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オスカーのゆくえ 2003

作品賞 ◆ Best Picture

Chicago Chicago
シカゴ
Oscar企画されてはなかなか実現できなかったボブ・フォッシーの名作ミュージカルをついに映画化。13部門は「メリー・ポピンズ」と並ぶミュージカル作品での最多ノミネートでオスカー最有力の声も高い。迫力豪華なダンスシーン、華やかで暗く美しい映像とテンポのいい展開の極上のエンターテイメント。舞台はシカゴでも殆どトロントで撮影されたとか。受賞すればミュージカルとしては69年の「オリバー!」以来33年ぶりとなる。ゴールデン・グローブ、放送映画批評家会賞、PGAプロデューサー組合賞、SAGベスト・アンサンブルの各賞受賞。
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Gangs of New York Gangs of New York
ギャング・オブ・ニューヨーク
豪華キャスト、莫大な製作費の絢爛な時代絵巻、一人の女性を巡る男たち、友情と復讐…今年のもっともアカデミー賞らしい作品。移民を大量に受け入れていた19世紀を時代背景にして父親の敵討ちという個人的エピソードを軸にアメリカという国が形作られて行く時代を描く。修正に修正を重ね一年遅れてやっとの公開でもちゃんと10部門のノミネート。
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The Hours The Hours
めぐりあう時間たち
情熱と狂気の作家バージニア・ウルフ、旧き良き50年代アメリカで鬱に悩む主婦、現代のマンハッタンに生きる女性…まるで接点のないはずの3人の女性の生き方がウルフの小説「ダロウェイ夫人」を軸にして時代を超えて交錯していく、ピューリツァー賞受賞の原作の映画化。3人の演技派女優の競演も話題。ゴールデン・グローブ、NBR賞受賞。
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The Two Towers The Lord of the Rings: The Two Towers
ロード オブ ザ リング/二つの塔
旅の目的はひとつ。指輪を悪の手から護りきちんと捨てに行くこと。散り散りになった旅の仲間たちが、選ばれた使命を命懸けで全うしようとするそれぞれの戦いの物語。壮絶な戦闘シーンも話題。続編の作品賞ノミネートは「ゴッド・ファーザー:パート3」以来。3部作の中篇というハンデを乗り越えて今年も作品賞候補。
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The Pianist The Pianist
戦場のピアニスト
ナチの侵攻が進むポーランド。ユダヤ人収容所を命懸けで脱出した主人公がピアノを支えにその後も幾多の危機を間一髪で生き永らえる奇蹟の物語。淡々とした展開が戦争の矛盾・残酷さをよりリアルに訴えかける。カンヌ・パルムドール賞、英国アカデミー、仏セザール作品賞受賞と欧州の賞を次々と獲得。
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本命は「シカゴ」対「めぐりあう時間たち」。「ギャング・オブ・ニューヨーク」が追う感じ。イラク情勢の展開如何によっては「戦場のピアニスト」に反戦票が集まる可能性もあり。「二つの塔」は来年があるから今年はいいでしょ、ってところでしょうか。

LA批評家会賞の「アバウト・シュミット」、NY批評家会賞の「エデンより彼方に」が落選。「アダプテーション」とともに演技賞他のノミネート回った。狙っていた感じの「キャッチ・ミー・イフ・ユー・キャン」「ロード・トゥ・パーディション」も届かず。デンゼル・ワシントン初監督作品「Antwone Fisher」も残念賞。インディーズ史上最高のヒットとなった「My Big Fat Greek Wedding」は作品賞に挙げるには少し軽すぎたか。


脚本・監督が「戦場のピアニスト」に軍配があがり、あるいは?と思われたが、結局大本命の「シカゴ」がミュージカル作品として33年ぶりに受賞。華やかな作品の受賞は暗い世情を反映した結果といえるかも。プレゼンターはカーク・ダグラス、マイケル・ダグラス親子。「シカゴ」のスタッフにゆかりの深い彼らは事前に「シカゴじゃなかったら、封筒の中のカードを破る」とノミニーたちに耳打ちしていたらしい。ジョークで目の前でカードを破られたプロデューサー氏は一瞬肝を冷やしたことだろう。


