31. ジャンク (1999/3/31)

updated: 1999/4/9
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先日、半ばジャンクなパーツを買った。メモリである。普通の SDRAM 64MB PC100 CL=3 のメモリは現在九千円ぐらいするのだが、私が買ったメモリは五千円弱であった。怪しい匂いがプンプンする。だが、扱っている店はツートップである。メーカー名として ACT chip と書いてあったが、このメーカーがあまり信頼のおけないメーカーだからだろうか。ともかく、私はこの価格情報を AKIBA PC Hotline で見てから、心が動き出した。私の自作機ガルベスは 64MB 積んでいるのだが、色々と立ち上げるとスワップが多くなって嫌である。買おうか買うまいか。

いまメモリを買っておけば、いま幸せになれるほかに、次にクズマシンを作るときに、ガルベスからメモリを分捕れば、メモリを買わなくても最低限のメモリが手に入る。そういう計算もあった。それに、私は安いものには目がない。とにかく安いというだけで買う価値があると思えてしまうのだ。今回の場合、微妙なところである。あまりバリバリには使っていない自作機ガルベスのメモリを増設する意味は少ない。夏になれば RDRAM というものが出てくるみたいだから、この SDRAM は一年持たないかもしれない。K7 はこのままの SDRAM が使えるのだろうか。なんでも K7 は、これまでのメモリが同期信号の立ち上がり時だけに合わせてアクセスしているのに対し、立ち上がったあとに下がる時にも同期して、つまり倍のタイミングで読み書きするようである。これまでのメモリが物理的にそのまま使えるのかもしれないが、タイミングがよりシビアになって、これまでに売られているメモリは使えないだろう。一応少し期待はあるのだが…。

そうこう考えているうちに昼休みになってしまったので、名目として、秋葉原駅の電気街口の近くにあるカレー屋にカツカレーを食べにいくとして、時間が余ったら店に行くことにした。ところが、そのカレー屋がなぜかその日は異様に混んでいて、仕方なく私はツートップに向かった。

ちなみに、私が気になっていたのはメモリだけではなかった。かなり怪しいが機能豊富で安いマザーを AKIBA PC Hotline で見たからだ。そのマザーは VGA もサウンドも NIC(LANカード) もモデムもオンボードで、それでなんと 13,800円である。このマザーを使って PC を組むとすれば、ケース一万、CPU 一万、HDD 3.2GB なら安いところで一万で手に入り、メモリは普通は一万だが今回見つけた怪しいメモリなら五千円なので、合計五万円で PC が作れる。しかも Celeron 366MHz クラスのマシンである。

まあ私は K6-III か K7 マシンを作る日が来るまで PC の自作は戒めているので、このマザーボードは記憶から一時消すことにした。私の足はツートップへ向かっていた。店に入ってまず小物類を物色した。すると、私が前に買い忘れた FDD 用のスマートケーブルが 980円で売っていたので、まずはこれを確保した。その後、メモリの価格表をにらみながらしばし考えていたが、スマートケーブルを買うついでに店員に聞いてみることにした。
「あのメモリの横に書いてある ACT chip というのはメーカー名でしょうか?」
「…えーと、そうですね」
もう、一度言ってしまったのでついに私は勢いで
「それください」
「どれですか?」
「PC100 で…」
「何メガですか?」
「64MB のやつです」
「(店員がチップを袋に詰めながら)このメモリは、32M のチップを使用していまして、相性が激しいのですが、それでも構いませんか?」
「…大丈夫です」
何が大丈夫なんだか分からないが、私は「かまいません」と言う代わりについ「大丈夫です」と言ってしまった。ともかく無事買い物は終わった。

ところで、私の前の客が、なぜか店に SIMM が何枚あるか聞いていて、買い占めんばかりに買っていった。いまさら SIMM なんて必要なのだろうか。ところが、あとで友人とのメールでこのことを話したら、彼のバイト先の会社の社長が
「そろそろ SIMM 終わりそうだから買ってきて」
と部下の二人に買い物を頼んだらしい。私が見た客も二人連れだった。ひょっとすると、私が見た客はその部下の二人かもしれない。奇妙な偶然もあるものだ。もっとも、SIMM が無くなりつつあるのは事実で、別の会社でも急いで買っておこうとしているのは十分考えられる。

