大切な のは、素晴らしい恋愛だったということなのです。階層の違いから、恋愛なんて ありえないものであるはずなのに、二人はその壁を超えて結ばれ、やがて別れな ければならなくなるという…まぁ、そういう話なのです。」(場内笑)

---今日のコノリーさんの格好はなんか年取ったベイ・シティ・ローラーズみた いですね。

「何、ベイ・シティ・ローラーズだって?オー・マイ・ゴット」
「ベイ・シティ・ローラーズってこれでしょ。」(ギターを弾く真似をして)
「オウ、ノー!」(顔をうつむけ手で覆い隠して、ショックというそぶりをみせる。)

---(場内大爆笑の渦)ホント可笑しいですね。実はビリー・コノリーさんは、 コメディアンでいらっしゃるんですよね。あなたにとっては、俳優の仕事と コメディアンの仕事とどちらがお好きですか。

「どちらも同じ位好きだよ。プロデューサーがこのアイデアを映画化するに あたって、お金を集めるのに苦心してたんだ。そこで、彼はこの僕をダシに して映画を売り込んだんだ。この映画には、人気コメディアンのビリー・コ ノリーが出ますよって。お陰で僕は、プロデューサーと一緒にあっちこっち お願いにまわるはめになったんだよ。」

「この映画は元々はテレビ用に作られていたんです。でもミラマックスがとて も気に入ってくれて、これはぜひ映画館で上映しようって、結局買ってくれた んですよ。」

「その結果、ジュディ・デンチがオスカーにノミネートされてね。でも私は なぜかノミネートされなかったんだよ。私はきっとノミネートされるには偉大 過ぎる男だってことだね。」(場内大爆笑…ジュディ・デンチは英国で今もっと も偉大な女優なのです。)

---本当に楽しくて、ずっとお話を聞いていたいようなのですが、そろそろ時間 が…

「ちょっと待って。最後に日本のみなさんにひとこと言わせてください。私は 少年時代から、日本とチベットに大変興味を持っていました。なぜだかはわか らないのですが、色々と本を読んできたんです。今日は、今までずっと憧れて いたこの国にやってきて、日本のみなさんの生活や色々なものを見ることがで きて、私はとても嬉しかったです。本当にありがとうございます。」

AJack&Bettyの「だから映画祭通いはやめられない!」

CASTジャック&ベティ


B/ ビリー・コノリーって俳優さん、私には馴染みのない人だったけれど、実物は素敵だったわね。

J/ いかにもスコティッシュって顔なんだよね。彼の押し出しの強さは、この映画にぴったりだったね。

B/ この人はコメディアンとしてむこうでは、結構人気あるみたいね。

J/ 元々は、ミュージシャンとしてスタートしたらしいよ。けれど、コンサートで彼があんまりおかしなお話を するもので、そちらの方で人気が出ちゃって、いつのまにかそっちが本業になっちゃったんだって。舞台挨 拶も面白かったもんね。その片鱗が伺えるよな。

B/ テレビのコメディ番組で人気が決定的になったそうね。映画とかは他に出てないのかしら。

J/ 『新・三銃士華麗なる勇者の冒険』くらいかな。日本で観れそうなのは。マイケル・ケインとかと共演した 映画もあるそうだけれど、残念ながら未公開みたいだね。そうそう、『ポカホンタス』では声の出演をして いるらしいよ。

B/ 映画は素晴らしかったわねェ。

J/ そうだね。ただ元々テレビのために作られたということもあって、作品としては小粒ではあるけれどね。そ れから、英国国内でのみ放映される予定だったものだから、細かい歴史的な背景とかは、だいぶ省略されち ゃているようだね。その辺で一部分かりにくい点があるかもしれないね。もっとも映画の本題は、歴史にあ るわけじゃないから、知らないと楽しめないというものではないのだけれどね。

B/ 映画は1864年、まだ夫プリンス・アルバートの死から立ち直れなず、喪に服していたヴィクトリア女王 の日常から始まるの。これが、お付きの人たちにとっては、大変なことで。女王が出掛ける時以外は、外出 してはならないとか、色々厳しいことがいっぱいあるのね。

J/ プリンス・アルバートが亡くなったのが、1861年だから、それからもう、3年も経っているんだね。 ただ、これは大変不思議なことなんだね。実は1863年には、長男のアルバートが結婚式を挙げているん だ。だから、いまさら喪中というのは、本来ならありえないんだね。