監督賞 ◆ Best Director

Marshall Rob Marshall (Chicago)
ロブ・マーシャル(シカゴ)
劇場用映画監督初作品でみごとノミネート。原作のエッセンスを活かしつつ、一方でミュージカル経験の少ない俳優を揃え、振り付けも一新し、敢えてオリジナルの舞台から離れた演出をしたのも舞台出身の監督さんだからこそ出来たことかも。DGA賞受賞。
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Scosese Martin Scorsese (Gangs of New York)
マーチン・スコセッシ(ギャング・オブ・ニューヨーク)
25年間もの構想期間、イタリアで隠遁生活を送っていた?ダニエル・デイ=ルイスを電話で口説き、再撮影・再編集を繰り返し1年以上も公開が遅れた執念の作品。民族のアイデンティティーの対立を通してアメリカという国の生い立ちを描いた力作。監督賞4回目(脚本賞含め6回目)のノミネートにして無冠を返上できるか。ゴールデン・グローブ賞受賞。
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Daldry Stephen Daldry (The Hours)
スティーブン・ダルドリー(めぐりあう時間たち)
時代を超えた3つの話をひとつにまとめて盛り上げていく構成力、キラ星のような演技派の出演者をさばく手腕が評価される。「リトル・ダンサー」に次いで長編映画デビュー以来2作品連続ノミネートの快挙。
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Polanski Roman Polanski (The Pianist)
ロマン・ポランスキー(戦場のピアニスト)
Oscar自身の実体験が色濃く反映されているという半自伝的な入魂の作品で「テス」以来22年ぶり3回目(脚本賞含め4回目)のノミネート。「シンドラーのリスト」の監督をスピルバーグからオファーされながら断ったというこだわりが結実。あくまで淡々とした演出がリアルな恐怖と感動を呼ぶ。英国アカデミー、仏セザール賞受賞。
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Almodovar Pedro Almodovar (Talk to Her)
ペドロ・アルモドバル(トーク・トゥ・ハー)
今年の映画祭の外国語映画賞を部門を席巻している”現代版・眠れる森の美女”・無償の愛を感動的に描いた傑作「トーク・トゥ・ハー」の演出で初ノミネート。昏睡状態役の女優さんにも演技を要求したという作品へのこだわりがすごい。作品が自国スペインの推薦を得られなかった無念を晴らした形。LA批評家会賞受賞。
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去年に引き続き、誰が獲っても初栄冠となる。巨匠3人と舞台出身で新進の監督2人が栄冠を競う。過去の業績も加味してスコセッシが一番有力か。と思っていたらDGA受賞でロブ・マーシャルもぐっと浮上。

DGAでも候補になり作品賞にも推されながら「二つの塔」のピーター・ジャクソンが選外へ。来年は指定席だろうから譲ってあげて、ということか。長尺ものを飽きさせずに見せる天才スピルバーグ(キャッチ・ミー・イフ・ユー・キャン)、NBR受賞のフィリップ・ノイス(The Quiet American)、NY批評家賞のトッド・ヘインズ(エデンより彼方に)、カンヌ監督賞のP.T.アンダーソン(パンチ・ドランク・ラブ)の各賞受賞者もここでは落選。評価が高かったデンゼル・ワシントン(Antwone Fisher)、アレクサンダー・ペイン(アバウト・シュミット)、スパイク・ジョーンズ(Adaptation)、サム・メンデス(ロード・トゥ・パーディション)らも届かず残念賞。


反戦ムードも追い風になったのだろうか、DGA受賞のマーシャルを抑えてポランスキーが受賞。スコセッシは4度目の正直ならず。プレゼンターは老いてますますお盛んなハリソン・フォード。

