177. 守るために何人までの犠牲なら許容できるか (2019/05/05)


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今回は防衛というものを考えるために、「〇〇を守るために何人までの犠牲なら許容できるか」というのを考えていきたい。

■日本国:650万人

まず日本という国家を対象とする。歴史的事実として、先の大戦での日本人の死者は大体四百万人ぐらいで、ここまできてようやく降伏に至った。まあ実際のところ、国民が死に過ぎたから降伏したのではなくて、原子爆弾をさらに何発も落とされると絶対に勝てないことが分かったからであったり、それ以前にマリアナ諸島が落とされた時点で事実上の敗北を認めた形で講和を結ぼうとしていたり、最終的に当時の天皇が最後のひと押しをしたからであったりしたのだけど、これ以上ない歴史的事実なのでこの数字を尊重するとする。

当時の日本の人口は大体7,200万人らしいので、死んだ人を合わせると7,600万人となり、死亡率は大体5%ぐらい。現在の日本の人口を約一億三千万人とすると、乱暴に言えば650万人を超える死者が出たら日本人は国家を放棄すると言える。

まあでもどう考えても当時より今の方が命が重いと考えられているのでもっと前にどうにかすると思う。それに当時は降伏すると何をされるか分からなかったけど、今はたとえば中国やロシアや朝鮮あたりに占領されてもそこまで最悪なことにはならないだろうと思っているかもしれない。ただ、中国は実際にチベットや内モンゴルなどで民族浄化らしいことを行っていると言われているし、ロシアも先の大戦でポーランドを消滅させるためにカチンの森で高級軍人を大量虐殺している。

■九州・北海道:30万人

中国は少なくとも沖縄の歴史的帰属を主張しているのは事実だし、さらに九州まで領有しようという野心を持っているとされている。また、ロシアは少なくとも先の大戦で北海道を占領する意志をはっきりと持っていた。さて、九州や北海道を守るためなら何万人の犠牲まで許容できるだろうか?

これは単なる憶測だけど、少なくとも軍隊が壊滅するまでは継戦すると思う。さすがにゲリラ戦までやって守るかどうかというと微妙なんじゃないだろうか。海をまたぐと補給も大変なので本州に逃げると思う。

いまの日本には徴兵制はないけれど、自衛隊は自分たちの十倍の民間人を召集して率いて戦うことを想定している。また、軍隊は三割以上損耗すると壊滅して継戦不能とされるため、10万×10×30%=30万人以上死んだら防衛をあきらめると思う。

■沖縄:?

沖縄についてはどうだろうか。さすがに軍隊が壊滅するまで戦ったりはしないと思うけれど、どこまで戦うんだろうか。本土と離れているので、最悪放棄も考えられると思う。

■北方領土:0人

すでにロシアに実効支配されている北方領土についてはどうだろうか。相手の軍隊が配備されているので戦わないとならないほか、占領に成功しても本土から核ミサイルが飛んでくる可能性がある。よほどロシアが混乱しない限り多大な犠牲を伴う。そうまでして奪還に成功したとしても、せいぜいカニがとれるぐらい。元住民が満足したり、国家の威信が少し回復したりもするけれど、とてもじゃないが犠牲とは釣り合わない。

ちなみに奪還しない場合は定期的に漁民が拿捕され続けることになる。ロシア側は日本の漁船が領海を犯したと主張している。自分は正直なところ金に目のくらんだ欲深い漁師が危険を冒してロシアの実効支配領域に入ったケースもあると思う。向こうは銃撃してくるので最悪死ぬ。国民が他国によって危害を加えられる状況を国家は放置すべきではない。日本は海上保安庁がロシア側と撃ち合っていないといけない。撃ち合いが起きると当然犠牲が出る可能性がある。たとえ定期的に死傷者が出たとしても、戦い続けなければならないと思う。

自分はいまの日本で自衛隊が不当におとしめられていると思っているけれど、いまの状況を見ると日々犯罪者と戦って実際に殉職者も出している警察官よりも尊敬されないのはしょうがないんじゃないかと思う。訓練や国際貢献で死んでいるのは確かだとしても。

ちゃんと戦っていればロシアとの交渉がもっとやりやすかったんじゃないかと思う。

■竹島:0人

韓国に実効支配されている竹島については、北方領土と違ってわずかに防衛隊がいるだけなので、たぶんいまの日本の戦力なら簡単に竹島を奪還できる。でも自分は少しでも犠牲が出る可能性があるなら奪還すべきではないと思っている。あとで韓国が何をするか分からない。逆に言うとそれだけが心配なので、朝鮮半島に何か混乱が起きたらおそらくそれに乗じて軍事的に奪還する可能性が高いと思う。

ちなみに韓国は対馬の領有も狙っているので、仮に日本が竹島を奪還する気がなくても常に竹島を問題にしつづける必要がある。そうしないと韓国が対馬を露骨に狙ってくるようになる。

■尖閣諸島:10人〜100人?

今度は日本が領有し実効支配している尖閣諸島についてはどうだろうか。日本にとっての価値は漁業権だけなのだけど、現在日本は漁業権を台湾にほとんど明け渡している。じゃあ尖閣諸島なんて意味ないじゃんと思うかもしれないけれど、尖閣諸島を領有しているからこそ、その手前の離島や沖縄の平和が保たれている。つまり、尖閣諸島の価値はその手前の離島や沖縄の価値に準じると言える。

尖閣諸島は無人島だけど、人が住む島まで国境が後退してしまうと国民の生命が危機にさらされることになる。また、いったん支配が後退してしまうと日本は戦わないと思われてしまうので、最悪でも相手側に少なくない損害を与えてからでないと撤退すべきではない。そうなると10人から100人ぐらい犠牲が出ても戦わなければならないと思う。でも数百人となるとちょっと微妙になってくる。護衛艦が二隻以上沈むとそのぐらい死ぬ可能性が出てきそう。現実問題として、一隻沈んだら体制を立て直すために撤退したほうがいいと思う。

■沖ノ鳥島:?

沖ノ鳥島が失われると広大な経済水域が失われてしまうけれど、人命と比べるのは難しいと思う。

■小笠原諸島:?

小笠原諸島を守る事態というのは現実的でないので考えづらい。

*

ちょっと他人事のような感じで考えてきたので、今度は仮に自分自身が死ぬ可能性が何パーセントまでなら守るかということについて考えてみたい。

■自分の子:80%

ちょっと理想論すぎ?八割以上の親は自分の命より子供の命を守ると思う。

■恋人:?

■自分の親:5%

難しいけれど、95%助かるとしたらサイコロを振りそうな気がする。

■友達:?

■故郷:?

■日本:?

先の話だと国家は5%までなら耐えるだろうという結論になったけれど、個人個人は5%のサイコロは降らないと思う。その前に脱出するか、他国の支配を受け入れるか。あー、でも5%か…。若い頃だったら考えられなかったけれど、いまならサイコロ振っちゃうかもな。全年齢の平均を取ったら5%ぐらいいくかも。昔だったら戦争に行くのは若い人たちなんだけど、今は核や生物兵器だろうから都市圏が危ないと思う。

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日本国民はどこまで追い詰められたら武装蜂起するか?というテーマを思いついたけれど、またの機会にしたい。


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gomi@din.or.jp