歌う妹

2003/10/13  






「お母さんがねえ、まだ結婚して間も無い頃」
「うん」
「まだこの辺りにも建ってる家なんか、あんまり無くてね? そこの市営住宅なんかも無かった頃にねえ」
「うん」
「朝、まだ暗い時間なんだけど、外で誰かが歌っているのよ」
「ふーん」
「それでね? お父さんに『外で誰かが歌ってるよ』って言ったらね? 『こんな時間に誰かが歌ってる訳ないだろう』って言われてね」
「うん」
「それで雨戸開けて見たんだけど、やっぱり誰もいなかったのね」
「うん」
「だけど、朝になってから、連絡が入ってね」
「なんて?」
「お母さんの妹が亡くなったって」
「へー」
「だからきっと、その時歌ってたのはお母さんの妹で、お母さんに自分が死んだ事を教えに来てくれたんだろう、って」
「へー」


 母の妹。私の叔母が亡くなった時の話だった。
 テレビで「虫のしらせ」とかの番組を見た後で、「こういう事ってあるんだよねえ」と話してくれた。


 因みに、母からこの話を聞いたのは、私がその叔母さんを見た時よりもずっと後の事である。




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