主演女優賞 ◆ Best Actress

Hayek Salma Hayek (Frida)
サルマ・ハエック(フリーダ)
情熱のメキシコ人画家フリーダ・カーロ。マドンナ、ジェニファー・ロペスらも狙っていたという役を自身もメキシコ人であるハエックが射止め、芸術家として、妻として、女としての光と影の太く短い一生をを体当たりで演じて初ノミネート。
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Kidman Nicole Kidman (The Hours)
ニコル・キッドマン(めぐりあう時間たち)
Oscar苦悩の作家バージニア・ウルフ女史を演じて2年連続2回目のノミネート。役作りのため右手でペンを使えるように練習し、ほとばしる情熱がペン先から湧き出るのを表現したかったとか。演技派としてのポジションを固める年になりそう。ゴールデン・グローブ、英国アカデミー賞受賞。
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Lane Diane Lane (Unfaithful)
ダイアン・レイン(運命の女)
郊外に幸せな家庭を築いていたはずの主婦がふとしたことから官能の罠にはまっていく。最初の情事の後、電車の中で充実感と罪悪感がないまぜになって崩れていく表情は各方面から絶賛を浴びる。子役で早くから注目されつつ、遅咲きの花を咲かせるきっかけとなるか。NY批評家会賞受賞。
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Moore Julianne Moore (Far From Heaven)
ジュリアン・ムーア(エデンより彼方に)
50年代アメリカ。典型的なアメリカン・ドリームを体現したような幸せな家庭は、夫の同性愛性向が発覚することからもろくも崩れ始める。誰にも相談できない不安を支えてくれた黒人庭師との交流は保守的な住民から糾弾され、ますます自分を窮地に追いやる。行き場のない心の葛藤を見事に表現してベルリン映画祭、NBR,LA批、放送映画評家会賞受賞。
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zellweger Renee Zellweger (Chicago)
ルネ・ゼルウィガー(シカゴ)
有名になるためには殺人だっていとわない。可愛い顔して究極の自己中女ロキシー・ハートをミュージカル初挑戦ながら歌もダンスも体当たりで昨年に続いて2回目のノミネート。ゴールデン・グローブ、SAG賞受賞。
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初候補2人、去年初ノミネートの2回目陣が2人というフレッシュな顔ぶれで誰が獲っても初受賞。抑えた狂気とつけ鼻が迫るキッドマン、ミュージカル初挑戦で歌と踊りに大活躍のゼルウィガー、幸せの仮面の下の葛藤を鋭く演じたムーアの三つ巴の様相。

有力と言われたメリル・ストリープ(めぐりあう時間たち)がダブル・ノミネートを逃す。上司とのSMチックな関係に堕ちていく秘書を大胆に演じたマギー・ジレナール(Secretary)、退屈な日々から逃げ出そうともがく平凡な主婦の悲喜劇を地味に演じてTVのイメージを払拭したジェニファー・アニストン(The Good Girl)らも一歩届かず。


投票期間中にジュード・ロウとのゴシップが流されたり、ネガティブ・キャンペーンもなんのその、ゼルウィガーとの接戦を制したキッドマンが2回目のノミネートで見事受賞。離婚してから運気が向いてきているみたい。デンゼル・ワシントンが「鼻の差でニコル・キッドマン」と発表したのは家を出るときから考えていたいたのだろうか。キッドマンにキスをされて顔を背けたデンゼル氏は愛妻家であることを世界に証明。夫の目の前でディープ・キスをされながら自ら腕を回したハル・ベリーが尻軽女というわけでもないが。

