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ヒットを放つイチロー


[イチローのクレーム
]

'04年5月30日ボストンレッドソックスとの一戦で驚くべきことが起きた。場面は延長戦に入った10回の表。打者のイチローは確かに止めたはずだったスイングをハーフスイングと判定され三振。この判定にイチローは声を張り上げて抗議した。そう、イチローが審判に対してクレームをつけたのである。

というとなんだそれくらいと思われるかもしれないが、イチローが審判の判定にクレームをつけたのはオリックス時代も含めてこれが初めての事であった。それくらい彼の中で審判へのクレームというのは有り得ない行為であるはずだったのだ。

なぜ彼にとって審判へのクレームが有り得ない行為だったのか。それは彼の徹底した美意識とも言える厳格な思想にある。彼はかつて石田雄太著「イチローイズム(集英社)」の中でこう述べている。

「審判の判定にクレームをつけたりとか、ホームランの後にガッツポーズをしたりというのは、あまりかっこいいものだとは思いません。それで試合が決まっていればいいと思うんですけど、そうでない場面というのは、スキがあるような気がします。選手としてカッコいいと思うのは、表情から気持ちが読み取れない選手です。僕もそうしたいし、そうでありたいと思っています。」

イチローという選手は自分の信念に反る行為は徹底してやらない。こと野球においては信念を貫く野球マシーンであった。その野球マシーンが審判に声を張り上げクレームをつけた背景には何があったのだろう。チームの不振、主審の軽率な判定(微妙なスイングの判定は三塁審判に聞くのが普通)など色々な理由が考えられるが、しかしそれは憶測の域を超えない。ただ試合中にイチローもやっぱり人の子なんだなあと当たり前のことを妙に実感させられる珍しいワンシーンであった。

野球って面白い。

 

'04/06/03


 

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