- バベル
- モロッコで放たれた一発の銃弾が、アメリカ、メキシコ、日本の悲劇に波及する。コミュニケーションが出来なくなった世界でもがく人々の一見別々のストーリーが収斂されていくのは皮肉なのか奇跡なのか。人間の心の底を鋭くえぐる問題作。GG賞受賞。
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- ディパーテッド
- 香港映画「インファナル・アフェア」の世界がハリウッドに蘇る。マフィアに潜伏した警部とFBIに潜入したマフィアの命を懸けた緊張感が漲る、オールスター・キャストの娯楽大作。スコセッシ監督+デカプリオのシリーズ(?)3本目の作品賞ノミネート。BFCA受賞。
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- 硫黄島からの手紙
- 太平洋戦争末期、戦略上の要所として攻撃された硫黄島での激戦を日本兵士たちの視点から描いた異色のハリウッド作品。勝ち目のない戦いに命を懸けざるをえない兵士たちの思いと運命が、戦争の不条理さ・無意味さを際立たせる。NBR、LA批評家会賞、GG外国語映画賞受賞。
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- リトル・ミス・サンシャイン
- 崩壊状態の家族が末娘の美少女コンテスト出場のためにワゴンに乗ってカルフォルニアを目指す。果たして人生はコンテストで、勝ち負けだけが絶対の価値観なのか。ずんどこに落ちた家族を通して、自分らしく生きることや、家族の絆の温かさを再認識させてくれる秀作。大作を向こうにPGA賞、SAGキャスト賞を受賞。コメディーでの作品賞なら「アニー・ホール」以来29年ぶり。
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- クィーン
- まだ記憶に新しいダイアナ元妃の事故死。沈黙を保って世論の批判を浴びたエリザベス二世の女王としての威厳と人間としての苦悩を、当時就任したばかりで世論の扱いに苦慮する若手宰相トニー・ブレアとの関係を通じてドラマ化した問題作。英国アカデミー賞受賞。
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GG受賞の「ドリームガールズ」の落選で俄然混沌としてきた。5作品それぞれが主要な賞の作品賞相当を獲得しているという大混戦。昨年のパターンなら社会派群像劇の「バベル」だが、アカデミーらしくハリウッド娯楽大作「ディパーテッド」も有力。「リトル・ミス・サンシャイン」のラストスパートも侮れない。
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- ペネロペ・クルス(ボルベール<帰郷>)
- わだかまりを抱えたまま死別した母への思いが、思い出の歌とともに募る。やり直せないはずの思いが時を超える奇跡。アルモドバル作品で実力発揮。初ノミネート。カンヌ映画祭、欧州映画祭受賞。
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- ジュディ・デンチ(Notes on a Scandal)
- 可愛さあまって憎さ百倍?気になる同僚の秘密をネタにして、相手をねちねちとコントロールして喜ぶコワいおばさん。孤独な人間の屈折した醜さまで迫力で表現。ヘレン・ミレンとのデイム対決を制して初の主演賞獲得なるか。6回目のノミネート。
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- ヘレン・ミレン(クイーン)
- ダイアナ元妃事故死への対処が冷たいと思いがけず非難を受けて困惑する女王。やんごとなき実在の人物の、しかも記憶に生々しい出来事を演じるという難しい役どころ。表向きの威厳の裏にある人間女王を巧みに表現して今年の賞レースを牽引する。助演を含め3回目のノミネート。
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- メリル・ストリープ(プラダを着た悪魔)
- 泣く子も黙らせるカリスマ雑誌編集長ミランダ。部下にも厳しいが、ちゃんと自分にも厳しい。完璧な悪魔ぶりと人には見せない弱さの対比もお見事。ゴールデン・グローブ受賞。演技部門最多ノミネートの記録更新(14回め)で、オスカー獲得なら最多受賞(3回め)にも並ぶが…。以上。
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- ケイト・ウィンスレット(Little Children)
- 単調で退屈な郊外の平凡な暮らし。ほんの火遊びのはずの不倫関係で、満たされていたはずの生活が壊れ始める主婦を演じる。この若さで実に5度めのノミネートの実力派。
