11. 自作機と凝縮性 (1998/12/5)

update: 1998/12/8
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前の「パソコン」では、昔の話をしたが、今回はいまの話を中心に話したい。

私がこの文章を書いているのは、このコラムの第一回目の表題となっている VAIO PCG-737 である。知らない人のためにもう一度説明すると、VAIO PCG-737 はいわゆる薄型A4 ノートパソコンである。薄型といっても、いま流行の B5 ノートと比べると全然厚い。このパソコンに関する私の考えは、1. VAIO PCG-737 を参照していただきたい。

私は最近、自分が無駄なぐらいに「凝縮好き」であることに気がついた。その発端は、パソコンを買うときに、デスクトップではなくノートを買った時である。自分が買うパソコンは最初からノートだと決めていた。だが、当時は、ノートを欲しい理由については「昔から携帯できるパソコンに憧れていた」のだと思っていた。しかし、それは実は違っていたのだと最近思いなおした。

最近私は自作機を作りたいと思っている。それで、ボーナスも出たことだし、作るのも悪くないかな、などと思いながら、ショップを回ったりするのである。ショップには色々なものがあるが、もっとも視覚的に分かりやすいのは、なんといってもケースである。CPU やマザーボードやグラフィックカードを見ても何も面白くない。もっとも、マニアならばボードの外見や LSI のラベルとか配置を見るだけで心踊るものなのかもしれないが。私はそこまでハードを愛しているわけではないので、もっぱらケースを色々と見て楽しむぐらいである。

ところで、デザインの良いケースがなかなか見つからないのは何故だろう。どれもダサく感じる。無用に大きかったりするのは、まあサーバ用途なのだろうから仕方ないにせよ、わざわざダサくしているように思えるケースが多くて駄目である。こんなデザインにするぐらいなら、四角い箱にベイをつけるだけの方がまだマシだと思うことがたびたびある。

そんな中で、私の心を掴んで離さないものが micro-ATX のケースである。知らない人のために説明すると、一般にケースには Full Tower と Middle Tower があるのだが、他に Baby-AT とか micro-ATX というものがある。Full Tower と Middle Tower というのは主に形状だけを意味し、前者は高くて大きく、後者は標準的な縦置きのケースである。Baby-AT というのは私はよく知らないが、マザーボードには主に AT と ATX という規格があり、AT は古い規格なのだが ATX より小さく作れるらしい。micro-ATX というのは ATX というコンテンポラリな規格に従ってはいるが、ライザーカードというものを導入することで小型化されている。(ライザーカードを導入しているのは実は後述の NLX で、実は micro-ATX とは全く関係ない)

要するに、micro-ATX のケースは小さくて、一般に Micro Tower と呼ばれ、たとえば新しい VAIO コンポに採用されている。だが、自作機用途のものはまだまだ少なくて、主にメーカー製のものが多いようである。私はこの形は非常に美しいと思う。特に VAIO コンポは色も設計も良くて素晴らしい。ちなみに、ここでいう VAIO コンポとは、オーディオシステムのコンポーネントのような形状の VAIO のことではない。あの形も確かに美しいが、私はむしろ工業的なデザインの Micro Tower の方に惹かれる。(VAIO コンポは実は例の本当にオーディオコンポっぽいデザインの方しか指さないような気がしてきた)

だが、このケースは小さくてあまり実用的ではないらしい。普通の Middle Tower だと普通の ATX マザーボードが使えるので、メモリは 3〜4枚、拡張カードも 5〜7枚ぐらい使え、なおかつ種類が色々あるので好きなものを選べる。しかし、Micro Tower だと micro-ATX マザーボードしか使えないので、メモリは 2枚(3枚が稀にある)、拡張カードも 3〜4枚ぐらいしか入らない。それから、場合によっては大きさの制限で付けられないカードもあるものと思われる。それから、ベイの制限が多いのが一番大きい。DOS/V (正確にはAT互換機) は FDD が無くてはならず、それから最近のパソコンはソフトのインストールに CD-ROM が欠かせないので、これで 3.5inch ベイと 5inch ベイを一つずつ使い、さらに HDD が絶対に欠かせないのでどちらかのベイをさらに一つ使う。これで、ケースによっては一杯一杯になってしまうので、内蔵型のデバイスをそれ以上つけることが出来なくなってしまう。加えて、micro-ATX マザーは種類が少なく一般に多少値段が高い。それに、私の調べた限りでは、Super7 (Socket7の100MHz対応版) の micro-ATX マザーは現在のところ存在しない。(よく調べてみたらあった。だが、買うときにはきちんと調べた方が無難である。なぜなら、ベースクロック 100MHz が可能であっても、それがボードメーカーの保証外であることがあるからである。)

