87. メモリ騒動など (2000/12/10)


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前回の話があまりにマニアックなので、急遽もっと一般的な話題を扱った話を切り上げて書くことにした。とはいってもこの話はもう一ヶ月ほど前の話なのだが。

■格安ノートパソコン

先月末、私の父親が自分のノートパソコンを買った。父親の会社で最近新しいノートパソコンを買ったらしいのだが、そのマシンが安かったので、ついでに自分の分も買ったとのことである。そのパソコンは私物として買ったのだが、もっぱら会社で業務に使っているらしい。会社に買ってもらえばいいのに、と私は思うのだが、会社は一応性能の悪いながら既に父親にマシンを割り当てているので、買うとしたら自腹を切るしかない。それと、私物だと堂々と家に持って帰ってこれるという利点がある。

そんなわけで、私の父親が買ったパソコンは、いま何かと目立っているソーテックという会社の製品で、ノートパソコン SOTEC M260TX2 である。

SOTEC e-note M260 シリーズ:
http://www.sotec.co.jp/Direct/e-notem2/index.html

このパソコン、なんと値段が 128,000円である。私が二年半前に買ったソニーのバイオは、そこそこ上級機種だっただけあってこのちょうど倍以上の値段がした。ありきたりの言葉で言うならば「なんとも隔世の感が…」というものである。

スペックの方であるが、

CPU : Celeron 600MHz メモリ : 64MB ハードディスク : 6GB モニタ : 12.1インチTFT液晶 XGA (1024x768)

とこれまた十分である。ビデオカードは、統合チップセット SiS 630 に統合された SiS 300 なので、二年前で言えば最高の性能であるし、いまでも十分な性能を持っている。重量が 3.4kg あるので携行には不便であるが、もともと据え置き型のノートパソコンなのであまり問題にはならない。

なぜこのようなスペックを持ったノートパソコンを格安の 128,000円で売ることが出来るのだろうか。このパソコンは統合型チップセット SiS 630 を使っていることがまず低コストの一番大きな理由だろう。しかしどうにもそれだけでは説明がつかない。ひょっとすると、このノートパソコンは中身がほとんどデスクトップパソコンなのではないか。モバイル Celeron は高いが、普通のデスクトップに使われる Celeron は安い。あらゆる部品は、デスクトップに使われる部品の方がノートパソコンに使われる部品よりも安いのだ。だから、このノートパソコンはノートの皮をかぶった液晶モニタ付き省スペースキーボード一体型デスクトップパソコンなのではないか。

■使ってみると…

とまあ疑問は尽きないが、要は使えればそれでいいのである。このようにスペック的には全く問題のないこのノートパソコンなのであるが、使ってみるとなにか問題はないのかどうか、私は早速調べてみることにした。

電源をつけてまず思うのは、起動に異様に時間が掛かることである。壁紙に使われている写真が、三回に分けて段階的に読み込まれる。これは明らかにメモリ不足ではないかと思って調べてみると、64MB あるはずのメモリが 56MB としか表示されていなかった。その理由はすぐにわかった。統合型チップセット SiS630 についているグラフィックチップ SiS 300 は、メインメモリからメモリを拝借して動作するのである。

やっと起動したかと思っても、なにやらプリインストールソフトがやたら動き出し、砂時計はなかなか消えない。早くなにかやりたいときはイライラする。Windows ME なので恐らく余計に遅いのだろう。特にメモリが 56MB しかないので、Windows 95 であれば普通に立ち上がるものが、Windows ME だとメモリ不足でスワップが発生し、倍以上の時間が掛かっているものと思われる。

