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 梅原氏からの手紙2002年06月24日

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2002・6・24

前略
青山 智樹 様
 お久しぶりです。お元気のことと思います。
 手紙を書く必要を感じたので、書くことにします。これは青山氏のホームページにも載せて欲しいので、フロッピー・ディスクで送ります。

@今回は、私の認識不足についての告白と謝罪になります。
 私は「イデア主義思想・プラトン哲学」を誤解していたようです。
 結論から書くと、こうです。

☆「SF関係者たちを、二四〇〇年も時代遅れのイデア主義者、と論評したのは誤っていた」
☆「SF関係者もイデア主義者の一種だったが、梅原克文もイデア主義者の一種だった」
☆「SF関係者たちについては、こう論評するのが正しかった。超・人類的な選民思想型のカルト宗教の信者たちだ、と」

Aプラトンの対話篇「パイドン」には、ソクラテスの死ぬ間際の言葉が載っています。
 ソクラテスはプラトンの師匠です。ソクラテスは一種のテロリストと見なされ、時の政府から毒を飲んで死ぬことを強要されます。つまり、死刑です。
 そしてソクラテスは死刑の寸前に、こう言っています。
「もし私の言うことがたまたま真実だとしたら、それを信じることは間違っていないだろう。一方、それとは反対に、もしも死んだ人間が無になってしまうのだとしても、少なくとも自分が死ぬまでのこの今の時間だけは、この場にいる君たちに不愉快な思いをさせることがそれだけ少なくてすむだろう」

 これは、どういう意味でしょうか?
 私なりに哲学や信仰に関する本を読み、考えてみました。以下は、その内容です。

Bまず、ここでソクラテスが言っているのは、イデアの世界が有るか否かの問題です。次に、それが有る場合と無い場合の比較です。
 改めて書きますが、イデアの世界とは「死後の世界、霊魂の世界、高次元の世界、善と美と真実の世界、神々や天使の世界」です。そして「我々人間が住む物質の世界は、イデアの世界の影のようなものだ」と考えるのです。
 つまり、プラトンのイデア主義思想は、師匠のソクラテスから受け継いだ思想なのです。
 しかし、「パイドン」を読むと、意外なことにソクラテスはイデアの世界の実在を信じ切ってはいないのです。代わりに、まるで現代の経済学者がゲーム理論を論じるような話をしています。
 私なりに、まとめなおしましょう。

☆「イデアの世界があるなら、結構なことだ。死ぬことは善と美と真実の世界に帰っていくことなのだから」
☆「イデアの世界がないなら、ソクラテス(プラトンも含めて)の言ったことはウソである。しかし、この場合のウソは悪だろうか? たとえウソでも、それを信じることによって、その人が善良な人間になれて、幸福な人生を全うできるのならば、これは良いウソではないか?」

Cこれはウソや自己欺瞞は全て悪なのか、という問題です。
 実際には「ウソも方便」ですし、「良い自己欺瞞」だってあるのです。
 たとえ存在しないものを信じたとしても、それが悪いことであるとは限らないのです。
 存在しないものを信じた結果、その人が善良な人間になれて、幸福な人生を全うできたのなら、それにケチをつけるなんて野暮というものです。そういう人にとって、唯物論や科学的合理主義など何の助けになるでしょうか?

Dこれは信仰とは何か、という問題でもあります。
 つまり、人間の気持ちというものは「信じる/信じない」のように白と黒で色分けできるものではないのです。その中間のグレー・ゾーンには、こんな気持ちもあるのです。
「そんな話は信じにくいが、それが信じられたら、どんなにいいだろう」
 そして信仰やイデア主義思想とは、この「信じにくいが、信じられたらなあ」という気持ちも含めて、「信仰」と呼ぶし、「イデア」と呼ぶのです。

 信仰やイデアとは、そういう意味もあるのです。
 だとしたら、私は信仰を持つイデア主義者なのです!

E私はこの十数年間、自分は唯物論者であり、科学的合理主義者だと思っていました。
 しかし、私は切羽詰まった時に「ああ、神様」と口走ったことが、生まれてから、これまでに一〇回以上あります。これは一種の信仰告白でしょう。低レベルですが、その程度には私も信仰を持っていたわけです。

 また、私も時々こんな考えが頭をよぎることがあります。
「善と美と真実の世界が実在するのなら、どんなにいいだろう」と。
 結局、私はイデアの世界に憧れを抱きながら生きてきたイデア主義者です。それを認めざるを得ないわけです。

Fというわけで、SF関係者たちを二四〇〇年も時代遅れのイデア主義者、と論評したのは誤っていた、と明記しておきましょう。
 SF関係者たちについては、こう論評するのが正しいのです。
「超・人類的な選民思想型のカルト宗教の信者たちだ」と。
 なお、こちらの論評については、すでに私は過去の手紙で説明していますので、繰り返しません。

 ただ、これだけは指摘します。
☆「SF関係者やSFおたくたちは、本当は選ばれた少数派のエリートなのだ。なのに、世の中全体がSFを弾圧してくる。世の中全体がSFを理解してくれない。せっかく現代SFという最先端の文化があるのに、愚鈍な大衆読者はまったく関心を示さない……。
 ……こうした誇大妄想、こうした被害妄想、こうした泣き言、こうした大衆蔑視が、人間を善良にしてくれるか? 人間を幸福にしてくれるか?
 奇人変人は、選民思想型カルト宗教に幸福を見いだすだろう。
 しかし、梅原克文は選民思想に何の喜びも何の幸福も見いだせない!」

Gさて、本当のことを言うと、今の私は信仰やイデア思想について、さらに深い関心を持ち始めています。
 しかし、それについては省略しましょう。私の個人的な問題でもありますし、話し始めたら、話の内容が無制限に広がっていきそうです。
 とりあえず、自分の勉強不足と浅はかさを告白し、謝罪するだけにとどめましょう。

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 お話変わって……。
 書店で今野敏氏の新作を見つけました。講談社ノベルズで、紙帯には「スペース・ロボット・オペラの決定版」と銘打ってありました。タイトルは今、ど忘れしましたが。
 今野敏氏と言えばミステリー系、ハードボイルド系の作家であり、非SF作家です。その人が「スペースオペラ・シリーズ」を始めたのです。
 今後はますます、こうした傾向が強まるでしょう。つまり、「SFは腹の足しにならないから」です。
 本を売りたければ、「スペースオペラ」とか「ホラー」とか「近未来アクション」とかの形式分類ジャンル名で充分なのです。
 というわけで、青山氏のスペースオペラの新作も楽しみにしています。

 では、また。
      草々


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