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梅原氏への返信2000年06月02日
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 梅原克文様
2000.6.2
 このように挑まれたからには(?)ぼくも収入の話をしないわけには行きますまい。
 しかし、99年度に五冊の単著を表わし、相応の条件の差異がある青山の話を詳細に説明はする事は複雑にすぎるでしょう。そこで単行本、新書、文庫についていささか一般化した話で例を挙げましょう。

 書籍と言う物は一般社会において「商品」に過ぎません。売れれば儲かる、売れなければ損をする、かような商品です。たとえば一般商品で余りに開発費がかかりすぎた場合、相応の売り上げを挙げたとしても儲かった商品にはなり得ません。
 本は紙に字を印刷してまとめた物体です。紙を買って来て、印刷して、製本するにも費用がかかります。書店に配送するにも、費用がかかりますし、書店や出版社の儲け(この中には編集者の給料も含まれます)も出ます。
 そして印税。これは一冊の書籍の十%と大抵決っています。例外も存在しますが、イラストさんが高名な方だったり、ノベライズであったり、あくまで例外です。
 さて、こうして作られた商品ですから、儲かったか、損したか損益分岐点が存在します。
 本も同じです。一説では

 文庫本 一万五千
 新書本 一万
 単行本 五千

 と聞きます。もっとも、各社によってこうした数値は違いますでしょうが、ここでは一つの基準と考えて下さい(こうして考えると『カムナビ』の一万がいかに期待された数字か歴然とします)。

 で、出版社は常に分岐点ぎりぎりでやっているわけではありませんから、もうちょっと上の数字を出しています。また、分岐点をクリアできない作家は次も売れないだろうと判断されますから、次がでない、つまり消えて行く、という結果になります。

 昨年の、ぼくの場合。新書が四冊。文庫が一冊でています。部数は、実をいいますと上記の数値よりだいぶ上です。一応、新書の全国ベストセラーリストに載りましたので。

 そうすると、おおよそのぼくの年収が計算できると思います。

 多いか少ないか、それは各個人の情況、判断によって差異があるでしょうが、これが青山の年収です。
 一方、年五冊というのは(これも判断によりますが)、そこそこ多いペースに属すると思います。
 同様の計算方法からして、年一冊や、二三冊の人たちの年収がとの程度の物か想像がつくでしょう。

 (新人の方を)おどかすわけではありませんが、ガス、電気料金が払えず、停められた人が二人。モノ書きで食べられないのでバイト(駐車場警備員、電気工事補助、新聞配達、某工場監視員)をしていた方も数名いらっしゃいます。また「バイト」の中には専門学校の先生は含んでいません。

 本と言うのは多少売れる作家が書いても、一冊百万程度にしかならないのです。ですから、デビュー仕立の新人の収入や生活がいかほどの物か理解できると思います。
 もっとも、例外も存在して、一作品が一冊の本として出版され、映像化が約束されているような場合です。これらは時には一冊で数千万の収入になりますから、次の一作に数年をかけられるという事もできるわけです。

 ですから、作家志望者の方に相談を持ち掛けられた場合(いまだに宇宙塵に出入りしていますのでよく相談を受けます)「上記の条件に合致する作品を書きなさい」とアドバイスする事にしています。

 さて、作家の生活についての話題が長くなりましたが、アジモフ、クラーク、ハインライン(アルファベット順)のビッグスリーについて、SF衰退の遠因があるとしたら、確かにクラークでしょう。

 ですが、ぼくはクラークの責任を追及するつもりもありませんし、50年前、60年前にSFを隆盛させたと働きと差し引いても、功が上回ると思います。そもそも、彼の時代にクラークがおらずとも、別の人間が純文学化の立て役者として祭り上げられ、今と同様の情況が産まれていたと考えられるからです。

 では、この青山に、あるいは我々に何ができるか、できるだけ多数の読者に受け入れられる作品を産み出す所にあります。批判的な態度も、対外的な行動もすべては作品(製品)品質の向上に繋げるべきなのです。

 また、梅原さんは評論家の態度について触れていますが、もう何度も繰り返していますが、彼らの言葉に耳を傾けるのは、意味のない事です。

 すでに御存じのように、昨年のベストSFのような本が出版されました。ミステリの評価が「このミス」によって決定されるような傾向があるように、同様の効果を狙ったのかもしれません。
 ですが、なぜか「カムナビ」が二十位にすら入っていないのです。
 まあ、何も言いますまい。

 このあたりまで返信を書いて、二通目の手紙を戴きました。

 クラーク批判の論理的な補強、と受取りました。
 クラークは大きな過ちを犯しました。もちろん、それは時代の趨勢の中で仕方のないものだとは理解すべきでしょう。クラークの……あるいは映画「2001年宇宙の旅」の成功がなければ、単に純文学化、あるいは崇高化に拍車をかけるだけの物だったかもしれません(もっとも、映画の中にも文芸作品と呼ばれる物が存在するようでありながら、それでいてハリウッド的な売れれば勝ちなヒエラルキーが存在していますのでもサイエンスフィクションの世界はまだマシともいえましょう)

(ここまで大幅に返事が遅れた上で、またまた言い訳なのですが、もっともっと遅れそうです。で、中途半端ですが慌てて返信をしたためます)

 「シュミラークル」という語、考え方についてはもう少し考慮する時間をください。サイエンスフィクションと言うより、ぼくの中では明治期の日本の作家たちが何をやってきたか、を少し考察したいのです。

 また、藤崎氏のSFマガジン掲載作は「レフトアローン」の改作、だと伝え聞いています。
青山智樹

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