ところが後日、この話が彼の冗談であることが分かった。彼が勝手に自分で、二人の男がメモリを買いに来る理由を考えただけなのだそうだ。それから、彼のバイト先の社長は、部下には絶対にこういう買い物は頼まないだろう、と言っていた。その理由は、彼のバイト先の社長は秋葉原が大好きな人なので、部下に買い物に行かせるぐらいなら自分で行ってしまうだろう、ということである。

で、私は次の日の夕方にメモリを自作機ガルベスに付けてみた。ついでに、ずっと前に買い置きしてあった IDE のスマートケーブル二本も付けてみた。私の自作機ガルベスは、MicroATX の中でもかなり小さい部類のケースを使っているので、中が非常に狭いのは前のコラムでも書いた。ケース内部が狭いと、空調が悪くなって熱がこもってしまうので、まず IDE のフラットケーブルをスマートケーブルに換えようと思っていたのだ。ところが買ったあとで気づいたのだが、FDD のフラットケーブルを買い忘れてしまい、一本だけフラットケーブルなままなのは格好悪いし面倒だったので後回しにしていた。あとで考えると、ケーブルにも初期不良があるので、一週間以内に調べてみる必要があったのだが、どうでもよかったので放っておいてしまった。

メモリの方は無事使えた。使えないかもしれないと思っているうちは不安だったが、一度使えると分かるとそれ以上の感動は無かった。だが、このメモリを破格値で買えたことはいま考えても素晴らしい。CL=3 のメモリだったが、CL=2 の設定でもちゃんと動いてくれた。だが、今日調べてみたら、さすがに FSB=100MHz では CL=3 でないと動いてくれなかった。このへんは仕方が無い。

それにしても、このメモリはさすがにいかがわしい外見をしていた。普通のメモリモジュールはメモリチップが片面に八個付いているのが普通なのだが、このメモリは両面に付いている。しかもチップのサイズが多少大きい。隣に差してある普通の SDRAM と比較してみると一目瞭然である。

(写真掲載予定) (友人に USB カメラまで貸してしまったため、しばらく撮影不能)

なぜ両面合わせて 16個ものチップを貼りあわせてあるのか。恐らく、このチップは本来 32MB のメモリに使われるもので、だから倍の量のチップを貼りあわせることで 64MB にしていたのだろう。おそらく、既に 32MB のメモリは需要が下がっており、在庫のだぶついたチップを売りぬくために無理矢理両面に載せることで 64MB のメモリにしたのだろう。だから相性の問題とかもあるに違いない。もっとも、初期に流通していた 256MB メモリも、同じような方法で 128MBit チップを両面に張りつけていたものだったような覚えがある。

それにしても 64MB のメモリが五千円とは驚く。私が最初にメモリモジュールを買ったのは 1993年頃だから大体五六年前なのであるが、当時は 2MB のメモリが 2万円だった。これでも恐らく安い方だろう。当時のパソコンは DOS を使っており、640KByte 以上のメモリを扱うには EMS という手法でバンクとして利用するしかなかった。つまり、640Kbyte 以上のメモリは搭載していてもソフトが対応していなければ無意味だったので、普通のパソコンは 640Kbyte あれば使えていた時代である。当時の NEC の PC9801 の上位機種が 1.6MB くらいしかメモリを積んでいなかった気がする。で、私の買ったメモリはこれでも安くなってきた頃のものなので、この半年前はさらに倍くらい高かった覚えがある。まあ私が買ったメモリは 1MB で一万円である。今回私が買ったメモリはなんと 1MB で 78円である。この五六年でメモリの値段は実に 1/100 以下に下がってしまったのだ。時代の流れはすごいものである。ついでに言えば、一年前の Intel 最速の CPU が PentiumII 333MHz だったことも申し添えておく。

そんなこんなでメモリはめでたく使えた。そのあと面倒だがケーブル類をすべて交換した。これまで使っていたケーブルは、フラットケーブルと呼ばれる、平たくて幅広くてかさばるものだったが、今回交換したスマートケーブルは丸くて太目のコードになっているため、ケーブルの取り回しが非常に楽である。もちろんケース内部の空気の流れもよくなるだろう。そう思って温度を調べてみたのだが、結果はあまり変わらなかった。残念である。少なくとも 300MHz の定格クロックでのケース内温度は前とほとんど変わらなかった。450MHz のオーバークロックでの動作だと多少改善されているかもしれないので、これから調査する予定である。

