1. VAIO PCG-737 (1998/11/16)


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いまパソコンは、デスクトップ型よりもノート型が売れているみたいである。私にはなぜだかさっぱり分からない。なぜ多くの人は高いノート型を買うのだろうか。この不況時にである。かく言う私もノート型を買ってしまった。なぜ買ってしまったんだろう。いま考えれば、K6-2(300) のマシンがディスプレイ付きで二台ぐらい買えてしまうような値段で、VAIO PCG-737 を買ったのは実に愚かだったかもしれない。

それから、VAIO PCG-737 は VAIO であって VAIO ではない。これも馬鹿なことだ。普通 VAIO といえば、B5型の方をさす。これを持っているとかっこいいぞ、みたいなのはどれも PCG-505 シリーズの VAIO である。ちなみに PCG-737 は A4型である。通称「A4バイオノート」というらしい。

なぜ私が VAIO PCG-737 を買ったか、という理由を話すのも一部の人にとっては興味深い話かもしれないが、はっきりいって非常にしょっぱい話になることは書く前から分かりきっている。たとえば「薄いし軽いし最高!」とか「このデザインが物欲を刺激して...」とか「なんてったってパワーさ」とかならすごく分かりやすいし、話のネタとしても成立しやすい。うらやましいことだ。私は非常に現実的なばかりに、ある意味非常に面白みのない買い物をしてしまった。というわけで、今回はしょっぱい話で最初っから最後まで通してみることにする。

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ほかの人がどんなノートを欲しがっているのか知らないが、少なくとも私はノート選びにはかなり悩まされた。どの製品も決め手がなかったからである。これはメーカーのせいではないと思う。むしろ私のせいなのだろう。私の欲しかったノートPC の条件は、

  1. メインとして使えるほどのスペック
  2. 持ち運び可能なほど軽い
  3. 開発環境が使えるほどの解像度
  4. コストパフォーマンスが良い
  5. デザインが良い
などである。結果として買った VAIO PCG-737 は、
  1. 一応メインとして使えるが、HDD の容量が明らかに足りない
  2. かろうじて持ち運びできるが、重くて通勤時に肩に圧力がかかる
  3. 解像度はあるが、若干画面が小さい
  4. コストパフォーマンスは文句無く良いが、バーゲン価格っぽい
  5. デザインは一応良い
と、どの項目にも大なり小なり難のあるものだった。

さきほども言った通り、上のような「難」は、あくまで私の求める基準からすると、という前提の上でのものである。私の求める基準には土台無理があるのは承知している。

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たとえば 1 (スペック・HDD)であるが、そもそも普通に使う分には十分メインとなるだけの容量の HDD が内蔵されている。2.1GB もあれば普通の使い方ぐらいは出来ると思う。プロバイダに入り、メールのやりとりをし、インターネットでネットサーフィンし、面白い絵や音楽やソフトウェアを適当にあさったりする。そのぐらいは十分出来るはずである。ゲームの一時インストールには、一本につき数百メガバイト必要なソフトもあるが、一度に遊ぶソフトをしぼっておけば問題はないし、パソコンソフトは高いのでそんなに買うことはないはずである。

2 (重量)は、持ち運び可能なほど軽いノートなんていうものは、大抵はセカンドマシンとして買うのが普通である。メインとして使えてなおかつ軽いなんていうのは調子がいいのかもしれない。まあ、いまとなっては B5 ノートで 1.2kg で XGA の高解像度で表示可能な機種もあるので、別に調子がいいというわけではないのかもしれないが。ただし、この機種は解像度が細かすぎて、目が疲れるそうである。ちなみに、私は別に B5 である必要はないと思う。A4 で軽いノートが発売されないのが不思議だ。いや、一応出てはいるが、せいぜい 1.7kg ぐらいである。