立ち上がった画面を見てみると、液晶画面の美しさに満足できる。少し前までの廉価モデルに使われていた液晶パネルは、画面が暗かったり、解像度が低くて狭かったりする。唯一の難点は、XGA 表示で 12インチの液晶パネルを使っているため、画面の文字がちょっと細かくなってしまうことである。もう一つ上位のモデルを買うと、液晶は 13インチになり、文字が見やすくなる。しかしさすがに液晶なので文字がにじむということはなく、私自身は自分の VAIO ノートで 12インチの XGA 表示を見慣れているので、あまり不満はない。しかし年配のユーザーは特に細かい文字が読みにくくなってくるので、目が疲れないかどうか心配ではある。

重量が 3.4kg もあるので持ち運びには適さない。しかし持ち運べないことはないギリギリの重さではあるので、値段も考えるとそんなに不満はないのではないだろうか。

しかしどうも体感速度が遅い。早速私はベンチマークテストをしてみた。使ったソフトは有名な HDBENCH である。このベンチマークソフトで体感速度のレベルまで判断することは不可能だが、最大速度は測れるので、一応目安として調べてみることにした。すると、おおむね全ての項目において十分速いことが分かった。難点としては、メモリの転送速度が 600MHz の割には遅かった。

■メモリが必要だ

というわけで、おおむね問題はメモリにあることが分かった。メモリの転送速度は改善のしようがないので、とにかく容量を増やすことにした。いくらなんでも Windows ME で 56MB しかないのは少なすぎる。最低やはり 96MB は必要だと私は考えた。

ノートパソコン用のメモリはデスクトップパソコンのものよりも高価である。私が VAIO 用に買った 64MB のメモリは一万二千円くらいした。メモリが値下がりしていた時期があって、そのときに買えば一万円ポッキリで買えたのだが、そのあと値上がりして、結局私はその値上がりが少しだけ落ち着いた頃に買った。さて、いまはどれくらいの値段になっているのだろうか。

その前に、このパソコンにはどんなメモリが使えるのだろうか。ひょっとして、私の VAIO に増設したメモリがそのまま使えるのではないだろうか。私の VAIO はいまあまり使われていないので、こいつからメモリを抜き取って流用できたらコストが掛からない。そこで私は、思いついたそばから VAIO のメモリを抜き取って、SOTEC のマシンに入れてみた。少なくともメモリの形状は全く同じである。どちらも SO-DIMM の 144pin のものであり、メモリチップの構成もいっけん同じように見える。

これはうまくいくだろう。そう考えたのは甘かった。電源を入れて、Windows のスタートアップ画面が立ち上がったときに、私はびっくりして慌てて電源を切った。なんと、スタートアップ画面の絵にノイズが走っていたのだ。ここまではっきりとヤバい症状が出たことにさすがに私は驚いた。ひょっとして他人のパソコンを壊してしまったか、と心配になった。しかし、差したメモリを引っこ抜いたら何事もなかったように普通に立ち上がったので安心した。というわけで、いくら形が似ているからといって、むやみに差してはならないという経験を得た。

しかしこれはどうも変だ。私の VAIO は MMX Pentium 233MHz であり、ベースクロックは 66MHz だ。一方、SOTEC の M260 は Celeron 600MHz であり、これは恐らくモバイル Celeron ではなく普通のデスクトップの Celeron のはずだ。でなければ、138,000円などという低価格に収まるはずはない。だとするとベースクロックは同様に 66MHz であり、メモリの流用が可能なはずである。まてよ。こいつのチップセットは SiS 600 なので、ベースクロックとは別にメモリのクロックを 100MHz に出来るのかもしれない。…だとすれば確かに 66MHz のメモリではダメだということに納得がいく。でも 66MHz のメモリでも 100MHz で動くものが多いはずだ。…などと色々邪推するが、結局のところ「動かなかった」という現実の前ではあらゆる想像もむなしい。

