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Movies

オスカーのゆくえ

作品賞

LOTR ROTK The Lord of the Ring: Return of the King
ロード・オブ・ザ・リング/王の帰還
世界中を熱狂させた奇跡の3部作がここに完結。指輪の魔力に消耗し切ったフロドは指輪を悪の手から守り、無事に葬ることが出来るのか。悪との最終決戦の行方は。みんなが待ち望んだ大団円を感動の渦で描いて見せる。ファンタジー作品で初の作品賞なるか。GG、NY批、BFCA、PGAなど各賞総なめの今年の本命馬。

x2

Lost in Translation Lost in Translation
ロスト・イン・トランスレーション
CM撮りにやってきたアメリカの大物俳優。売れっ子カメラマンの仕事について来た若い妻。破綻した結婚生活に自分の居所を失くしてしまった2人の寂しいアメリカ人が、東京という異空間で不思議な引力に引かれ合う。淡々とした語り口で、人生の迷路を彷徨うものを優しくおかしく描いた不思議な作品。批評家に絶賛されてインディーズで唯一のノミネート。GG賞受賞。

x4

Master and Commandar: The Far Side of the World
マスター・アンド・コマンダー
時は19世紀初頭、ナポレオンが欧州に覇を唱えようと戦争が絶えなかった時代。ブラジル沖で英国戦艦を率いていたキャプテン・オーブリーは、出くわしたフランス戦艦と予期せぬ戦いを強いられる。自艦に多数搭乗している年端のいかない少年たちを無事に本国に帰さんと立ち向かう、オーブリー艦長の勇気と機転。海洋ものはカネ食い虫の言葉どおり1億ドル稼いでもまだもとがとれないという大スペクタクルの迫力の映像も話題。

x5

Mystic River Mystic River
ミスティック・リバー
あの日を境に3人の友情は二度ともとに戻ることはなかった。子供の頃の忌まわしい記憶が、25年後に起こった殺人事件をきっかけに再び3人に重くのしかかる。演技達者な俳優をずらりと揃え、人生の不条理、トラウマから解放されない人の悲しさが迫る。GG、NBR賞、仏セザール外国映画賞受賞。

x3

Seabiscuit Seabiscuit
シービスケット
人々が未来に希望を失くしていた大恐慌時代のアメリカ。一頭の見捨てられた競走馬に、残されたかすかな望みを託す3人の男たち。誰も予想しなかったその競走馬の活躍が男たちの人生を変え、全米の人々に勇気を与えた奇跡の実話の物語。ベストセラーの原作を淡々とした語り口で映像化し、夏の公開作品で唯一のノミネート。日本でのリメークの題名は「ハルウララ」に決定したとか。んなわけない。

x6

全て監督自らプロデューサーに名を連ねる気合の作品群。中でも本命「王の帰還」を対抗「ミスティック・リバー」が追う展開と見た。3部作全て高いレベルの維持した点を併せ技で評価して「王の帰還」が一歩リードか。映画批評家の一押し・ゴールデングローブ受賞の「ロスト・イン・トランスレーション」が穴。「マスター・アンド・コマンダー」は莫大な製作費の割に興行成績がそこそこだったのが減点材料。「シービスケット」は出走できただけで本望、勝ったら万馬券もの。

ノミネート確実と目されていた「Cold Mountain」が落選。宣伝上手のミラマックス作品が作品賞候補から漏れたのは11年ぶりという波乱。監督の自伝的思い入れが色濃いという「イン・アメリカ」「Big Fish」も選外。時代バトルものがかぶるのが嫌われたか「ラスト・サムライ」は武士道の心意気で潔く消え去ることに。LA批評家会賞の「American Splendor」、大ヒットの「ファインディング・ニモ」「パイレーツ・オブ・カリビアン」、演技派を揃えて見応えのある「砂と霧の家」「21グラム」、”フォー・ウェディング枠”を狙った「ラブ・アクチュアリー」らも一歩及ばず残念賞。


これで獲れなかったら暴動が起きるんじゃないかという雰囲気の中、封筒を開封したS.スピルバーグが「(ノミネート)全部門制覇です!」と高らかに宣言。P.ジャクソン他、受賞者3名以外にもホビットたちなどキャスト・クルーが壇上に勢揃い。お祭りらしい順当な締めくくりとなった。


