青山 智樹 様 前略 忙しなくて、すいません。連絡事項が発生したものですから。 アスキーから、ホラー・アンソロジー「憑き者」が三月三一日に出ます。 私の短編「マン・トラップ」も収録されています。 ところが、アンソロジーの編集者である大多和伴彦氏は、巻末の作者紹介で、「梅原克文=SF作家」という文脈で、解説を書いてしまったのです。 大多和伴彦氏には抗議文を郵送しました。 また、その抗議文を、この手紙の中にコピーして、フロッピー・ディスクで、青山氏にも送ります。これもインターネット上で公開してください。 【以下が抗議文の引用です】 大多和伴彦様 前略 「憑き者」の刊行までの作業、ご苦労様でした。 しかし、それとは別に抗議させていただきます。 「憑き者」の巻末には作者一人一人についての解説などが、書いてありました。 そして、その文章を読むと、「梅原克文=SF作家」という文脈で書かれていたからです。 以前にも申し上げましたが、私にとって「SF作家」と呼ばれることは迷惑なのです。 神林長平や大原まり子などの仲間だと、勘違いされてしまうからです。彼らは「超メタ言語的な小説=現実味がなさすぎる小説」(私の造語)を書いて、「現代SF」と称している連中です。 彼らのせいで、今の大衆読者は「SF=わけのわからない小説」と思い込むようになりました。そして、その思いこみは間違っていないのです。 神林長平や大原まり子こそが、「活字SF氷河期」の原因です。また彼らを「SFの新旗手」などと甘やかし続けたSF関係者の態度も「氷河期」の原因です。 現状を素直に見れば、「SF=わけのわからない小説」」という汚名は、すでに挽回不可能です。一度失った信用を取り戻すなんて、できるわけがないのです。 それが世間の厳しさです。 ゆえに私はアメリカでも使われている「SCI-FI、サイファイ」を名乗りたいのです。それがダメなら当面は「ホラー」のラベルを名乗りたいのです。 とにかく「SF」だけは絶対に嫌なのです。 今回の件についてはあきらめます。今から印刷した本を回収し、改稿することなどできないでしょうから。 しかし、今後、貴兄が私を「SF作家」呼ばわりするのであれば、私は名誉毀損や営業妨害などの名目で訴訟も辞さないつもりです。 また、貴兄の対応に、私は疑問を抱かざるを得ません。「サイファイ作家を名乗りたい」という私の考えは、すでに貴兄にお伝えしてあったからです。 正直言って、私は貴兄を信用することができません。 貴兄との仕事は以後、お断りさせていただきます。 梅原克文 まったく面倒くさいトラブルでした。しかし、これも今後の教訓としましょう。 つまり、私を「SF作家」呼ばわりするのであれば、私はその人物との仕事は絶対に断るからです。 そして現状を見れば、このやり方に賛成してくれる出版関係者の方が遥かに数は多いのです。 では、また。 |