20. パーツ (1999/1/22)

(updated: 1999/1/29, 2000/4/11)
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この回の話は、前回の「超自作マシン」の続きである。前回を少し読んで詰まらないなと思った方は読まない方が良い。

前回の話だけを読んだのでは、パソコンを個々のパーツから自作することの、楽しみの部分しか伝わってこないのではないかと思う。だが、自作となると当然トラブルはつき物である。今回は、実際に組んでみた上での苦労話や問題などを伝えていきたいと思う。

問題の起きた順に話していっても良いのだが、パーツごとにそれぞれ語っていきたいと思う。

まずパソコンといえば CPU である。私の買った CPU は Intel の Celeron 300AMHz (Slot-1用) リテール版である。この CPU は、いまではもうほとんど売られていない。リテール版でなければ、つまりバルクならばまだ入荷する予定のあるショップがそれなりにあるみたいである。私が買った日は 1999/1/13 であるが、その一週間後に電気街の主要な店、OVERTOP, TWO-TOP, FlipFlap, DOS/V パラダイスに行ってみたが、リテール版を売っている店は無かった。バルク品ならまだ残っている店もあった。TWO-TOP ではちょうど品切れで、次の日にならないと入荷しないとのことらしかった。
(PCアドバンスドなどの店で発見した。探せばまだ間に合う)

なぜこの CPU が人気なのかということは前回も説明したとおりである。オーバークロックが簡単に出来て、安く手に入るからである。いや、マニアにとって値段は関係無い。この CPU の魅力は、オーバークロックを行うときに最大のネックとなる二次キャッシュが存在しない点にある。だから、PentiumII よりもクロックアップ耐性が高い。二次キャッシュのネックさえなければ、あとは発熱による熱暴走や、マザーや周辺が高クロックについていけるかどうかが問題になるだけで、それさえ克服すれば 600MHz を超える周波数で動作させることが出来る。もちろんここまで行うには、常識を超えた冷却が必要になり、大型の放熱フィンやファンは常識として、たとえば電気を流すことにより冷えるペルチェと呼ばれるものを利用したり、冷凍庫の中にマシンのパーツを入れたりしているマニアもいる。

そんなマニア心をくすぐる CPU も、ついに生産停止になってしまったようである。Intel は 300/333MHz の、特に Slot-1 用の Celeron の生産をやめ、Socket370 用のものや 366/400MHz のものだけを生産するようになった。これはつい最近の動きであり、私が Celeron を買った時期は非常に良かった。恐らく、最も値段が落ちていた時に買ったと思われる。私が買った店はパソコン工房であるが、この店でちょうど一週間後に行って見たら、なんと二千円近く値上がりしていた。ちなみに、なぜ 300/333 が良くて 366/400 が駄目かというと、366/400 をクロックアップすると 550/600MHz になってしまい、こうなると常識的な冷却が通用しなくなってしまうからである。ベースクロックを 100MHz ではなく 95 や 83 などにすることでクロックを落とすことも出来るが、基本的にはベースクロックが高ければ高いほど良いのである。
(パソコン工房などの店では値上がりしていたが、PCアドバンスドなどの店ではまだ 9,979円くらいで売られていた)

私の同僚の友人が、私と同じタイプの Celeron を欲しがっていて、同僚に買ってきてくれるよう頼んだのであるが、彼はリテール版にこだわった。バルク版に手を出さないということは、私と同じ自作の初心者だと思われるが、こんな初心者にさえもオーバークロックの魅力が伝わっているのである。うっかり CPU やマザーなどを壊さないよう願いたいものである。

次はマザーボードの話になる。いまのところ私のマザーは非常に調子が良い。だが、そんなマザーにもちょっと文句を言いたいことがある。それは、ベースクロックを 66 と 100 の中間には設定できないことである。これでは、66 で普通に使うか、いきなり 100 でつまり 1.5倍のクロックに上げるか、またはそれ以上のクロックを設定するか、という選択しかないことである。私のようなチキンにとってみれば、オーバークロックはしたいがリスクは犯したくないので、せめて 83MHz くらいの設定があってもよいのにと思った。が、当然そんな周波数は保証外なのでしょうがない。ちなみに Celeron を 100MHz で動作させることも当然ながら保証外なのであるが。