監督賞

Fernando Meirelles Fernando Meirelles (City of God)
フェルナンド・メイレレス(シティ・オブ・ゴッド)
今年のノミネート番狂わせの一人。スラム街の少年ギャングたちの抗争をリアルかつスタイリッシュな映像で再現。かなり危険な撮影だったらしい。昨年外国語映画賞ノミネートに選出しなかったことを後ろめたく思っているアカデミー会員の罪滅ぼしなのかも。初ノミネート。

x6

P Jackson Peter Jackson (LOTR: Return of the King)
ピーター・ジャクソン(LOTR/王の帰還)
7年の製作期間を賭けた3部作がついに完結。壮大な原作の世界観を見事に映像化し、高いエンターテイメント性を保ち、世界中のファンを楽しませた手腕が評価される。昨年は一回お休みで、これが2回目の監督賞ノミネート。ゴールデン・グローブ、LA批評家会賞、BFCAなどの各賞受賞。

x2

Sofia Coppola Sofia Coppola (Lost in Translation)
ソフィア・コッポラ
女性監督のノミネートは「ピアノ・レッスン」のカンピオン監督以来史上3人め。異国・日本で孤独な心を寄せ合う2人のアメリカ人の静かで淡い交流を、ハンディ・カメラも駆使した映像で見せる。自ら脚本も担当。受賞すれば祖父・父と合わせて3代に亘るオスカー獲得となる。NY批評家会賞受賞。

x4

Peter Weir Peter Weir (Master and Commandar)
ピーター・ウィアー(マスター・アンド・コマンダー)
ダウン・アンダーの巨匠。19世紀の南大西洋を舞台にした英仏戦艦の息詰まる戦いのスペクタクルと人間ドラマを映像化。「トゥルーマン・ショウ」以来、5年ぶり4回めの監督賞ノミネートで初栄冠を狙う。

x5

Clint Eastwood Clint Eastwood (Mystic River)
クリント・イーストウッド(ミスティック・リバー)
人間の業を深く重厚な映像と語り口で見せた、手堅く隙の無い演出で「許されざる者」以来2回めの監督賞ノミネート。

x3

南半球から3人がノミネート入り。イーストウッド以外は受賞すれば初栄冠となる。3部作合わせて7年間頑張ったジャクソンに賞賛の票が集まる予感。対抗は堅実でそつの無い手腕を見せたイーストウッドか。将来性・話題性を買ってコッポラに票が集まる可能性もあり。

DGAノミネート、作品賞にも推されながらゲイリー・ロス(シービスケット)が落選。有力と見られたジム・シェリダン(イン・アメリカ)、ティム・バートン(Big Fish)、アンソニー・ミンゲラ(Cold Mountain)も選外。コロンバイン高校乱射事件を題材にした問題作「エレファント」でカンヌ監督賞だったガス・バン・サントも届かす。NBR受賞のエド・ズウィック(ラスト・サムライ)も残念賞。アレハンドロ・ゴンサレス・イニャリトゥ(21グラム)は名前が長すぎて覚えにくかったのが災いして選外に消えたらしい。


順当にピーター・ジャクソン。大手スタジオに持ち込んでも相手にされなかった企画を7年かけて実現させた情熱と粘り強さに賞賛の拍手が集まる。イーストウッドに受賞経験が無ければ接戦だったかもしれない。プレゼンターはトム・クルーズ。3年前も彼だった。


主演女優賞

Keisha Castle-Hughes (Whale Rider)
ケイシャ・キャッスル=ヒューズ(クジラの島の少女)
監督が国中をオーディションして発掘した、演技経験無しのマオリの少女が史上最年少(13歳)での主演女優賞ノミネートを獲得。最愛の父と別れても、最愛の祖父の反対にも屈せず、自分の運命を受け入れる意思の力強さを芯のある眼力で表現。これは島の人たちもついていくでしょう、と納得の演技。BFCA賞のU−21部門を「イン・アメリカ」のボルガー姉妹、「Thirteen」のレイチェル・ウッドを抑えて受賞。