このケースはケース内の換気についてあまり考えられていないのではないだろうか。とまあ現在の結論はこうである。

その後の調査により、スマートケーブルはこのケースではほとんど熱対策の効果が無かったことが分かった。見た目は確かに涼しくなったのだが、今日普通に使っていたらあっさり CPU 温度が 55度を越えてしまった。

*

私が IDE のスマートケーブルを買ったのはソフトクリエイト FM 館である。これまで私は、もし安く売っていたらスマートケーブルを買おうと思っていたが、なかなか安く売っているところが無かったために見送ってきた。買ったのは、安かったからと、そもそもこの店に来た目的である MITSUMI の CD-R があまりに安かったため、他に買い物をしないと悪い気がしたからである。

この MITSUMI の CD-R は AKIBA PC Hotline でも取り上げられていたほど安い注目商品である。CD-ROM drive で安くて安定した製品を作ってきた MITSUMI が、ついに CD-R に進出し、この値段で攻勢を掛けてきたわけである。SCSI ではなく ATAPI 接続のドライブなため、安定性に関して若干未知数な点があるとはいえ、商品として売られている以上特に問題はないはずである。それに、私は自作機ガルベスに MITSUMI の CD-ROM drive を既に装備してあり、このドライブは特に問題なく動作している。しかも家にある FMV にも MITSUMI 製ドライブが使われている。

この CD-R drive はやはり人気商品らしい。Flip Flap では早く売りきれてしまったらしい。私が買ったソフトクリエイト FM 館よりも 2000円も高い値段で売りきれてしまって、そのあと二回再入荷していることからも分かる。まあ、Flip Flap はこの製品をあまり仕入れなかったからかもしれないが。

で、この 19,800円の CD-R drive であるが、私のガルベスには 5inch ベイがたった一つしかしかなく、そのベイは CD-ROM drive で占められている。仕方なくその CD-ROM drive を取っ払って、買ってきた CD-R drive を入れた。現在 CD-ROM は引き出しの奥深くに仕舞われてしまった。次にマシンを作るときまでとっておくか、友人が作るときに売りつけてやるか、どちらかになるだろう。

この CD-R drive には adaptec の Easy CD creator が付いている。B's gold というソフトが評判悪く、逆に Easy CD creator が評判いいみたいなので、これも狙っていた通りである。他の店では他のソフトが付属しているかソフト無しだったので、この店で買ったのは正解だったと思う。

肝心の動作のほうであるが、一枚目の CD-R を焼いたあとに調べてみたら、エクスプローラでの表示がすごい文字化けで焦った。なにが悪かったのか、ひょっとすると焼いている最中に CRT が省電力モードに入ってしまったのが悪いのだろうか? などと考えて、面白いから友人にその失敗作を見せてやろうと読み込んでみたら、なんどちゃんと読めた。この後の調査により、どうやら焼いた直後は不安定なようだった。ひやひやものである。

そんなわけで、私の MITSUMI の ATAPI 接続の CD-R drive は正常に動いている。安い買い物だった。まあ、まだそんなに時間がたっていないので、壊れやすいのかもしれないが、それはこれから分かるというものだ。

このあと二回、CD-R を焼くのに失敗した。一回目は恐らくメディアの不良で、音楽CD を作ってみたのだが音が揺れていた。これは恐らく、メディアが歪んでいたためだろう。二回目は、焼いている途中で Windows が固まりかけたせいである。

*

CD といえば、最近私のオーディオセットの CD Player が壊れた。pioneer 製である。かなり前に買った物なので、そろそろ壊れてもおかしくないな、と思って、電気街へ買いに出掛けようとまで思ったのだが、その前にどうにかして直せないものかやってみようと思い立った。

