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カエル 英国映画祭通信1『マイ・スイート・シェフィールド』


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@ピート・ポスルスウェイト・ティーチ・イン

AJack&Bettyの「だから映画祭通いはやめられない!」


@ピート・ポスルスウェイト・ティーチ・イン
英国映画祭初日、『マイ・スイート・シェフィールド』に主演のピート・ポスルスウェイトとプロデューサーの スティーブン・ガーレットが来日、ティーチ・インが行われました。ここではその中のポスルスウェイトの発言を お伝えします。(以下「」はポスルスウェイト)

---英国映画の最近の充実ぶりはめざましいものがありますね。

「私は専門家ではないから、何とも言えないけれど、4,5年前から英国映画は 確かに良くなった。もっとも、それ以前から良い脚本、企画はあったのだけれど、 それを映画化するプロデューサーが増えてくれたことが大きいと思うよ。」
「『フル・モンティ』をはじめ今の英国映画は、地域という意味ではとても狭い 地方都市を舞台にした作品が多いのだけれど、それが世界の観客に受け入れられて、 共感してくれるのは、誠に喜ばしいものだと思うね。」

---『マイ・スイート・シェフィールド』について

「映画を作っているとき、私たちもこの映画にとっても良い感じをもっていたのですが、 今、こうして皆さんが作品を観て、とっても幸せそうな顔をしているのを見て、そう悪い 映画じゃないなと思っていただけたようで、良かったなと思っております。」
「この脚本がすばらしいと思った。面白くて、最後まで夢中になって読んじゃったよ。 特に若い女性と恋に落ちるのが、若い男じゃなくて、年寄りの方っていうところ がいいね。(笑)」
「サイモン・ボーフォイは、『フル・モンティ』が世界的なヒットになったけれど、 この映画の脚本のほうが、最初の脚本だったんだ。この作品は地味な映画だけれど、 こちらのほうがヒットする可能性だってあるよ。だって『フル・モンティ』はタイトル とは違って、ずっと前のほうをかくしていたけれど、私こそ本当に『フル・モンティ』を やっちゃったんだから。(笑)」(注…ポスルスウェイトの無修正、すっぽんぽんのシーンがあります。)

---作品はどいいう基準で選んでいますか。

「ヒッチコック監督が言ってましたよね。映画は1にプロット、2にプロット、3にプロット だって。私もそう思います。良いストーリーであることを私は作品を選ぶ一番の基準にしてます。」

---自分の出演した作品の中で一番のお気に入りは何ですか。

「自分の出演した作品は、私にとっては子供のようなものなんだ。そしてスタッフは、私にとって 家族のようなものなのです。だから、それを比較することは出来ません。」

---『マイ・スイート・シェフィールド』には、仕事場でみんなが歌を歌うシーンがあって、とても 楽しそうだったんですけれど、実際の撮影現場ではどうだったんですか。

「あれは、撮影現場そのものなんだよ。実は監督のサム・ミラーが、映画の中で使う音楽を現場で 流していて、私たちはそれに合わせてごく自然に歌を歌ったり、その場にあったビンや缶をたたいて、 楽しんでいたんだ。それを見た監督が、それいいね、映画に使おうって、その場で決まったんだよ。 真実の姿っていうのは、映画のなかでは、本当に自然で良いものになるね。」

---次回作の予定はどうなってますか。

「『Letters From a Wayward Son 』というアメリカ映画に今出演しています。これはジョージア州が 舞台になってまして…(南部訛りで突然しゃべりだす。)とまぁ、今はこんな風にしゃべってます。」

ミスター・コバヤシこと、ピート・ポスルスウェイトはいかつい顔をしているけれど、その素顔は意外に おっちょこちょいで、ひょうきんもの。司会者の紹介の前に舞台に上がってしまったり、反対方向に退場し ようとしてしまったり、天然モノのおっちょこちょいぶりが微笑ましい。
一緒に来日していたプロデューサーが、 『マイ・スィート・シェフィールド』の映画化までのいきさつを尋ねられて、「ながーい話になりますが…」 としゃべりはじめると、横から「この映画の鉄塔よりも長いですよ。」とちゃちゃを入れたり、「時間が延びて しまいましたが…」の司会者の発言には、「あそこの長い質問をしたお客さんのせいですね。」などと、ジョーク を飛ばしたり、かなりのひょうきん者だ。
おまけに素顔は映画でみるよりも若々しく、陽気でやさしい紳士なのであった。

AJack&Bettyの「だから映画祭通いはやめられない!」

CASTジャック&ベティ


J/ なあ、この部屋なんか居心地が悪くないか。壁紙は緑色だし、いつもと様子が違うよ。

B/ さっきから、ヘンなカエルがぴょこぴょこしてんのよ。いやねー。それに私たちに黙ってタイトルも変えた みたいよ。失礼しちゃうわね。

J/ まあ、いいや。始めよう。
やっぱ、映画祭って良いよね。あんなにたくさんの映画ファンが世の中にはいるんだねぇ。列に並んでいる 時のお客さんの会話も違うよ。「『孤独な肖像』はちょっとツラかったわね。」「私、『踊るスーパー・スタ ー』が楽しみで。」なんて会話があっちこっち飛び交ってたよ。