なぜこんなに不便だと思っているのに、私はこのケースにこだわろうとするのか。それは、やはり小ささに惹かれるからである。小さいというだけで惹かれてしまうのは何故だろうか。どうでもいいが、某雑誌によれば、女性で最近背の低い人がモテるという話を聞いたことがあるが、多分それはこのパソコンの話とは全く関係無いだろう。

ただし、Micro Tower より小さい自作機用のケースもある。ブック型と呼ばれるものである。が、これは拡張性が低いので私の感覚とは少しずれる。が、これにも惹かれないことも無い。NLX と呼ばれるのだが、大抵はベアボーンキットと呼ばれる、ケースとマザーとグラフィックボードとサウンドボードなどが一体となり、半分完成されたものとして売られている。場合によっては CD-ROM Drive や FDD もくっついた状態で売られており、あとは CPU と HDD を付けるだけだったりするのである。これでは、私の「自作したい」という欲求を全部満たせないので困る。

私が最近になって自作したいと思う理由は、たまたま友人が、Sharptooth (K6-2の後継のCPU) が出たら K6-2 と 15inch ディスプレイを譲ってくれる、と言ってくれていることもあるが、やはりなんといっても「何か作りたい」「パソコンもう一台欲しい」という欲求があるからである。まあ、パソコンはもう一台あっても使用用途が無いのだが、なぜか私は欲しい。欲しいのである。せっかくノートパソコンがあり、しかも買ってから半年も経っていないのだが、それでももう一台欲しいなと思う。やはり私もコンピュータのマニアなのだろうか。

はっきりいって本当に用途は無い。いまのマシンで十分である。同僚Mに「自作機作りたいなと思っている」と言ったら、彼は「必要なの?」と言ってきたので、私は色々と理由を言ったのだが、最後には彼の言葉に負けて「必要ありません。ごめんなさい」と言うことになってしまった。なおかつ彼は、私がノートパソコンを買ったことについても追求しだしたので、私はもう彼に説明することは諦めた。だが、彼の言葉は正しい。私の VAIO は XGA 表示が可能なので、仕事で Excel を使うことも出来るし、Visual C++ で開発も可能であるし、もちろんウェブのコンテンツの作成にも十分なパフォーマンスを発揮する。別に 3D ゲームをやりたいわけでもないし、増してサーバに使う気も無い。余談だが、私の友人Wの知人は、なんとノートパソコンをポータブルなサーバとして使っているらしい。

結局、私は「動くもの」「完結しているもの」に弱いのである。この気持ちは、普通の人間には理解できないと思う。普通の人は、役に立たないものを好きになることはないし、好きになるとしたら愛着があるとか愛嬌があるとかに違いない。まあ、コンバットナイフの収集が好きな人との共通点はあるかもしれない。別に日本がサバイバル状態になることはないのに、あるいは実際に使うわけでもないのに、外国の高いナイフを集める人達がナイフマニアである。が、私は彼らの気持ちが分からなくも無い。なぜならナイフは、実際に使わなくても「これは使える」というイメージを持てるからである。それから、実際に使うことも出来る。ハム を切るには包丁が一番なのだが、わざわざコンバットナイフで切って食べる人もいるだろう。決して実用的ではないが生理的に意味のある行為である。

まあ、人間と言うものは、意味の無いものに価値を置くものであるから、なにもこんなことで気を病むこともないだろう。この話題もまた別の回で喋ってみたいテーマではあるが、ここでは突っ込まないことにする。

違った指向についても書くことにしよう。

私は、いわゆる「クズマシン」も作ってみたい。たとえば、昔のアニメをみると、見るからにみすぼらしいメカが出てきたりすることがある。そういうものの影響かどうか分からないが、世代遅れの安いパーツだけをかき集めて、最低限の機能しか持たないパソコンを作ってみたい、という欲求もある。これもやっかいである。これは、自作機を作りたいと思っている人が誰もが抱くことだと思う。最高のパーツを揃えて自作することを一番の喜びとする人でも、やはりどうしようもないパーツばかり集めてクズなメカを作ってみたいものだと思う。

