37. 家庭内LAN (1999/5/6)


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なんというか、時間の経過というのは恐ろしいものである。去年の 12月初めごろに買った 5.4GB の HDD は当時 35,800円したもので、この値段はそれでも秋葉原で一番安いクラスの価格帯であった。高い店ではこれよりも下手をすれば一万円近く高い値段で売っているところもあったほどである。ところがいまは 27,800円である。4.8GB なら 21,500円である。これはツートップの価格だけを見ているのでなんとも言えないが、多分この店よりも安い店はいくつかあるだろう。

そして驚いたのは、10GB というノートPC にとってハイエンドだった HDD がなんと 54,800円という価格にまで落ち着いてきているのである。これはちょっと買いたい気になる。私はいま 5.4GB の HDD でがんばっているが、はっきりいってこれでは Windows を使うので手一杯である。私の需要が大きいというのもあるが、最近ジャンクで手に入れた仮想CD-ROM を作るソフトを使うと、ハードディスクはいくらあっても足りないのである。MP3 も CD-R に焼いて携帯するのはうざいので HDD の中に入れておきたい。10GB もの HDD があれば、まず MP3 は好きなだけ入れられると考えてよい。また、やるかもしれないゲームは全て仮想CD-ROM にして入れておくことができる。まあいまの容量でも AGE of EMPIRES と「モナモナ」を入れてあるのだが…。辞書の CD-ROM も一通り入れておくと便利だし、消してしまった Linux も復帰させたい。

ところが、デスクトップの HDD はすでに 10GB が最低ラインとなってしまっている。メーカー製PC やショップブランドの安いPC なんかでは 3.2GB の容量しかない HDD を搭載しているパソコンもまだ多く見かけるのだが、自作マシンを普通に組み上げる場合、すでに 10GB の HDD が 2万円以内で買えてしまう。

私の愛機ガルベスも、最近家に持って帰ってきたため、いつまでも 2GB のノート用 HDD を積んでおくのではなく 10GB 以上の HDD を積もうかなと考えているところであるが、相変わらず私が一番使うのは VAIO である。ガルベスは弟のゲームマシンと化しているのだ。弟のゲームが一区切りついたら、ガルベスをメインマシンにしようとも考えていた。ディスプレイも思い切って 19〜21inch クラスのものを買い、HDD も 10GB くらいのものを付ければ、メインマシンにふさわしいマシンになる。だが、やはり VAIO の方がいまのところ愛着があるし、特に不自由していないので、当分はこのままだろう。やはり私には VAIO の凝縮性が堪えられない魅力である。

ところで余談になるが、いま VAIO には、HDD の容量を落として値段を安くしたモデルがあるらしい。PCG-505SX に対する PCG-505SX/4G というものらしい。これには笑えた。6G の HDD が 4G になるだけで三万安くなるらしい。いまの私なら迷わず 6G の方を買うだろうが、あまりマニアックな使い方さえしなければ 4G で十分である。ちなみに、繰り返すが私の持っている VAIO PCG-737 に対する PCG-737/A4G は、逆に HDD の容量が増えて 4G になったバージョンである。これには非常に腹が立った。

話を戻そう。私の VAIO をメインマシンにするには他にも弱点があった。それは、バックアップデバイスがないことである。これまで、騙し騙しバックアップを怠ってきたが、ノートPC というのはいつどんな事故にあうかも判らない。これまでは、時々 VAIO を職場に持っていって、会社のリースPC やガルベスにミラーリング(同じファイルをコピーして二箇所以上に置いておくこと)していた。実質これでバックアップは万全であった。だが、そんなにいつもいつも持っていくのは面倒だし、いまは家に CD-R を搭載したガルベスがあるのだ。これを使わない手はないだろう。

やっと本題にきた。ここに来て私は、いま家に三台の PC があり、そのうちの二台は既にネットワークインタフェースカードを持っているという事実に気がついた。ということは、10Base-T のクロステーブルさえあれば、ガルベスと VAIO の間でのデータのやり取りは可能である。

まあそんな思いつきでもって、私は早速、地元にあるラオックス調布コンピュータ館へと向かった。この店は便利である。私の知る限り、この店は秋葉原にあるラオックス・ザ・コンピュータ館と、品揃えでは大幅に劣るものの値段に関してはほとんど同じである。

店にはネットワーク機器がそれなりに充実していた。これは驚くべきことである。なぜなら、調布という場所でありながら、ハブが置いてあるのである。私はせいぜいクロスケーブルくらいしか置いていないかと思ったが、行ってみて驚いた。クロスケーブルよりもストレートケーブルの在庫が圧倒的に多かった。しかも、ネットワークインタフェースカードもいくつもの種類が置いてあった。これなら、家にある母親の古い FMV 初代 DESKPOWER C にもネットワークインタフェースカードを差して、家庭内 LAN ができるんじゃないだろうか。値段を調べてみると、ISA の 10Base-T カードが 1,280円、10Base-T の 5ポートのハブが 2,800円と、予想よりだいぶ安かった。これはもう買うしかない。

恥ずかしながら私は、LAN 関係のハードウェアにはほとんど詳しくなかったので、購入前に店員に質問してみた。クロスケーブルを使うのと、ハブとストレートケーブルを使うのとは、同じことになるのか、という質問をしたところ、どうやらまったく同じである以上に、むしろクロスケーブルを使うより正当なやり方らしいということがわかった。

