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 飛行戦艦「大和」出撃! ハワイ上陸作戦

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 2001年1月15日、経済界、リュウブックスより発売→あとがきを読む

『飛行戦艦「大和」出撃』
目次
第一章 ミッドウェイの激戦
第二章 飛行戦艦誕生
第三章 戦艦大和、飛ぶ
第四章 第二次真珠湾攻撃
第五章 ハルゼーの悲劇
あとがき

第一章 ミッドウェイの激戦
 一九四二年六月五日。ミッドウェイ島沖。巡洋艦利根艦上。
「二時方向、雷撃機!」
 対空監視員の叫びに、布施少尉がそちらの方向に振り向くと二機のずんぐりとした双発機が超低空で突進してくる。マーチンB26マローダー。
 巡洋艦利根の対空砲、機銃が敵機方向に振り向く。
 だが、まだ発砲はされなかった。舞いおりて来た零戦がマローダーに食いついたからだ。
 これでやっと本来の作業に戻れる。
「この忙しいのに……貸せ」
 布施中尉は利根の後甲板でクレーンの操作にとまどっている作業員の手から操作レバーを奪い取った。利根のすぐ脇には着水したばかりの水上偵察機が浮かんでいる。早いところこいつを拾い上げないと面倒な事になりかねない。
 レバーを操作する布施少尉は小柄で、痩せぎすである。作業服姿こそ様になっているが、作業服の肩幅が余っていた。肉体的訓練を重視する軍人の体つきではない。それでもクレーン操作の腕は確実だ。
る 布施の襟章は鳶色。技術士官である。
「一体、おれはこんな所でなんでこんな事をしているのだろう?」
 布施は一人ごちた。
 十二月八日、海戦劈頭の大勝利の報を布施は、三菱長崎の船台上で聞いた。新造の戦艦、武蔵に搭載される偵察機の調整をするためである。その後、日本が勝ち続けるのを心地好く感じながらも新任の技術士官に架せられる多忙な日々を過ごしていた。
 それが七ヶ月経ってみると、ミッドウェイ海戦のど真ん中で、偵察機の収容作業を急かされていた。別に軍艦に乗りこんで出撃するのには抵抗はなかったが、あまりに大きすぎる思惑違いである。

第三章 戦艦大和、飛ぶより83ページ
「では開始します」
 艦長と千代場博士にそれぞれうなづきかける。二人とも厳かに肯いただけだが、布施の方は口の中が乾ききっていた。
「両舷、全速前進。最大戦速」
 布施は大和本来の最大戦速を知らない。だが、速度を上げれば上げるほど飛行距離が稼げる。
 艦の奥底でボイラーが出力を上げるのが感じられた。タービンが回転を上げ、スクリューが水を掻く。ゆったりとたゆたっていた艦首波が次第に高くなる。
「速力、二十ノット」
 補助の航海士が速度を読み上げる。だが、布施には不必要な数字だ。これらを正して乗員たちを飛行に慣熟させるのも実験の重要な役割の一つだ。
「速力だけでなく、風速も頼む」
 飛行戦艦に海の水との速度は要らない。どの道、飛び上がればアテになるのは風力計だけだ。
「速力二十ノット、風速二四ノット」
 修正された数字が読み上げられた。海の水に対する速度と、最初から洋上を拭いていた風の速度が合わさる。
 速度はさらにあがる。
「速力二七ノット、風速三一ノット」
 艦橋の中にちょっとしたざわめきが広がった。本来の大和が誇っていた速力に追い付いたのだ。にもかかわらず、まだ、速度の上昇は留まる所を知らない。

【中略】

「十秒前」
 布施は秒読みを続けた。
「五、四、三、二、一」
 飛行制御盤に手を突きながら布施はレバーを突き倒した。
「ゼロ、噴射」
 タービンや、あるいは砲撃ともまったく違う腹の底に響くような震動があった。艦が巨大な大波に乗り上げたように突き上げられた。大嵐の中で翻弄されているような音響が大和の艦体を包んだ。
 だが、大和は揺れていなかった。ただ、まっすぐに進んでいるだけだ。
 海面が吸いこまれる様に遠ざかる。
「スクリュー停止。ボイラー噴気、噴射」
 大和が海面から浮き上がると、スクリューが過回転を起こして破壊されてしまう。停止させた代わりに今までタービンを回していた水蒸気を後方に噴射させる。これは空中に浮かんだ大和の推進力となる。
 もちろん、布施が指示を出さなくとも、機関科でも飛行手順にのっとって噴射を開始しているだろう。
 ストップウォッチは噴射から五秒経過を示している。本来の噴進器は九秒間の噴射が可能だったが、最初から最大出力の噴射は危険にすぎた。今回の飛行試験ではほぼ半量の推進薬が装備されただけである。
 嵐のような轟音が途絶えた。艦底の固体式噴進器が自動停止したのだ。ついで、大波を降りるような浮遊感が大和艦橋を包んだ。
「速力ゼロ、風速五〇ノット。いえ、六〇。まだあがります」
 航海士の声も心なしか震えていた。
 布施自身も固定ベルトで強制的に起立姿勢を取らされながらも、脚が震えるのを抑えられなかった。脚が崩れそうになって安全バーに掴まった。
 海面は猛烈な勢いで後方にすぎて行こうとしている。
 大和はいま、飛んでいるのだ。