■メモリを調べる

というわけで、たぶん PC100 の SO-DIMM 144pin を買えばいいんじゃないかな、と思いつつも判断を留保し、ひとまず SOTEC のホームページを見て調べてみることにした。SOTEC はさすが直販が中心のメーカーだけあって、ホームページでパソコンが買える。周辺機器も買える。当然、メモリも買えた。e-note M260 シリーズ用のメモリは 64MB で 9,000万円だった。ただし通販なので送料がいる。送料は 1,500円くらいだった。合計で 10,500円くらいかかる。

これを直接店で買ったらいくらなのだろうか。LaOX や Sofmap のホームページを調べてみると、大体一万円ちょっとで買えるようである。送料がないことを考えるとこちらの方が割安である。それに通販はなかなか決心がつかない。メーカーから直接メモリを買うと、買ったメモリが実は使えませんでした、ということがなくてとても安心できるのは確かである。しかし、通販は時間が掛かるし銀行振込またはクレジットカードをインターネットで使うのは不安である。

そこで、SOTEC の通販ページをよく見てみると、

64MBメモリ SDRAM144piRM14D64-01(VN100)

と書かれている。行末の括弧入りで VN100 と書かれていることにピンときた私は、これはメルコのメモリの OEM なのではないかということに気づく。案の定、もう一度メルコのホームページの製品情報を見てみたところ、VN100 というのは PC100 SO-DIMM 144pin のメモリの型番であった。こいつはどうやら一万円くらいでどこの店にも売っているようである。これなら送料込みの通販よりも 500円安くて、わざわざ店まで行かなくてはならないのだが、手渡しなので確実だしすぐに手に入る。

■メモリを買う

そこで早速私は近所の LaOX コンピュータ館に向かった。私は職場が秋葉原にあるので、平日の昼休みに買いにいったほうが良かったのだが、とにかく父親はマシンを休日にしか家に持って帰ってこないので、平日メモリを買うとなるとメモリ増設は次の週末になってしまう。幸いなことに私の近所に LaOX のしかもコンピュータ館があったのでそこを利用することにした。LaOX でなくても、最近はパソコンショップのチェーンが雨後のタケノコのようにはえてきているので、そんなに困ることはないだろう。

LaOX で私は店員のいるカウンターに向かい、メモリが欲しい、ということを伝えた。すると、店員はメーカーと機種を聞いてくる。SOTEC の e-note M260 シリーズだと伝えると、店員は手元にある目録を調べ、使えるメモリをリストアップする…のだが、どうやらこの機種は新しすぎてまだ目録が出来ていない。そこで店員は、インターネットの使える端末へと向かい、SOTEC のページを調べて、動作確認されたメモリがないか調べ始めた。ところが SOTEC のページにはない。そこでパソコン本体の方ではなくメモリメーカーのページを調べて、対応の取れたメモリ製品のリストを参照しはじめた。しばらくして、やはり私の機種が新しすぎてまだ対応製品が分からないようなのだ。

私は仕方が無いので、e-note M260 の前の製品での対応について訊いてみた。しかし完全に同系統の前世代の機種はなかった。そこで、ノートパソコンで一般的なメモリについてたずねてみることにした。私は色々と説明を聞いたのだが、店員は結局最後にメルコのメモリを二種類示した。VN100 と VL100 である。私は、この二つはどう違うのかをこの店員に訊いてみた。大雑把にいって、SONY と IBM のほとんどと東芝の半分は VN100 で、松下と東芝の半分は VL100 だ、などという答えが返ってきた。結局メモリモジュールにどういった特徴があるのか? と私は食い下がった。店員はスペックシートを眺め、メモリモジュールの厚さなどが異なる、と答えた。これを買っておけば安心というメモリはないのか、と私はたずねた。しかし店員は、分からない、としか答えなかった。ただ、VN100 の方が新しいのでこれからの機種ではこちらの方が可能性が高い、と言った。

前項で調べた結論と、店員の予想が、うまく一致した。私は店員に対して、VN100 という答えを出すように誘導したつもりはない。だから、このメモリは高い確率で M260 に使える、と私は判断した。結局、当然のことながら店側は、このメモリの動作保証はしないということを断ってきたので、私はそれを承知で購入に踏み切った。

