97. リセット猫と不良 (2001/3/17)


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動物を飼うと人間が分かる。

■人間に要求する猫

猫は人間にかまってもらいたがることがある。私の家では猫を二匹飼っているので、たいていの場合は猫同士で遊ぶので、人間に向かって遊んでくれと頼むことは少ない。それでも、かゆいところを掻いてくれとか、なぜかうちの猫の片方は水洗便所の手を洗うところの水が出るのを手で触って遊ぶのが好きなので、トイレに行けと誘ってくることがある。

しかし、そんな猫の要求をいちいち飲むのは面倒なことである。それに、猫は人間の生活を振り回すから面白いのだという愛猫家は多分多いが、猫に振り回されすぎる生活というのは馬鹿らしい。そこで私は、特に自分が何かに夢中になっているときは、猫の要求を無視することにしている。

しかし猫というのは人間の気を引くのがうまい。あの愛くるしい声で鳴き出すと、しょうがない、なにをしてほしいのだ、と結局相手をしてしまうのである。

ところが、猫を飼い始めてからしばらくすると、あの声で多少鳴かれようとも無視できるようになった。そうすると猫もさらに人間を誘ってくる。なるべく人間の目線の高さに近づいていき、耳元で鳴き出すのである。それでも無視したり、あるいは相手をしてやろうというフリをしてからすぐにまた無視したりしていると、ついに猫はあきらめて去っていくのである。

■気を引く方法を覚える猫

私が猫を無視するのは、主にテレビゲームをやっている最中である。ゲームに限らず、何かに夢中になっていると、猫だろうと人間だろうとかまいたくなくなるものである。

猫をかまわないでいると、猫はいくつかの手段で人間の気を引こうとする。鳴きながら近くをウロウロとうろつきまわる。猫を無視すると決めているときの私が、やはり猫の相手をしてやろうと思う、二つの動機がある。一つは、猫がいつもと違う鳴きかたをしたときである。とくに、あくびをしながら鳴く猫の鳴き声は非常にこっけいだがとても愛らしい。

もう一つの動機は、猫がウロウロしていて、私のゲーム機のリセットボタンを押しそうになったときである。そんなときは仕方なく猫を取り押さえ、その余勢で猫をかわいがってしまう。

そんなことがありつついまでは、なぜか猫がゲーム機のリセットボタンを狙っているような気がしてならない。猫は、私の気を引くために、リセットボタンが有功だということに気がついたのだろうか。

■親の気を引こうとする子供

そこまで考えた私は、あっ!と思った。これは人間にも当てはまるのだ。子供が悪いことをするのは、親の気を引くためなのだ。どんな親でも、自分が不利益を被ることを子供にされては、子供の相手をしないわけにはいかない。子供がどんなに良いことをしても相手にしない親は多いだろうが、悪いことをしてしかもその悪いことが自分に降りかかるとなれば、どんな親でも子供を叱りつけるに違いない。

親が子供に無関心な場合は、必然的に親と子の関係は、叱るとか罰を与えるという行為と込みでしか成り立たなくなる。そうすると子供は、親と自分を結び付けるものが説教や体罰しかないので、人間同士の関係そのものも「相手を嫌がらせる」ことと「相手に怒られる」ことの中にしか見出せなくなるのではないだろうか。

そのように育った子供は、常に誰かを嫌がらせることしか考えることが出来なくなる。そして、嫌がらせた相手が怒ったりやり返したりすると、そこに自分と相手との関係を確認し安心するのだ。

このような子供に対して、ほめるという行為がいったいなんの意味を持つだろうか。よく、素行の悪い子供が親に一度だけほめられて嬉しかったときのことを思い出すシーンが、ドラマや漫画に出てくる。私はこれはウソだと思う。

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きれいにまとまりすぎたので、動物生理学の話は別の回にする。動物生理学がちょっと前から流行っているので、どうせたいしたことは書けそうもないので一緒の回にして書こうと思っていたが、もう少し整理がついてから独立した回にまわすことにする。


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gomi@din.or.jp