18. リアルタイムストラテジーゲーム (1999/1/8)


戻る前回次回

いきなり「リアルタイムストラテジーゲーム」と言っても、普通の人には何のことかよく分からないだろうから、まずはこの言葉の解説をすることにしよう。

リアルタイムストラテジーを英語で書くと、Realtime Storategy なのであるが、Realtime というのはつまり「実時間」である。これではまだ分かり難いだろう。よくある誤解は、たとえばいま現在ゲームをしている時間が 1999年1月8日の午後2時だとすると、ゲーム内の時間もそうであるようなゲームを指すものと勘違いすることであるが、いくらなんでもそんな勘違いをしている人を見たことがない。また、現実の時間で一秒たつとゲーム内でも一秒たったことになるようなゲームを指すのかというと、必ずしもそうではない。もっとも、リアルタイムというからにはそれがベストなのだろうが。どうでもいいことだが、筒井康隆の「虚人たち」という小説は、なんと読者の読む実時間と同じ時間だけ小説内時間が過ぎるという仕掛けになっている。それで、主人公が意識を失っていると、真っ白なページが続くのである。私はこの作品以降、全集の読破がストップしてしまった。

要するに「リアルタイム」なゲームというのは、ゲーム内の時間を、プレイヤーの操作によっては止められないようなゲームを指すものと思って欲しい。たとえば、有名なファイナル・ファンタジーというゲームでは、アクティブタイムバトルというモードが存在するが、このモードでゲームをすると、プレイヤーが何もキーを押さないとひたすら敵が攻撃してくるので、おたおたしていられず、ゲームの緊張感も増す。

ストラテジーという単語はあまり聞きなれないが、日本ではいわゆる「シミュレーションゲーム」と同義である。つまり、有名なところでは「大戦略」や「信長の野望」などが、いわゆる「ストラテジーゲーム」に当たる。なぜシミュレーションではなくストラテジーと言うのかというと、外国なんかで「シミュレーションゲーム」というと、いわゆるフライト・シミュレータなどの、現実の事象を細かく再現するようなゲームのことを指すからである。だから、囲碁や将棋なんかは、軍事ユニットとかは出てくるが、実際に司令官になってリアルな戦闘を指揮することを再現しているわけではないので、向こうではシミュレーションゲームとは言えない。シミュレーションは大体において反射神経が重要でアクション性が高くなるのだが、ストラテジーとは純粋に頭を使うものである。囲碁や将棋は少なくとも戦国時代の戦いや陣取りをリアルに再現しているわけではないが、頭脳を使ったゲームとしての完成度は素晴らしい。まさに古来からあるストラテジーゲームの名作と言えよう。

ストラテジーゲームをリアルタイムにする、とはどういうことなのだろうか。これはかなり訳が分からないかもしれない。たとえば、将棋をリアルタイムにしてみたらどうだろうか。まず、一人ずつ交互に駒を動かすこと自体が既にリアルタイムではない。しかも一駒ずつしか動かせないのもおかしい。そこで、リアルタイムな将棋というものがあるとすると、全駒がおそらく同時に動くに違いない。また、盤上を枠に従って一気に進むのも時間を飛び越えているみたいなので、出来れば盤上を自由に、枠の上をにじるように駒が動くことが望ましい。駒同士の戦いは、無論違いの駒が触れ合ったときに始まる。駒は八方向ではなく好きな方向に進めるので、どこで戦いが起こるのか分からない。もう無茶苦茶である。仮に将棋の駒を使っていたとしても、このゲームは既に将棋からかけ離れすぎている。だが、なんだか非常に面白そうではないだろうか?

