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梅原氏からの手紙12月18日

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 青山 智樹 様
1998・12・18

 前略
 貴兄の言う通り、我々の往復書簡は成果をあげたものと考えます。
 しかし、私の情報不足だった部分が少し残っていました。
 また、私が言葉足らずだった部分がまだ大量に残っていました。
 それを補足しておきます。

・「SF大会参加者が、SFマガジンを恒常的に読んでいるわけではない」
 確かに、そうでしょうね。
 つまり、SFマガジンは、各地の地方SF大会の告知板を兼ねているようですね。大会の日時や場所などの情報入手の目的のみで買うか、立ち読みする人々もいるのでしょう。その手の人々は、告知以外の記事や小説などは、ろくに読まないのでしょう。

・「早川書房は、ペリー・ローダンと、グイン・サーガで黒字を稼いでいるので、それで赤字埋めになっている」
 なるほど、それなら納得します。
 しかし、それだったら、「SFマガジン」を廃刊して、「スペース・オペラ・マガジン」や「ヒロイック・ファンタジー・マガジン」といった月刊誌を創刊すれば、より一層の黒字を追求できるはずです。
 新人賞だって、「スペース・オペラ・コンテスト」や「ヒロイック・ファンタジー・コンテスト」を立ち上げれば、将来の黒字につながるはずです。
 つまり、第二、第三の「ダーティー・ペア」や、「銀河英雄伝説」、「グイン・サーガ」を生みだす、といった明確な黒字追求の姿勢があればいいのです。
 そうしたビジネスに徹する発想が、早川書房のSF部門には、ないようです。その中途半端なところが歯がゆいし、首をかしげたくなるわけです。

・「SFマガジン自体は黒字らしい」
 それは絶対にありません(笑)。
 某出版業界人が証言しました。「書店で平積みになっている月刊小説誌もほとんどは赤字だ」と。
 となると、SFマガジンのように、書店で平積みにされていない月刊小説誌が黒字のはずがありません。
 やはり、ペリー・ローダンと、グイン・サーガで、赤字を埋めてもらっているのだろう、と私は確信します。

 一例をあげましょう。
 ***という出版社があります。【実名表記により二行削除】
 以下は、その***の社員から聞いた話です。
「実は、『小説**』という月刊誌を立ち上げる計画があり、私は編集長に任命されるはずだった。しかし、直前になって中止になった。今の状況では、赤字覚悟の月刊小説誌を立ち上げる余裕はない、というトップの判断だった」
 これが月刊小説誌の実状なのです。
 これらから類推すれば、SFマガジンも赤字に決まっているのです。

 SFマガジンは、ペリー・ローダンとグイン・サーガに、赤字を埋めてもらっているおかげで、今後も継続するのでしょう。つまり、この中途半端で、不毛な状況は、今後もしばらくは続くのでしょう。

・「SFマガジンの歴代編集長は、ファン出身なので、アマチュア・イベントのSF大会を誌面で大きく取り上げてしまう」
 これも、そうだろうな、と思いました。実際、商業雑誌としては、お粗末すぎるのです。本気で、大衆から黒字を稼ごうという姿勢が見えませんから。
 早川書房の役員たちが、今の編集方針にストップをかけようとしないことや、廃刊にしないことが、本当に不思議ですね。
 前述したように、ペリー・ローダンや、グイン・サーガでの黒字があるので、それでSFマガジンの赤字を埋めているのでしょう。また、早川はミステリー部門があって、そちらが黒字だから、今のところ見逃してもらっているのでしょう。
 いつまで続くか、知りませんが。

・「コミック・マーケットは、かなりプロ化が進んでいる」
 これは、私の情報不足でした。
 すでに株式会社の形を取っているとは知りませんでした。
 しかし、一年間に数日間だけ運営するだけのイベントなのに、株式会社とはねえ。ずいぶん不自然なプロですな。まあ、我々には無関係ですね。

・「マニアや、おたくは梅原さんが考えるほど力は持っていない」
 ここのところが、誤解されやすい点なのです!
 私は、「マニアや、おたくに力がある、影響力がある」と、そんな風に思っているわけではないのです!