主演男優賞◆Best Actor

Brody Adrien Brody (The Pianist)
エイドリアン・ブロディ(戦場のピアニスト)
Oscarナチの迫害を命懸けで生き延びた実在のピアニストを淡々と演じて感動を呼ぶ。ピアノの調べが戦争の恐怖や矛盾、そこに巻き込まれる人々のはかなさとして迫ってくる。この部門唯一の初ノミネート者。
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Cage Nicolas Cage (Adaptation)
ニコラス・ケイジ(アダプテーション)
なかなか筆が進まずに悩んでいる神経質な脚本家チャーリーと、正反対の脳天気な性格の双子のドナルドの2役。メークなどに頼らず、性格描写だけで別人格を完璧に演じ分け絶賛を浴びる。見事主演賞を受賞した「リービング・ラスベガス」以来7年ぶり2回目のノミネート。
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Caine Michael Caine (The Quiet American)
マイケル・ケイン
フランスの支配が進む50年代初頭のベトナム。特派員として英国から派遣された主人公の地元の女性との恋、ソーシャルワーカーの若いアメリカ人青年との交流と対立が激動の時代を背景に描かれる。静かで力強い貫禄の演技はさすが。助演を含め6回目のノミネート、助演賞で2回獲得しているオスカーを初めて主演で持ち帰ることができるか。
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Day-Lewis Daniel Day-Lewis (Gangs of New York)
ダニエル・デイ=ルイス(ギャング・オブ・ニューヨーク)
イタリアで靴職人修行中のところスコセッシ監督に口説かれて久々のスクリーン復帰。移民大量流入で治安が不安定なマンハッタンを実質上支配するBill the Butcherを憎々しく、且つセクシーに演じて9年ぶり3回目のノミネート。受賞すれば「マイ・レフト・フット」以来の13年ぶり。NY/LA批評家会賞、英国アカデミー賞、SAG賞受賞。
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Nicholson Jack Nicholson (About Schmidt)
ジャック・ニコルソン(アバウト・シュミット)
引退して時間が余った保険会社の元重役。娘がどこの馬の骨だか分からない男と結婚しようとしているのを阻止するべく旅に出る。人生脇目も振らず突っ走ってきた中年男の自分探しの旅が図らずも始まる。熱情ほとばしる表情を敢えて封印、少ないせりふで心の揺れを表現し男優部門最多の12回目のノミネート。受賞すればキャサリン・ヘップバーンと並ぶ4個目のオスカーとなる。ゴールデン・グローブ、LA批評家会賞受賞。
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主演女優賞とは対照的に、過去に4人が合計7個のオスカー像を持ち帰っているというそうそうたるラインアップ。中でもデイ=ルイスとニコルソンの一騎打ちの様相。作品・脚本から漏れた「アバウト・シュミット」は意外にアカデミーの受けが良くないのかも…、というわけでデイ=ルイス一歩リードか。二人の票が割れる間隙をぬってブロディが反戦票を集めるかも。

ゴールデン・グローブ受賞、SAGでもノミネートもされたリチャード・ギア(シカゴ)が惜しくも初ノミネートを逃す。人間の内なる狂気を不気味に演じて話題のロビン・ウィリアムス(ストーカー)、一筋の汗の演技が観るものをうならせたトム・ハンクス(ロード・トゥ・パーディション)らは抑えた演技の評価が高かったが候補に届かず。天才詐欺師を飄々と演じたレオナルド・ディカプリオ(キャッチ・ミー・イフ・ユー・キャン)は「ギャング…」と票が割れてしまったのか今回も残念賞。デニス・クエイド(オールド・ルーキー)、ヒュー・グラント(アバウト・ア・ボーイ)、アダム・サンドラー(パンチ・ドランク・ラブ)、エミネム(8マイル)、キーラン・カルキン(Igby Goes Down)らも一歩届かず。


居並ぶビッグ・ネームを抑え、R.ドレイファスの記録を破る最年少(29歳)でエイドリアン・ブロディが主演男優賞受賞。ハル・ベリーに果てしなくフレンチ・キス(今アメリカではフリーダム・キスというのだろうか)をお見舞いしたのも反戦のメッセージか(多分違う)。長い長いスピーチだったが、あの場で言いたいことをきちんと言えるのはさすが。

