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 飛行戦艦「大和」出撃!2 パナマ大飛翔

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 2001年5月15日、経済界、リュウブックスより発売→あとがきを読む

飛行戦艦「大和」出撃2〜パナマ大飛翔
目次
第一章 西太平洋の危機
第二章 サンフランシスコ強襲
第三章 飛行戦艦大和大改装
第四章 ハルゼー出撃
第五章 パナマ大飛翔
あとがき

第一章 西太平洋の危機

 一九四三年二月。凍えるように寒く、今にも雪が降り出しそうな重苦しい日だった。東京、新橋にある赤レンガの海軍省の一室。
「結論を申し渡す」
 海軍東京軍法会議長官、島田繁太郎が難しそうな表情で片桐泰山大佐を見下ろした。
 軍法会議と一概にくくられるが厳密には、事変、戦闘事に開かれる臨時軍法会議と、常設軍法会議があり、後者も艦隊軍法会議、鎮守府軍法会議がある。これらの上級会議として東京軍法会議と高等軍法会議が存在した。
 片桐大佐の場合、本来であれば艦隊か、鎮守府が対応するはずであったが、階級と事態の重みを鑑みられて、海軍大臣を長官とする東京軍法会議で審査されたのである。
 片桐大佐は視線を跳ね返すがごとく屹然と顔を上げた。裁かれる立場である片桐大佐の方がよほど堂々としていた。
 いまや片桐大佐は全海軍将兵の尊敬のまなざしを浴びる存在になろうとしていた。
 事態の始まりは昨一九四二年六月のミッドウェー沖海戦である。
 南雲忠一長官の指揮の下、赤城、加賀、蒼龍、飛龍からなる第一航空艦隊が、病身を圧して出撃して来たブル・ハルゼーの第一六機動部隊と激突した。ハルゼーの戦力はエンタープライズ、ヨークタウン、ホーネットの空母三隻とミッドウェー島に駐留する爆撃機群。
 航空機の機数、戦力的にはほぼ同等だったが、搭乗員の技量、航空機単体の性能では日本が優っていた。第一航空艦隊は赤城、加賀に大被害をうけた物の、アメリカ海軍の虎の子空母三姉妹を海の藻屑と変え、続いて攻撃主隊によるミッドウェー島の上陸作戦に成功した。
 だが、この戦いで完成したばかりの戦艦大和が陸上機の攻撃を一身に吸収。第一砲塔を完全破壊され、雷撃とスキップ・ボミングを受け、装甲板を全交換しなければならないほどの大被害を蒙った。
 大和の装甲板は鋳造して冷却に何ヶ月もかかる。交換するぐらいなら新しい船を造った方が早いほどである。
 そこで浮上して来た計画が千代場武博士提案になる大和の「飛行戦艦化」である。大和の艦底に固体ロケットを多数取り付け、空中を飛行させようとの計画であった。「空を飛ぶ船」の計画は軍令第二部で研究が進められ、大和の飛行戦艦化が実現した。
 飛行戦艦改装が終わろうとする直前、連合艦隊はついにアメリカ海軍ハワイ真珠湾根拠地に第二次の強襲を敢行した。作戦目的はオアフ島の占領であったが、作戦は難航した。アメリカ軍の最新鋭戦艦、サウスダコダに座乗したハルゼーが復讐の炎に燃えて乗りこんで来たのである。
 アメリカ西海岸を発った多数の爆撃機が連合艦隊の頭上に爆弾を振りまき、ハルゼーの敷設した機雷によって真珠湾への突入もままならない。
 かような苦境の中、忽然と片桐泰山大佐指揮の元、飛行戦艦大和が、堂々と真珠湾に突入。オアフ島全域を大和の主砲射程圏に捉え、まさに一瞬にして在ハワイのアメリカ海軍、航空隊を無力化してしまったのである。
 だが、これは片桐大佐の独断専行でもあった。大和はいまだ改造途上の艦であり、試験航海の名目で出港しながら実戦に乗りこんでしまったのである。
 片桐大佐を絶賛する者もあった。
 無論、反感を抱く者もあった。
 大和が突入した時点でアメリカ太平洋艦隊の戦力は払底しており、包囲を維持したまま、オアフ島南部にでも上陸部隊を投入すれば、何も大和を危険にさらさずともハワイは陥落したはずである、というのである。
 一方、大和なしで占領するためには後続の上陸援護の飛鷹、隼鷹の艦載機を使用せねばならず、艦載機の被害や、砲戦による戦艦の損害、さらにはアメリカ陸軍の徹底抗戦があったであろうと主張も事実である。
 いずれにせよ、片桐大佐の行為は「大和を危険にさらさない」とする命令に背いたものだとして軍法会議の召集は避けられなかった。
 割りを食ったのが海軍大臣である。
 片桐大佐の真珠湾突入は大戦果であるとともに、まぎれもない命令違反であった。
 片桐大佐の命令違反を無視するわけにも行かないし、かといって処罰すると軍内に不満の声が上がる。どちらに転んでも、非難を受けるのは軍法会議である。
 軍令部としては大佐が腹でも切ってくれれば、それこそ八方丸く収まるのだが、片桐大佐自身がかようなごまかしの通用する人物ではない。
「本日までの審査の結果を申し述べる。片桐泰山大佐の行為は戦況判断の精妙さ、勇猛、いずれも軍人として見習うべき部分がある。しかしながら、軍規律を大いに乱す所業であるのもまた事実。したがって、本軍事法廷は片桐大佐に有罪を宣言する」
 長官は目の前の書類を閉じた。
 関係者として傍聴を許された布施勇少尉は両の手を握り締めた。被告人席で片桐大佐も拳を握り締めて、長官に一礼した。
「長官、のちほどお庭を拝借いたします」
「待ちたまえ、片桐大佐」
 退出しようとする大佐を長官は押しとどめた。
【続く】

