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梅原氏への返信12月23日

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梅原克文様
1998.12.23


 ぼくもそろそろ書簡が一定の見解に達したかと思っていたのですが、新しい命題に突き当たってしまったようです(二通目12.18づけのお便りをいただいているのですが、テーマを別にするので独自にお返事します。お許しください)。

・SFマガジン及び早川書房の責任について。
 別に擁護するつもりはないですが、すべての責任をSFマガジンに押し付けてしまうのは酷かとも思います。いえ、無論、責任が軽減されるとは思いませんが。
 以前、書いたことの捕捉になってしまいますが、いわゆるSFブームが最盛期であった頃、文芸SF誌は四誌「SFマガジン」「SFアドベンチャー」「SF宝石」「奇想天外」。ビジュアル系情報系あわせると数知れず、という情況がありました。
 主要四誌のうち「SF宝石」はアイザック・アジモフSFマガジンとの提携で翻訳中心の路線を取りました。
 「奇想天外」は早川のコンテストよりもいちはやく新人賞を募集したところから判るように国内重視の路線を取りました。
 「SFアドベンチャー」は創刊時の目玉が「幻魔大戦」であったぐらいですから、比較的柔らかなスペースオペラ/冒険小説系を中心に据えました。
 となると「SFマガジン」としてはそれまであったファンタジイ&サイエンスフィクション誌との提携と、国内の充実をともにはかるという路線に行かざるをえなかったのは自明です。
 ですが、こうした絶頂期はそう長く続きません。
 一年あまりでSF宝石は撤退。
 奇想天外も倒産。残るのは二誌のみ。
 SFアドベンチャーが冒険小説系中心となると、SFマガジンの取れるべき方策はあまり多くありません。海外寄り/非冒険小説系とならざるをえないわけです。海外より、という事になるとアメリカのサイバーパンク騒動の影響も受けるでしょう。
 こうやって考えると、メタ言語小説を支持するSFマガジンがたまたま残り、その結果現状が生じた、と見るのが正しいようです。
 むしろ、SFマガジンよりも新人の育成を怠ったSFアドベンチャーや、SFブームとやらを盛り上げるだけ盛り上げて消えて行ってしまった出版社の責任大、という事になるでしょう。
 もっとも、だからどうなんだ、次に何をするんだ? という次ぎなる行動には何の影響ももたらしませんが。

【インターネットを流れていた新しい情報が引っかかりました。
 日本SF作家クラブが徳間書店の後援を受けて、新人賞を作るのだそうです。選考委員は小松委員長に、大原まり子、神林長平、小谷真理、山田正紀、笠井潔の各氏。徳間もSFアドベンチャーと同時にこれをやっていてくれれば……とは、思いますが、ま、それは言っても仕方ありません。これによってSFが再び隆盛に向かえばよいと思いますが、SF新人賞でデビュー、SF大賞受賞とか言ったらわらうしかありません】

・「言ってはいけない空気とイデアついて」
 これについては青山が好き勝手なことを言って生きているせいか、毒されてしまっているのかは判りませんが、「何も言えなくなる空気」についてはあまり感じた事はありません。ですが、SF至上主義というイデアは感じます。
 ですが。その中心が何か、どこにあるのか、というとよく判りません。
「ジジイたちのメンツ」というジジイは具体的に誰なのでしょうか? 長老、御三家クラスでしょうか? それとも、もう少し年齢的に下となるSF作家クラブ運営陣でしょうか?
 それが具体的に誰か、何が悪かったのかが判れば、批難のやりようもあるのですが、どうにもはっきりしないのです。
 それゆえ、空気なのかもしれませんが。

【以下三五〇〇字、削除。前後関係を確認の後、公開予定】

・スペースオペラについて。
 なぜ、スペースオペラ作家たちは独自の作家クラブを設立しないのか、ここから先に言及するとかなり推測の部分が入って来るのと、評論家たちの職域を侵してしまいそうなので、気乗りしないのですがやってみます。
 「SFとスペースオペラはまったく別の文化である」から、というのはどうでしょうか?
 梅原さんに指摘されるまで気がつかなかったのですが、確かに「SF」と「スペースオペラ」はまったく別物なのです。

 我々がSFを読み始めた少年の日の頃の、少年向けジュブナイル作品とは言えすべて福島正実路線であったと言って間違いはなかったでしょう。
 今日のいわゆるSFも「福島正実、SF作家クラブ、SFマガジン」路線の延長にあるわけです。いくらなんでも二十年前に亡くなった方の方針が今でも通用するとは思いませんし、批判するのがそうそう正統な態度とも思えませんが、歴史的な経緯をたどるとそうなるわけです。