助演女優賞 ◆ Best Supporting Actress

Bates Kathy Bates (About Schmidt)
キャシー・ベイツ(アバウト・シュミット)
入浴シーンが話題になるなんて「プリティ・ウーマン」のジュリア・ロバーツ以来(適当)。人生の行き先に迷っている引退した会社重役を翻弄する自由奔放な中年女性を痛快に演じて主演賞含め3回目のノミネート。NBR賞受賞。
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Moore Julianne Moore (The Hours)
ジュリアン・ムーア(めぐりあう時間たち)
救いのない毎日を悲観している50年代アメリカの平凡な母親を演じて4度目のノミネート。なんでもない日常が時を越える。派手さの無い役でも印象に残る実力派。
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Latifah Queen Latifah (Chicago)
クィーン・ラティファ(シカゴ)
目立ちたがりの囚人たちを相手に渡り合う、金には目が無い女看守ママ・モートンを堂々と演じて初ノミネート。ベット・ミドラーなども候補になったというこの愛すべき悪役を3度にもわたるオーディションで獲得したという気合の演技。去年はオスカーを席巻したアフリカン・アメリカンの今年の唯一の候補者。
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Streep Meryl Streep (Adaptation)
メリル・ストリープ(アダプテーション)
実在の作家をモデルにしながら敢えて本人に似せる努力はしなかったとか。事実と虚構が交錯する複雑なストーリーの中でキャラクターを作り上げ、それでいてリアルにはまってしまうのはさすが。ダブル・ノミネートこそ逃したがこれでキャサリン・ヘップバーンを抜いて俳優最多の13回目のノミネート。受賞経験は意外に少なく、獲れば「ソフィーの選択」の主演賞以来20年ぶり。ゴールデン・グローブ賞受賞。
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Zeda-Jones Catherine Zeta-Jones (Chicago)
キャサリン・ゼタ=ジョーンズ(シカゴ)
Oscar新進の若い小娘に人気を奪われてたまるもんかと張り切るお局歌姫ベルマを演じ、迫力の歌とダンスとメークでゴールデン・グローブでは主演賞にノミネートされたほどの存在感。有力視されつつ惜しくも選外に泣いた「トラフィック」以来2年ぶりの雪辱で初ノミネート。放送映画批評家会賞、英国アカデミー賞、SAG賞受賞。
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キャシー・ベイツ確実か?という勢いだったが、「アバウト・シュミット」が意外に失速して混沌模様。主演賞から漏れたことが逆に幸いしてメリル・ストリープに票が集まるかもしれない。ほとんど主役状態のゼタ=ジョーンズも「シカゴ」旋風が吹けば有力だし、ジュリアン・ムーアも捨て難く、大混戦。SAG賞のゼタ=ジョーンズが頭ひとつ抜け出したかも。

人間不信が異常なまでの娘への愛情に昇華してしまった母親の狂気が迫ってくるミシェル・ファイファー、その狂気の犠牲になるルネ・ゼルウィガー(ホワイト・オランダー)が落選。キャメロン・ディアズ(ギャング・オブ・ニューヨーク)は昨年に続いていいところまで行きながら再び選外へ。NY批評家会賞受賞のパトリシア・クラークソン(エデンより彼方に)、イッちゃった母親が痛快なスーザン・サランドン(Igby Goes Down, Moonlight Mile, Banger Sisters)、同じくトニ・コレット(アバウト・ア・ボーイ)、走り出したい人でも思わず立ちすくむんじゃないかと思う叫び声が耳に残るサマンサ・モートン(マイノリティ・リポート)、早熟な少年をたぶらかす無邪気なおばさんがはまっていたビビ・ニューワース(Tadpole)らも残念賞。


S.サランドン(テルマ&ルイーズ)やA.ベニング(アメリカン・ビューティ)が果たせなかった「臨月オスカー」を見事射止めたキャサリン姐さん。やたらウェールズ出身であることを強調していたけど「小さな国から日の丸(じゃないけど)を背負って外国で頑張ってる」という感覚がある土地柄なんだろうか、ウェールズって。ちょっと日本と似てるかも。昨年助演男優賞のブロードベントが都合悪かったらしく、プレゼンターはショーン・コネリー。「エントラップメント」で競演していてキャサリン姐さんと親しい彼を持ってくるあたり、ABCも本命視していたんだろう。受賞者の名前を「キャサリン」と言っただけだったのでキャシー・ベイツがしばらく無表情だったのがおかしかった。

