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カエル 英国映画祭通信2『ガールズ・ナイト』


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@ニック・ハラン監督・ティーチ・イン

AJack&Bettyの「だから映画祭通いはやめられない!」


@ニック・ハラン監督・ティーチ・イン
英国映画祭二日目、『ガールズ・ナイト』の監督ニック・ハランが来日、ティーチ・インが行われました。
ニック・ハラン、聞いたことないな。それもそのはず、1980年代後半から英国でテレビ・シリーズを手がけ、 これが、映画初演出の若い監督なのです。上映後、まだすすり泣く声も聞こえる中、観客の心からの暖かい 拍手に迎えられ、監督が舞台に上がりました。彼の素顔は、まだ一見英国貴公子風の面影さえも残り、初々 しさも漂っています。また、映画が初監督とは思えないほどの素晴らしい出来で、その余韻に司会者が鼻を すすりながら、登場するというハプニングもありました。(以下「」はニック・ハラン監督)

---この映画でどのようなことを伝えたかったのですか。

「この映画はとっても悲しいストーリーです。けれど、ラストには絶望では なくて希望を残しています。また、人間の尊厳を伝えたいと思いました。」
「主役のふたりと、映画を作るにあたって、この映画の登場人物が、この悲しい 出来事を通して、プラスに変わっていくことを描いていこうと話し合いをしま した。」
「これは脚本家のケイ・メラーの実体験なのです。彼女はこの脚本のストーリ ーを書く前に、本当に親友を癌でなくしてしまったのです。この映画のラスト で…に捧ぐという言葉が出てきましたでしょ。あれはその親友のことなのです。 ただ、実際には彼女たちは、あのような旅行にはいけませんでした。この脚本 は、彼女を連れていってやりたかったというケイの夢なのです。」

---主演の女優たちは素晴らしかったですが、どういう風にして選んだのですか。

「脚本家のケイ・メラーは、実は最初から、彼女たちを頭に描いて脚本を書いて いました。また、アメリカの西部をイメージする俳優ということで、クリス・ クリストファーソンを頭に描いていました。ダメで元々と思って、脚本を送って みたところ、みんなすぐに読んで、出演を承諾してくれました。」

---映画の中で使われたロイ・オービソンの「プリティ・ウーマン」がとても 印象に残りましたが、どうしてあの曲を選ばれたのですか。

「まず、第1に逆境の中で、女性たちが心から楽しんでいるということを引き出 せる曲、第2に彼女がロイ・オービソンの大ファンという設定でしたので、彼の 曲の中から、第1の条件を満たし、ウエスタン調の曲はないか探してみて、一番 良い曲を選びました。スコアについても、やたら悲しませるような音楽ではなく て、神の贈り物である大切な命を最後まで全うしたという、ドーンの幸せさを 伝えられるような音楽を流したんですよ。これは、もう一回観ていただければ、 きっとよく分かると思います。」

---最近の英国映画の充実はどういうところからきてると思われますか。

「映画作りに自信が出てきたということだと思います。私は雪だるま効果と言 っているのですが、それはどういうことかと言うと、毎年1、2本世界中に注 目される映画が作られる。そしてプロデューサーが英国映画に注目する。そし て若い監督にも映画を作るチャンスが巡ってくる。それが、また世界に注目さ れて、さらにプロデューサーの関心を集める。こうして雪だるま式に良い映画 がどんどん増えて行く。そういうことなんじゃないですか。」

---日本映画についてはどう思われますか。英国映画界のようになる可能性は あるのでしょうか。

「英国も日本もアメリカの大作映画にたちうちしなくてはならないという、辛 い面はいっしょだと思います。ただ映画はもっと深みのある、人の心を捉える 作品も必ず、観客に好んでもらえるはずです。そうした映画を作っていけば 良いと思います。」

---最後に次回作の予定を教えて下さい。

「アメリカのコロンビア・トライスター社で『バーチャル・セクシャリティ』と いう映画を作っております。これはこの映画とは全く違うロマンチック・コメ ディです。コンピュータ上で、バーチャルの恋人を作って楽しんでいたところ、 その恋人がコンピュータから飛び出てきて…といったお話です。実はすでにもう 編集の段階に入ったところなんですよ。」