私のマザーボードには、YAMAHA の YMF724 という評判の良いサウンドチップが載っている。これは、もう一年くらい前から評判の高かったチップなので、いまからするともっと良い製品があるのだが、このチップでの MIDI の再生にはかなりの定評があるようである。私も今日聞いてみたが、本当にいい感じで、特に管楽器や打楽器の再生には素晴らしいものがある。ただし、ベースやピアノが弱いのは否めない。私は五年以上前の MIDI キーボードを持っているが、基本的にはこちらの方が音が良いのは確かである。もっとも、私のキーボードが同時再生音数 24voices,16parts なのに対して、YMF724 は 64音を再生可能である。さらに Software MIDI である YXG50 を組み合わせることで 192音まで再生可能である。私は自分のマザーを選ぶにあたって、この YMF724 がオンボードであることに非常に重点を置いていたので、この期待が裏切られなかったことにまず良しとしたい。ただし、他社製のチップの音と聞き比べてみたわけではないのでなんとも言えないのであるが。

私が ZOA で買った CD-ROM drive は、回転始めに不吉な音がする。チリチリ、というのである。なにが原因かわからないが、とりあえず CD-ROM に傷がついているわけではないので、そのまま使っている。それから、この CD-ROM drive は、買った当初から設定が IDE の Slave になっていた。普通は Master なのに、である。まあこれは些細な問題なので問わないことにする。下手をするとバルクではなく中古なのかもしれない。
(MITSUMI の 32倍速は危ない、という噂を友人から聞いた。実際のところはどうか分からない)

ビデオカードは、前回書いたように、今回の買い物の中で最も失敗したと思われていたパーツであるが、ここに来て一番の座を奪われた。ATI は 3D よりも MPEG 再生に主点を置いていたり、前にも言ったように画質がソフトで目にやさしいことで知られている。これはこれで良しとしよう。Final Reality という素晴らしいベンチマークテストで性能を調べてみたところ、私の購入候補にあった S3 ViRGE/VX より 2D/3D で性能が一段階くらい高かったので満足した。しかし、同じ ATI でも 3D RAGE Pro と比べると、2D ではそんなに違いがないのだが、3D では倍ぐらいの差があって驚いた。これはある意味仕方がないのかもしれない。昨日 FlipFlap で特価品にあった 3D RAGE Pro は 12,800円したのだから、価格と性能を考えるとよくやっていると言える。ちなみに、私の持っているビデオチップはあの iMac と同じである。iMac に載っているビデオメモリが 2MB なのに対して、私のカードは 8MB も積んでいるので、私のカードの方が性能が良い。6,800円はそれなりの値段なのかもしれない。

ATI のビデオカードは実はかなりのシェアを持っている。会社のリースマシンにも採用されている。というのは、実際の理由は知らないが、マザーボードメーカーの話によれば、ATI のビデオチップが動かないようなマザーボードは考えられず、ATI のビデオチップはマザーボードとの相性を考える必要がないそうである。一方、他のチップを採用したビデオカードでは、マザーボードの相性で使えない可能性もあるので注意が必要なようである。

ATI のビデオカードは、性能的に見るとそんなに特徴はないが、安定しておりそこそこの性能を持っている。3D RAGE Pro は大抵の 3D ゲームをそれなりにプレイできるようである。ということは、私の 3D RAGE IIC はこの 3D RAGE Pro の半分しか 3D 性能がないので、最近のゲームはまず出来ないと考えた方がよい。だが、画質がソフトで見やすく、安定していて発熱が少なく、玄人好みのカードであることが分かった。

というわけで、結論を言うと、普通に低価格でそれなりの性能を持つビデオカードを買いたい人は、RIVA128ZX や S3 Savage3D などのカードが 3D 性能も高くしかも安いので良いように思われる。3D 性能よりもどちらかといえば 2D 性能を優先させたいのならば、MGA G100 を搭載したカードがいいかもしれない。このカードは画質がシャープで文字が見やすいと評判で、最新の 3D ゲームで遊ぶことも出来る。パソコンを長時間使って目が疲れやすい人は ATI のチップを採用したビデオカードが良い。画質がソフトで見やすい。最近の 3D ゲームをやりたければ 3D RAGE Pro を、興味がなく予算もなければ廉価で一世代前の RAGE IIC を買うといい。最新のゲームをやろうと思えば RAGE128 を搭載したビデオカードも出ているのでそれも良い。

