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オスカーのゆくえ - ノミネート作品

作品賞

ブロークバック・マウンテン
誰にも言えない秘められた熱い思い。1960年代のロミオとジュリエットというべきストーリーをワイオミングの美しい自然と20年の時の流れの中に描いた狂おしい愛の物語。GG、NY批、LA批、BFCA、BAFTA、PGA…各賞総なめのブッチ切りの今年の大本命。同性愛を正面から捉えた映画が作品賞に輝くか注目が集まる。
x2
カポーティ
奇才トルーマン・カポーティが代表作「冷血」の題材にするため、カンサスで起きた殺人事件を取材した6年間を再現し、彼の人物像を浮かび上がらせる問題作。主演のフィリップ・シーモア・ホフマンの熱演も話題。全米批評家会賞受賞。
x6
クラッシュ
人種のるつぼ、ロサンゼルスを舞台に人々の偏見や無理解が「衝突」する2日間を鋭くえぐる群像劇。「差別は悪いこと」と単純なきれい事ではすまされない、深く社会に巣食った問題であることがあぶりだされる。休みなく衝突を繰り返す人々に絶望を見るか、希望を見るか。シカゴ批評家会賞、SAGキャスト賞受賞。
x3
グッドナイト&グッドラック
1950年代アメリカ。共産党迫害を推進する上院議員の不正を暴くCBSアンカーの奮闘を、モノクロの映像の中で描く社会派作品。メディアに正義があったころのお話。NBR受賞。
x4
ミュンヘン
血で塗られたミュンヘン五輪の選手村。世界中に衝撃を与えた事件の後、極秘に進められた復讐テロの物語。血で血を洗い果てることのない憎しみの連鎖の根深さ、救いの無さを、民族の代表として突然テロリストにされてしまった男の苦悩として描く。カンサス、ワシントン批評家会賞受賞。
x5

SFファンタジーなし、歴史大河ドラマなし、戦闘スペクタクルものなし。ノミネート前の5つの作品の売り上げを全部足しても「チキン・リトル」に届かないという近年にない地味な作品賞候補群。今年のヒット作なら音響賞を見ろ、と言われていたり。それはともかく、それぞれに重い社会的テーマを扱ったシリアスな作品たちの中で、レースを引っ張っているのが「ブロークバック・マウンテン」。批評家・プレス・業界の賞を独占の勢いで今年の大本命。死角があるとすれば、あまりに前哨戦で強すぎて、他の作品にも光を当てたいという票が流れることと、平均年齢が高く保守的と言われるアカデミー会員が果たして同性愛を正面から扱った作品に栄冠を与えるかということ。対抗は人種間の軋轢を描いた「クラッシュ」か。

ゴールデン・グローブ受賞の「ウォーク・ザ・ライン/君につづく道」が落選の波乱。「ナイロビの蜂」「A History of Violence」など、今年のトレンド・地味作品ながら一歩届かず。「プロデューサーズ」「レント」のミュージカル勢は尻すぼみ。「キング・コング」「SAYURI」「シンデレラ・マン」の娯楽大作は今年の流行じゃなかったようで。


監督賞

ジョージ・クルーニー(グッドナイト&グッドラック)
権力の不正に毅然と向かう男達をモノクロの映像のなかに力強く描く。長編2作目で、監督賞初ノミネート。

x4

ポール・ハッギス(クラッシュ)
LAを舞台に人種を巡る無理解、偏見、衝突を緊張感溢れる群像劇でさばく。昨年は「ミリオン・ダラー・ベイビー」で脚本賞候補。監督賞では初ノミネート。

x3

アン・リー(ブロークバック・マウンテン)
アメコミものから歴史もの、ヒューマンドラマまでなんでもござれ。同性愛を正面から捉えて普遍的な愛の物語を謳いあげた評価は高く、GG、DGA、NY批、LA批、BFCA、BAFTA、NBRなどなど、文字通り各賞総なめ。監督賞は2回目のノミネート。

x2

ベネット・ミラー(カポーティ)
作品の取材の過程を描く中でひとりの作家の人間性を鋭くえぐり出す。初ノミネート。

x6

スティーブン・スピルバーグ(ミュンヘン)
なんでいまごろ…、とユダヤ人側からもパレスチナ側からも批判の聞こえた問題作。時を超えて今にも続く解けない業を描きたかったのか。渾身の作品で6回目の監督賞ノミネート。過去2連勝中(「シンドラーのリスト」「プライベート・ライアン」)だが果たして3連覇なるか。

x5

作品賞と監督賞の5作品が全て一致するのはあるようで珍しく、81年以来のこと。作品賞に推すのをためらう人も監督賞には迷わないだろうということで、李安監督の独走態勢。前回「グリーン・デスティニー」でDGAを獲得しつつオスカー逃したリベンジなるか。「クラッシュ」のラストスパートが効けばハッギスも有力。