B/ 夫が亡くなった寂しさは、もちろん強かったのだろうけれど、どうもそれだけじゃないみたいね。

J/ ヴィクトリア女王は、プリンス・アルバートの存命中、公務については、彼の助言に負うところが大きかっ たらしいんだね。だから、一人になったとき、どうやって公務をしたら良いのか。民衆には、どう接してい けば良いのか、戸惑いを感じちゃったんだね。だから映画の中で、精神的な立ち直りを見せた後でも、中々 、公務に戻りたがらなかったんだね。

B/ 女王とはいえ、人の子。色々な不安を抱えて、身動きが取れなくなってしまった結果が、あの長い喪に繋が ったのかもしれないわね。当時、結婚しても収まらない息子のアルバートのギャンブル癖と、女遊びの癖 にも悩まされていたらしいわよ。

J/ 英国王室は昔から、女癖が悪いんだね。(笑)まあ、それはともかく、映画の中でもちらっと出てくるのだけ れど、政治的にも難しい時期を迎えていたことも確かなんだね。19世紀ヴィクトリア時代といえば、前半 で産業革命が起こり、後半はその成功で英国は反映の絶頂を迎えるんだね。今までと社会の流れも変わって きて、上流階級は落ちぶれる者が出てきて、その反対に新しい裕福な中流階級というのが出てきた。彼らは 新興の宗教をおこしたり、政治的にも力を持ってきて、それがヨーロッパの王家の斜陽の風潮と結びつき、 王室不要論なるものが出てきたのも、この時代なんだね。

B/ 議会で議論されていたのは、そのことだったわよね。それがこの映画の横糸になってるのね。「女王」を 民衆の前に引っ張りだせば、この風潮は静まると。どうしたら引っ張り出せるか。じゃ、夫のプリンス・ アルバートに可愛がられたいた従僕を使ってみようと。もちろん彼の物におくさない、はっきりと物を言う そんな性格も見込んだ上で。

J/ そう、まさかそれが恋に発展するなどとは、誰も思いもつかなかったんだけれどね。

B/ この映画の面白いところは、気丈に振舞う女王の生身の人間としての弱さ、純粋さが出ているところなのね。 まだ、ふたりが出会って最初の頃なんだけれども、従僕のジョン・ブラウンに手紙を読ませてくれと頼むシ ーンがあるのね。「紐を解いて渡しなさい。」「一遍に渡されても読めないではないですか。一通ずつ渡 しなさい。」毅然と振舞う中に、女性の可愛らしさが出ていたりするのね。主従の関係できっちり接している のに、ブラウン氏の前では守られている感じがするのか、心から安心しているのがわかるの。そこには、男を 頼りにしている一人のか弱い女性の姿があるのね。この辺りから徐々に彼に傾いていくのよね。

J/ もう、とにかくジュディ・デンチがうまいよな。女王は、普通人と違うから、感情を表に出したりってこと はほとんどしないわけ。ところが、歩き方ひとつ、身のこなしひとつ、ちょっとした仕草や目の動き。これ だけで見事に感情表現をやってのけている。今まで彼女の作品は、脇役といった形でしか観たことがなかっ たので、今回初めて彼女の本格的な演技に接したわけだけれども、あんまり素晴らしくてすっかり感動して しまった。これは国宝級だよね。

B/ 王族の優雅さ、気品といったものはもちろんのことだけれど、時に我が侭に、時にか弱く、時に気丈で、 刻々と変わる内の心をあれだけの仕草だけで表現できるのだからすごいわね。女の可愛らしさまで出ていた わね。

J/ 最初に家族の食卓の席に着く時の歩き方。初めてジョン・ブラウンを庭に発見し、戸惑う時の歩き方。心とき めき、若干早足になるその歩き方。イライラした歩き方。歩くこと。それだけで、充分に感情があふれだし ている。もちろんどんな時にも優雅であることには変わりがないにもかかわらず。また、歩き方がすごい美しいん だね。

B/ でもね。後ろの席の若い女の子たちが、映画が終わってしゃべってたの。「なあに、あの女王役の女優。 怖い顔してたわよね。いつも表情がかわんなくてさ。あれじゃ男の人がかわいそうだよ。」だって。

J/ うーん。それはツライね。映画を観なれていないと、そういうことになっちゃうのかなぁ。だってねぇ。 女王が感情をあらわにして、怒ったり、泣き喚いたり、馬鹿笑いしたりしたら、女王じゃなくなっちゃう ものね。

B/ それに、この恋の物語、ひとつには、身分の違いで、絶対に公にできないし、叶うこともない。悲しくても 寂しくても、決して表情に出せない、そんななところがもどかしくって切なくていいのよね。

J/ そうだよ。究極の純愛映画だよ。これは。

B/ 素晴らしい舞台を本場の英国で観た、それくらいの満足感が得られるような作品だと、私は思うわ。 とにかく観れて良かった。これは英国映画の真髄よ。



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