*

リアルタイムストラテジーというジャンルのゲームがどのような歴史をたどったのか、残念ながら私は知らない。だが、私はゲームが割合好きなので、かなり古い時代のゲームもやっているのだが、残念ながらマニアというほどでもない上に、私が物心付いたときにそれなりにゲームという文化が出来ていたので、そんなに昔までかつ幅広くは知らない。そこで、私がどのようにリアルタイムストラテジーというジャンルと出会いプレイしてきたかを書きたいと思う。

私が最初にこのジャンルで出会ったゲームは、ファミリーコンピュータの「ナポレオン戦記」というゲームである。このゲームはおそらくマイナーだろう。私が思うに、ストラテジーゲームといったジャンル自体が、ファミコンではなくパソコンが中心となって作られていたと思うので、特にこのジャンルのマニアの方でもこの「ナポレオン戦記」というゲームについては知らない方が多いのではないかと思う。

このゲームは私の知るリアルタイムストラテジーのゲームの中でもっとも古いだけあってもっとも原始的なゲームシステムだった。まず、このゲームには二種類の画面があり、一つは戦略画面で、もう一つが戦術画面である。戦略画面上では、一つの部隊が一人の兵隊のアイコンで表されて、一度の面でそのような部隊が大体5〜8部隊ぐらい出てくる。敵はそれより多いかもしれない。プレイヤーは、部隊の移動方向だけを上下左右で与える。移動方向を与える方法は、矢印の形をしたカーソルを部隊アイコンの上になぞらせるだけである。矢印の方向をボタンで変えることが出来るので、プレイヤーは部隊の移動方向を好きに変えることが出来る。移動方向が決まったら、あとは勝手に進んでくれる。そして、相手の部隊と衝突したら、戦術画面に入り、部隊同士の戦いになる。

戦術画面では、まずフォーメーションを選ぶ。たとえば、正統派系から、特攻型、守り型だとか、あるユニットの特色を生かすようなフォーメーションがあったりする。部隊には特徴があるので、その特徴を生かして陣形を選ぶのである。

戦術画面でのユニットの移動は、基本的に戦略画面と変わらない。ただし、操作可能なユニットの数は桁違いに大きい。おそらく一部隊には百人以上もの兵隊が所属し、プレイヤーはそのそれぞれに対して指示を与えることが出来る。そんなにたくさんのユニットがいるので、指示を与えるための矢印の大きさは四倍に出来る。だが、戦術画面とはいえやはり基本的には「ユニットの移動方向」しか決めることが出来ない。

登場するユニットにはいくつかあり、それぞれ特徴がある。まず、このゲームがナポレオンを主人公にしていることから、この時代に初めて出てきた新兵器「大砲」がある。この大砲は非常に強力で、またユニットサイズも大きい。しかし、動きは鈍重で、しかも前進か停止しか出来ない。また、砲撃の方向も距離も固定されてしまっている。ただし、破壊力は抜群で、砲弾の着弾点に入ってきた敵を大体粉砕することが可能である。だから、敵味方の大砲が正面衝突すると、必ずどちらかの大砲が壊され、壊した方はそのまま正面突破できる。だが、砲弾は味方も巻き込んでしまうので、味方は大砲を守ることしかしないほうが無難である。

他に、鉄砲兵や騎兵がいたり、兵隊にも司令官や士官や下士官といった区別があり強さも違う。工兵は森林を切り裂く速さが高い。騎兵は移動が速いのだが、何故か上下方向にしか移動できない。

このゲームで私が好きだった点は、味方が敵の大砲などで壊滅的な打撃を被ったり、以前の戦いで疲弊してユニットの少ない部隊でも、敵の主力部隊を打ち破る方法があったことである。具体的にどうするかというと、画面の左右の端に部隊を集めて、相手の部隊の裏側に廻り込むのである。このゲームの戦闘の勝敗は、司令官を倒すことで決まるのだが、その司令官は大概画面の奥にいるので、その司令官を暗殺するための部隊を送り込むのである。もちろんいつもそう簡単にはいかない。司令官の周りには、強力な士官や下士官がいたり、鉄砲兵が護衛にいたりすることもある。が、敵がこちらの陣地に進軍していくに従って、敵の陣形がだんだん壊れていくので、後ろの方に敵の司令官がむき出しになることがあるのである。そこを狙ってこちらの、特に鉄砲兵がいると心強いのだが、まんまと進ませて倒してしまうのである。

ほとんどの人が知らないだろうゲームを長々と説明したのは良くなかっただろうか。私自身が懐かしみながら思い出しているうちに調子に乗ってしまったようである。

*

私が次にプレイしたゲームは、本当は「ロードモナーク」なのであるが、ゲームの歴史から見ると、私がその次にプレイした「ファーストクイーン」の方が古いので、まずこちらから解説することにする。