【青山による注:以下、梅原氏によるオタク排撃論が続く。梅原氏はオタクが活字SFを滅ぼした一因である、と述べて、自分は反オタク的立場をとる、と宣言している。
 だが、青山はこの説はちょっとどうかと思っている。
 梅原氏の態度についてぼくに是非はない。物書きはそれぞれ立場が違い、二人が同じ場所にたつ必要はないし、梅原氏の選択はそう間違っていないからだ。
 しかし、いわゆるオタク文化を考えた場合、現在の中心はアニメ、マンガにあり、これらは絶頂期とも呼べる隆盛を誇っており、そうすると「オタクがなぜ活字SFだけを滅ぼしたか?」が説明できないからである】

 「現在のおたくは、『一般大衆から嫌われる』という、ネガティブな影響力を持ってしまった。ゆえに、『サイファイも、おたく文化だ』と誤解されると、サイファイまでもが大衆から嫌われてしまう。それが恐ろしい!」ということです。
 この点は、細かく細かく説明しなければ、わかってもらえないでしょう。
 また大量の説明文が必要ですね。ため息が出ます。

 わかりやすく、項目にしましょう。

1.現在のおたくは、「2400年も時代遅れなイデア主義、プラトン主義」を信じ込んでいる。つまり、「自分たちは、大衆よりも次元の高いイデアの価値を理解しており、大衆よりも次元の高い世界で生きている」と思いたがる傾向が強い。

2.その結果、現在のおたくは、いずれ価値観の革命が起きて、社会全体がひっくり返ることを期待するようになった。つまり、社会主義革命や、ハルマゲドンのようなものが起きて、おたくが、この世の頂点に立つ世界が到来することを、半ば本気で期待しているのだ。
 事実、十年ほど前、テレビに出ていた宅八郎は、「おたく文化が世界を支配する」と大まじめに言っていた。岡田斗司夫という「おたく評論家」にしても同様だ。彼の主張を読めば、その思想的根底にあるものは「今、おたく革命が起きつつある」なのだから。
 彼らの本音を代弁すると、以下の通りだ。
「おたくは、一般大衆よりも次元の高いイデアの世界を理解できるのだ。だから、おたくの方が、一般大衆よりも高級な人種なのだ。
 なのに、高級な人種である自分たちが、権力のない弱者のまま人生を終わるなんて、絶対に我慢できない。いつかは価値観の革命が起きて、高級な人種のおたくが支配する天下が来なければならない。そうでなければ、不当であり、不条理である」
 彼らは、半ば本気で、こう思いこんでいるのだ。
(え? なぜ、そうだ、と確信を持って言えるのかって? 私自身が元おたくだからだ! 私も、そう思いこんでいた時期があった! だから、彼らの心理構造を、私は一〇〇パーセント見破っているのだ!)

3.現在のおたくは常に一般大衆をバカにし、冷笑的な態度を取る。おたくの方が、一般大衆よりも次元の高い存在だからだ(と、彼らは信じ込んでいる)。
 そして困ったことに、出版業界人の中にも、彼らに同調する「おたく真理教信者」がいるのだ。こうした「メディア業界内のおたく信者」たちが、「SF評論家=おたく」たちに記事を書かせたり、座談会をやらせたりするのだ。つまり、「メディア業界内のおたく信者」たちが、おたくにマスコミ・メディアでの発言権を与えてしまうのだ。
 その典型的な例が「SFマガジン」である。
 また、「本の雑誌」や、「別冊・宝島」、朝日新聞発行の雑誌(誌名は忘れた)、一部のパソコン雑誌などにも、そうした実例が見える。最近では、NHK教育テレビが荷担した!(世も末だ)

4.だから、一般大衆は、マスコミ・メディアを通じて「SF評論家=おたく」たちのイデア主義思想に接する機会が時々あるわけだ。
 当然、SFイデア主義は非常識な思想なので、大衆は辟易してしまうわけだ。
 そして大衆は、「SF関係者とは、わけのわからない連中であり、SFとは、わけのわからない文化だ」と判断することになる。
 これも、活字SF氷河期の重要な原因の一つなのだ。

 これで理解してもらえましたか?
 私は、「マニアや、おたくに力がある、影響力がある」とか、そんな風に思っているわけではないのです!
 「現在のおたくは、『一般大衆から嫌われる』という、ネガティブな影響力を持ってしまった」という実態を捉えているのです。
 だから、「これに巻き込まれて、サイファイまでもが大衆から誤解され、嫌われるような事態になるのを恐れている」ということです。
 より詳しくは、後から述べます。