3 (解像度・画面サイズ)は、詳しい事情を知る人でなければ分からないだろう。PCG-737 の画面サイズは 12inch である。だが、パソコン雑誌を見るとこんな感じの宣伝文が打ってある。「XGA は 13inch でないと見づらい」。まあ私自身使っていて小さいとは思わない。むしろ、これでコストパフォーマンスが良くなるのであれば構わない。パソコン雑誌は消費を増やそうとしているので、新製品で 13inch の製品が出るとこんな文章を書くのだろう。たいていの消費者は、多少の見やすさに魅かれて数万余計に支払うことを望んではいない。

4 (コストパフォーマンス)だが、この PCG-737 は、バーゲン価格で買ったとすると非常にコストパフォーマンスの良い製品である。なによりも XGA は高い機種にしか装備されないので、このようなミドルレンジのマシンに搭載されているのは非常に喜ばしい。ちなみに、三菱はノートの割にローコストなマシンに XGA を搭載しているマシンを出していた。DSTN 液晶なので私の基準からは漏れたが、こういう選択肢を消費者に提供するところは評価したい。

話がそれたが、なぜこの製品がバーゲン価格で買えたのかと言うと、別に Windows98 の発売前後だったからだとか、そういう理由もあるのだが、なにより大きいのが VAIO 全体の値下げである。SONY は自社の製品を売り切るために汚い戦略を取る、などという噂が立っているが、私が買ったときも何らかの戦略で値段が大幅に落ちた時だったように思える。あるいは SONY は全く関係無く、ショップ側がただ VAIO の売れ行きに気をよくして、カルテルまがいの値段維持を行っていたのかもしれない。ともかく、値段が急激に下がったという事実の裏には、消費者にとってよくない何かがあったとしか思えない。

5 (デザイン)であるが、私が気に入らないのは多少のっぺりしているところだけである。ほかのメーカーと比べれば、SONY のデザインの良さはむしろ評価したい。ただし、色々なカラーがある方が面白いと思う。どうでもいいが、携帯電話もほんとにデザインに関しては努力してもらいたい。  

閑話休題 (えらそうに)

さて、色々と文句も言ってきたが、私はこのパソコンを非常に気に入っている。最近出た USB MOUSE も買った。普通の USB MOUSE の倍ぐらいの値段が付いていたが、私は話題作りのためもあって躊躇無く買った。いや、実際は多少の躊躇もあったが、入った店が閉店セールをやっていたので、情けもあって買ってあげた。保証書には店の判子が付いていなくて、非常にずさんな店だと思った。こういう店は潰れていい。ちなみに、SONY が潰れても私はなんの痛みも感じない。こんなブランドとデザインで金を取ろうという魂胆が嫌いだ。

ちなみに、私は非常にささいなことでもパソコンを選ぶ。たとえば、この PCG-737 はステレオスピーカが付いている。はっきりいって、普通そんなところを気にする奴はいないだろう。オーディオマニアは最初っからパソコンに音楽なんて期待しないし、でもなければ自前のアンプにでもつなぐし、でなければ音になんか、まして音質ではなく内蔵スピーカーの stereo/monoral なんて気にも留めないだろう。だが、私は「えせオーディオマニア」なので、この小さいボディにいっぱしにステレオスピーカーが付いているという事実に心魅かれてしまった。そうなると、モノラルスピーカーの機種はなにか handicapped (最近ではchallengedというらしいが)な感じがしてしまう。

SONY のパソコンはデザインが素晴らしい。この「藤色(本当は横文字の色名がついていそうだが)」にはあまり賛成できないが、細かいところも非常によく出来ている。自作のパソコンではまず出せないだろう。これは一度 VAIO を近くで見るとよく分かる。といっても、キーボードや画面をいくら見ても気づかないだろう。これは背面を見る必要がある。各端子の仕上げの良さ、どんな端子かを表すマーク。どれもポップで素晴らしい。これでカラーが「レモン色(この背景と同じ色)」だったら最高だったのに。