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大物がずらりと顔を揃えて壮観なノミネート陣だが、その中にあってH.ミレンが独走中。友達が多そうなJ.デンチ、M.ストリープが負うかたちか。
前哨戦ではマギー・ジレンホール(Sherrybaby)、アネット・ベニング(Running with Scissors)、ビヨンセ(ドリームガールズ)らの名前もあがったが、このメンバーの前には力負けだったかも。
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- レオナルド・ディカプリオ(ブラッド・ダイアモンド)
- 幻のピンク・ダイヤモンドを求めて内戦渦中の国に潜入する命知らずの冷酷な密輸入者。夢をかなえるはずのダイヤの裏に見えたのは光か闇か。3回めのノミネート。
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- ライアン・ゴスリング(Half Nelson)
- NYのブルックリンで貧困層の子供たちを教える若い教師。しかし自分はドラッグに溺れる身。理想と現実、自らの矛盾と社会の不条理が重なっていく。確かな演技力で初ノミネート。インディーズスピリット賞受賞。
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- ピーター・オトゥール(Venus)
- 自分の世話をするために同居した女性に振り回される初老の男性を肩の力が抜けた演技で表現。名誉賞まで受賞した後にまだまだ現役であることを証明するノミネートは今回で実に8度め。念願の初受賞なるか。
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- ウィル・スミス(幸せのちから)
- 失業と離婚でホームレスの弱り目にたたりめ、でも息子のためには途方に暮れてもいられない。自己中心的な男が、無一文のどん底から大金持ちまで昇りつめられたのは「幸せのちから」があったからこそ。実の息子との初競演も話題で、2度めのノミネート。
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- フォレスト・ウィテカー(The Last King of Scotland)
- スコットランドの若い医師が出会ったカリスマ性のある笑福亭鶴瓶似の男。彼こそ後にアフリカの闇と恐れられたアミン大統領その人だった。実在の人物になりきりつつ、人には見せない心の弱さも表現して今年の各映画賞を総なめ。初ノミネート。主演男優賞が唯一のノミネートの作品から受賞すれば、87年のマイケル・ダグラス(ウォール街)以来。
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GGでは「ディパーテッド」とダブルノミネートだった今年大活躍のディカプリオは、オスカーでは「ブラッド・ダイヤモンド」で候補入り。でも彼は「またチャンスがあるだろうから…」という理由でいつまでたっても獲れないパターンに陥りそうな予感。今年はF.ウィテカーが大本命。むしろ対抗は8度めの候補のP.オトゥールか。同情票が集まりやすいアカデミー賞だけに侮れない。
GG、NY批受賞のお騒がせカザフスタン人、サシャ・パロン・コーエン(ボラット)が落選。マット・デイモン(ディパーテッド)、ベン・アフレック(Hollywoodland)の仲良しコンビも揃って残念賞。ブラッド・ピット(バベル)、渡辺謙(硫黄島からの手紙)、ジェイミー・フォックス(ドリームガールズ)の作品賞候補主役陣、GG候補のアーロン・エッカート(サンキュー・スモーキング)も一歩及ばず。
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- アドリアナ・バラサ(バベル)
- メキシコからLAに出稼ぎしている家政婦アメリア。息子の結婚式に出席したい一念で国境まで出かけるが、そこで思いが言葉で伝えられない悲劇に見舞われる。実力派メキシコ女優。初ノミネート。
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- ケイト・ブランシェット(あるスキャンダルについての覚書き)
- 若く美貌の美術教師シーバは教え子との不適切な関係が発覚し窮地に立たされる。親身に助けてくれたと思った先輩教師が実はとんでもない奴で…。「バベル」「The Good German」での演技も評価が高い。3度めのノミネート。
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- アビゲイル・ブレスリン(リトル・ミス・サンシャイン)
