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松井(左)&福留(右)


[
首位打者論]

野球をつまらなくするタイトル争いのひとつに、首位打者争いがある。もちろんそうでない首位打者争いというものも時々にはあるのだが、稀だ。

これは投手の最優秀防御率争いにおいても言えることだが、首位打者タイトル獲得のためにペナントレース終盤試合を休む選手が多い。なぜ試合を休むのかと言えば、試合に出て打てなければ打率が下がってしまうからだ。アホかと。首位打者って何?て感じだ。首位打者のタイトルはシーズン通して試合に出場した選手の中で最も高い確率でヒットを打った選手に与えられるものだろ。ビビって試合を休む選手に与えてどないすんねんて話だ。もちろんペナントレース全試合に出場するといのは不慮の怪我などあったりして容易ではないので、そこで規定打席(試合数×3.1打席)というものが設けられている。なら規定打席をクリアしたら後は相手を見ながら試合を休んでいいのかと。違うだろ。そんな首位打者に価値はない。

とは言えそんな首位打者でも獲得すれば歴史に名が残り、後の野球人生において大きなプラスとなるのが現状だ。だから今の規定では首位打者を獲るために試合を休む選手、休ませる監督を頭ごなしに責めることは出来ない。

それじゃあどうすればいいのかと言うと、僕は首位打者の規定を改正すべきだと思う。具体的に言うと、現状ではシーズン終了時の最終打率で首位打者を決めているわけだが、それを規定打席をクリアした選手はその後の成績の中での最高打率を自己打率として提示し、それで勝負するようにすればいいと思う。そうすれば選手は打率の低下を恐れることなく試合に出場出来るだろう。そのほうがよっぽどフェアで健全だ。首位打者は、長い歴史と伝統のある野球の花形的タイトルの一つではあるが、その重みに捉われず悪いところは思い切って直してゆく勇気も必要だと思う。その勇気がまた歴史を創り、野球をより魅力溢れるスポーツへと変えてゆくだろう。

今シーズンのプロ野球の話をすれば、既に規定打席をクリアしていた松井秀喜(巨人)は打率.350をマークしていながらも休むことなく全試合出場し、最終的には終盤調子を落とし打率.334でシーズンを終えた。その一方で終盤打率を.343まで伸ばした福留孝介(中日)は後の試合を休み、首位打者を獲得した。

メジャーリーグで20世紀最後の4割打者として知られ「神の打撃」と謳われたテッド・ウィリアムズはその年の最終戦直前、打率3割9分9厘5毛、四捨五入して打率.400だった。しかしウィリアムズは真の4割を目指して最終戦に出場し8打数6安打、打率.406として神の領域に到達した。僕は首位打者を争う選手には常にテッド・ウィリアムズのようであって欲しいと思う。スポーツ選手は常にチャレンジャーであるべきなのだ。

今シーズン全試合出場を果たし首位打者を逃した松井秀喜と試合を休んで首位打者を獲得した福留孝介、しかしどちらがより神の領域に近づいたのかと言えば、それは語る必要もないだろう。

'02/11/23


 

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