15. 投資せよ (1998/12/19)


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前回は、私が自分のパソコンのハードディスクを交換したという話をしたと思う。交換には金が掛かった。ボーナスのあとだったから、という話もあるが、別にそうではなくてもそのくらいの金はあるので、単に機が訪れたから購入したのである。だが、金のあるなしに関係なく、ただ「ボーナスをもらったから」というのは、散財するための理由づけとして非常に妥当である。

世の中は不景気だというが、私はいままでに「景気がよくなるために」ここ一年色々な買い物をしてきた。おそらく私は喜ばれていることだろう。

不景気だから将来に備えて金を貯めておいた方がいいという話もあるし、デフレが続くから金を使わない方が得をするという話も聞く。前者の場合はまあしょうがないにせよ、後者には私は異論を挟みたい。世の中いかにデフレであろうとも、老いていく自分自身の金銭感覚のインフレより大きなデフレはないのではないだろうか。たとえば、私は現在、月に手取りで 17万ぐらいの収入がある。あまりこういう現実的な数字を出すのはよろしくないとは思うのだが仕方がない。それから、私が大学生だったころは、バイトをしなかったのだが月に 3万の小遣いをもらっていた。高校の頃は 3〜5千円、中学の頃は…忘れた。いまは平気で一万円以下の買い物ならしてしまうが、中学の頃の私に一万円をあげることができたとすれば、その頃の私は大喜びするだろう。つまり、人間は年をとるにつれて、自分自身への投資に金が掛かるようになるのである。

私には親切な伯母がいるのだが、彼女からいままでにたくさんの金をもらってきた。正月にはお年玉を、誕生日にはプレゼントの金一封を、毎年毎年もらってきた。その金は、親の圧力があって使いにくかったが、それでもいくつか買い物をして楽しんできた。無駄な投資もあったが、有意義な投資もあった。そして、まだ残っている。私は給料は銀行の口座に入っているが、その伯母さんからもらった金などは郵便貯金の口座に入っている。だが、私の虎の子の貯金は、いまでは一ヶ月で手に入る。私はまだ親元にいるので、食費も昼食代しか掛からないし、もちろん住宅費も掛かっていない。いくらか親に入れているのだが、額は知れている。

そこで私はこう考えたわけである。つまり、私は金の運用方法を誤った、と。もっと若い頃に使っていればよかった。友達と旅行に行くのでもいい。趣味にもう少し思い切って投資するのでもいい。文房具だって良いものを買っていれば勉強する気になれたかもしれない。誰かのために金を使うことだってあったかもしれない。

そんなわけで、私は皆に言いたい。下手にとっておくなら使いなさい。

余談だが、外国特にイギリスなんかでは、若い人でも「資産」を購入することを考えるらしい。資産とはつまり、換金可能なもの、である。土地とかマンションとかである。ほかにどんなものがあるのか知らないが、金を費やして買っても、あとで売れるようなものを買う。いや、ちょっと読みかじっただけなのでよく知らないが。

ここで具体的な例を出そう。たとえば、バイオリニストが幼少の頃に買ってもらったバイオリンは有効な投資ではないだろうか。別に幼少買ってもらったものがバイオリンではなくても良いのだが、それがバイオリンだったからこそ彼はバイオリニストになって、それで食べていったり、人生を豊かにしているわけである。もちろん、彼が自分の職業を後悔しているのだとすればこの限りではないのだが。

もっと身近な例を出そう。あなたが昔熱中したものはなにだろうか。そしてそれは、金銭的な価値でいうとどのくらいのものだろうか。たとえば、私は一個 100円のガチャガチャに熱中していたことがある。ガンダムの塩ビ人形が入っていたりするあれである。昔は小遣いも少なかったから大して買えず、それでガチャガチャを一回やることには非常に大きな喜びを感じたものである。いま例えば一万円持って、それを全部 100円玉にして、ガチャガチャを 100回やることは簡単である。当時は天地がひっくり返ってもそんなことはできなかった。いや、やろうと思えばお年玉をつぎ込めたのだろうが、無論親は許可しないだろうし、親の目を盗んでやったとしても悲しいだけだ。いまだったら別に大したことはないが。

ちなみにうちの弟は、三ヶ月ぐらい前だと思うが、その頃復刻したガチャガチャにハマっていた。ついには 15個ぐらい買ってしまったのだ。現在その人形は、彼の部屋のテレビの上に勢ぞろいしている。おまけに PHS のストラップにまで付けている。

あなたが中高生だったころに自分の小遣いをはたいて買った CD は何だろうか。何であれ、あなたの思い出の一枚になっているはずである。…あるいは「恥部」と化しているかもしれないが。

そこで私は、20代の人間が投資するに適したものをいくつか薦めてみたいと思う。

まずはテレビである。普通の人は、テレビを見るものだと思う。一日に二時間ぐらいは見るはずである。だから、やはり性能の良いテレビを買って損はない。大体一個買えば 10年ぐらいは持つはずである。私は最近新しいテレビを買った。SONY の平面ブラウン管テレビである。別に SONY だから買ったのではないが、21インチという手ごろな大きさを持った平面ブラウン管テレビは SONY しか出していなかったからである。平面にこだわる必要はなかったのだが、それでも平面は目にいいかもしれないし、もちろん見た感じが良い。それと、私の部屋には窓があり、嫌な角度でテレビに移りこむので、平面だとそれが避けられるというメリットもある。この投資にはもちろん誤算もある。BSチューナー内臓なのだが使わないことである。それと、平面でなければ安いものでは 29,800円で 21インチのテレビが買えるのだが、私の買った SONY VEGA(WEGA?) は 69,800円である。こういう投資は一見損であるかに思えるかもしれないが、…実際損なのかもしれないが、本人が満足していればそれで良いのである。プレイステーションの AVマルチ出力を直接つなげるし…(もちろんいまはつないでいないしケーブルを買う気もない)。

そしてウォーターベッドと高級羽毛布団、合計 33万円。これには私なりの考え方があって投資に踏み切ったのだが、どうも衆人の賛同を得られないようである。私の上司などは「俺はマイクロソフトの株を全部持っててもそんなものは買わん」とまで言うほどである。というか、株全部持ってたら配当だけで豪邸に住めるのだが。前の職場では、新しい仕事を押し付けられた人が「休憩室にウォーターベッドを入れてくれたらバリバリ働きますよ」とギャグにまでするぐらいである。

さすがに寝具に 33万掛けるのは、やりすぎかもしれないが、それでも 9,800円のパイプベッドに安い掛け布団というのも勿体無い話である。まあ普通の人ならば、寝具に金を掛けるぐらいなら飲みにでも行った方がいい、などと言うかもしれないのだが、飲みにいったあとには家で寝るのである。ホテルで寝るという人はそれでもいいのだが。私は既にウォーターベッドで寝始めて 2ヶ月以上たつが、もはや私にとってこのベッドで寝ることは当然のことだし、この快適さは空気のようなものなのだが、それでも常にある種の快感も持続している。逆にいえば「当然になって特に目新しさがなくなった」とも言えるのだが…。

極端な話、仕事の忙しい人は、家に帰ったらテレビ見て寝るだけである。だからこそ、この二点に重点的に投資するのは非常に効率が良い。だから、結果的には「利回りの良い投資」だと言えるのである。人間、どこかで嗜好的な金の使い方をするのだから、その金のうちの一部をこういうところにまわさないのは勿体無い話である。


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gomi@din.or.jp