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注文!中華料理といえば

2004年8月8日  天声辛抱


数年前の話ですが、某中華料理屋でバイトしていた時のお話です。

私はアルバイトながら、フロアーリーダーという店長に次ぐNo.2(調理場は別)でした。
その為、店長不在時はクレーム対応係でした。


そんなある日のこと。
夜のピークが過ぎた時間にそのお客様はいらっしゃいました。

「ビール&餃子&ラーメンかなぁ」

と予想しオーダー表を見ると・・・

・生ビール
・前菜(小)
・春巻
・季節の炒め物(A)
  (この時は「上海蟹の豆鼓炒め」)

「仕事帰りに中華で一杯か、ごゆっくり」

と、心の中で思いました。


料理を半分位食べたところ、近くにいたウェイトレスがそのお客様に呼ばれました。

料理の追加かな? ビールが飲み終わっているからビールかな?
と思ったら、そのウェイトレスが困った顔をして近づいてきました。

「リーダー、8番テーブルのお客様の対応をお願いします。追加注文なんですが・・・」

疑問を持ちながら、お客様の所に行き、

「大変お待たせいたしました、追加のご注文でございますか?」

と、にこやかに話しかけた所・・・

「おー! 紹興酒キムチをくれ」

・・・なんですと?
心を落ち着けて、

「紹興酒とキムチでございますか?」
「おーそうだ、早く持ってきてくれ」
「・・・大変申し訳ございませんが、キムチは切らしております。ザーサイならございますが」
「は? 何を言っているんだ! 中華料理屋キムチが無いってどういうことだ! 中華料理屋でキムチが売り切れているって初めて聞いたよ!!

お酒が入っているせいか、少し興奮気味です。声もだんだん大きくなってきました。
しかも周りのお客さんは、クスクス笑っている。暴れられると面倒なことになりそうだなぁ。

5分程アレコレ言われた所で、少し間ができた!

「かしこまりました、調理場に確認をとって参ります。大変申し訳ございません、もう少々お待ち頂けますか? よろしければ紹興酒だけ先にお持ちいたしますが?」
「急げよ。客をなんだと思っているんだ・・・」

脱出成功!
他のウェイターに、

「紹興酒とサービスでザーサイをつけて8番テーブルに」

と伝え、私は調理場へ。

このお店のコックは血の気が多く、機嫌を悪くすると中華包丁をもってフロアーに出てくることがあります。
状況を司厨長(調理場の責任者)に状況を話すと一言、

「追い出せ」

いやあのですね・・・

何とかなだめて話を続けた所、急に調理場から離れ事務室に!
右手には中華包丁は・・・持っていない。良かった。

事務所から戻ってきた司厨長の右手には、まかないで使ったスーパーのお徳用キムチ

「これを出しておけ、480円だ!」

480円の値札が付いたお得用キムチを小皿に分けて、いざ8番テーブルへ。

「大変お待たせいたしました。キムチでございます」
「おー待ってたよ。やっぱり中華にはキムチだよなぁ」

とても満足された様子で、さらに紹興酒をキムチを追加されました。


帰り際にそのお客様からアドバイスを頂きました。

「だめだよ、中華料理屋でキムチを切らしたら。お客の信用なくしちゃうよ。キムチがなくっちゃ中華は中華じゃなくなっちゃうんだよ。俺が客だから大人しかったけど、うるさい客だったら大変だよ。気を付けろよ。レシートはいらないよ」

と・・・


私は、「その他 480円 x2」と書かれたレシートと共に、

「そのような事を言われるのは、あなただけです。なぜならキムチ韓国料理です」

と、心の中で思い笑顔でお客様を見送りました。


翌日事務所の冷蔵庫には、まかない用の新しいお徳用キムチが2つ入っていました。

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