 もう一つ、追加する論点は、これです。
「昔のマニアと、現在のおたくとは別の人種である」という点です。

 マニアという人種は、昔から存在していました。
 しかし、マニアというのは、本質的に少数派でした。だから、マニア自身も、それをよくわかっており、「自分たちは変わり者だから、世間の真ん中を歩ける人間ではない」と自戒していたと思います。

 ところが八〇年代はバブル景気に支えられて、世の中に必要以上の経済的な余裕が生まれたのです。
 そのせいでしょう。マニアならぬ「おたく」の数もある程度、増えてしまったのです。そのため、あの「おたく文化」が花開いてしまいました。これは八〇年代以前にはなかった文化現象でしょう。
 そして「おたく文化」なるものは明らかに宗教運動や学生運動に似たものになっていきました。実際、八〇年代のころは「おたく文化が世界を支配する」などという見出しが、雑誌にしばしば載っていました。今だにそう言っているアホな「おたく文化評論家」もいます。
 要するに「おたくが世間の真ん中を歩けるのだ」という主張です。
 しかし、結局、「おたく文化」は、過去の宗教運動や学生運動の二の舞に過ぎなかったのです。これはユダヤ教やキリスト教の「ハルマゲドンの後に千年王国がやってくる」式の主張だったです。オウム真理教も、これを使いましたが。

 繰り返しますが、「昔のマニア」は、「自分たちは変わり者だから、世間の真ん中を歩ける人間ではない」と自戒していたと思います。
 だから、「昔のマニア」は、大衆から嫌われることはなかったのです。声高に強い主張などせず、人畜無害の存在として、世の中の片隅でひっそりと生きていたのです。身の程を知っていたのです。

 しかし、80年代以降は変わってしまいました。
 「現在のおたく」には、そういう自戒がゼロなのです。彼らの場合は、「自分たちが、世間の真ん中を歩けないのは不当だ」という被害妄想的な不満が、いつも心の中に居座っています。身の程知らずなのです。
 ですから、「現在のおたく」は、「昔のマニア」とは異なる人種です。「人畜無害」どころか、「オウム真理教信者と同じだ」と見なさねばなりません。
 要するに「現在のおたく」とは、かっての宗教運動や学生運動そっくりの革命思想に酔っている連中なのです!
(私自身が元おたくだったのです! だから、おたくの心理構造は、よくわかっているのです!)

 また、マスコミ・メディア業界内にも「おたく信者」がいるため、「現在のおたく」はある程度、メディアを通しての発言権も得ています。
 そして「現在のおたく」はメディアを通して、大衆を見下すような態度を取ります。その結果、大衆からはますます嫌われてしまう、というパターンを繰り返しているのです。
 そうした「ネガティブな影響力」を、「現在のおたく」は持ってしまった、ということです。

 ゆえに、私は「現在のおたく」を危険視しなければならないのです!
(ここからが本題です!)
 「現在のおたく」をこのまま放置しておけば、「サイファイ」も、彼らの「ネガティブな影響力」に巻き込まれてしまうでしょう。
 下手すると、大衆読者から「サイファイというのも結局は、おたく文化だな」と誤解されて、「SF」と同様に滅ぶ危険があるのです!
 私が恐れているのは、そういう事態なのです! それが恐ろしくて恐ろしくて、たまらないのです!
 おたくによる不買運動など、私は恐れていません(笑)。それは一八〇度正反対の勘違いですよ(笑)。
 つまり、「サイファイも、おたく文化だな」と大衆から誤解されて、その結果、「サイファイ」が大衆から不買運動も同然の「NO!」を突きつけられることが、私には恐ろしくて恐ろしくて、たまらないのです!