B/ 70才くらいのおじいちゃんがいてね。大きな紙袋持った。「私は、英国映画祭の券はほとんど全部買っちゃっ たですよ。フランス映画祭は6日間全部通って、プログラムがサインでいっぱいになっちゃった」ですって。

J/ すごいおじいさんだったね。映画のチラシとかいっぱいくれたよ。あの年齢になった時、僕たちにもあんな パワーがあるかな…。「Jack爺や&Bettyばあちゃんのこんな映画フガフガ観まったけんど」なんてね。

B/ 映画祭はみんな映画が好きって雰囲気があって、いいわね。広い会場で、上映中に携帯鳴らす人もいなかった しね。それでもってスターの顔まですぐ近くで見られて。「だから映画祭通いはやめられない!」

J/ 今日の『マイ・スイート・シェフィールド』は、主演のピート・ポスルスウェイトも来日して、大変な盛り上 がりをみせてとっても良かったね。ただ肝心の映画は、僕はちょっとのけぞっちゃった。

B/ 脚本は『フル・モンティ』のサイモン・ボーフォイ。不景気にさらされている英国の地方都市。送電線の鉄 塔のペンキ塗り職人たちの人間模様、ときたらいやがうえにも期待しちゃうもんね。

J/ 24キロも続く鉄塔を塗る話っていうだけでとても面白そう。「一人の男が橋のペンキを塗りなおす」っていう 話を思い出しちゃった。端のほうまで塗ると、最初に塗ったところが錆び始めて、永久に作業が続くってや つ。

B/ 街にフラッと、世界中を旅してるっていう女性がやってきて、ペンキ塗りの仕事を私もやりたいっていう。 男ばかりの世界に女性がひとり飛び込んで、男たちに動揺が走る。ここまでは面白い展開。でもそれから 後が、ただの恋愛映画になっちゃって、ちょっと私はびっくり。

J/ まさか、ポスルスウェイトがあそこまでやるとはね。しかも老いらくの恋なんかじゃ決してない。充分にロ マンチックな恋をしてしまう。あの顔で(失礼…笑)。「あら、布団の中にヘンな生き物が」なんて…。

B/ 私、やっぱり見たいお尻と見たくないお尻があるわ。私だって女ですもの。

J/ なんか、近所のおじさんの不倫現場を目撃しちゃったみたいな気まずさがあるんだな。

B/ 私、どんなにしわくちゃだとか、体の染みがって言われても、ロバート・レッドフォード様のほうがいいわ。 だって歳を取っても、彼は優雅でロマンティックな雰囲気はあるもの。もちろん近所にはそうそういるよう な人でもないし、だからまだ夢がみれるのね。

J/ どうして女のこが、若い男を選ばずによりによっておじさんに惚れちゃったのか、その辺が全然わからない んだよなぁ。唐突に話が進んで行くような。

B/ プロデューサーが言ってたじゃない。この映画最初脚本が送られてきたときには、170分の分量があった って。それを削りに削って、えーと、この作品って何分だったかしら。

J/ えーと、93分だってよ。そうすると、半分近く削られちゃった!そういやぁ、プロデューサーがこの映画の ラストも「私には若い男のほうが死ぬのはなぜだかわからなかったので、明るいものに変えちゃいました。」 って。

B/ 私、その一言で実は、ピンッてきちゃったのよ。これ元々は、奥さんを捨てたポスルスウェイトと共同生活し てる若い男と彼と女性の三角関係の映画だったんじゃないかしらって。だって、ところどころにそんな残り 香があるんですもの。じゃなきゃ、若い男が死ぬ展開にはなるはずがない。

J/ 『フル・モンティ』の脚本家じゃ、そういう話は充分に考えられるね。そういえば、冒頭のロック・クライミン グのシーン。ポスルスウェイトと若い男が、高い岩の上でロープで繋がっていて、それを女のこが見上げる って構図。あれは映画の文法から言えば、まさにその関係を暗示していることになる。

B/ そ、そうよね。説得力あるわね。この映画、プロデューサーと脚本家の意図がまったく違っちゃったんじゃ ないかしら。『フル・モンティ』の脚本家にしては、やけに淡白だなって感じがしたものね。

J/ なんか、そう考えたほうが自然だね。そうすると、もったいないなぁ、この作品は。素材は面白いのになぁ。

B/ ホントにね。でも、私今日はいいの。映画の中ではダメだったけれど、生ポスルスウェイトを見れたから。 やっぱり実物は素敵ですもの。もちろん恋愛の対象という意味ではなくて、素敵なおじさまという意味で。 やさしい「お父さん」っていたほうがいいのかな。

J/ そうだね。やっぱり彼は『父の祈りを』や『ブラス』のような父親的なイメージのほうがいいね。頑固で、 一徹で、でも心優しくて、哀愁漂う男。するめ味の男をやらせたら、今彼の右に出るものはいないものな。 僕はそんな彼の素顔が見れたことが、とても嬉しかったよ。今日は。

B/ だから、映画祭通いをやめられないのね。私たちって。



メイルちょうだいケロッ

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