ピーター・ジャクソン(キング・コング)、ジェームス・マンゴールド(ウォーク・ザ・ライン)、フェルナンド・メイエレス(ナイロビの蜂)、デビッド・クローネンバーグ(A History of Violence)らが落選。


主演女優賞

ジュディ・デンチ(Mrs.Henderson Presents)
夫の死後にオーナーとなった劇場で、英国初のヌードショウを上演した女性を肩の力の抜けた演技でこなし助演賞を含み5度目のノミネート。初の主演賞獲得を狙う。

x4

フェリシティ・ハフマン(Transamerica)
性転換して女になった男性という難しい役をこなして評価が高い。特に発声法が見事(らしい)。GG、NBR受賞。初ノミネート。

x3

キーラ・ナイトレイ(プライドと偏見)
英国社交界、ジェーン・オースティンの世界。理想の男性に巡りあいながら高慢や偏見が邪魔をしてなかなか相手と結ばれない…えーいじれったい。でも即席で使い捨てな恋よりこっちの方が面白いのかも。ただのかわい子ちゃん女優ではないことを証明する初ノミネート。

x6

シャーリーズ・セロン(スタンドアップ)
炭鉱で働くシングルマザーがセクハラに悩みながら立ち上がる勇気の物語。オスカー獲得の「モンスター」以来、2度目のノミネート。

x5

リース・ウィザースプーン(ウォーク・ザ・ライン/君につづく道)
伝説的カントリーシンガー、ジョニー・キャッシュを優しさと強さで支えた恋人、ジューンを演じて初ノミネート。みごとな喉も披露。いまやジュリア・ロバーツを抑えてハリウッド最高ギャラ女優。栄冠に華を添えられるか。GG、NY批、BFCA、BAFTA、SAGの各賞受賞。

x2

見事な歌も披露したウィザースプーンがリード。変身度が高いと評価が高くなる傾向もあり、難易度No.1のハフマンもあなどれない。その他の人ならとりあえず番狂わせ。何をやってもとりあえず票が集まるダム・ジュディ・デンチが大穴か。

英語を操る芸者のチャン・ツィーイー(SAYURI)、叫び声も見事なナオミ・ワッツ(キング・コング)が落選。NY批受賞のジョアン・アレン(The Upside of Anger)も残念賞。


主演男優賞

フィリップ・シーモア・ホフマン(カポーティ)
代表作「冷血」の製作過程を通し、一人の有名作家の表と影を浮かび上がらせる。変幻自在の芸達者で初ノミネートが遅いくらい。「フローレス」「ブギー・ナイツ」に続いて少なくとも3回めのゲイ役。GG、NBR、LA批、BFCA、BAFTA、SAGの各賞受賞。

x2

テレンス・ハワード(Hustle & Flow)
ドラッグ・ディーラーでヒモでやっと生活しているディージェイが、音楽の才能を信じ、自ら人生を切り開いていくさまを演じて初ノミネート。「クラッシュ」にも出演。

x6

ヒース・レジャー(ブロークバック・マウンテン)
ひと夏の出会いを20年間秘めてきた男、エニス。何を言っているか分からないと評判ながら、時に暴力で感情を表現してしまう不器用なところや優しさ、苦悩も巧みに表現。NY批賞受賞。

x3

ホアキン・フェニックス(ウォーク・ザ・ライン/君につづく道)
伝説的カントリーシンガー、ジョニー・キャッシュの波乱万丈の生涯を、見事な歌も吹き替えなしで演じて、「グラディエイター」の助演賞以来2回目のノミネート。後の人生に影響する子供のころのエピソードが自身にもシンクロする。GG受賞。

x4

デビッド・ストラザーン(グッドナイト&グッドラック)
権力に果敢に立ち向かう実在のTVアンカーを渋く演じて、玄人受けする初ノミネート。

x5

ホフマン対レジャーのホモ対決。下馬評ではホフマン優性だが、「ブロークバック」旋風が吹くとレジャーが浮上の線も。今年も3人が実在の人物というそっくりさん大会にもなっている。