- 美少女ミスコン出場を夢見るアラレちゃん風の無邪気な女の子。崩壊寸前の家族を救った予想外のパフォーマンスが衝撃的。人生は競争かもしれないけれど、型にはまる必要なんかないんだと教えてくれたような。東京国際映画祭では主演女優賞に輝く。
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- ジェニファー・ハドソン(ドリームガールズ)
- 誰もが認める抜群の才能を持ちながら、ダイナミックな容姿を理由にメジャーデビューではリード役を譲ることになったエフィー役。キャンディーズでいえばスーちゃんか(違います)。自身もオーディション番組出身のドリームガール。ゴールデングローブをはじめ、今年の映画賞を総なめの大本命。オスカーナイトでアメリカン・ドリームを締めくくることができるか。
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- 菊地凛子(バベル)
- 言葉の違いが人々を裂く世界で、その言葉すら奪われた少女を体当たりで演じて衝撃のハリウッド・デビュー。役作りのため5kg増量、手話をマスターし、1年にも亘るオーディションで監督の信頼を獲得した役者根性の持ち主。初ノミネート。ナンシー梅木以来の日本人女優二人目のオスカー獲得なるかに注目。
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主演賞とは対照的に4人が初ノミネートというフレッシュな顔ぶれ。中でもJ.ハドソンががちがちの大本命。ただし過去数々のサプライズを生み出したこのカテゴリだけに油断は禁物。
パリに憧れる悪魔編集長の第一秘書のエミリー・ブラント(プラダを着た悪魔)、BFCA新人賞のシャリーカ・エブス(Half Nelson)、NBR受賞のキャサリン・オハラ(For Your Consideration)らはノミネートに届かず。
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- アラン・アーキン(リトル・ミス・サンシャイン)
- ヘロインで施設を追い出されて息子夫婦にやっかいになっている不良老人。口が悪くて家族の手を焼かせているが、孫娘への秘密特訓が涙と感動のラストを呼び、家族の良さを再認識させてくれる。喧嘩が絶えなかった息子が失意に落ち込んだときにかけた一言も感動的。デビュー作でオスカー候補となって以来40年ぶりのノミネート(2回め)。英国アカデミー、インディーズスピリット賞受賞。
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- ジャイモン・フンスウ(ブラッド・ダイアモンド)
- 内戦の混乱状態の中、家族と離れて採掘場で働かされているお父さん。はたして秘宝のダイヤモンドは家族を救うことができるのか。「イン・アメリカ」のマッチョ・アーティスト役以来の2回めのノミネート。NBR受賞。
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- エディ・マーフィー(ドリームガールズ)
- 全盛期を過ぎた元人気ソウル・シンガーが売出し中の女声トリオとともに再起に向けて奮闘する。故ジェームス・ブラウンがモデルとも言われるファンキーな役どころを初の?脇役で生き生きとスクリーンに映し出す。初ノミネート。
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- ジャッキー・アール・ヘイリー(Little Children)
- 郊外の平和な住宅地に帰ってきた刑期明けの元性犯罪者。社会の偏見は今強く、住民の憎悪と疑いの標的にさらされる男を演じる。初ノミネート。
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- マーク・ウォルバーグ(ディパーテッド)
- マフィアの犯罪を捜査するボストン警察の警部。まさか自分の部下が当の組織に一員とは露知らず…。カムバックのきっかけとなった「バスケットボール・ダイアリー」以来のディカプリオとの競演でオスカー初ノミネート。
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受賞も有力と思われたJ.ニコルソン(ディパーテッド)が落選の波乱。失恋の痛手で鬱のおじさんスティーブ・カレル、パイロットになりたくて無言の行のお兄さんポール・ダノの「リトル・ミス・サンシャイン」組はおじいさんに花道を譲る。就任間もなくの大事件で右往左往する若き宰相トニー・ブレア役のマイケル・シーン(クイーン)、事務所の対応も注目された?二宮和也(硫黄島からの手紙)らが残念賞。
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