ファーストクイーンというゲームは、厳密にはシミュレーションロールプレイングに属するゲームかもしれない。一度に戦うことの出来るユニットは確か 16人ぐらいである。16人で一部隊で、マップ全体で何部隊か持つことが出来る。ファーストクイーンというのはシリーズ化されていて、私がプレイしたものは多分何作か目だと思われるが、そのゲームでの最終目的は、マップの奥にある平野で敵の最終部隊を打ち破ることだった。

マップはなんというかツリー状になっており、プレイヤーの本拠を根に、奥へ行くほど枝分かれしていき、ある程度までいくと今度は最終目的地へとすぼまっていく。プレイヤーは部隊を自由に進軍させていくが、それに合わせて敵の部隊も進軍してきたり、敵の拠点から生まれてきたりする。

戦闘は単純で、敵の部隊を全滅させれば終了である。確か、プレイヤーは各ユニットの移動目的地を指示するだけで、自動的に進んだり、敵を倒してくれたりする。戦闘マップは地形によって異なり、たとえば広い平原だったり、狭い峠道だったり、あるいは敵の拠点では敵の砦があって、敵には砲台があったりする。

前述の「ナポレオン戦記」と大きく異なる点は、ユニットがクラスチェンジすることである。普通の兵隊は、敵を倒すたびに経験を積み、レベルアップしていく。そして一定の段階まで来ると、クラスチェンジさせることが可能になり、強力なクラスの低レベルなユニットに生まれ変わる。種族によっては何回かクラスチェンジできたりする。だから、ただ進軍していくと、どんどん敵が強くなっていくので、部隊を強くするために経験集めが必要になるのである。そこが、このゲームをして「シミュレーションロールプレイング」と言わせるゆえんだろう。それから、このゲームのマップ画面(戦略画面)はリアルタイムではない。

はっきりいって、このファーストクイーンは、リアルタイムストラテジーというジャンルに含めるには妥当ではない気もする。が、部隊同士の戦闘が始まれば、少なくともその最中では紛れも無くリアルタイムストラテジーであるので、ここに含めることにした。ユニットを育てるという点もなかなか良かった。マップ画面でも、自分たちの拠点を守るために部隊を駐屯させたりする必要があり、また敵の拠点を落とすときは地形的に不利だったりして、攻め落としたくなるものである。部隊編制もすることが出来るので、強い部隊や、バランスの良い部隊を作るには良い。また、敵が降参することがあるので、それによって自分の部隊を強くすることが出来るし、降参した敵のユニットだけの部隊を作るのも面白かった気がする。回復ユニットや魔法を使った遠隔攻撃ユニットもいた。そういえば、魔法使いだか召喚士だか忘れたが、ユニット一人で一部隊になるような部隊があり、そういう部隊では魔法使いがユニットを召喚して戦うのだった気がする。

*

次の「ロードモナーク」は、一応スーパーファミコンにも移植され、また現在ではインターネットを通じて無料配布され、かつ最新作が去年の終わりごろに出たので、知っている人も多いと思う。

このゲームは、ルールは単純だが非常に奥が深く、手軽ながら戦略性の高いゲームであった。どのあたりが単純かというと、まずユニットの種類が「王様」と「一般人」しか基本的にいないことである。そして、一般人は互いに合流できて、一つのユニットとなるのであるが、1000人以上集まると「戦士」みたいなグラフィックになり、10000人以上集まると通称「将軍」と呼びたくなるようなグラフィックになる。数が多ければ多いほどそのユニットは強力になるが、敵にやられていったりするとどんどん人数が減っていき、しまいには消滅する。また、1000人以上のユニットは自然に少しずつ数が減っていく。

さらに単純なのは、ユニットの生産方法である。ユニットの生産拠点は通称「家」と呼ばれるのだが、家は自然に出来る。ユニットが歩くと、地形が「自分の陣地」になるのだが、その「自分の陣地」には一定の間隔で自然に家が作られる。家を作ったユニットは、数が減るので、事実上「ユニットが分かれて家を作る」と言って良い。また、家は普通の一般人ユニットと同程度の戦闘力を持っているので、家とは事実上「一定人数のユニットが動かなくなって生産可能になったもの」である。家には人数表示があり、時とともにその人数が増えていき、一定の人数にまで上がると、その家から一般人が分裂する形になり、ユニットが生まれることになる。家はまた人数を溜めていき、どんどん人を作っていく。作られた人は、マップ上をどんどん進み、そこに家が無ければ家になって固まり生産施設となる。