私はこのメモリを父親にプレゼントするつもりでいたのだが、私の父親は会社で小額の設備費を承認する権限を持っているみたいなので、領収書は○○鉄工所で切ってくれという話になっていた。動作保証されていないメモリに法人の領収書をもらったことに私は罪悪感を感じたが、いざとなれば VN100 が使えるノートパソコンを自分が買ってしまえばいい、などという新しいノートパソコン購入への良い口実になることも多少期待していたこともあり、勢いで買ってしまった。

■あれ?

さっそく私はメモリを取り付けた。電源をオンすると起動画面が出て、メモリがどのくらい入っているかが表示される。…96MB? おかしい。私が買ってきたメモリは 64MB のものである。元から入っているのが 64MB なので、合計で 128MB になるはずである。ということは、私の買ってきたメモリは半分認識されていないのだ。

ひょっとしてメモリの差込不良かなと思い、電源を切ってもう一度メモリを挿入しなおすことにした。グイグイと強く押し込み、また電源を入れる。…64MB? なんと今度は全く認識されなくなってしまった。背筋が涼しくなってきた。慌ててもう一度電源を切り、もう一度メモリを微妙なニュアンスをつけて挿入しなおして、また電源を入れる。また 96MB に戻った。しかしいくらやっても 128MB にはならなかった。

私は仕方なく父親に報告した。64MB のメモリを増やそうと思ったが、結局 32MB しか増えなかった。32MB でも増えればだいぶ速くなるはず、と言った。私の父親は、32MB とか 64MB とかいう言葉がよく分かっていないので、まあええよ、とあまり気にしていなかったので、私も気にしないことにした。

96MB になったとはいえ、8MB 分を画面表示に取られているので、実際には 88MB である。Windows 98 ならこのくらいでも十分速くなっただろう。しかしどうも Windows ME では少し足りないようである。しかもこのパソコンはメーカー製なので、プリインストールがそこそこ入っていて、起動直後でもかなりメモリが使われているようである。

■なにが問題だったのか

私は気になって、そもそも VN100 と VL100 にはどのような違いがあるのか、メーカーのメルコのページで調べてみることにした。メルコはホームページの情報が充実しており、答えはすぐに見つかった。どうやら、主にパナソニックのノートパソコンは、特に薄さを重視しており、メモリモジュールの基盤にチップを片面しかつけていないものを使うらしい。チップとはあのゲジゲジのことである。大抵のメモリモジュールには、基盤の両面に回路があり、両面にゲジゲジのメモリチップがつけられている。両面より片面だけの方がメモリモジュールを薄く出来るのは想像しやすいだろう。なんだ、それだけの理由のようである。…え? ということは、VN100 も VL100 も機能的には全く同じだということではないか。なぜパソコンの機種ごとに VN100 と VL100 になっているのだろうか。VL100 の方が薄いので、VN100 が使える機種には当然 VL100 も使えることにはならないか。

というわけでそのへんのところをさらに深く調べようと思ってメルコのページを漁っていると、VN100 の製造不良についての告知を発見した。このへんから雲行きが怪しくなってくる。残念ながらメルコのホームページはここ最近リニューアルされてしまったので、元のページが見つからなかったので URL を示すことはできない。告知にはしっかりと書かれていた。確か 11月初頭の日付で、これまで VN100 で動作するとリストに掲載していた機種で、実際には動作しなかったものがあったということ、その原因はメモリモジュールにあり、ある型番までは正常に動作していたが、最近の型番では正常に動作しなくなっていたらしい。32MB のメモリには問題が起きていなかったようなのだが、64MB のメモリで末尾が MW-64 のものなどで明らかな製造不良があったとはっきり書かれていた。そしてどうやら私のメモリもその型番に該当するみたいであった。

