01−
GRAPHIC01

顔面造形初弾

制作日時:1996/11/初旬

顔面の描き方講座。
とにかくデッサン練習をほとんど無視で描ける程度にまで煮詰めた最強方法(と思っています)。
この手法を使うと、
「意味も解らず正確な顔面が描ける」
ようになって逆に、
「デッサン練習もしないで顔を描くなど邪道ではないのかなー」
という疑念が生まれることになるわけで。
だが考えて欲しいのは、
「設計士達の多くは部品や建造素材のデッサン修行などしたことないが、
 しかし製図上で正確な部品や建造物を描ける」

という事実ですな。
あれは数式的証明法によって立体を描いてるわけです。
つまりこの手法は現実の立体画法に準じた製図学から生まれた手法であり、
ものの主観をとらえることから始まった絵画画法よりも方法論的には正確。
「デッサンをしなければモノは正確に描けない」
「デッサンや正確性など必要ではなく絵は味で勝負」
というこの二大妄想はこの際だから完全に無視
して、
ものを客観的に計算づくで描くとどれだけ楽になるかを見てみましょー。



なお、この手法の解説を見る際には画面サイズをベストポジションにあわせること!
また、この手法を試す際は、
「何事にも(軍隊調ではあるが)疑念を持たず、その通りにやってみること」
が大切。
説明だけ聞いて解った気になっているのでは何にもならなかったりして。

なげえなげえ、今日は土用のウナギの日


●:この手法を開発した理由は、
「即戦力となる人材を作るために、誰にでも解り、
観念的な練習をなしに描ける手法が必要」
「とにかく商業的に早く、文句なく、誰かに書かせても、
すぐにマネのできる正確な絵を大量生産するため」
「テメエが今までやってきた理論を固めるため」

 だったりします。

■:例として俯角と仰角の無い垂直面が正面角度の顔を描くつもりなので、まず、垂直に二本の線を引きます。
「線間の幅=顔面の幅」
 なので、よく考えて引きましょう。

■■:顎の中心を決める。
 二本の線の同じ高さから二本の線間の中央、顎の先端のある位置にまで、顎のラインを降ろします。
 交差させるのは正確な位置を確定するため。ここで色気を出してラインの形を顎らしく整える必要は無いっす。













■■■:頭のラインをグルっと描く。
 ここでは、やや斜め向きの水平面にして左向きの横角のある顔を描くつもりなので、後頭部のラインを右に飛び出させました。
 コツとしては、
「頭蓋骨の額から、首の後ろまでの形状を描く」
 つもりで描きましょう。
 解らなければ自分の顎の付け根あたりを触って、左図のような後頭部と顎の付け根に段差があることを確認して下さいな、と。







■■■■:手前側の耳を描く。顎の段差が耳の位置の基準だというのは、自分の顔を触れば解るからよしとします。
 そして、左の顔面ラインと並行に、
「右側の垂直線から同じラインをひく」

 ひく位置の基準は乱暴に言えば、
「右の垂直線から描く並行ラインの幅が、右の垂直線から突き出した後頭部と同じ程度になる位置」
 これで、顔の側面と前面の境界が生まれました。










■■■■■:奥の耳の位置を決定します。
 4でしっかりと平行な線を引いていれば、図のように、顔の中に立方体を突っ込めるはずですね。
 あとは平行線と直角の組み合わせで立方体を描き、奥の耳の位置を決定します。
 もしも立方体が描けなければ、途中のどこかが間違っていたというだけなのでやり直しましょう。特に4における額と頬のカーブを間違えると立方体は描けなくなるっす。