助演男優賞 ◆ Best Supporting Actor

Cooper Chris Cooper (Adaptation)
クリス・クーパー(アダプテーション)
Oscar実在の人物以上にリアルな?イッてる花泥棒を演じて、異色の映画の中でもひときわ異彩を放って堂々のノミネート。初ノミネートながらNBR、ゴールデン・グローブ、LA批、BFCAの各賞総なめで今年の大本命。
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Harris Ed Harris (The Hours)
エド・ハリス(めぐりあう時間たち)
エイズに侵され死期を悟ったゲイの詩人リチャードを演じて4回目のノミネート。亡くなった知り合いに捧げる思いで、尊厳を持って演じるよう心がけたのだそう。役作りのため体重も随分落としたらしい。心に染みる演技で初受賞なるか。
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Newman Paul Newman (Road to Perdition)
ポール・ニューマン(ロード・トゥ・パーディション)
2人の「息子」のどちらを選ぶのか苦渋の決断を迫られたアイリッシュ・ギャングの大ボスを静かに最期まで威厳を持って演じた。トム・ハンクスとのピアノの連弾シーンが最高に美しい。俳優として9回目(作品賞を含め10回目)のノミネートだが、助演賞では初候補。獲れば「ハスラー2」以来16年ぶりのオスカー獲得。
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Reilly John C. Reilly (Chicago)
ジョン・C・ライリー(シカゴ)
「めぐりあう時間たち」「ギャング・オブ・ニューヨーク」にも出演という引っ張りだこの名脇役。有名になるためなら何でもありの悪妻に手を焼きながらも愛し続ける純な旦那役で初ノミネート。今年は「The Good Girl」での優しい旦那さんも印象的。本人はあんまり注目されたくないんだとか。でも周りが放っておかないでしょう。
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Walken Christopher Walken (Catch Me If You Can)
クリストファー・ウォーケン(キャッチ・ミー・イフ・ユー・キャン)
幸せな家庭が一変。ビジネススキャンダル、妻の不倫、FBIに追われる家出した息子…どん底になっても息子をいつまでも思う父親の姿が感動を誘う。痛快詐欺師映画のもうひとつのテーマ「父と子のドラマ」を支える演技で「ディア・ハンター」以来24ぶりのノミネート。英国アカデミー賞、SAG賞受賞。
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各賞総なめのクリス・クーパーが本命。BAFTA受賞で弾みがついたクリストファー・ウォーケンがSAG賞も獲って拮抗。ポール・ニューマンは「ご苦労さん賞」でのノミネートかもしれないけれど、唯一獲得のオスカーが「ハスラー2」というのを申し訳なく思うアカデミー会員たちの懺悔票が集まるかもしれない。

理想の家庭の仮面の下で、誰にも言えない同性愛嗜好に悩む男の葛藤を演じて大絶賛だったデニス・クエイド(エデンより彼方に)はNY批評家会賞受賞でオスカー有力の声もあったのに残念ながら落選。天才詐欺師を執拗に追うFBI捜査官のトム・ハンクス(キャッチ・ミー・イフ・ユー・キャン)、脛に傷持つ花形刑事を心理的に追い詰めて目に隈を作らせる、丸太渡りも上手な不気味な犯人のロビン・ウィリアムス(インソムニア)、自らと妻の情熱のぶつかり合いを時に暴力的に熱演したアルフレッド・モリナ(フリーダ)も選外。イアン・マッケラン、ビゴ・モーテンセンらLOTRの脇を固めた面々も今年は一回お休み。


C.ウォーケンの追い上げをかわして「アメリカン・ビューティ」の隣のおじさん、クリス・クーパーが喜びの初受賞。糟糠の妻に「苦労をかけたね」と労わる言葉がよかった。


¡Adelante! > Movies > Oscar 2003