ここで知らない人のために説明しよう。パソコン同士でデータの交換を行うにはいくつかのやり方がある。昔からメジャーだったのは、シリアルケーブルを使う方法であった。これは、どのパソコンにも大抵ついているシリアル端子同士をシリアルケーブルで接続するというものである。だが、これでデータのやり取りを行うには専用のソフトを必要とするし、当時はデータのやりとりを行うにはフロッピーで十分だったので特殊な作業をするマシンしか必要としなかった。それから、パラレルケーブルといって、これまたシリアルケーブルと同じような端子とケーブルを使ってデータのやりとりをする方法もあり、これの方が送れるデータ量が多い。最近になってノートパソコンには赤外線による通信が可能になり、Windows 上でごく自然にデータのやりとりが可能にもなっている。

だが、現在企業のパソコンは大抵の場合 LAN で結ばれている。LAN とは Local Area Network の略であり、小さい範囲で現在 LAN は Ethernet と呼ばれる形式がメジャーになっている。これの便利なところは、二台のマシン同士ではなく、二台以上のマシンでデータがやりとりできることである。ちなみに、インターネットはこれの大きなものだと思ってよい。

Ethernet でデータをやりとりする時の基点となるものがハブである。というか、実は Ethernet は実は一本の線を中心に構成されるのが基本であり、マシンはその線のある一点につなげるだけで、他のマシンと自由にデータのやりとりができるような仕組みになっている。まあ現在ではそんな方式でやっているところは少ないので、ハブという機構を使うことにより擬似的にネットワークの中心を作り、各マシンはその中心に接続することでネットワークにアクセスすることができるように見せかけられている。

ストレートケーブルとは、マシンとハブとをつなぐためのものである。ハブは、各マシンとを結んでいるストレートケーブルを、一本の線にすることで Ethernet を作り出している。だから、もしハブを使わずに、マシン同士をストレートケーブルで結んでしまうと、マシン同士は一本の線ではなく輪になってしまい、そうなると Ethernet ではなくなってしまう。だから、その輪の1箇所を切らなければ、ネットワークとしての接続が成り立たない。そこで、クロスケーブルの出番となる。クロスケーブルは、私は詳しくは知らないので大嘘を書くことになるかもしれないが、恐らく二本ある線のうちの片方が断線されているのではないかと思う。

なぜ一本の線でなければネットワークにならないのかというのは理解に苦しむ人も多いと思う。たとえば糸電話の場合、輪になった糸の一点を紙コップにつけてピンと張れば会話ができる。このへんは、Ethernet の原理について説明しなければならないため、ここではこれ以上は説明できない。いや、できるだけ簡単に説明しよう。各マシンはデータを一本の線の両側に向けて放つ。もし他にデータを送ろうとしているマシンがいなければ、放たれたデータは全てのマシンに受け取られる。受け取った全てのマシンは、受け取ったデータが自分宛てのものでなければただちに捨てるが、自分宛てであれば受け取る。もし複数のマシンが同時にデータを送ろうとしたら、そのデータは重なってぐちゃぐちゃになるので、それを検知した各マシンは、ランダムな時間後に再び送ろうとする。そうするといつか自分だけがデータを送る状態になるので無事にデータが送られる。こういう方式だと、送ったデータが端まで来て返ってくる必要があるため、どうしても一本の線でなくてはならない。

話を戻そう。私の家にはパソコンが三台あり、そのうちの二台には既にネットワークインタフェースカードがあるので、もう一台の分だけ買えば家庭内ネットワークが完成するのである。そこで、古いマシン用に ISAバスのネットワークインタフェースカードを買った。ISAバスのカードを買おうというときに、私が話していた店員の隣の太った店員がボソリと「ISAはIRQの衝突が…」とマニアックなことを言っていたが、直接私に話し掛けていたわけではないのでそれ以上は聞かなかった。私も聞いていた話によれば、ISAバス用のカードは IRQ というものを必要とするのだが、カード同士で IRQ を奪い合うことがあり、互いに衝突するとうまく動かないみたいである。だが、この心配は杞憂に終わった。ただ、物理的には衝突した。拡張バスが全て埋まっていたので、友人から買ったチューナーカードを抜いたのだ。ガルベスにも下位互換のために ISAバスが一個だけあるので、あとで付けることにしよう。

ネットワークの実験は、この古い FMV と VAIO とで行った。ストレートケーブルが二本しかなかったので、三台での実験はできなかったのである。実験は Windows のネットワークファイル共有が使えるかどうかだけを試してみた。このファイル共有はいま一番必要なものである。これができれば、FMV や VAIO のデータをガルベスに持っていって CD-R に焼くことができる。

Windows のセッティングは非常に簡単だった。まあ、初めてやる人にとっては引っかかるポイントもあるかもしれないが、私は会社でなれていたのですぐにできた。実験が成功すると、エクスプローラ上で FMV から VAIO のファイルが、VAIO から FMV のファイルが見えるようになる。もちろんコピーも思いのままである。すばらしい。

あとは、ソフトウェアさえ整えば、家庭内で小さなインターネットを作ることもできる。たとえば、家の中にウェブサーバを立てれば、他の PC からブラウズできる。もちろんもっと突っ込んだネットワーク設定も必要であるが。まあそこまでやらなくても、互いの PC でメッセージのやりとりをするぐらいなら簡単である。家の各部屋に置かれた PC 同士でチャットをすることもできる。

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このコラムもようやく名前の通りネットワークに関することを書くことができた。まあ私にとってネットワークは特に重要な意味を持っているわけではないのでどうでもよいのだが、それでもネットワークは素晴らしい。ネットワークゲームも面白い。今回は、そんなネットワークの世界の最小単位を作った話をしてみた。
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gomi@din.or.jp