x6

Diane Keaton Diane Keaton (Something's Gotta Give)
ダイアン・キートン(恋愛適齢期)
娘の新しい恋人は実はジャック・ニコルソンだった…そりゃあパニクりますな。心臓発作で倒れた彼を不本意ながらしばらく家で面倒見るようになって、少しずつこころを通わせ合うようになる中年女性を軽やかに演じて7年ぶり4回めのノミネート。受賞すれば「アニー・ホール」以来26年ぶり2回目。GG、NBR賞受賞。

x3

S Morton Samantha Morton (In America)
サマンサ・モートン(イン・アメリカ/三つの小さな願いごと)
祖国アイルランドを捨て、NYで再出発しようとする家族。オーディションに落ち続けれ役者志願の夫を励まし、ウェイトレスとして苦しい家計を支えながら2人の幼い姉妹に愛情を注ぐ気丈な母を演じて「ギター弾きの恋」以来4年ぶり2回目、主演賞では初ノミネート。安アパートの階下に住む謎の黒人アーティストの交流から、一家に重くのしかかっていたトラウマを克服する光を見つけるところに救いを見た。

x5

C Theron Charlize Theron (Monster)
シャーリーズ・セロン
フロリダに実在して全米を震撼させた女性連続殺人鬼を、スーパーリッチな美貌をかなぐり捨てて怪演して評判を呼ぶ。娼婦として暮らしていた主人公が、自己防衛で初めて人を殺めてから、いかに残虐な殺人鬼に変貌していったのか。戦慄の一生があらわになる。GG、NBR、LA批、BFCA、SAGなどなど、今年の各映画賞を総なめの演技。

x2

Naomi Watts Naomi Watts (21 Grams)
ナオミ・ワッツ(21グラム)
夫を交通事故で亡くした元薬物中毒の若い未亡人。夫の心臓を移植された男との出会いのなかで、人生・愛・死などの答えの出ない問題と直面する。遅咲きながら、演技派としての地位を確立する初ノミネート。

x4

映画初出演の若手からベテランまで賑やかな顔ぶれ。個人的にはケイシャ・キャッスル・ヒューズを応援したいが、まずありえないでしょう。シャーリーズ・セロンの熱演に票が集まる予感。ベテラン健在ぶりを見せたダイアン・キートンもあなどれない。

下馬評の高かったニコル・キッドマン(Cold Mountain)が3年連続のノミネートを逃す波乱。有力と見られたジェニファー・コネリー(砂と霧の家)も届かず。ゴールデン・グローブ・BAFTA共にダブルノミネートだったスカーレット・ヨハンソン(Girl with a Pearl Earring)、おばさん版フル・モンティで大胆なヌードを披露したヘレン・ミレン(Calendar Girls)、NY批評家賞のホープ・デイビス(American Splendor)、パトリシア・クラークソン(The Station Agent)、SAGノミネートのイバン・レイチェル・ウッド(Thirteen)らも涙を飲む。


昨年、ハル・ベリーとの熱烈ディープ・キスで話題をさらったエイドリアン・ブロディの封筒を開ける前のパフォーマンスで場が和んだあと、大本命のシャーリーズ・セロンの名が呼ばれる。それでもちゃんと唇にキスしてあげるところが彼女の立派なところ。涙声になりながらも世話になった人への謝辞をきちんと言っていた。最後に母親に向かって「どれだけ自分を犠牲にして育ててくれたか…。言葉では尽くせないほど感謝している。泣くもんですか!」と締めていたが、これは先日のTVのインタビューで(暴力が絶えなかったシャーリーズの実父を彼女の目の前で射殺したと伝えられる)母親の過去のことを聞かれて泣き出してしまったことを念頭においた発言だったらしい。感動的なスピーチだった。

シャーリーズのボーイ・フレンドがキュート。ついでにナオミ・ワッツの恋人のヒース・レジャーもかわいかったにゃ。シャーリーズのお母さん、いい歳して肩出しのそのドレスはどうかと思います。