どうせ壊れているのだから、多少手荒に分解しても構わないだろう、と思って何の緊張も無く私は CD Player の蓋を開けた。で、まずは CD の読み取り部分にほこりが付いているのではないかと思って、ほこりを取り除くためにゆすってみた。すると、何やらカラカラ音がするではないか。何があるのか見てみたら、何やらプラスチックの丸いものである。それはなんとレンズだった。CD は表面にレーザー光を当てて、反射してきたレーザー光を読み取って音を出したりデータを読み取ったりするのであるが、そのレーザー光を CD の孔に正しい焦点で当てるためにレンズが必要になる。どうやらそれがこのレンズなのではないかと予想はつくのだが、そのレンズはともすればガンプラ(機動戦士ガンダムというアニメのプラモデル)のザク(ロボット)のモノアイ(目玉)にそっくりのやすっぽい代物であった。私はこの時点で半ばあきれていた。

ひょっとするとこのレンズは、私が CD Player をゆすっているうちに取れてしまっただけなのかもしれないのだが、このレンズがちゃんとついていなかったことが原因で CD が聞けなくなっているのかもしれないので、念の為に元どおり付けておくことにした。もちろん接着には弟から借りたプラモデル用接着剤を使用した。ちなみに、この CD Player の動作不良の症状は、入れた CD が最初はうまく回っている音がするのだが、さあ音が出るぞという直前になって CD が回転をやめてしまうのである。だから、レンズを付けたぐらいで直るわけはなく、恐らくモーターが疲弊したためにおかしくなったのだと私は思っていた。事実私の以前使っていた panasonic の CD-ROM もモーターの力が無くなって壊れたみたいだった。

で、レンズを接着して、弟の助言に従って「完全に乾くまで 8時間くらい置いておいた方がいいよ」ということでその日は寝ることにした。翌朝起きて早速動かしてみると、あっさり音が出た。もう笑うしかない。

恐らく、技術者に来てもらった場合、来て調べただけで五六千円は掛かり、レンズが原因だと気づいたら恐らく念の為レンズを新しいものに交換するだろうから部品代も掛かり、まあ最低でも六千円はしただろう。前に sharp のビデオデッキが壊れたときには一万九千円も掛かったから、実際はもっと技術代は高いかもしれない。

だから、私が思うに、壊れた家電製品の大部分が、ちょっとした修理で元どおりに使えるのではないかな、などと思うのであった。

*

ちまたでジャンクの HDD が売られており、その HDD はケーブルが一部切られている。これは噂によると、企業が情報漏洩を避けて故意にケーブルを切って処分したものであるらしい。これも、ハンダを使えば元どおり使えるものが多いようである。

そういえば忘れていたのであるが、パソコン工房秋葉原一号店で、Norton AntiVirus と Norton CrushGuard と VirtualCD という英語版のソフトがセットになって 500円で売られていた。私は特に VirtualCD というソフトに気を引かれて、その残り一つしかない箱を急いでレジに持っていって購入したのだが、購入の際に店員が「ジャンクですがよろしいですか?」と聞いてきた。もちろん答えは「yes」である。その後インストールだけはしてみたが、まだ VirtualCD は使っていない。他の二つは一応使えているみたいである。VirtualCD がちゃんと使えたら、かなり良い買い物をしたことになるだろう。同じようなソフトをちゃんとした製品で買えば確実に 5,000円以上はするものである。ただ、私の会社のマシンで DELL の OptiPlex には、なぜか全くインストールが出来なかった。

*

バルクはジャンクではないが、ジャンクに類するぐらいに怪しいものみたいである。バルクとは、箱ではなくビニール袋などの簡易包装で売られている商品である。私は PC-DIY 誌を読んでから、バルクにはなるべく手を出さないようにしようと思った。現に、ATI の最近のビデオカードのバルク品は、クロック設定が低めで、性能が落ちるようである。まあ、バルクと承知で買う人は、はなからそんなことは承知で買うので、自己責任でクロックを普通の製品版程度に上げたり、上げて不安定になったらギリギリ安定する程度までクロックを上げるようである。

まあ、私が買った MITSUMI の CD-R もバルクなので、こういうバルクは選択肢に入れるべきだろう。メモリもなんとか使えたので、私のバルク買いは今回は成功である。ただし、私が次に買うマザーでそのメモリが使えるとは限らないことを考えなくてはなるまい。


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