Neo Standerd TR 


09年から新しく茂木と鈴鹿で始まったネオスタンダードクラス。通称ネオスタ。エントラントポイントシステムやリレースプリントなど「新しく楽しい独自の基準」で作られた、全く新しいレギュレーションだ。参戦できる車両は現在のところ、ホンダVTRとカワサキNinjya250。改造範囲の狭いネオスタ仕様で、激戦となった2010もて耐オープンクラスで2位入賞を果たしたファイヤーガレージのVTRを紹介。



■ベース車両■


 ベースとなったのはいわずと知れたモトバムさんのコンプリート車両。ネオスタに参戦するにあたって、コンプリート車両があるのがVTRの強みだ。変更点はFRP製フルカウル&シート。レーシングエキゾースト。ハンドル、レーシングステップ等々。この車両を購入してガソリンを入れれば即参戦可能。タイヤはウチではブリヂストンの「BT003ST」を選択した。
 ひとまずシャーシでエンジンの慣らしだけ終わらせて、この状態のままシェイクダウンしたが、ライダーの古川曰く「まったく曲がらないが、変な挙動は出ない。」と。ハイグリップタイヤに変更しても十分な剛性がありそうな事は確認出来た。試しにタイヤのエア圧を2.0→1.8へ下げてみたが、「ふわふわしてて変化がまったくわからん。」と、笑えるコメントだった。
 本来は、この状態でライダーが、がんばって走らせましょ〜!というのがネオスタの趣旨のような気もするが、それがレースである以上、マシンにもその気になってもらわなけりゃ困るのである。
 レギュレーションブックを確認すると・・・。吸気やミッション、足回り、その他もろもろ。これだけ出来れば十分に楽しめる【ネオスタレーサー】が仕上がる。



■コンセプト■

 まずはどういったバイクに仕上がれば良いのか?ネオスタ仕様のVTRで、オープンレギュレーションのもて耐参戦を前提に考えた。
 さっそく測ったパワーチェックでは、過去にセッティングしたNinjya250のデータに遠く及ばず、約1割のアンダーパワー・・・。150PSも60PSも有り余るパワーがあるならいざ知らず、30PSの一割って勝負にならない。が、なぜかコースを一周すると同じようなタイムで帰って来る。対Ninjya比較ではVTRの方が中間加速が良いようで、コーナー後半部のフルバンクからバイクが起きて来るあたりでスルスルと前に出るようだ。ようするにコーナーリングと立ち上がり加速はVTRの方がちょっと部があると思われる。ホイールベースも長いしコーナーリングマシンには見えないが、安定感のあるハンドリングが攻める気になるんだろう。
 となると結論は、足回りをきっちり仕上げて少しでもコーナーリングスピード稼ぎ、そこからスムーズにアクセルを開けて加速状態に入れるバイク。要するに基本に忠実って事です。もて耐を考えると、さらにそこから燃費とタイムのバランスが重要項目になる。


■レギュレーション■

 ネオスタのコンプリート車両にプラスして仕様変更可能なのは以下の項目。多少強引な解釈もあるかも・・・。
主催者には未確認情報です。
【フロントフォーク】
・イニシャルアジャスター取り付け可
・ダストシール取り外し及び改造可
・ボトムピース加工可
・シートパイプ変更及び改造可
【リヤショック】
・ショック本体交換OK
・スプリング変更可
【ブレーキ】
・ブレーキローター交換可
・Bレバー交換可
【吸気系】
・ラム圧可
・吸気ダクト変更可
・エアクリーナー改造及び変更可
【冷却系】
・ラジエター改造、変更可
・サーモスタット取り外し可
【エンジンコントロール】
・サブコン使用可
【駆動系】
・スプロケチェーン変更可
・6速ミッションに変更可
【その他】
・AI取り外し可
・ロガー禁止
・ウォーマー禁止