主演男優賞

Johnny Depp Johnny Depp (Pirates of the Caribbean:The Curse of the Black Pearl)
ジョニー・デップ(パイレーツ・オブ・カリビアン)
某ネズミーランドの人気アトラクションが原作?の痛快冒険アクション娯楽大作の主役をハイテンションで演じ切って初のノミネート。奪われたブラック・パール号を取り戻そうと奮戦する海賊ジャック。愛と冒険の活動大写真の主役は彼以外には考えられない。お行儀のいいアカデミー賞で、アート系、シリアス系の作品を抑えてのノミネートは立派。本命2人を抑えて堂々SAG賞受賞。

x5

Ben Ben Kingsley (House of Sand and Fog)
ベン・キングズレー(砂と霧の家)
名誉ある元イラン軍人。家族のため、人生の再出発を誓ったアメリカの地で手にした一軒の家。終の棲家となるはずだったその家の所有を巡って悲劇的な争いが繰り広げられる。異国の地での不条理や差別に毅然として立ち向かう誇りある移民を演じて4回目のノミネート。受賞すれば「ガンジー」以来の21ねんぶりとなる。

x4

Jude Law Jude Law (Cold Mountain)
ジュード・ロウ
南北戦争時代のアメリカ。戦場で負傷したインマンは、愛する女性のもとに帰るため長く苦しい道を行く。「リプリー」での助演賞候補以来4年ぶりのノミネート。

x6

Bill Murray Bill Murray (Lost in Translation)
ビル・マーレイ(ロスト・イン・トランスレーション)
ハリウッドの大物俳優のボブ・ハリスがCM撮りのため東京にやってきた。時差ぼけとわけのわからない日本語の洪水に疲れた彼は、眠れない夜をホテルのバーで過ごすうちに、ひとりのアメリカ人の女性と奇妙な共感を持つ関係になる。疎外感や喪失感、いらだちと絶望、それらを埋めてくれる人との出会いから生まれるほのかな希望を静かに表現して初ノミネート。GG賞、NY批、LA批、BAFTAの各賞受賞の今年の有力候補。

x3

S Penn Sean Penn (Mystic River)
ショーン・ペン(ミスティック・リバー)
最愛の娘を無残に殺された怒りと悲しみに支配され、みずから犯人に審判を下そうとする父親の孤独と激情を鬼気迫る演技で表現して4回めの主演賞ノミネート。過去授賞式には出席したことがない彼だが、今年は監督のために顔を見せる予定だとかで気合充分。GG、NBR、BFCAの各賞受賞。

x2

共に「賞レースには興味ない」と公言しているS.ペンとB.マーレイの争いというところが皮肉。感情をあまり表に出さない演技のマーレイと激情をほとばしらせる演技のペン、と役どころも対照的。批評家から大絶賛の嵐のマーレイ、そろそろ受賞してもいいんじゃない?のペン、双方一歩も譲らない様相。票が割れる間隙を縫ってJ.デップというのもあながちありえなくはないかも。

今年こそは、のトム・クルーズ(ラスト・サムライ)、作品賞候補に主演のラッセル・クロウ(マスター・アンド・コマンダー)の両大物が落選の波乱。常連ジャック・ニコルソン(恋愛適齢期)は候補記録回数更新ならず。「American Splendor」のポール・ジアマッティ、「The Station Agent」のピーター・ディンクレージ、「イン・アメリカ」のパティ・コンシダインらのインディー勢も落選。渋い演技のジェフ・ブリッジス(シービスケット)も一歩届かず。


本日唯一の接戦と目されたこの部門も本命のショーン・ペンが受賞し、スタンディング・オベージョンで迎えられる。「21グラム」で共演したナオミ・ワッツがいち早く立ち上がって拍手していたのが印象的。何を言い出すかひやひや(わくわく)していた人も多かったらしいが、最初に「誰もが分かっていること、…大量破壊兵器なんて初めから無かったことのほかに…、演技者に優劣なんてつけられないこと」と政治的皮肉を入れた以外は、恥ずかしげに謝辞を述べる素朴なスピーチ。一緒にノミネートされた後の4人を称える人はよくいるが、ノミネートされていない俳優も含めて「みんな素晴らしい役者だ」と褒めたひとは珍しい。「準備していなかったので即興で」というのはおそらく本当だろうと思われる、はにかみながらの心温まるスピーチだった。

「監督のために出席した」と言ったと伝えられるペンは、はたして来年プレゼンターとしてもう一度顔を見せてくれるだろうか…。来ない方に500カノッサ。同じく、監督のために出席したらしいビル・マーレイは、受賞者にペンが呼ばれたときにニコリともしなかったのが印象的。


