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Essay01

「俺的執筆速度精製」

制作日時:1999/1/中旬※後々追補など有り


 この職業の人間なら大体そうなんですが、
 ご多分に漏れず、自分も文章を書く速度がある方(一般の人に比べて)だったりします。
 自分の場合、荒いと言うことでもあるのであんま自慢にならないのが情けないとこですが。
 まあ、
 正確にはキーボードをぶっ叩くスピードが速いということで。
 どのくらいかってーと、
「原稿用紙にして五十枚くらいの小説ならば一晩で書く」
 くらい。
 一時間あたり十枚くらいは楽。
 最高で一時間に四十枚というのがあったりで。
 とにかく早いのはいいとして、ついでに荒いのがいかんともしがたく。
「いやあ、
 川上君、
 速度で勝負じゃないんだよねえ」
「へへえ、
 仰せのとおりで御座いますグランドファーザー」
 という感じで。

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 早く書くと長い時間推敲できるという点から言って、
締め切り前にきっちり早く書くというのがもっとも良いと思ったり。
このように早さは性能以上の自慢にならず、
あとがきとかで自分の速度を語るのは
”はしたない”
ので自分はやらないことにしていたりします。



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 なぜこんな速度というjか書き方なのかと言われれば、
 答えは一つしかなくて。
「昔から一行四十文字フォーマットで書いてたというかー」
 そーなのですな。
 十年前、
 うちに来たワープロ様であらせられるところのアルファー10というモヤシみてーな名前の機械は、
「起動するとA4フォーマット」
 このA4フォーマットが横三十文字もあったわけです。
 しかし、
 画面にはもっと表示できるのよだから表示してして的空白があり、
 そこまで画面を広げると、
 丁度四十文字だったのであるわけで。
 ついでに言うと縦もA4で四十文字に設定してたわけで。



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 だから子供心に、
「おお、
 これなら文章が長くても紙が節約できるぞ、
 うひひ!!
 と思ったような記憶があるよーな無いよーな。
 うーむ。
 えー、
 ワタクシの記憶に間違いがなければ多分にそーいう理由だったような……。
 いやまあ貧乏性。
 話がずれた。
 よーするに昔から原稿用紙との面積比率四倍、
 の空間を相手にしていたわけなのです。


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 これを普通の人と同じような速度で埋めていた
(というか他の人がどういうフォーマットで書いていたか知らなかった)
 ので、
「自分、
 (原稿用紙を)
 一晩で十枚もタイプしてさあ」
 などと言う連中の話を聞いては、
「うーむ、
 (A4を)
 一晩で十枚かあ。
 世界は広いぜ……!」
 などと思っていたわけです。



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 だから、
 初めて本格的に小説を書いてみようと思った十九歳の夜(?)、
 どこぞの本に載ってる懸賞応募での枚数を見たときは、
「うおー、
 二百枚以上で三百五十枚以内?
 すげー、すごすぎるうっ!!
 こんなに興奮して大丈夫か自分!!
 とか騒いでいたもんなんですが、
 書き始めると、
「うへえ、
 一週間で百五十枚も書いてしもうたああああああああ、
 まだ話半分もいってねえやあ。
 きイイイイイイイイ!」
 と哀れなケダモノ化してしまったのですが、
 よく考えてみると今と状況あまり変わらないですなコレ。


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そういうわけでかわかみみのるは
げんこうようしかんざんだとじぶんがどのくらいかけるのか
まったくわからないのでした。
−つづく−



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 んじゃ続き。
 えーとつまりこれはどーいうことかというと
 よーするに、
「原稿用紙で書けない!」
 のだったりします。
 うわ、ものを書く人間としてハズべき事実!
 大恥!
 恥辱!!
 屈辱!!!
 陵辱!!!!
(これは何か違うか)
 いやまあ、あのですね、
 二十行フォーマットってやつですとね、
 いかんところがあるのです。
 すぐにはじっこ来ちゃうんだもん(何が”だもん”だよ)。
 たとえば、


その時、花太郎は、恐るべき事実を目の前
 ……でいきなりカットと相成るわけで。
 感覚的に言えば、
「目が文章をある程度意味として確認する前に次の行に移ってしまう」
 のですな。
 当然、
 アルファー10の表示画面は半分も埋まっていないわけで。
 それで、
 文章というのは大体二十字以上は行くくせに四十文字も行かないで終わることが多い
 セリフなどは顕著にそれがでてくるので解ります。


「こーのサル野郎め! しばいて殺したろー
か!」
 ……うおおおおお!
 何か一行を捨ててる気がするなあ。
この、


か!」                      
 がいかにも邪魔なんだよなー……。
 だから仕方なく、


「このサル野郎め! しばいて殺したろか!」
 と書き直してしまうわけで。
(カッコなどは印刷時に詰められるので、
はみ出ていても構わない)



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 これでは普通のセリフですやね。
(いや、異常なセリフってあるのか?
 まあいいか)
 このセリフを放ったキャラクタの個性は、
 独特のイントネーションである、
「ー」
 にあるハズなのだど、”スキル:貧乏性”によって、それを、
 つい削ってしまう。
 これがね。
 どーしてもやっちゃうのですわ。
 いかんいかんと思うほどやってしまうんですな。
 あー、
 女子校で教師やってる友人がいきなり犯罪に走りたくなる気分ってのを、
 何となく理解できそうだぞ、と。
 ああ、
 でも自分はY君のように、
「十歳以下じゃないと駄目」
 ってわけじゃあないから大丈夫ですか。
(※確認のため聞いてみましたが、最近は幅が広がってきたそうです。下にも)
 一安心。
 って話がズレすぎで。



 特に致命的な削りはセリフだけに終わらない
 余分だと思った描写を抜いたせいで、
 文章の並びが汚くなってしまうこともある。
 うーむ。
 おかしいことに四十文字(※現在は42文字)にするとそれをしないのですな。
 四十文字にすると逆に書き込もうとするらしい。
 これはまあ哲学的に言うならば、




「四十行という空間的長さを埋めようとする
強迫観念を本能的に覚えてしまい、
その長さを猿的に埋める癖が心理の中に染み着いている」



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 としか言えんですな全く。
 アメリカ人がゆったりとした広い家でないと満足できない、
 ってのとは逆で、
 日本人らしく、
 広い家には色んなものを置きたがり、
 狭い家ではとにかく機能重視になってしまう、
 ってのと同じではないのかな的な。
 民族性の違いということで宜しいでしょうか。
(そうか?)
 自分の場合は出だしが貧乏的思考だったのがいかんのかもしれんところで。


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まあ、
原稿用紙から子育て心理学の話まで引っ張ってしまうのも相当無理がありますが。
 まあ、建設的な話をしますと、
 書くのが遅いという人は、
 四十文字とかに組み替えて練習してみるのもいいのではないだろうかなあ的な。
 原稿用紙サイズに慣れている人もそーいうことをしてみると面白い発見があると思います。
 大体、
 普通の小説ってのは(縦書きで)縦が四十二から四十七、
 横が十七から二十行くらいなわけで。
 だから普通の原稿用紙で、
「うあー、
 書いたあ働いたあ
 ハーゲンダッツを食おう
 と思っても、
 組み替えると下がスカスカってことがありうるわけですな。
 まあ、
 やりすぎて自分みたいになってもイカンとは思うので、
癖がつかないようにほどほどに。



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他人おいてけぼり度:★★★★



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