■■■■■■耳の位置が決まれば、首の太さと位置も決まる筈。
 両耳の間に円柱を叩き込むと考えて良いです。
 で、もしここで、
「首が太すぎる、もしくは細すぎる」
 という現象が起きた場合、理由は二つ、
「どこかで手法を間違え、耳位置の取り方を失敗した」
「キミが今まで描いていた絵が立体的に間違っている」
 後者だった場合は、もはや言い訳は効かないです。困った困った。
「キミは今までの人生において人間を描いていなかった」
 ことになるんです。1〜6まで、定規で証明できる作図法なのは明白で、また、ここで行っている首の生え方は人間工学的に正確。うーむ。
 もし、ミスを犯しており、しかし他人にミスを指摘されない正確な絵を欲するならば、この時点で今までの絵を捨てる覚悟をせねばなりません。






■■■■■■■:横角に合わせ、顔の縦中央のラインをひきます。
 これは顔の造形のアップダウンを描くモノで、額は突き出て目の辺りはくぼみ、頬がやや上がり、顎までほぼ垂直に落ちます。
 
簡単に今までの作図を使うと、
「5のb線とd線のあたりでもり上がり、あとはくぼむ」
 ここで気を付けるのは、
「頬から顎までほぼ垂直」
 
だということですな。
 誰もが斜め顔の手癖やイメージから、
「頬から顎まで、くぼんでいるという錯覚」
 
を抱きますが、自分の顔を触れば解るように顔は結構平面性が強いです。
歯の突き出しなども手伝って、頬よりも顎が前に出ている人は多々います。
 
なお、それに準じて、今まで暫定的だった顎位置もズラす。

■■■■■■■■:各パーツを置く。
 5のb線が眉の高さ。
 5におけるb線下の(7で決めた)くぼみが目の置かれる高さ。
 7における直線上の頬のもり上がりが鼻の置き位置。
 5におけるd線下が口の置かれる位置。

 なお、気を付けるべきは、
「4で決めた側面部に、目や眉は突き出さない」
 ということ。普通の人なら顔の側面部が存在し、陰影をつける際の基準になります。



■■■■■■■■■:完成
 諸処のラインを人間らしく作り直して(特に左側の顔ラインは7で描いた顔の立体に合わせて補正すること)完成とします。
 8でメガネの立体をとっているが、これは5の応用。fnegのラインを前に伸ばして、鼻の辺りで止めて面を作れば、そこがメガネの入る正確な位置です。
 以上、1〜9まで試して理解できたら、正面などもガシガシ練習しましょー。








重要補足
 この描き方は、
「パーツの正確な位置と大きさを割り出す」
 という方法なので、逆に、
「既に描かれた絵にも適用できる」
 ことに注意して下さい。
 今まで、自分や他人の描いた絵に対して、顔の側面部の大きさや顔の中央を通る線を描き、奥の耳位置などを逆に求めるわけです(数学の証明問題と同じ考え)。
 これを行って、
「かみ合わない絵」
 があった場合、
「その絵は間違っている」
 のです。悔しいかもしれませんが、正確な線と角度によって作られた立体は全てをドライに評価するわけで。
 もし自分の絵が間違っていたら、決断するように。
 それで良いのか悪いのか。知ってしまった以上は一生付き合う問題だと思います。


まあ、こんなところでしょうかー。
しかし、昨今のデザイナー関係の専門学校とかではどんな教え方をしているのでしょう? 
たった二年やそこらでデッサン修行とかさせても、その気になるだけで無意味なんですが……。
とにかく枚数描いて自信を付けさせないとしょうがありません。
 しかしとてつもなく高飛車口調で申し訳ない。これはもはや遊びレベルではなく、
「プロとして通用するための絵を描く手法」
 の一つなので、いい加減に教えることができない、と、
それゆえの気合いの入れ込みだと思って欲しいです。
 だが、この手法は憶えると非常に高速で、
この例示の為にA4にバリバリ描いた(二年前なので絵が古いのはアレだけど)のですが、
全て描いて20分。
説明入れて1時間というところでしょうか。



 方法は一つだけではなく
必要なのは伝統や主観よりも正確性であり
そこに基礎があるからこそ
 伝統や主観を応用として
 受け入れられる。
常に何に対しても、
己の変革を恐れず受け入れることを切に望みます。



 戻るぞ