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梅原氏への返信2000年04月08日
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梅原克文様
2001.4.8


 新世紀あけましておめでとうございます。
 だいぶ間の抜けた挨拶になりましたがお許しください。新世紀は百年続くということで何ヶ月かの誤差はご容赦を。

 だいぶ以前になってしまいましたが、八月にいただいた手紙に反応できなかった件についておわび申し上げます。ですが、取り立てて深い意味は有りません。まだ、おおやけにできない理由や、個人的な事情から多忙であったと言うことと、それ以上に書簡の内容に議論する必要性も感じませんでしたし、異論も有りません。一言一句伏せる事もなく公開しました。

 しかしながら先日、戴いた物には重大な問題提議がなされていると感じ、筆を取りました。
 従って、この手紙のタイトルは『推理作家協会への慰留』です(笑)

 ですが、本題に入る前に一つ、片付けておかなければならない問題があります。それは巽孝之氏の日本SF大賞受賞についてです。
 私は巽氏に取り立てての感情も抱いてはおりません。もし、あえて言うのであれば「若干の恨みと、若干の恩義」双方を感じています。いずれも大した事では有りません。恨み、というのは私の作品に対する評価です。直接、評価を戴いた経験があります。それは時には酷評でありました。自作をこき下ろされて相手を恨まない著作者がいるでしょうか? いるはずが有りません。これが巽氏に対する恨みです。
 恩義とはこれの裏返しで、巽氏の評価が自作に対する優れたアドバイスとなっていた部分です。SFイデアを議論する以前に、アマチュア時代の自作の小説技法上のひどさと言う物を今では判っています。巽氏にはこれを指摘していただいた。これが巽氏に対する恩義です。
 巽氏のSF大賞受賞を祝うパーティにもお誘いを受けました。残念ながら〆切、育児に追われ欠席してしまったのですが、そうでなければお祝いに駆けつけていたでしょう。

 結論を先に言ってしまえば「あれはあれで良いのではないか」です。
 SF大賞に限らず、どのような賞であろうと、二つの効果が考えられます。「商売」と「栄誉」です。両方を兼ね備える賞も、どちら持たない賞も存在しますが、SF大賞はどちらでしょうか? 「SF村の中での栄誉」を誉めたたえる賞となっています。
 そうして見た場合「日本SF論争史」は優れた編著となっています。私自身自腹を切って同著作を購入、通読いたしました。大変面白く一気に読み通しました。「日本SF論争史」について「見地が一方的すぎる」などの批判もありますが、SFというムーブメントが盛り上がり、浸透と拡散を繰り返して雲散霧消する様を見せてくれます。「見地が一方的すぎる」という意見に対しては「塵も積もれば」を併読する事を進めます。いささか趣味的にすぎる選択かもしれませんが、「日本SF論争史」を読むような方には適当でしょう。
 いまここで述べたのは「日本SF論争史」が「SF村の中での栄誉」を受けるに相応しい、と言うことです。
 では、次に考えなければならないのは商売的にはどうだったか? という部分です。巽氏に直接うかがった所「思ったより売れた、増刷もかかった」と言う物です。ですが、元々の部数が少ないですから、それほど売れたと言うべきではないでしょう。
 一方、選考会で対抗馬として最後まで残ったのが『クリスタルサイレンス』と菅浩江さんの著作だそうです。菅さんの作品は目を通していませんし、情況も分からないので何ともいえませんが『クリスタルサイレンス』が商業的にどうであったかを考えると、残念ながらそれほどのベストセラーではありません。朝日ソノラマのハードカバーとしては売れた部類に属するそうですが、仮に受賞したとしてもそれほどの伸びに結び付いたとは考えられません。
 だとすると、巽氏のSF大賞の受賞はまっとうな選択であった、と言えるでしょう。
 もちろん、だからと言ってSF大賞の存続、あり方、意義に異論がないと言うわけでは有りませんが。

 さて、いよいよ本題です。
 先にも述べましたごとくに『推理作家協会への慰留』です。協会報にも目を通していますし、梅原さんの普段からの主張も存じ上げているつもりです。
 また、時には協会主催のパーティ、土曜サロンなどにも顔を出しており、これらの事情から内情を推測しますと「推理作家協会には梅原さんが提案なされた改革を実行に移すマンパワーがない」というのが、私の観測です。
 自分で言うのは何ですが、作家、小説家などという人種は事務能力に乏しく、時には一般常識にも欠けています。全員がそうだと言うわけではありませんが、推協もかような人たちがある意味、モノ書き商売の合間に運営しているわけです。
 無論、専任の書記局員を置き、その人たちが事実上の事務を取っていますが、理事やそれぞれの委員が、運営方針の決定や、賞の選定に当たっているわけです。推理作家協会賞、乱歩賞の下読みなどには相応の報酬が支払われるでしょうが、理事、ないしは理事長が重責に値するような給与を受取っているとは思えません(手帳の会規抜粋を調べたところ記述はありませんでした)。
 理事会が月に一回、総会が年に一度。しかも他にも決めなければならない事項は無数に存在します。これでは大きな改革が望めないのは当然と言えましょう。
 もし梅原さんがご自分でなされたような改革が必要であると考えるのであれば内部から行った方が効率的であると考えます。つまり、理事に名を連ね、理事として発言すれば相応の改革は難しくないでしょう。
 もっとも、それがどれだけ困難な事か理解しますが。

 また、別の面でも現在の推協に不満をもたれる方もいらっしゃるらしく、昨年、「本格推理小説クラブ」でしたか? そのような団体が設立されました。どうやら、現状の推協賞、乱歩賞が冒険小説寄りであるという問題意識をもち、本格推理小説を後押しする物であるようです。
 本格推理小説クラブは取り立てて推協と対立するわけではなく、推協から多数の脱退者が出たと言う話も聞きません。一つの見識であると言えましょう。
 もっとも、私自身どう転んでも本格推理小説作家ではありませんし、同団体からの接触もないので、推測が間違っている可能性もあります。

 サイファイの普及について第三団体の設立と言うのは難しいであろう事を思えば、現在の推協の態勢をゆっくりとでも変えて行く方向が現実的でしょう。
 そのためには親サイファイの理事、あるいは有力者を内部に置くべきで、だとしたら梅原氏に残っていただきたい、と……まあ、いうだけ言います。

 ところで、話は変わりますが、確定申告はどのように済まされましたか? 若桜木さんがやけに気になさっています。また、梅原さんの常日頃の主張「小説を商売と考える」のであれば、税金も考慮に入れるべきだと思います。

 また、今年の執筆予定はどのようになっていますか?
 青山は相も変わらず、戦記シミュレーションばかり。先日、今年、三冊目の敢行となる原稿を仕上げ、この後も編集さんの言葉を鵜呑みにすれば、年内にあと五冊ほど書き上げなければならない状態です。
 また、昨年篠田節子さんと『百年の恋』なる育児物の合作をやったのですが、これから派生した作品『DINX』を何としても世に出したいと考えています。これがSFの冬に対する青山の回答になります。

 では。

 青山智樹

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