■あとがき

 えー、まずお詫びと訂正です。
 計算を間違えていました。前巻の設定では大和は飛びません。「四号一式噴進器、一万本」とありますが、正しくは五万本です。推力の水増しをするとか、サイズをごまかすとか色々と小細工を弄していますが、五倍の差は埋まりませんです。はい。
 この話をするとある友人は「えっ、あれ計算していたのっ!」素っ頓狂な声を上げてひっくり返りました。失敬な。ちゃんと計算していますです。はい。
 いかんですねぇ、こういうケアレスミス。作品のリアリティを損ないます。大学の時、一桁の足し算間違えて代数の単位落した暗い過去を思い出します。

 このあたりを踏まえ、本巻でも「特呂二号憤進器」推力を水増しして「特呂三号憤進器」として登場させています。これは二万基、大和に取り付ければ空中に浮かぶはずです。計算上は。
 なお、特呂液体憤進器を三分作動させるために元々、二トンの燃料が必要で、仮にこれを純酸素の使用で半減させたとしても、二万五千トンのロケット燃料がいる……などという正論を吐いてはいけません。正論は嫌われます。

 また、本巻では高出力を得るため、純酸素を使っています。コメートが起こした事故は大抵、過酸化水素によるものなので、純酸素なんか使ったら多分、もっと危なっかしいものになっていたはずです。
 だけれど、不思議なのが日本じゃそんな危なっかしい純酸素を利用した酸素魚雷を実用化していた事で、一体、どうやってあんなものを狭っ苦しい駆逐艦や、潜水艦で使っていたのか、本当にわけ判りません。
 別に酸素魚雷は日本のオリジナルってわけじゃなく、各国で研究がなされていました。ですが、あまりにも悲惨な事故が頻発して放棄されています。何しろ純酸素が水兵が頭に塗ったポマードに引火させて事故が起こったりしったてんだから並大抵じゃありません。
 にもかかわらず、日本は平然とこれを使用。
 潜水艦に至っては水雷科担当乗員は魚雷の上に毛布敷いて寝ていたとまでいいますから、爆弾の上に寝ていたようなものです。……爆弾じゃなくて魚雷だ、って言われればそれまでなんですが。

 まあ、あんまり付け加える事ありません。飛行機の蘊蓄なら垂れられますが、船についてはそれほど判りません。
 ただ、飛行体が縦長よりは、横長な方が安定するというのはある程度事実で、その点、飛行戦艦化するのであれば長門や金剛より、大和の方が適当だってのは間違っていません(そのはずです)。
 もっともまあ、その程度の違いで、安定性の善し悪しが影響を与えるとしたら大気圏再突入ぐらいになるかとは思いますが、あんまり気にしないでください。

 えーと、あとこの本の書かれた背景についてちょっと触れときます。
 久々に缶詰になりました。
 ノートパソコンと電気スタンドと共に、手を延ばしても天井に届かない巨大な缶詰の中に閉じこめられ、時間を知るよすがもただ、ちょっと開けられた空気抜きの孔から漏れてくる光だけです。トイレはお丸で用を足し、小さな引き出しを通じてこれを外に出すと代りにカップめんと、魔法瓶が入っています。
 書きあがると巨大な缶切りで編集さんが蓋を開けてくれます。太陽がとてもまぶしかったのを覚えています。
 嘘です。
 普通のビジネスホテルです。朝起きて、原稿を書き、腹が減ったら何か食い、眠くなったら寝て、目が覚めたら原稿を書く。それの連続。理想的な執筆情況でした。
 もっとも、資料とかデータの不備があったりして、それらを訂正するのにもう何日か貰って仕上げました。

 おかげ様を持ちまして、一巻が相応の売り上げを記録いたしましたので、第二巻も刊行されました。前巻と同程度の売り上げが記録されれば、きちんと三巻『飛行戦艦大和・出撃〜ホワイトハウス直撃』も出るでしょう。
 一応、第三巻の構想、プロットはまとまっています。これまた、『と』です。登場する兵器も『と』ですし、終わり方も『と』であります。
 もし、一巻をお持ちでなく、このあとがきをお読みの方はぜひ、第一巻「ハワイ上陸作戦」の注文をお願いします。あなたと、わたしの運が良ければ横に並んでいるでしょうし、そうでなくとも書店か、インターネット経由で取り寄せられます。編集部に電話で怒鳴りこむのも一方かと存じます。
 飛行戦艦、並びに青山智樹ともども、よろしくお引き立てのほどをお願いいたします。


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