青い空 ・・

白い雲 ・・

 

・・

なんだろうけど、

今は涙でぼやけて

ぐちゃぐちゃで何も見えない。

 

まわりからは 大きな歓声と、

それより多い 溜息の声。

 

1年間の苦労と努力が

実を結んだ者と ・・・

そうでなかった者。

 

と 言うわけで、 僕

碇シンジは、

 

今日から晴れて …

 

2浪の浪人生になった。

 


6/1 エバひな 第一話

〜ようこそ!またたび荘へ:A〜


 

ネルフのみを受けつづけ・・

ネルフのみを落ちつづけ・・

なんとこれで 3年目。

 

“石の上にも3年” とか言うけど、

普通の親は 子供をそんなに長い間、

石の上に座らせてはくれない。

 

「 お前には失望した …

  またネルフを受けるつもりなら

  … 出て行け。 」

 

親のコネどころか、

父さんは黒いサングラスを冷たく光らせて

あっさり僕を追い出す始末。

 

… 行くあても無く、

かと言ってお金も無いので

仕方なく 僕はこの温泉街へやって来た。

 

「 ふひ〜 …

  なんだかやけに暑いな … 」

 

街のそこかしこから湧き出る

温泉のせいだろうか?

この町は全体がぽかぽかと暖かい。

 

「 確かこのへんに

  あったハズなんだけど … 」

 

目指しているのは、以前

僕の家によく遊びに来ていた

リツコおばさんの家だ。

 

おばさんは なんでも

温泉旅館をやっているらしいので …

あわよくば 空いている部屋を

ひとつだけ 貸してもらえないだろうか?と

僕は思っているわけだ。

 

「 あ ・・ 」

 

背の高い木に囲まれた

急な階段を登り切った僕の目の前に

突然、大きな木造の建物が現れた。

 

歴史を感じさせる濃い木の色。

まるで扇を広げたような堂々たる姿。

純和風の“老舗”を絵に描いたような

その御殿に … 民宿に毛の生えた

ようなものを想像していた僕は

思わず絶句した。

 

「 ここが …

  リツコおばさんの経営してる、

  “またたび荘” か … 」

 

散り落ちた桜の花びらが風に踊る中、

僕はしばし その旅館を見つめていた。

 

つづく