図らずもテロリストになった若者の苦悩を演じたエリック・バナ(ミュンヘン)が落選。ラッセル・クロウ(シンデレラ・マン)は電話さえ投げなければ…と悔やまれる。レイフ・ファインズ(ナイロビの蜂)、GGノミネートのピアース・ブロズナン(The Matador)、ジョニー・デップ(チャーリーとチョコレート工場)も残念でした。


助演女優賞

エイミー・アダムズ(Junebug)
ノース・カロライナの田舎町に静かに暮らす人のいい妊婦さん。都会からやってきた親戚の起こす騒動にもマイペースな女性を演じて初ノミネート。BFCA受賞。

x4

キャサリン・キーナー(カポーティ)
幼友達に付き添ってカンサスに飛び、殺人囚の取材を手伝う作家を演じて「マルコビッチの穴」以来2回めのノミネート。「The 40-Year-Old Virgin」等との出演と合わせてLA批評家会賞受賞。

x5

フランシス・マクドーマンド(スタンドアップ)
芸達者なオスカー常連女優。炭鉱で働きセクハラと自身の病と戦う女性の強さを園児で、主演を含め4回めのノミネート。2度めのオスカー獲得なるか。

x6

レイチェル・ワイズ(ナイロビの蜂)
妊娠中の女性弁護士テッサ。製薬業界を巻き込んだ国際スキャンダルを暴こうとして悲劇を招く。GG、SAG賞受賞。初ノミネート。

x2

ミシェル・ウィリアムズ(ブロークバック・マウンテン)
幸せな結婚生活だと思い込んでいた日々が、夫の秘密をきっかけに崩れていく。愛と裏切りと信頼の中で揺れる苦悩と葛藤を演じて初ノミネート。BFCA受賞。

x3

伝統的に番狂わせの多いカテゴリー。SAG受賞のワイズが一歩リードか。新人に票が集まることもよくあるので、アダムス、ウィリアムズも大いにあり得る。キーナー、マクドーマンドのベテラン勢も手堅く票を集めそう…ってこれじゃ全員だ。

NY批受賞のマリア・ベロ(A History of Violence)、NBRのコン・リー(SAYURI)、BAFTAのサンディー・ニュートン(クラッシュ)が落選。アン・ヘザウェイ(ブロークバック・マウンテン)はウィリアムズに押し出された形。毎年いいところまで行きながらノミネートに縁がないスカーレット・ヨハンソン(Match Point)は今年も残念賞。シャーリー・マクレーン(イン・ハー・シューズ)、ローラ・リニー(The Squid and the Whale)、ダイアン・キートン(The Family Stone)らも後一歩で涙を飲む。


助演男優賞

マット・ディロン(クラッシュ)
人種偏見の権化のようなLAPDの警察官。後輩警官に「お前もそのうち分かるようになるさ」とうそぶく言葉にもやな奴オーラがばりばり出ていたが、偏見の鎧の下に覗くエピソードには、世の中それほど単純じゃないなと考えさせられた。ダラス、ラスベガス批評家会賞受賞。初ノミネート。

x4

ジョージ・クルーニー(シリアナ)
謀略渦巻く石油利権を巡る陰謀の只中に巻き込まれるCIAエージェントを渋く演じて初ノミネート。GG受賞。

x3

ポール・ジアマッティ(シンデレラ・マン)
人々が希望を失くしていた大恐慌後のアメリカ。かつてのチャンピオンの再起を支え、それが人々に自信を与えることになる物語の影の主役。「アメリカン・スプレンダー」「サイドウェイ」で2年連続ノミネートを逃したが今年は3度目の正直の初ノミネート。SAG、BFCA受賞。

x2

ジェイク・ギレンホール(ブロークバック・マウンテン)
ひと夏の出会いがその後の彼の一生を変えた。優しく魅力的なジャックを演じて初ノミネート。主演と言っていい役だが、賞レースには助演で参戦。BAFTA、NBR受賞。

x5

ウィリアム・ハート(A History of Violence)
主人公の過去を知る冷酷なマフィアを怪演して、実に18年ぶり4回目のノミネートの実力派。NY批、LA批受賞。

x6

見事に満遍なく前哨戦を受賞している5人の面々。「ブロークバック」旋風が吹けばギレンホールだが、去年「サイドウェイ」でノミネートを惜しくも逃したジアマッティに次点バネの同情票が集まると見て、本命に推します。

ドン・チードル(クラッシュ)、ボブ・ホスキンス(Mrs.Henderson Presents)、渡辺謙(SAYURI)らが残念賞。



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