助演女優賞

S Aghdashloo Shohreh Aghdashloo (House of Sand and Fog)
ショーレイ・アグダシュルー(砂と霧の家)
第二の人生を始めた異国アメリカで家の所有を巡るごたごたに巻き込まれ、家族を守る気丈な軍人の妻。ハリウッドでは無名でも祖国イランでは実力派女優だった彼女が印象的な力強い演技で今年のフロントランナーに。NY・LAの両批評家会賞受賞。

x3

Pat Clarkson Patricia Clarkson (Pieces of April)
パトリシア・クラークソン
反抗期の娘エイプリルのアパートで感謝祭を過ごすため家族とNYまで車で向かう母。道中の数々のトラブルにますます乗り気が無くなる彼女には、実は思い入れの深い週末になる理由があった。「The Station Agent」と併せて、今年の各賞の候補に名を連ねる活躍。NBR賞受賞。

x5

Marcia Gay Harden Marcia Gay Harden (Mystic River)
マーシャ・ゲイ・ハーデン(ミスティック・リバー)
夫の深く癒せない悲しみを理解できずに苦悩し、疑念を払えない妻。重い役柄をさらに重くしていた力強い演技力。「ポロック 2人だけのアトリエ」で驚きの受賞をしてから3年。堂々と2回目のノミネート。

x6

Holly Hunter Holly Hunter (Thirteen)
ホリー・ハンター
元優等生の13歳の娘がSEXとドラッグに溺れていくのを、娘を愛するあまり正面から直視できないシングル・マザー。母の弱さ・強さを鋭く表現して、主演賞を受賞した「ピアノ・レッスン」以来10年ぶり4回めのノミネート。

x4

Renee Zellweger Renee Zellweger (Cold Mountain)
ルネ・ゼルウィガー
南北戦争時代のアメリカ。戦地に向かった恋人の帰りを待つお嬢さん育ちの主人公の面倒を見るように言われた田舎娘。自らを守るために銃まで手にし、たくましく気丈に時代を生きぬく女性を演じ、3年連続のノミネート。今年こそはの期待も大きく、GG、BAFTA、BFCA、SAG賞など主な賞を独占の勢い。

x2

番狂わせならこの部門、といいつつ過去2年は本命が受賞。そろそろ何かが起こるかも。というわけで予想が大変難しい。ゴールデン・グローブなど各賞獲得のゼルウィガーが一歩リード。ミラマックスは全力を挙げてこの部門をバックアップしてそうなので固いかな。前哨戦独占の勢いがマイナス要因になれば、玄人受けが良いアグダシュルーが浮上。

スカーレット・ヨハンソン(ロスト・イン・トランスレーション)、マリア・ベロ(The Cooler)、メリッサ・レオ(21グラム)、サラ・ボルガー(イン・アメリカ)ら、有力インディーズ勢が落選。ノミネート歴のあるエマ・トンプソン(ラブ・アクチュアリー)、ローラ・リニー(ミスティック・リバー)、フランシス・マクドーマンド(恋愛適齢期)たちも一歩及ばず残念賞。


本命のゼルウィガーが順当に受賞。緊張していたのか、近くに座っていた共演のニコル・キッドマンにもジュード・ロウにも一瞥もくれずに壇上へ。メモを見ながら恐ろしく早口で謝辞を並べるもんだから誰もついていけない。監督(アンソニー・ミンゲラ)の名を挙げたときですら誰も拍手できなかったし。(無名時代に「ザ・エージェント」で共演した)トム・クルーズの名を挙げたときに、カメラがニコル・キッドマンを映したのは嫌味だったが、特に作り笑いを装った風でもない自然な笑顔のニコルは立派。移民の(いろいろ苦労しながら育ててくれた、という意味か)両親に「それは止めときなさい、とは決して言わないでくれてありがとう」と言ったのがいい感じ。


