2005年6月8日 ましろ
迷惑!骨ったって・・・
看護師をしていた時の話です。
私が勤務していた病院は繁華街の中にあり、すぐ近くには観光客相手の大きなホテルがあります。
病院といっても整形外科、美容整形ではなく骨の方です。
専門といえばリハビリの、小さな医院。
ある夜、夜勤だった私は、事務所兼受付でカルテ整理をしておりました。
突然中年のご婦人が玄関に入ってきて、叫びました。
「ちょっと! 先生いる!?」
何事かと思いましたが、聞きました。
「どうなさいましたか?」
「のどに鮭の骨が引っかかってんのよ! 早く取って!」
大口を開けて見せて下さるのですが、見えません。
「早く先生出してよ!」
との催促に院長へインターホンで問い合わせると、いつもの習慣の飲酒のため、すでに出来上がってらっしゃる・・・
こんな状態の院長じゃ、のどの骨取るったってかえって危険だよな。
と思いながらも真実は告げられず、
「院長は今外出しておりますので・・・」
とやんわりと断ったつもりが、せっぱつまったご婦人は、
「ホテルのフロントはここで取ってもらえるって言ったんだから!」
と一歩も引かず・・・
「フロントのヤロー、何でウチにこんな患者よこすんだよ!」
と心の中で悪態ついてました。
というのも、ホテルの斜め裏に耳鼻咽喉科の病院があるのに!
のどは本来、そちらの分野です。あっちの方が近いのに、どうしてウチによこす!?
「あんたが取ってよ!」
そう言われても、看護師は医者の指示なしに医療行為はできないし・・・
整形外科に置いてるピンセットはまっすぐで、のどの奥の見えない鮭の骨なんて取れるわけありません。
「ホテルのそばに耳鼻咽喉科の病院がありますので、そちらの方に・・・」
と場所を説明しようにも、
「わかんない! 連れてってよ!」
と言うばかりで、全く聞く耳持たないご婦人。
夜勤中の看護師は外出できないと言っても、言うこと聞いてくれません。
しかたなく、おばさんを引き連れた白衣の看護師は、夜の繁華街を耳鼻咽喉科病院まで行く羽目に・・・
幸い耳鼻咽喉科病院の夜勤看護師は看護学校の同級生だったので、引継ぎをしました。
病院を出てホテルを見た私は、その場が繁華街でなきゃ叫びたい気持ちでいっぱいでした。
「骨、骨ったって、骨違いじゃねーかよ!!」
・・・お粗末様でした。
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