■あとがき
 シミュレーション戦記は「スーパー系」と「リアル系」に分けられる、のだそうである。どちらにしろ、歴史に「もし〜」は禁物なのだから大同小異だと思うのだが、この二分法は有効であるらしい。
 で、この『飛行戦艦大和』はタイトルからして「スーパー系」だ。ぼく自身は少なくともリアル系の作品を書き続けてきたつもりであるし、相応の説得力を保持してきた自覚はあるので、初めてのスーパー系作品となる。
 この作品にはもう一つの初めてがある。いままで、航空中心の作品を手懸けてきていたため、中心に置かれるのは飛行機であったり、空母であったりして、大和を主人公に据えるのはこれまた初めてなのである。もっともまあ、この大和が飛行機なのか船なのか、難しいかもしれないが。

 また、飛行戦艦も相当「と」な代物であるが、戦時中、連合軍、枢軸軍、双方ともになかなかとんでもない兵器を開発研究している。
 たとえば上陸支援兵器として開発されたイギリス軍のパンジャンドラム。
 直径三メートルの車輪の周囲に固体ロケットを取り付けて、回転させながら上陸目標地点に突入させる。触発信管付きで、戦車やトーチカにぶつかったとたん大爆発を起こす。言うなればネズミ花火のお化けである。兵員の上陸に先立ってこいつを放り込んで敵兵が逃げ惑う所に本隊が突入する計画であったのだが……もちろん、失敗した。回転力が強すぎて砂浜にめり込んでしまうのである(と、ものの本には書いてあるが本当にこんなスチャラカな兵器を開発しようとしたのか、眉唾ではある)。
 戦後になるが、アメリカ軍の戦略爆撃機の護衛に対する努力も瞠目、というかなかなかの物も見受けられる。
 核兵器が実用化され、ただ一機の戦略爆撃機で敵国の首都を壊滅できるようになると、この爆撃機を何としても守りきって敵地上空に到達させる必要が生じる。
 最初に考えられたのが、長距離戦闘機として定評の高かったP51ムスタングを双発双胴化したP82ツインムスタング。二機の飛行を横に繋いでそのまま飛ばしてしまおうとする乱暴な発想で、さらに目茶苦茶な事にアメリカはこれを実用化させてしまう。もっとも、護衛戦闘機ではなく迎撃機として使用されたが、時代の趨勢はジェットに移り、大した活躍も見せず退役している。
 レシプロ機ではミグ戦闘機に通用しない。かといって、長距離を行くジェット戦闘機は技術的に不可能である。
 次に考え出されたのが、寄生戦闘機、マクダネルXF85ゴブリン。
 大型爆撃機の爆弾倉に戦闘機を収納しようとの発想である。省スペースのため胴体は極端に短く、垂直尾翼も面積を稼ぐため三分割されている。ビヤ樽に翼と尾翼をつけたごとき機体である。敵地に向かう間、B36の胴体内に納められ、敵地が近づくと切り離され敵迎撃機と交戦。作戦終了後、母機から釣り下げたフックに機体を引っ掛けて収容される、はずであった。
 もっとも、この機体は皮肉にも初飛行の前に「墜落」している。地上で風洞実験の最中、吊り上げようとしたところフックが外れてしまったためである。様々な滅茶苦茶なテストの後、ゴブリンの開発は中止されるが、超長距離護衛戦闘機の必要性が消滅したわけではない。
 次に、胴体の外に置くのはどうだ? と、爆撃機の翼端から燃料の通ったホースを繋いで戦闘機を引っ張る研究が始められた。B52の翼端から伸びたホースに二機のサンダーストリークがぶら下がっているのはなかなかの壮観である。

 もちろん、日本のとんでも兵器もなかなか有望(?)である。
 作中登場する殺人光線や、水中戦車は実在である。
 殺人光線というと現代ではレーザー光線が想像されるが、陸軍が開発していたのはマイクロ波を利用しており、言うなれば巨大電子レンジであった。マイクロ波は閉鎖した空間で利用されればかなりの加熱作用を持たせられるが、開放された空間では大した効果は示さなかった。この装置は兵器ではあったが、戦後もなぜか解体破棄されず、食品加熱用機器に転用されたと言う。
 水中戦車も海軍工廠で作成された。潜水艦に搭載してB29の基地となっていたサイパン、テニアンを急襲する計画であったらしいが、残念ながら筆者は水中戦車のその後を知らない。
 戦局も押し迫っており、開発が間に合わなかったか、あまりのばかばかしさに中止されたのだろう。

 作品に話を戻すが、基本的に大和以外は実在か、実在してもおかしくてもない兵器(のつもり)である。もっとも、水中戦車のように出現時期をずらしている場合もある。

 なお、この『飛行戦艦大和』は青山的には三巻ほど続ける積もりでいる。いるけれど、このリュウブックスは始まったばかりのノベルスで、売れなければ『飛行戦艦大和』打ち切りどころか、シリーズ全体が無くなりかねない。
 次巻予定『飛行戦艦大和、パナマ大飛翔』を成立させるためには、ぜひとも、好成績を残さなければならない。そのため、読んで面白い、続きが読みたいと思った方は、読書用と保存用と、ぜひ、二冊お買い上げお願いいたします。なにせパナマ用にもっととんでもない兵器で持ってアリゾナ、ニュージャージーと対決させるつもりなので。

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