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だが、私が非常に腹の立つことがある。それは、PCG-737/A4Gの存在だ! やはり SONY も、2.1GB の HDD だと足りないことに気づいたのだろう。PCG-737 が発売されてから二ヶ月後ぐらいに、ハード的には PCG-737 と全く変わらずに、HDD が 4.3GB になった PCG-737/A4G が発売された。私は十分バーゲンな価格で PCG-737 を買ったつもりではあったが、ノート型は HDD を増設できないので、換装するしかない。そうなると、4.3GB のドライブを買うのに 4万以上掛かる(当時)。余る 2.1GB のドライブは下取りに出しても知れてるから、今度はそれを有効利用するために 1万出してキットを買わなくてはならない。合計 5万である。PCG-737/A4G は、どうやら PCG-737 より二万円高い値段で売られているようだった。30万近い買い物で二万の違いは小さいが、済んだ買い物のあとの五万となると大きい。

そんなわけで、私はそれからというもの、友人にことあるごとに「HDDが小さい」とこぼし、その友人がノートを買おうかなと言ったときは「PCG-737/A4Gだけはやめろ」と言ってきた。それほどまでにこの現実は重かった。ある時は、もう仕方がない、くよくよ考えるぐらいなら 5万ぐらい出してしまえ、というぐらいまで思ったが、結局買わなかった。そのあと財布にそのまま 5万が入っていたが、結局その金は、カラオケに行ったときに私がおごることになり、30分500円の店で四人で入り、そのままうっかり朝までいてしまい 3万9000円支払うはめになり、あっさり消えてしまった。(三人からそのあと3000円ずつ徴収することにしたので、実際には 3万である。ただし、いま現在回収したのは一人からだけで、一ヶ月たったいまでも残りの二人からは回収していない。ほんとにどうでもいいことだが。)

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ともかく、そんな私のようなユーザーにとって非常に魅力的な製品を、SONY はようやく出荷した。一昨日のことである(1998/11/14)。それは、マルチパーパスベイという部分に刺さる HDD ドライブ(キット)である。これは予想もしなかった素晴らしい製品である。もともと CD-ROM drive や FDD を内蔵できる部分に、増設用の HDD を入れることが出来るのである。こういうものを待っていた。CD-ROM drive と併用できない点は困るが、その増設用の HDD をバックアップ用にしてしまえば問題ない。ちなみに、その増設用の HDD の容量は 4.3GB である。SONY はこの HDD と内臓の HDD を自由に換装出来るとうたっているので、内蔵を 4.3GB にして、増設に 2.1GB を持ってくれば、バックアップやアーカイブ用に時々その増設用 HDD を刺せば使いやすいし収まりもいい。TypeII カードでやわなコネクタを介してつなぐ製品よりずっといい。

しかし、もちろんこの製品は純正なので、値段の方は高くなる。今日調べてみたところ、76,000円であった。ちなみに、A4バイオノートに使用されているという話の東芝製の HDD は 4.3GB で小売価格 37,800円ぐらいが最安値である。まあ仮に 4万としても、残りの部分が 36,000円するとは思えない。まあ、希望小売価格 76,000円だから実際には 7万ぐらいにはなるとして、それでも残りが 34,000円である。こんな商売やめてしまえ。くだらんダイレクトメール送ってくるぐらいなら、もっと良心的な商売をするべきだ。店頭で 6万以内だったら買う。じゃなければ買わない。そういうことにした。これでは消費も下がるはずだ。コンピュータに金を掛ける気になれない。いまのパソコンでなるべく長く使おうと思う人が多いのも無理はない。

とか言っておいて、店頭で安く売られていたらどうしよう。さっそく、チェックにだけは行ってみたい。昼休みにちょっと足を伸ばせば確認できるのだから。

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最後に。VAIO のページに行っても、大抵の場合 PCG-505 シリーズの話題しかない。非常に遺憾だ。A4 も売れているのに。千葉麗子も買ってるのに(意味無し)。

ついに最後までしょっぱい話だけで終わってしまった。次回があれば、もっと明るくしよう。つきあってくれてありがとう。


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