AJack&Bettyの「だから映画祭通いはやめられない!」

CASTジャック&ベティ


B/ 私、泣いちゃったわよ。この映画にはもーう。いい映画だったわ。

J/ 僕もきちゃったね。場内のあちらこちらから、グスングスンって音が聞こえてたよ。でも決して泣かせよう っていう映画ではないんだよ。

B/ 特に女性には、この映画はたまらないわ。主人公たちの気持ち、とってもわかるもの。そうしたら、脚本が 女性だったわね。やっぱりって思ったわ。

J/ とても、ひとつひとつのエピソードに説得力があると思ったら、実話がだいぶ入ってるんだね。

B/ 本当に、ロンドンから遠く離れた田舎町が舞台なのね。主人公の中年女性たちは、そんな田舎の半導体工場 に勤めていて、町から一歩も外に出たことがない。そんな人たちなのね。楽しみといえば、週末のビンゴ・ ゲーム場の「ガールズ・ナイト」に、工場仲間と出掛けるだけ。それだけの人たちなの。

J/ 美術館に招待券で行って、「この絵上手だわねぇ。」なんて当たり前のこと言っている、そんなごく普通の おばさんたちなんだ。でもパワーはあるんだよ。おばさんたちに較べて男どもの元気のないこと。

B/ 彼女たち仕事場でもパワーあるものね。仕事は、部品をはめ込むだけの単純作業だから、口の動くこと、 動くこと。規則を無視して煙草吸いながらやってる人もいる始末で。

J/ 上司にもたてつく、たてつく。「私は十数年こうしてきたのだから、今さら変える気はない。そんな規則を 作ったあんたが悪い」って。可愛そうに、上司は明らかに持て余しちゃってる。

B/ 主人公のジャッキーとドーンは20数年来の親友で、義姉妹でもある。ドーンはおっとりとして、心優しく 、内に強さを秘めた女性。ジャッキーは、ちよっとはすっぱで、いつも強気で生きてるけど、内は脆くて、 危なっかしげで、甘えん坊の女性。このふたりの組み合わせがとってもいいわね。

J/ まあ、不満はいっぱいあるけれど、ごくごく平凡で幸せな生活をし、毎日毎日変わり映えのしない生活を 送っていたドーンにある日、悲劇が訪れるんだ。脳に腫瘍ができてしまってね。後はもう、どういうストー リーになるかわかるよね。けれど、この映画の良いところは、彼女がそうなることで、他の人がどう成長 していくか、そこに焦点が置かれている点なんだよね。決して「さあ、お泣きなさい」そんな見せ方はし ていないね。

B/ 細かいエピソードを言うと、これから観る人たちに悪いから言わないけれど、映画は決して暗くならずに、 あくまでも、明るく、前向きなところが素晴らしいと思ったわ。

J/ 主役の女優たちの演技が素晴らしいね。ドーン役のブレンダ・ブレッシン。この人『秘密と嘘』でも、もの すごく上手くて感動的ですらあったけれど、この映画でもまさに要になってるね。観客はみんな彼女のこと を好きになっちゃうと思うよ。

B/ それから、ジュリー・ウォルターズ。この人は『ステッピング・アウト』で、掃除魔でお育ちが良く、お節 介で、孤独な英国女性を演じた人。地味だけれどとってもうまい人で、今度はその時とは随分違う性格の女 性を演じたのだけれど、ブレッダ・ブレッシンと並んでも全くひけを取らない見事な演技を見せてくれたわ。

J/ 演出ももちろん良いんだけれど、この映画はこの二人の女優の力でよりいっそう深みが増したと思うよ。

B/ それから忘れてならないのは、お懐かしのクリス・クリストファーソン。彼が良いのよー。二人がラス ベガスに旅行に行ってから登場してくるから出番は少ないのだけれど、心優しい西部のアウトローって感じ がとても良くはまっていて。紳士で、暖かく包んでくれるような包容力があってね。そうそう、彼もある意 味では「ホース・ウィスパラー」なのかもしれないわね。

J/ ひげのあるクリス・クリストファーソンはやっぱり良いね。なんて、なんのこっちゃ。(笑)

B/ この映画は、ハンカチなしには観れない映画ではあるのだけれど、その涙は決して可愛そうだからとか、悲 しいから。それだけのことじゃないのよね。ドーンの心の豊かさに触れ、ジャッキーの大人の女性としての 成長に感動し、自立する家族の姿に感動し、彼らの暖かさや、勇気にも感動する。そんな涙なのよね。この 映画を観ると、なんか逆に勇気が沸いてくる。私はそんな思いがしたわ。だから、特に女性には観てもらい たいと、私は思うわ。

J/ いやいや、女性に限らず、いろんな人に観てもらいたいね。この脚本は、脚本家の思いがいっぱい詰まって いるんだよ。作り手の思いが、こちらにもとてもよく伝わって来るんだ。彼女にとっても「生涯の一本」の作品 なのじゃないのかな。ただこの映画、配給会社は決まっているけれど、劇場で公開されるかどうかは、まだ 決まってないみたいなんだね。もったいないね。この映画はぜひとも劇場で公開して欲しいと僕は思うよ。



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