やがて敵同士の陣地が接触すると戦闘が起こる。戦闘で勝つには、基本的には「ユニットをまとめて人数の高いユニットを作る」ことである。人数が多いと、数の効果により強くなる。たとえば、100人のユニットは、50人のユニット二つよりも強い。よく戦術の世界では「二乗の法則」といったものがあり、数において倍の優勢を誇る軍は事実上四倍強いのである。そこでプレイヤーは、ある場所に個々のユニットを集めて、強力なユニットを作ることになる。そしてある程度人数が集まったら、そのユニットを敵陣に送り込んで敵を倒させ、また別のユニットを集めていく。そうして何人も強いユニットを作って敵に送り込んでいくと勝てる。

もちろん話は単純ではない。敵は最大で 3つの国を相手にすることになるので、どの国とまず戦い、どの国とは防戦に廻るかを考えなければならない。そして、守るときには、ルート上にバリケードを張り、強力なユニットに「バリケードを作りつづけさせる」ことが必要になる。敵はやはりそのバリケードを壊そうとするのだが、強力なユニットがバリケードを作りつづけていれば、まず相手に壊されることはない。そうして守ることも必要である。また、広いマップの中で、どの場所を自分が取りにかかり、どの場所をあきらめるかを決めなければ、むやみに攻めても負けてしまうようなマップもある。

このゲームはゲームバランスが最高で、ちまちまとユニットを操作しなければならない他のゲームと違い、大局において大体の戦略を決めて最初に命令を与えておけば、時々命令を変えてやる程度で攻略できるのである。コントローラやマウスさばきによって勝敗が決するということもない。まず最初に戦略があるという、ストラテジーゲームの玄人も納得できる戦略性を、なんとも単純なゲームシステムで実現してしまっているのである。しかもプレイが爽快でなんとも気持ちが良い。私はこのゲームほど手軽で爽快に戦略的なプレイが出来るゲームを知らないし、このゲームは間違いなくゲーム史に残るべき名作である。ただ、悲しいかな、スーパーファミコン版はその知名度とシステムやゲーム性からか、980円で売られていたりするのである。

*

そして私が現時点で最近出会ったゲームが Microsoft AGE of EMPIRES である。このゲームは、いま現在私がハマっているところなので、詳しいことは書けないので、以下のリンクを参照していただきたい。この文章も長くなってきたことだし、今回はここで切り上げることにするが、もしリアルタイムストラテジーというジャンルに興味を持っていただけたならば、是非 Microsoft AGE of EMPIRES の体験版か、ロードモナークのインターネット配布版を手に入れて、プレイして頂きたい。Microsoft AGE of EMPIRES の方は、一年以上前に出たゲームであるにも関わらず、いまだに雑誌の CD-ROM に入っているので、割と簡単に手に入るのではないかと思う。また、今年の夏には 2 が出るという噂もある。


ロードモナーク関係

以下、即物的な順にリストアップしました。

ロードモナーク・オンライン 本体 (ベクターに存在するアーカイブ)
ロードモナーク・オンライン 解説とダウンロード (ベクターの PickUp)
ベクター
日本ファルコム
日本ファルコム

陣来霧の地下喫茶 (Lycos のサーチエンジンで「日本ファルコム」「ロードモナーク」で検索したときにリストアップされた、一番最初の有効なページで、私自身はちょっと見て軽く内容を確認した程度です)

Microsoft AGE of EMPIRES 関係

公式ページ (体験版をダウンロードできますが、サイズが 25MB ぐらいあったような気がします)
マイクロソフト
A fan page about AoE (戦略とかが分かりやすく書かれていますが、一度でもプレイしたり画面を見ない限り、内容を理解することはおそらく不可能でしょうが、ゲームの雰囲気やスケールは多少なりとも分かると思います。)

戻る前回次回
gomi@din.or.jp