頭のがらくたvol.1

ソニーのVAIO戦略

 はっきり言って筆者はソニーというメーカーが大嫌いである。筆者が認めるのは創業当時のスピリッツとオープンリールと
デンスケぐらいなものである。

筆者がソニー嫌いなのにはいろいろ理由があるが、その1つに、ソニーの商品が「金持ちインテリ層」をターゲットに据えているという点である。

言っておくが筆者の家庭が「貧乏お馬鹿層」だからひがんでいるということではない。



 ソニーのターゲットが「金持ちインテリ層」であるということは、「CD電蓄」をはじめとする、わけのわからん商品をとんでもない価格で
発売していたという過去の事実を知る者ならば、疑う余地のないことであるし、

ベータカセットでのアダルトビデオの発売・レンタルを最後まで渋ったために、性能ではVHSを凌駕していながら、松下陣営に敗れ去ったというのは
周知の事実である。(インテリはアダルトビデオなど見ないと思っていたのである。)

もっと簡単な例が、ノートパソコンVAIOの CMだ。どう見ても学者には見えない中年男性が、森の中で蝶をデジカメで取り込み、

「新種発見。しばらく帰れない。」

とかいって、モバイルで画像を妻に送るという、「アレ」である。冷静に考えてほしい。そんな奴いるか?断言しても良いが、

あんな事をするためにノートパソコンを買う人は誰一人としていないだろう。第一、あそこはどこなんだ?あんなきれいな蝶がいるという事は、
少なくとも南国であろう。しかも、森の中で携帯電話なんて使えるのだろうか?

使えたとしても、森林の中はは湿気が多いから精密機械であるパソコンには最悪の動作環境である。

JAROにも抵触しそうなイメージ優先のCMを見るたびに、あんな馬鹿なまねをする人がいませんようにと、心の優しい筆者は祈らずにはいられない。



 あのCMの意図するところは何か?学者でもない人が自分の趣味で、蝶を探しに行くという現実離れした設定、
これを素直に受け止めることのできる人物、それは「金持ちインテリ」のみなさんに他ならない。

彼らは、自分の趣味を追求することは、インテリの重要な嗜みであるし、お金があるから、その趣味に何十万もの機材(デジカメとVAIO)
を購入するのも至極当然だと思っている。

だから、ソニーのターゲットが「金持ちインテリ層」であるということは明白なのである。

ソニーが、なぜパソコン市場に乗り出してきたのか、という理由も実はこれにある。パソコン業界は「金持ちインテリ層」

にアピールできる最良の市場だからだ。なぜなら、ソニーはパソコンを「高級家電」として認識している、
またはそのイメージで戦略を立てているからだ。

先程述べたCMを思い出しほしい。自社のデジカメとのリンクを強調しているのがわかるはずだ。AV(オーディオ・ビジュアル)で培った
高級イメージをパソコンにもスライドさせ、ソニーのAVマニアまでパソコン市場に取り込もうという戦略は、
敵ながらあっぱれといったところである。



 その戦略の矛先である「金持ちインテリ層」とは具体的にどのような人たちか。私の言う「金持ちインテリ層」というのは、
会社組織で言えば、課長・部長クラス以上の人を指す。先程述べた「高級家電」の購買層、すなわち40代の働き盛りで、
経済的に余裕がある人たちだ。

この人たちの多くは、機械は嫌いじゃないものの、パソコンという「新種」についていけない部分があり、
情報化の波に溺れかけている人たちである。

だが、管理職である自分としては、そんなことを言っていては部下に示しがつかない。
なんと言っても自分は「インテリ」なのである。

パソコンごときに弄ばれてる俺じゃあない。



「とりあえず、パソコンを買おう。どれにしようか…。」

こう思うはずである。そんなときに、あのCMが流れるわけである。

「おお、いいじゃないか。なって言ったってソニーだし。



と、購買意欲をそそるわけである。「金持ちインテリ層」は、中山美穂の色気でも、高倉健の渋さでもだめなのである。
事実はともかく「インテリ」なのであるから、知的探求心という琴線に触れなければいけないのだ。

高級AV機器を臭わせるメタリックの塗装とデザインがさらに拍車をかけ、VAIO洗脳計画めでたく完了、ひどい人はデジカメまで買ってしまう。
 
ゆえに、VAIO信者の最終目的は、ネットサーフィンをすることでもなく、業務APを使いこなすことでもない。
せいぜいE-MAIL止まりであろうし、今更、管理者世代がEXCELでグラフや表を作ったりするはずがない。買うことが目的なのである。

簡単に言えば、VAIOを買ったというステータスがほしいだけなのだ。


「おっ、部長VAIO買ったんですか?」
「どうだ。おまえにゃ買えんだろう。おまえの給料だったら婚約指輪が買えちゃうもんな。わははは。」


と、会社で部下に見せびらかし、己の経済力を見せつける事にこそ、VAIO信者の真の目的がある。高級AVマニアが、
新しい機材を買うたびにパーティーなどを開いて見せびらかすのと同じ事である。


このような「金持ちインテリ層」への一貫した戦略が功を奏し、VAIOの売り上げは好調である。「金持ちインテリ層」をがっちりゲットした
その戦略に気づいたのか、負けじとメタリックカラーのノートパソコンを発売しているメーカもある。

 パソコンに日本人の心をくすぐる「高級志向」と、ターゲットを絞り込むことで、パソコン業界でも成功してしまったソニー。
今後はDVDも視野に入れて、幅広く展開していくことだろう。(また、松下陣営と喧嘩か?)
だが、どうなろうと筆者は堅く心に決めている。


ソニー製品は絶対買わないと。




あっ、プレステ持ってた…。