第一回で、私の VAIO が HDD を 2GB しか積んでいないと愚痴をこぼしたのだが、私はノートのハードディスクの換装も考えている。だが、ノート用の HDD は、だいぶ安くなってきているとはいえ、デスクトップ用とはまだまだ価格に差がありすぎる。たとえば、6.4GB クラスのものだと、ノート用は大体 4万5千円ぐらいまで下がってきてはいるが、デスクトップ用のものは 2万ぐらいで買えてしまう。そこで私は、ノートの拡張を諦めて自作機に専念するか、ノートの HDD を交換して余った HDD を自作機に付けるか、どちらにしようか悩んでいる。が、ノートに 6.4GB 積んだり(4万5千円)、自作機を作ったりするのに(7〜12万以上)、それだけの金を注ぎ込む価値があるのかどうか、という根本的な問題もまだ解決していない。6.4GB あれば、Linux や BeOS を入れたり、MP3 やゲームなどを沢山入れられると思うのだが、特に沢山入れる価値もあるのか疑問だし、Linux や BeOS は将来 VAIO から Windows を追い出したときに入れればいいかなとも思う。会社のパソコンで Windows が動けば、はっきりいってしまえばこの VAIO もあまり必要ではない。家でフリーソフトを作って遊ぶほどの気力もない今となっては。

ところで、BeOS は定価が 1万6千円ぐらいだというからがっかりである。Linux と BeOS を同列に置くには抵抗がある。当初買おうと思っていたが、これで分からなくなった。実際に売られるときには 1万2千円ぐらいにはなるだろうと思うが、これではマイクロソフトと大同小異である。まあ、私は出来れば 2GB しか積んでないこの VAIO にいつまでも Windows を入れておく気はないので、結局買うことになるのかもしれないが。

どうでもいいが、私の友人Nはギターを自作したいと言っていた。ギターもまた自作出来るのである。彼は平気で 60万のギターを買う人間なので、さすがにクズギターを作りたいとは思っていないようだったが、私はクズギターを作りたいと思ったことがある。御茶ノ水の楽器屋に行けば、パソコンと同じようにギターのパーツも売っている。たとえば、

最後の方はかなりこじつけだが、値段的に見て最も近いものを割り当ててみた。まあ、パソコンとギターの違うところは、ギターの方は自作の場合、作りがどうしても甘くなってしまい、すぐにチューニングが狂ったり、オクターブバランスがうまくいかなくなったりする。

ちなみに、日本の大手ギターメーカー Fernandes は、何を血迷ったのか、ウルトラマンの絵が描かれているギターを作ったのはまだいいとして、なんと怪獣ブースカのキャラクターが描かれているギターを最近売り出している。ブースカといえば、最近テレビCMで TSUBURAYA というイメージ広告で主人公になっているあの奇妙でちょっとかわいい怪獣である。ウルトラマンや怪獣たちがサッカーやっているときにどさくさに紛れてヘッディングでゴールを決めたり、スノボーを買うためにバイトしてたら怪獣カネゴンに溜めた金を食べられてしまうという、あのブースカである。しかも、基になっているギターは有名な ZO-3 (ぞうさん) というちょっとかわいいデザインの短いギターである。ちなみにこのギターは、海外のバンド Red Hot Chili Peppers がアルバムで使用し、「この曲には日本の象型ギターを使っているんだ」というメッセージを残しているらしい。

最後に一言。私は、パソコンを立ち上げるのがおっくうで仕方が無い。起動に時間が掛かるからである。かといって、ノートを付けっぱなしにするのも生理的に嫌である。デスクトップなら、欧米では付けっぱなしが普通だそうである。また、パソコンには「サスペンド」という機能があり、高速で起動したり中断して電源を落としたり出来るのであるが、私の VAIO は WIndows98 を入れた途端に、サスペンドが異様に遅くなってしまったので使って入ない。特に文章を書くときなどは、思いついたときに書きたいので、立ち上げが遅いのは非常に嫌らしい。ひきかえ、WindowsCE マシンは異様に速い。私には WindowsCE マシンもあるのだが、これで文章を書くのはキーボードの大きさもあり面倒だし、第一この OS はファイルをメモリに仕舞うので生理的に嫌だし、バックアップバッテリーが切れると実際にファイルが消えたりする。

マイクロソフトは WIndows2000 に NT ではなく CE を持ってきたら良かったのではないかと思う。CE は CPU に依存しないし、動作も軽い。現時点では、画面が SVGA サイズまでだとか、ストレージがメモリだけみたいだが、CE を Windows95/98/NT 並の通常の DOS/V 機に移植する方が、98 や NT を上書きするよりもずっといい気がする。Dreamcast も CE を採用していることだし。


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gomi@din.or.jp