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 梅原克文より、ある作家志望者への返事。98/10/09

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拝復 S様
 お手紙、拝読いたしました。
 しかし、私は仕事が遅いので、貴殿の作品を査読する時間的な余裕は取れそうにありません。
 しかし、アドバイスならば、できるでしょう。
 まず、プロ・デビューのチャンスならば、あります。
 一つは講談社が出している季刊誌(?)「メフィスト」です。あそこの編集部は「持ち込み・投稿大歓迎」で、アマチュア投稿作品の寸評も毎回、連載しています。長編もOKです。挑戦しては、いかがですか?

 なぜ、講談社がそんな企画を始めたのかって? 実は裏話があるのです。
 私は東京に住んでいた頃、講談社に目をつけられて、ミステリーを書かされ、乱歩賞に二回応募させられた過去があります。二回とも最終候補止まりでした。結局、ミステリーには不向きな私は、講談社とは喧嘩別れしました。
 その後、私がサイエンス・フィクション「ソリトンの悪魔」で日本推理作家協会賞を受賞したものだから、講談社は「逃がした魚は大きかった」と反省したのでしょう。
 近年、私はパーティーなどで講談社の人間と話す機会がありましたが、向こうは梅原克文を逃したことを、今も悔やんでいる様子でした。講談社が「第二の梅原克文」を欲しがっているのは、間違いありません。
 もしも、プロ編集者に作品を査読してもらいたいのなら、「メフィスト」は、おすすめでしょう。
 読めば、わかりますが、「メフィスト」はサイエンス・フィクションも歓迎していますよ。ただし、大衆娯楽路線に限りますが。

 角川書店の「日本ホラー大賞」もあります。実際、あの賞の創立があと2年早ければ、私も応募していたでしょう。

 他は、サイエンス・フィクション同人誌「宇宙塵」です。
 同誌に載った、私の「中編版・二重らせんの悪魔」に、講談社や朝日ソノラマが目をつけてきて、プロへの足がかりとなりましたから。
 主宰者である、翻訳家の柴野拓美先生からは、多くのアドバイスをいただき、それらは私の財産となっています。
 ただし、最近は「宇宙塵」も発行されたり、されなかったりです。
 もしかすると「宇宙塵」経由でのプロ・デビューのルートは、もう貴殿は間に合わないかもしれません。また、同誌は「長編はお断りで、上限は一六〇枚ほどの中編まで」です。
 一応、連絡先だけは書いておきます。
 〒259−0123 神奈川県中郡二宮町二宮700 柴野拓美

 もう一つは「ソノラマ文庫大賞」です。当然、ジュニア向け小説ですが。
 毎年三月末に締め切りです。
 四〇〇字で300枚から350枚。
 発表は12月刊行の朝日ソノラマ出版物、朝日新聞の広告。
 〒104−0061 中央区銀座6−11−7
           朝日ソノラマ 編集部 文庫大賞係

 別のアドバイスです。
 私は以下のテキストで、小説の書き方を覚えました。
「ベストセラー小説の書き方」D・R・クーンツ著 講談社(今は朝日新聞文庫)「シナリオの基礎技術」新井一著 ダヴィッド社(超ロング・セラーです)
「自家製文章読本」井上ひさし著 新潮文庫
「私家版日本語文法」井上ひさし著 新潮文庫

 以上の四冊は絶対に役に立ちます!

【7行削除。要するに、青山氏との往復書簡などを別紙に印刷して、S氏への手紙に同封したから、読んでくれ、という内容です。】

 手紙の中にある「小説風」の一節も拝読しました。
 貴殿には、情景を組み立てる「映像発想力」と、それを表現する「文章力」が、かなり備わっていると思います。絵画で言う「デッサン」が、プロに近いレベルまで出来上がっている、と判断しました。 
 もちろん、小説は、それ以外の要素も多数、含んでいるので、「映像発想力」と「文章力」だけでは、プロにはなれません。
 まずは、上記のテキスト四冊を買って、読んでみてください。
 貴殿に意欲があるのなら、上記の四冊は貴殿の「タイムカプセルを割る起爆剤」になるでしょう。

 最後に、とっておきのアドバイスです!
 企業は新商品を開発すると、必ず一般消費者にモニターになってもらい、細かくアンケートを取り、試作品を作り直しては、またモニター・テストを繰り返します。そして、「これなら、いける!」という手応えをつかんでから、売り出すのです。
 実は、私はアマチュア時代から、これをやるようになりました。
 友人に缶ビールを一本おごっては、短編や中編を読んでもらい、相手が述べた感想をすべて箇条書きにして、メモするのです。
(ちなみに、モニターには「小説の読書量が豊富な人間」を選ぶべきです)
 その場合、相手の感想に反論などしてはいけません。「そういう視点もあるのだ」と謙虚に受けとめ、とにかく相手が感じたこと、言ったことをすべてメモすることだけに徹するのです。
 そして独りになったら、じっくりとメモを読み返し、「どうしたら、あいつにおもしろいと言わせることができるか?」を考え直し、ストーリーやキャラクターのドラマなどを再構成し、またモニター・テストを繰り返すのです。
 それから満を持して、応募するわけです。
 この方法はもっとも確実です!
 私は、このモニター・テストをやる以前は、新人賞に応募しても一次選考止まりでした。
 しかし、88年頃、友人相手にモニター・テストを7回ぐらい繰り返して、小説新潮新人賞に短編ホラーを応募してみたら、最終選考に残りました。
 その時、応募総数は1000作以上、最終候補に残った作品は7作です。残念ながら、その時は受賞はできず、佳作にもなりませんでした。
 しかし、選考委員の井上ひさし氏は、最終候補7作品中、第3位と評してくれました。私にとっては大きな前進であり、以後の自信となりました!
 このモニター・テストの心構えを身につければ、プロ編集者とつき合うようになってからも、役に立ちます。何よりもプロフェッショナリズムの持ち主として、編集者から絶大な信頼を勝ち得ることができますよ。

 私にできるアドバイスは、ここまでです。これ以上、私に何かを求められても、申し訳ないが、時間の余裕が取れないのです。
 後は、自力で道を開いてください!
 貴殿が21世紀を背負う人材に育つことを祈ります。
敬具



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