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「暫定ラベルを提案する」
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 まず本題に入る前に、会報二〇〇〇年五月号に載った、若桜木虔氏の意見について触れよう。氏の意見は正当であり、筋の通った主張である。誰かが言わねばならない意見だったのだ。
 実際「SFと非SFの区別」は、部外者には理解不可能なスコラ哲学だ。おまけに「SF」という名称も出版業界では事実上、死語である。こんなものを水戸黄門の印籠のごとく掲げられても、大衆娯楽作家にとっては迷惑でしかない。当協会会報でも廃止することを検討していただきたい。
(残酷な言い方だが、仕方がない。これ以上の欺瞞は無意味だ)
 さて本題に入ろう。会報二〇〇〇年五月号には、年度ごとの総括の形式を検討し直す、という趣旨が書かれていた。それならば私案を提出させていただく。以下の部門に分けるのが妥当であろう。
○推理&サスペンス小説部門。
○ハードボイルド&冒険小説部門。
○エヴリ・アザー部門。もしくはアザーワイズ部門。
 エヴリ・アザーや、アザーワイズは「その他すべて」の意味である。ここには架空戦記、ホラー、スペース・オペラ、ファンタジー、サイファイなどが放り込まれる。歴史小説や、官能小説も、この部門に入れて構わないし、その他分類不能の作品も当然ここに入る。
 つまり、当面は「エヴリ・アザー」などの暫定的なラベルで代用しておくのだ。状況が変わったら、また考え直せばいい。
    *
 名称や、分類項目について考えるためのデータを一つあげよう。
 モルモットは別名テンジクネズミとも呼ばれるように、旧来はネズミの一種だと思われていた。しかし、DNA情報を調べたら、モルモットはウサギの一種だった、と判明した。その直後、動物学の分類項目は書き換えられたのだ。
 つまり、分類項目とは永遠不変のものではなく、流動的なものなのだ。これは「現状を追認するだけのもの」であり、「いつ書き換えられるか、わからない不安定なもの」と捉えるべきだ。
 もう一つ実例をあげよう。当協会の手帳に記載されている事実だ。
 当協会は過去、何度も改名していたのだ。最初は「探偵作家クラブ」、次に「日本探偵作家クラブ」、そして「日本推理作家協会」である。つまり、実状に合わせて、ラベルの方を取り替えてきたのである。
 こうした実例と比較すると、「SF」という名称を、実状を無視して無理矢理使い続けようとする態度こそが「異常」であろう。そう言わざるを得ない。
 それなのに、実状と噛み合わない分類項目に「永遠不変の絶対的なイデアの価値」を見いだしてしまう人々が、何と多いことか! そんな態度は「二四〇〇年も時代遅れのプラトン哲学」への逆戻りである。世の中の不毛な論争は、常にここに起因しているのだ。
     *
 さて私案の「エヴリ・アザー部門、アザーワイズ部門」だが、いかにも暫定的だし、混沌とした印象があるだろう。だが、こんなネーミングで充分だ、と私は思う。
 繰り返すが、名称や分類項目とは「現状を追認するだけ」だ。だから、現状が混沌としている場合は、名称や分類項目にも、その混沌ぶりが反映されてしまうわけだ。
 それで構わないではないか。「何でも秩序づけられる」などという前提で考える方が、むしろ異常な思い上がりであろう。

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