 ですが、今日、もっとも隆盛を誇っているスペースオペラの中心は、売り上げから考えるかぎりいわゆるYA、ヤングアダルトと呼ばれる、富士見、スニーカー、電撃などの作品群です。これらはアニメ、ゲームを中心に発展し福島正実路線とはまったく道を別にしています。
 ルーツばかりでなく、売り上げに置いても、SFとは情況を異にしています。こうした作品では、人気シリーズの場合、初版二十万部から始まり、中にはシリーズ通じての百万部を売り上げた物もあるそうです。「スレイヤーズ、神坂一」の名前は長者番付に登場しました。マルチメディア展開するのが常ですから、作者の印税収入のみならず、周辺に生じる利潤はみみっちいSFとは比較になりません。
 こうした現象はこの十年程度なのでそれほど定着したと言い切れる物ではないかもしれませんが、アニメゲーム路線から発展して来たスペースオペラが売り上げの上からはすっかりSFを食ってしまった現状があります。

 ここからさきは青山の推測になります。
 スペースオペラがSFを越えてしまった今、スペースオペラ作家たちはSF作家クラブなど歯牙にもかけないのではないでしょうか? 自分たちがSFのサブジャンルであると、考えもしないでしょう。

 現在、SF作家クラブに所属しているスペースオペラ作家たちも数多くいますが、ざっと見廻した所、福島正実路線に乗って成長して、その中でのして来た方がほとんどです。かれらの中では(これも推測ですが)SFとスペースオペラは近い場所にあるのでしょう。あるいはマインドコントロールされている、という言い方でも構わないのかもしれません。

 まあ、ぼく自身がかれらの立場に置かれたとしてもスペースオペラ連盟を作ろうとはしないでしょう。作って何かいいことがあるのかという利益の問題があるからです。仮にそれで日本SF作家クラブに対抗する事になったとしても、ただうっとうしいだけでしょう。

 SF大賞についても、以前、お便りしましたように「吉里吉里人」ないしは「アドバード」を選出した時点で考え直すべきだった、という主張を変えるつもりはありません。「ブレインヴァレー」の授賞は「蒲生亭事件」と同様の発想の延長上にある物で、作品の格も、また賞の独自性、品位をなんら向上させる物ではないからです。
 そういう意味ではSF作家クラブの位置は昨年の宮部さんの授賞時から動いておらず、あの時北朝鮮だったのなら、今でも北朝鮮でしょう。
 「ブレインヴァレー」ではなく、いっそのこと今や最も売れているスペースオペラである「スレイヤーズ」なり「天地無用」あたりが選出されていたら、さらに同様の傾向が今後十年続けば、はるかに現実路線に即しているでしょうし、僅かなりとも賞の信頼度をあげる事ができるでしょう。

 ぼくが梅原さんの「サイファイ構想」を支持する理由の一つが、現存する特定の作品群を指し示す言葉が作れる部分にあります。
 SFと言う言葉がある傾向を持つ作品群をひとくくりにできなくなっているのは自明です。「どらえもん」から「ブレインヴァレー」を同一ジャンルに含めるのはどう考えても無茶です。ですが、その無茶をやらざるをえない、というのが現状なのです。
『SF評論家などの文章を読むと依然として「超メタ言語的な小説」も「SF」と呼んでいる』とは言っても、そもそも「超メタ言語的な小説」の一般名詞は存在しません。
 我々の間で取り交わされている言葉でも、「スペキュレイティブフィクション」などと二十年も前のニューウェーブブームの頃に産まれ、すでに黴のはえた言葉を使わなければならない有様です。
 SF関係者が、イデアを認め価値を見出している、という部分については批判の対象になるでしょうが、そんなものがあろうがなかろうが、なんと呼ぶべきなのか言葉がなければ呼びようがない。
 呼びようがないのだから、他の作品との差別化もできず、宣伝もできない。悪循環です。
 かろうじて、宇宙活劇だけはスペースオペラの語があるだけ。適当な造語を送りこんで特定の作品を指し示すようにしても、受け入れられなかったジャンルに対しては、すぐに廃れます。
 スペースオペラは残っていますが、「ニューウェーブ」「スペキュレイティブフィクション」「サイバーパンク」……ものによってはそれほど昔ではないのですが、歴史上の言葉にすら感じてしまいます。
 この状態が「売れないジャンル」に対するものであれば、当然の報いと言えましょう。
 一方、この数年のベストセラー作品、「パラサイトイブ」「ブレインヴァレー」、「蒲生亭事件」「クロスファイア」……これらを指し示す正しい言葉なんでしょうか? 事実上の標準としてホラーなり、ミステリと呼ぶことは出来ます。ですが、ミステリでもホラーでもない「現実に端を発し、異世界が広がる物語」はなんと呼べばいいでしょう。

 やはり、何かが間違っているようです。

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