助演男優賞

Alec Baldwin Alec Baldwin (The Cooler)
アレック・ボールドウィン
人のツキを吸い取ってしまうという"クーラー"(日本語でいうと貧乏神?)に目をつけて自分の店の専属に雇ってほくほく顔の、金儲けのことなら何でもありのラスベガスのカジノオーナー。いかにも面の皮の厚そうなところがはまり役。今回が初ノミネート。NBR賞受賞。

x5

Ben Del Toro Benicio Del Toro (21 Grams)
ベニシオ・デル・トロ
更生を誓って神職の道を歩むはずだった元囚人。新たな人生の始まりが交通事故で狂わされる。同じく事故に巻き込まれた人々との交わる中で、命の重み、罪の重み、愛の重みが問われる。生涯最高の演技と絶賛され、オスカー獲得の「トラフィック」以来、3年ぶり2回目のノミネート。

x3

Djimon Hounsou Djimon Hounsou (In America)
ジャイモン・フーンスウ(イン・アメリカ/三つの小さな願いごと)
再起を誓ってNYにやって来たアイルランド移民家族のアパートの階下に住む、謎の引き篭もりアーティスト。別名「叫ぶ男」。ハロウィンをきっかけにした移民家族の幼い姉妹との交流から、次第に閉ざした心を開いていき、最後には移民家族の再生に大きな足跡を残して去っていく。盛り上がった大胸筋を惜しみなく披露しているのも○。初ノミネート。

x6

Tim Robbins Tim Robbins (Mystic River)
ティム・ロビンス(ミスティック・リバー)
少年の頃に受けた心の傷がトラウマとなって人生に覆いかぶさってくる男。幼友達の娘の殺害容疑がかけられても、深い悲しみの殻に閉じこもる彼には妻でさえ疑念の思いを募らせる。夫婦揃って恐ろしく重い家庭だ。人並みはずれて大きな体躯を演技で小さく見せたのはさすが。この調子ならホビット役も大丈夫かも(無理です)。GG、SAG賞受賞の今年の本命。俳優として初ノミネート。「デッド・マン・ウォーキング」で監督賞候補の経験あり。

x2

Ken Watanabe Ken Watanabe (The Last Samurai)
渡辺謙(ラスト・サムライ)
明治政府に雇われて近代戦法を教えに日本にきたトム・クルーズに、反対に武士道を教えてしまう誇り高き最後のさむらい、勝元(しかも英語ペラペラ)。主君のために己を滅し、誇りを持って忠誠を誓う凛々しさが光る。作品全体の評価がいまいち盛り上がらないなかでの無名の外国人役者のノミネートは快挙。もちろん初ノミネート。

x4

暗い映画をひときわ暗くしていた重厚な演技でティム・ロビンスが本命本流。ベニシオ・デル・トロは前回の受賞しているので票が集まりにくいか。アレック・ボールドウィンに友情票が流れる可能性もあり。トム・クルーズを食った存在感で渡辺謙が来たらすごい。今年は本命が強い部門が多いので、助演で番狂わせが出る可能性も大いにある。

あるいは、と思われたショーン・アスティン(王の帰還)を始め、サー・イアン・マッケラン、ビゴ・モーテンセン、オーランド・ブルームなどLOTR勢は票が割れたか全員残念賞。ボストン・サンフランシスコ批評家賞受賞のピーター・サースガード(Shattered Glass)、ウィリアム・H・メイシー、クリス・クーパーの「シービスケット」コンビも選外。夫婦揃って有力と見られたポール・ベタニー(マスター・アンド・コマンダー)は奥さんのJ.コネリーと共に仲良く落選。アルバート・フィニー(Big Fish)、LA批評家賞・BAFTA受賞のビル・ナイ(ラブ・アクチュアリー)、NY批評家賞のユージン・レビィ(みんなのうた)らも届かず。


授賞式最初の発表は、やはり本命のティム・ロビンス。なにか余計なことを喋るんじゃないかとみんなが心配(期待?)していたと思うが、まるで肩の荷が下りたかのような感じの笑顔で次々に撮影クルーなどに謝辞を述べるごく定番のスピーチ。その姿を暖かく、そして誇らしく見つめるスーザン・サランドンもいい感じ。演じた役柄に絡めて、スピーチの最後を、虐待された経験がある子供たちに助けを求める勇気を持つようにとメッセージを残したところは、高校時代のゲイの教師への謝辞で締めた「フィラデルフィア」受賞時のトム・ハンクスを思い出させる。最後の一言が「暴力のサイクルを断ち切ることは最も勇気あること」だったのは、もっと広い意味を込めていたのかもしれない。

渡辺謙、ほんとに残念でした。スピーチ聞きたかった。プレゼンターは去年とは別人のような見事なプロポーションのキャサリン・ゼタ=ジョーンズ。


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