ただし、このビデオカードは見事に初期不良を起こした。その兆候は最初は、画面の白い文字が所々紫色になることから始まった。そしてついに、通常の画面にキャラクタ文字が一杯にあふれ、使い物にならなくなった。私はまずビデオカードを静電気で壊したのかと心配した。そのあと、より悲観的になって、ひょっとするとマザーを壊したのかとも思った。だが、店に行ってみたらどうやら初期不良だということが分かって交換してもらった。心配させてくれるものである。
(ひょっとしてこれは初期不良ではなく、AGP に 100MHz 掛かっていたから壊れたのではないか?と最近の知識で思い出す。ATi のビデオカードは高クロック耐性が高いと言われているので、そのくらいで壊れるはずはないと思いたいのだが…まあもしそうだとしても、この店であれから高いアルミケースなども買っていることだし、忘れることにする。)

さてここらで一番の難物について語ることにしよう。それは「ケース」である。私のケースは、MicroATX の中でもかなり小さい部類のケースを買ってきた。にしてもこのケースは曲者であった。熱がこもりやすいのである。ケースが小型なため一応覚悟はしていたのであるが、まさかここまでとは思わなかった。

よくよく調べてみると、ケース自体の容積が少ないことに加え、背面にファンを付けるスペースがまったく無いのである。それから、他のケースを見てみると背面上部には小さい溝がつけられていて、そこから熱が逃げるようになっているのであるが、私のケースにはそんな溝も無かった。極めつけは、電源ファンがなんと排気ではなく吸気だったのである。背面にあいている穴は電源ファンのものだけなので、ここで排気しなくては、熱をどこに出すのだろうか。

仕方がないので私は、自作初心者の分際で、電源を外して分解し、ファンを逆に付けかえることにした。だが、もともとこの電源は吸気ファンを想定しているらしく、電源内の突起物などで排気が思うようにいかない。だが、吸気のままよりは冷却効率は上がった。これには、ただ付けかえるだけでは済まず、紙でスペーサーを作って挟み込む必要があった。そうしなければ、ファンを逆にしただけあって、ファンが通気口の網に引っかかるのである。

電源ファンを付けかえる前に、ケース前面下部にオプションで吸気ファンを買ってきて取り付けてもみた。これは、はっきりいってうるさいだけでほとんど冷却できなかった。それもそうで、いくら冷たい空気を入れようとしても、暖かい空気をどこかで排気しない限り意味がないのである。一般に、排気を吸気より多くしたほうが効率が良い。

ところで、私のマザーボードには、CPU やマザーの温度をモニタする機能がある。EPoX 社のマザーボードは初心者に受けているらしいが、簡単なインストールプログラムにより、Windows 上からも温度をモニタできることには素直に感心した。だが、その温度が 50度に近づくにつれて私はナーバスになった。

ちなみに Celeron の動作保証は 20〜80度のようである。だから、50度くらいならばまだ余裕がある。マザーボードはそれよりも温度の耐性が高いようであるから、何も問題はないはずである。しかし、マザーボードに最初から設定されていた警告温度が 50度であったため、私の中の基準では 50度を越えたら危険だと思わなければならない。とある計算によれば、Celeron に標準のファンをつけた状態では、CPU の温度はケース内温度に 22.8度を足したぐらいになるようである。真夏に外ケースを外した状態で動かした場合、たとえば室温が 37度ぐらいあるとすると丁度 60度ある計算になる。Celeron は 80度までは絶対安全だと Intel が保証しているので、ケース内温度は 57.2度まであがっても大丈夫だということになる。57.2度といえば、手で触ると間違い無く熱く、5秒と触っていられないようである。だから、よほどのことがない限り全く平気である。

問題はオーバークロック動作させているときである。Tori-San 氏のページによると、クロックを高く動作させているだけで CPU の消費電力が上がり、また高クロックで動作させるために電圧を上げているとさらに消費電力が上がる。通常は 20W ぐらいだが、電圧 2.05V くらいで 450MHz 動作させた場合に大体 30W 弱くらいになる。そうなると、計算では CPU 温度は 60度以内でなければ安全とは言えなくなる。すると通常のファンを付けた状態ではケース内温度は 37度以内でなければならなくなる。