■2010もて耐を終えて■

  自縛的レギュレーションのネオスタ仕様で挑んだ去年のもて耐だったが、終わってみれば総合2位と過去10年で最高のリザルトを残す事が出来た。
 ライダー達のがんばりと、それを支えたスタッフの力で手に入れた表彰台だった。ハード面から見れば、決勝中の燃費が不確定要素だったが、結果的には予想以上の好燃費だった。決勝終了時の残ガスから換算すれば、トップの周回数をクリアして、さらにペースアップさせる事も十分可能と思われる結果だった。
 燃費はリッター18.0km/L以上。ベストタイムは24秒位が表彰台を争う条件になると思われるが、おそらくキャブ車だと燃費をクリアするのが難しくなるんではなかろうか?一発タイムではFI車を凌ぐタイムを出す車両を多数見かけたが、表彰台争いに関わったのは全てFI車で、何がしかの形で燃費マップに変更されていると思われる。250ツインまでというビギナー向けと思えるレギュレーションだが、一定のスキルがあれば使いきれるパワーでの競争になる為、より優位な条件を揃えたチームが上へ行くシビアな状況が当分は続くだろう。
 


サスペンション
 まずは、ノーマルサスの限界を見極めるためにセットアップを行った。が、限界はすぐに来た。リア下がりの姿勢を修正すべく、リアショックのプリを3回転ほど掛けたところで、リアタイヤがハネだした。ライダーのインプレは、まだまだリア下がり。ならばとリアはそのままに、フォークオイルの粘度を大幅に上げて、フロントを低く抑えるようにしてみるが、所詮は付け焼刃で、大した効果は得られず、次のテストでリヤショックはGsense製オーリンズを投入。 さすがにこれは良く出来ていて、多少のセットアップを行っただけで決勝まで使った。ふわふわと動きすぎるフロントの仕様変更は、シングルレートのスプリングへの交換と、それに合わせた減衰を出しす加工になる。 ネオスタだと、カートリッジ式のフォークへ換装するような変更は出来ないので、通常はオイル粘度での対応になる。が、粘度を高くすると熱ダレが心配になってくる。しかも、もて耐は真夏の耐久だ。なので、オイルは#10に固定。シートパイプのオリフィス加工で減衰力アップを図った。


■6速ミッション
 ネオスタのレギュレーションでは、エンジン本体は、唯一VTRのミッションだけ6速に変更出来る。マグナ系のワイドな5速では、他車より非力なエンジンで、燃費の面でも勝負にならないのは明白だ。エンジン本体のパワーアップ的な作業は、まったくヤル気は無かったが、6速化だけはヤルつもりでいた。  下調べでは、STDのマグナ系5速の他に、旧VT系の6速。スパーダ系の6速があり、旧VT系が一番クロスしている事がわかった。このミッションを使うつもりだったが、作業途中で無加工では組めない事が発覚!!仕方がないのでスパーダ系のミッションを使うことにした。


■吸気系
そもそもはノーマルのエアクリBOXの吸気口があまりに小さいので、これを拡大して燃料を増やせば、そこそこパワーアップするんじゃないか?ゆくゆくはラム圧を。と思いついたのだが、ボックス加工では、中間トルクが若干上がっただけだった。
 FI車でECUがノーマルである以上、レースで優位に立つにはサブコンが必須だ。ライダーにしろ、メカニックにしろ、何か思いついた事を実行しようとしても、セッティングアイテムが無ければどうにもならない。ウチではパワコマを配線加工で取り付けて使用している。もちろんテストからもて耐決勝までパワコマに関してはノントラブルで使用できていた。もて耐で上位に食い込むには、燃費も重要項目になるが、パワーの無い250ccでは、エンジン回転を抑えるとかアクセル開度を抑えるといった方法は効果的ではない。ビッグバイクと比較するとタイムへの影響が大きすぎるからだ。なので、より燃費の良い仕様の必要性は高まると思われる。


■冷却系
 予想通り水温が厳しくなりそうだったので、ラジエターを立ててシュラウドを製作。本当はラジエターをデカイのに換えたかったが、気持ち程度の効果はあった。もちろんサーモスタットは取り外してある。 
 ノーマルのラジエターキャップ位置だと整備性が悪いので、リザーバータンクを取り外すついでに右側に移設。水量の点検は簡単に出来るようにした。面倒な加工は無いのでお勧め。FI車は水温でもセッティングが変わるので、水温管理も必須。可能なら70〜85℃位にしたい。    


スライダー
 軽量車で、カウル形状からも必要無いかと思ったオリジナル製作のスライダーだが、思わぬタイミングで役に立った。ネオスタとは言え、乗って戻らせる小細工はしておいて幸いだった。画像は最近作り直したVer.2。当時の物より、ダメージを受け流す形状。取り付けボルトは変更予定。


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