この告知は私が LaOX に買いにいったときには既にあったみたいなので、私かまたは LaOX の店員がよく調べてみれば、VN100 が危ないメモリだということが分かったのである。残念である。そして、ちょうど私がメモリを購入してから三日後に、SOTEC の e-note M260 シリーズのメモリ対応表がメルコから出されたのだが、そこには VL100 と書かれていた。

私はメルコ及び LaOX は明らかに悪いと思うが、何より一番悪いのは私だと承知していることをまずここで述べておく。なにせ動作確認の取れていないメモリを買ってしまったのは最も初歩的な間違いである。それをまず認めた上で言わせてもらうが、次に製造不良を起こしたメルコが悪い。

▼メルコ

メルコは製造不良の告知のなかで、交換に応じると言っていた。そこで私は、交換の可能性について考えてみた。というのは、メモリモジュールというのは確かに動作確認の取れた機種でしか動かないとメーカーが免責されてはいるのだが、モジュール自体は汎用的なものでなければならない。PC100 の SO-DIMM 144pin のモジュールとして売られているからには、電気的な欠陥は明らかに欠陥である。

メルコはさすがに、少なくとも告知では、メルコが動作確認リストに入れていたパソコンで使えなかった場合に限る、と免責を訴えていたわけではなかったので、私のようなケースでも交換に応じてくれると私は思った。というわけでどうやって交換してもらえるのか見てみたところ、どうやら電話でしか応じていないらしい。しかもその電話が、平日のみで昼休みを除いていてしかも九時から受付開始で五時までに受付を終えてしまう。つまり勤務中または通勤中に電話をしなければならないのである。

結局私は交換を頼まないことにした。交換しない場合は、単純に考えて五千円の損失となるので(半分の 32MB が使えているので)、逆に言えば交換することによって五千円の手間が掛かれば、交換してもしなくても変わらない。勤務中に電話をして交換可能かどうかをたずね、父親のマシンについているメモリを来週末に回収し、それをメルコに郵送し、数日後にメモリモジュールを受け取り、その次の週末に取り付けなおす、という手間を考えると、とてもではないが面倒すぎて採算が合わない。

▼LaOX

LaOX は、私がメモリを買うときにはっきりと「動作保証しない」と言っているので、LaOX には少なくとも法的な責任は無い。しかし、VN100 の製造不良を知ることが出来たにも関わらず私にその VN100 を売ったわけだから、道義的に問題がある。それに、店員の VN100 と VL100 との違いについての説明は中途半端だったので、店員の商品知識が足りなかったことも確かである。

▼SOTEC

SOTEC の責任は立証できない。というのは、SOTEC はオンラインストアに売られている純正の周辺機器としてのメモリの型番にただ (VN100) と書いただけで、それがメルコの製品だとは必ずしも意味しないからである。ただし、その後一週間ぐらいしたあとで再び同じページを見てみたところ、ちょうどその (VN100) の部分だけが無くなっていた。やはりトラブルが起きたのだろう。

私は一度、SOTEC に対して問い合わせをしようかどうかとも考えた。というのは、純正の周辺機器としてのメモリの型番表示通りの物を買って動かなかったからである。しかし、私はこのメモリを SOTEC から買ったわけではないし、前述したとおり「メルコの VN100 が使える」との表示は一切ないので、SOTEC は責任を回避することが出来るだろうと思ったのである。ちなみに、SOTEC はメールでの問い合わせが可能なので、メルコの電話のみの対応よりは便利そうである。

■めでたしめでたし

というわけで私は、32MB でもメモリが増えるのだからいいや、とあきらめることにした。既にどうしようどうしようとここまで悩んだ分だけでも 32MB 分の苦労をしているようにも思えるし、さらにこれ以上手間をかけてまで 32MB を手に入れようとは思わなくなったからである。