 実は、私の本当の敵は「おたく文化」なのです。
 これに足を引っ張られたままでは、「サイファイ、大衆娯楽サイエンス・フィクション」を立ち上げることも不可能でしょう。
 私は、何としても「サイファイ」が、おたくの餌食にされることだけは避けたいのです。
 ゆえに、梅原克文は「おたくの天敵」となります。「おたく文化批判論」を構築します。そうする必要があるのです。
 つまり、「サイファイは、おたくからは嫌われる文化だ」という図式を、今から意図的に造るつもりなのです。まず、「サイファイ」の防衛ラインを20年かけて構築する、という戦略です。これは「人為的な管理経営」の第一歩です。

 すでに梅原克文という人間は、日本全国のSFマガジン読者、つまり、おたくからは蛇蝎のごとく嫌われたはずです。となれば、梅原克文がいずれ立ち上げる「サイファイ」も、おたくは嫌うに決まっています。
 これこそ思うつぼなのです!!!
 これによって「サイファイ」と「おたく」とは、「水と油の関係」になり、別々の道を行くことができるのです!!!
 それを、私は狙っているのです! 「おたくの天敵」である梅原克文は、自動的に「サイファイ」の防衛ラインの役目を果たすことになるわけです。
 つまり、私は意図的に、おたくから嫌われるように「演技」しているのです!

 ご理解いただけたでしょうか?
 つまり、これほど「現在のおたく」は、エンターテインメント・ビジネスマンにとっては非常に危険な存在なのです。繰り返しますが、彼らはある程度、マスコミ・メディアを通しての発言権も持っています。それゆえ、状況がかなり複雑な様相を呈しており、そこが厄介なのです。
 「サイファイ」が、「おたくの自滅サティアン」に引きずり込まれるのを避けるためには、まず梅原克文が「おたくの天敵」になることが、どうしても必要だったのです。

 箇条書きにすると……。
☆「昔のマニアの特徴」
・自戒的な態度があった。つまり、「自分たちは変わり者だから、世間の真ん中を歩ける人間ではない」といった控えめな態度だった。
・声高に強い主張などせず、人畜無害の存在として、世の中の片隅でひっそりと生きていた。
・身の程を知っていた。
・だから、「昔のマニア」は、大衆から嫌われることもなかった。

☆「現在のおたくの特徴」
・「昔のマニア」のような自戒的な態度がゼロ。「自分たちが、世間の真ん中を歩けないのは不当だ」という被害妄想的な不満が、いつも心の中に居座っている。
・身の程知らず。
・マスコミ・メディア業界内に、「おたく信者」を抱えている。それゆえ、メディアを通しての発言権を多少だが持っている。
・メディアを通して、「おたく文化が世界を支配する」とか「今、おたく革命が起きつつある」などと言う非常識な言動をしばしば繰り返してきた。
・かっての宗教運動や学生運動そっくりの革命思想に酔っている。
・メディアを通して、大衆を見下すような態度を取る。その結果、大衆からはますます嫌われてしまう、というパターンを繰り返している。

 重要な論点をまとめなおすと……。
(1)「昔のマニア」と「現在のおたく」とは別の人種である。
(2)「現在のおたく」は、マスコミ・メディアを通しての発言権を多少だが持っている。ところが、その言動によって、おたくはますます大衆から嫌われる、という結果を招いている。
(3)大衆から、「現在のおたく」たちの仲間だと見なされることは、エンターテインメント・ビジネスマンにとって非常に危険な事態である。おたく同様に、そのエンターテインメント・ビジネスマンも、大衆から誤解され、嫌われてしまうからである。

 私が、「今後20年間はホラー作家を名乗る」と決意したのも、このためです。今のところは「ホラー作家」さえ名乗れば、「現在のおたく」とは「水と油の関係」でいられるからです。

 これらのポイントは大変、複雑なので、今までは説明しきれなかったのです。
 今回初めて説明を試みましたが、やはり、これほどの文章量を費やさねばならないとは! 本当に、ため息が出ます。
 これで、ご理解いただけたでしょうか?
 だめなら、さらに説明を試みますよ。

 欧米には、こんなことわざがあります。
「地獄へ至る道は、善意という名の石畳によって舗装されている」
 つまり、「悪意を持つ人間よりも、善意を持つ人間の方が、本当は恐ろしい」という意味です。しかし、日本には、これに類似する格言がありません。

「現在のおたく」も、「おたくは善だ」と信じ切っているはずです。
 私自身も、おたくだった頃は、そう信じていましたから、彼らの心理は、よくわかっているのです。
 ところが、その「善意」が、サイエンス・フィクションというエンターテインメント・ビジネスを地獄に導いたのです!!!
 だから、一人でも多くの人に、この複雑なポイントを理解してもらいたいのです。
 繰り返します。
「地獄へ至る道は、善意という名の石畳によって舗装されている」

 12月13日の「K1決勝戦」を観ていないとは残念。

 では、また。
草々


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