この計算は何を意味するのだろうか。少々ケースが熱くなっても全然かまわないということだろうか。私の小さいケースでも、マザーボードの CPU 温度のモニタ値で 60度以内であれば安全なのだろうか。マザーボードの温度計を前面信頼するのであれば問題はないだろう。だが、そんなに簡単に信用してよいものなのだろうか。私は、熱いケースを前にしては冷静ではいられなくなる。

このようにすぐ熱くなる私の自作マシンに対して、同僚が良い名前をつけてくれた。その名は「ガルベス(Galvez)」である。

このケースに関してだが、買ったあとに FlipFlap に行くと、値段は 9,800円と私の買った値段と同じなのであるが、張り紙がしてあって、BEEP音用のスピーカーをレジで渡します、と書いてあった。つまり、このケースは標準では BEEP音用のスピーカーは付いていないようなのである。まあいい。このケースは、これらの欠点を差し引いても、まだデザインの良さで優れている。

そんなわけで、自作は楽しいことばかりではない。問題も起こるものらしい。だから、自作してみたいと気軽に思うことは良いことだが、その後に起きるかもしれない問題についても多少の覚悟が必要なようである。私の場合、店まで職場から五分で行けるので、初期不良の交換も早かった。それに、店が相談しやすい良い店だったことにも助けられた。電気街のパーツ店の多いあたりの店は、中が狭くて客があふれ、店員も個々の客に長いこと時間を掛けていられない、みたいな雰囲気の店では、初期不良を申し出ることも気が引けてしまうものである。特に初心者は店員の態度に尻込みしてしまうかもしれない。だが、そのくらいの覚悟はやはり必要なようである。

脅かしているみたいなので、一つだけ良いことも言っておきたいと思う。逆にいえば、パーツ類を自分で壊してしまうことはそんなに無いみたいである。よくありがちに思われるのが、静電気で電子部品を駄目にしてしまうことであるが、実際のところ静電気に弱いのはメモリくらいのもので、CPU はそれなりに頑丈に出来ているようであるし、私が初期不良を見せに行ったビデオカードも静電気で壊れることはまずほとんど無いと店員の人が話してくれた。一応乾燥しているときなどは時々大きな静電気を手などに帯びてしまうこともあるのだが、そうでなければまず問題は起こらないだろう。話が多少飛ぶが、VAIO の増設メモリは小さくていかにも静電気の影響を受けやすそうで、説明書にも注意書きが書かれているのだが、逆にいえば普通の消費者でもちょっと注意すればまずメモリなどを壊してしまうことはない程度のものだということである。


 
私の買ったパーツ類
パーツの種類 値段 パーツの名前 満足度
ケース 9,800 EN-7130 (MicroATX) 80 (小さい・デザイン良好・熱こもる)
マザーボード 15,800 EPoX EP-61BXC-A 440BX AGP-set 95 (温度センサは便利)
CPU 9,980 Celeron 300AMHz S.E.P.P. BOX 95 (コストパフォーマンス最高)
ビデオカード 6,800 CARDEXPERT ATI RAGE IIC 8MB SDRAM AGP 75 (安い・3D性能低い・画質よい)
メモリ 10,200 PC100 64MB CL2 ?
ハードディスク (980) 2.5inch <=> 3.5inch 変換アダプタ&マウンタ 40 (電源コネクタが不完全)
CD-ROM drive 4,980 MITSUMI x32 60 (安いがチリチリいう)
FDD 2,980 TEAC 2mode (3mode driver あり) ?
キーボード 2,980 Maxpoint 106keys 80 (安い・軽い・造りが良い)
マウス 1,580 A4TECH Wheel x2 Mouse 95 (かなり安い・超便利)
LAN adaptor 3,980 Acer 10/100BaseT 70 (Wake on Lan ない)
ディスプレイ 34,800 17inch Hansol701A (Outlet) 90 (安い・画質に文句なし)
合計金額(税抜) 104,860
合計金額(税込) 110,103

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gomi@din.or.jp