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サミーの愛称で親しまれる歴史的スラッガー、サミー・ソーサ


[サミーとバット
]

'03年6月3日、長いメジャーの歴史の中で唯一シーズン60本塁打以上を3度も記録している現役屈指のスラッガー、シカゴ・カブスのサミー・ソーサのバットが砕けた。三塁側に転がった、折れたバットを拾い上げた審判の表情が曇る。数分の協議の後、サミーソーサに退場処分が言い渡された。折れたバットの中からは、ルール違反とされているコルクの詰め物が見つかった。

サミーのコルク入りバット使用に関しては様々な憶測が飛び交っている。しかしそれが故意だったかどうかについての議論は、所詮水掛け論にしかならないだろう。だが僕個人の心情としてはサミーは決して故意でそんなことしないと信じたいし、このニュース自体実はタチの悪いジョークだったと言って欲しい。

しかしその裏で冷静に事実を見つめると、そこには明らかな故意の不正が存在している。すなわちサミーは確かにルール違反であるコルク入りバットを所持していたという事実だ。サミーはそれは練習用のバットで、それで打球を飛ばすとファンが喜ぶから所持していたに過ぎないと弁明している。でもサミー、やっぱりそのバットは違法のバットなんだよ。

アメリカには日本に比べ反則に対するおおらかな一面も存在する。例えば元ドジャースのゲイロード・ペリーはスピッツボール(唾を塗った球)の名手としてファンに親しまれ、その特殊技術を評価され殿堂入りさえしている。しかしそれはあくまで非力な投手が強打者に対抗するための必死の手段だったり、その逆のケースにおいて愛された一面だ。そしてそういった選手達の役回りは皆ヒールであった。しかしサミーはそうじゃない。サミーの役は天性のパワーでホームランを連発する皆の憧れのヒーローだったはずだ。やはりサミーだけは、そのバットを持っていちゃいけなかったんだ。

実際、サミーの言う練習用のバットを間違えて使ってしまったという言い訳はかなり苦しいと思う。超一流の選手が練習用に違法バットを用意し、それを試合で間違えて使ったりするものだろうか。一流選手は0.1mmのバットの太さの狂いにさえ気づくと言われている。そんな選手が何故、不正バットを本物と全く見分けがつかない状態で所持していたのか…

でもサミー、君が本当にファンのことを大切に思うのなら、このままずっとあれは間違いだったんだと言い張って欲しい。絶対に故意だったなどと言わないで欲しい。そうしてくれることで、ファンはまた君に夢を見続けることが出来るんだ。

サミーがあれはうっかり間違えたんだと言い続けること、それをファンは心のどこかで望んでいるし、君がそう言い続けてくれることが、ファンに対する最も真摯な償いとなるだろう。コルク入りバットと共に、ファンの最後の夢まで砕いてしまわぬよう。

'03/06/04


 

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