まあそれで、運が悪かったとあきらめることが確定したわけである。運が良ければ、製造不良のメモリでも動いたらしい。メモリというものは、相性というものがあり、特に品質の悪いメモリの場合、あるマシンで動くものがまた他のマシンで動かなかったりすることもある。これは電気信号の微妙なタイミングだとかに左右されやすいことによるらしい。

…まてよ。ひょっとしたら、メモリを挿入するスロットを替えれば正常に動くかもしれない。このマシンには二つのメモリスロットがあり、そのうちの一つに既にメモリがついている。これは買った当初からついていたものである。このメモリをもう一つのスロットにつけかえ、買ってきた VN100 を元のメモリのついていたメモリスロットにつけかえたら…。

その予感は見事に当たってしまった。メモリをつけかえたあとに起動させると、マシンはちゃんと 128MB のメモリを認識した。なんともあっけない幕切れである。やはり精密な電気製品といえども、微妙な電気信号の誤差に左右されてしまう、アナログな宿命は逃れられないようである。

念のため一週間後にもう一度、いまだに 128MB 分のメモリが認識されているかどうかを確認してみたが、何の問題もないようであった。メモリが 128MB 搭載されているというイメージだけで、なにやらマシンの体感速度が上がった気がするからおかしなものである。

■おまけ 〜 Celeron の怪

ところで私は最初に、なぜ VAIO についていたメモリがこの SOTEC のマシンでは使えないのか、疑問に思っていた。この疑問はなおもあったので、ちゃんと調べてみることにした。

システム特に CPU を調べるときに有名なソフトといえば、H.Oda! 氏の wcpuid である。このソフトは、現在動作中の CPU の ID やキャッシュの容量や機能の有無や動作周波数などを細かく調べてくれるフリーソフトウェアである。

果たしてその結果は…。


Figure 1. wcpuid で調べた SOTEC M260TX2

驚いた。奇妙なのだ。まず動作周波数に注目してほしい。なんと FSB が 120MHz となっている。通常の Celeron は FSB が 66MHz であり、最新のモバイル Celeron は 100MHz である。FSB が 120MHz の Celeron というものは開発元の Intel のラインナップには存在しない。オーバークロックしているのだろうか。

会社の先輩の Hさんによると、CPU メーカーというものは、パソコンメーカーの注文に応じて特殊な仕様の CPU をまとまった量だけ作って売ることがあるらしい。少なくとも昔は、メーカー製パソコンの中には奇妙な構成のパソコンが珍しくなかったようである。

上の図を見て分かるのは、SSE が搭載されている点である。これは少なくとも、FC-PGA Celeron かモバイル Celeron の上位版のみにしか搭載されていないものである。しかし、FC-PGA Celeron は 533MHz のものが最低であり、動作周波数は 66MHz x 8 となっている。Intel のここ最近の CPU は FSB は可変だが倍率は固定である。8倍未満のつまり 5倍のような CPU は FC-PGA Celeron には存在しない。つまり、少なくとも通常のラインナップとして考えれば、モバイル Celeron であると特定できたことになる。しかし、前述の通りモバイル Celeron は 100MHz x 5 や x 6 のものが普通である。120MHz x 5 などという製品は存在しないのである。やはりこのマシンはパソコンメーカーが堂々とオーバークロックして売っているものなのだろうか。それとも Intel がこのような Celeron を特注で製造して卸したのだろうか。

FSB が 120MHz ということは、メモリも恐らく 120MHz 以上のクロックで動作していると考えた方が良いだろう。となると、VAIO では動いていた 66MHz 用のメモリでは明らかに動作不能であることが想像に易い。一方、100MHz のクロックで動くことが保証された PC100 のメモリでも、十分に余裕がなくては 120MHz では動作しないだろうから、怪しいメモリでは恐らく動作が微妙になってくるのではないかと思う。


Figure 2. おまけで私の古い VAIO ノートのデータ MMX Pentium 233MHz


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gomi@din.or.jp